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新・幻想と怪奇 仁賀克維編・訳 |
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| アンソロジー(国内編集者) | 出版月: 2009年05月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 1件 |
![]() 早川書房 2009年05月 |
| No.1 | 7点 | クリスティ再読 | 2026/09/25 09:39 |
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| ハヤカワで「幻想と怪奇」って何度も使われたアンソロ・タイトルなんだが、ポケミス初期の2巻、ハヤカワ文庫の仁賀氏編の3巻とあり、この本はポケミスでだけどハヤカワ文庫の「新」という意味で仁賀氏の編・訳で編まれたアンソロ。
個人的にはレイ・ラッセル「射手座」がお目当て。S始まりのネオゴシック中編三部作の残りだったしね。これは「ジキル博士とハイド氏」・切り裂きジャック・青ひげジル・ド・レとネタ満載で、ハイド氏の息子をめぐって、老伯爵の思い出話を聞く設定。ベルエポックのグランギニョールまでおまけつき。大ネタを堂々とさばいていく包丁さばきがいい。ネオゴシック三部作でも一番出来がいいと思う。 まあこのアンソロはラッセル以外にもシェクリイ・ボーモント・マシスン・ブロックと「異色作家短篇集」の落穂ひろいみたいなニュアンス(「壜づめの女房」収録のゴア・ヴィダル「こまどり」も収録)というわけで、仁賀氏がお気に入り作品をわがままに集めた、というニュアンスが強いのかな。だから既訳のあるものも結構ある。どうもきっかけは仁賀氏が気に入ったほぼ未紹介の作家ローズマリー・ティンパリーを紹介したくて、こんな豪華協賛陣を用意したみたいだ。確かに浮気夫への復讐というありふれたネタをちょっと違う切り口で見せた「マーサの夕食」、幻想的ゴーストストーリーというべき「レイチェルとサイモン」と、なかなかの味わいを見せている。あっさりしたシャーリー・ジャクスンといった雰囲気か。 あといいのは、長距離ドライバーが無人の街をただ走り抜ける話のリチャード・ウィルスン「ひとけのない道路」が、コズミックな奇譚といった感覚で面白い。大人の鬼ごっこの中で出現する怪異を描いたA.M.バレイジ「暗闇のかくれんぼ」もヒヤッとした感覚が鋭い。今市子「百鬼夜行抄」中の名作「目隠し鬼」と同様の鬼ごっこに妖しいモノが忍び込む話。 そしてロバート・ブロック「スクリーンの陰に(The Movie People)」がハリウッドの古参エキストラをめぐる泣ける話。ブロックというとハリウッド神話を扱った名作が結構ある人で「べッツィーは生きている」とか「最後の演技」とかその路線。いや評者も以前1900年代のサイレント記録映画を見て「ここに写っている人たちはすべて、とうの昔に亡くなった人たちだ...」と感傷的な思いにふけったことがあるが、 座席の後方にあるものを映写機と呼ぶが、それは実はタイムマシンなのだ。 とこの一文が心にしみる。いいなあ。映画に写っている人は有名無名ひっくるめて時間を超えた「Movie People」という存在に変容しているのである。 |
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