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クリスティ再読さん
平均点: 6.40点 書評数: 1378件

プロフィール高評価と近い人 | 書評 | おすすめ

No.1378 5点 法廷外裁判- ヘンリー・セシル 2025/04/01 21:18
苦手感の強いヘンリー・セシル。でも昔読んだこともあるから、再読リストに載っている。終身刑の判決を受けた主人公が、脱獄して判事の家を占拠して、関係者をすべて招集して裁判をやり直す話。クイーンの「ガラスの村」に近いけど、あれほど無茶苦茶裁判ではない(クイーンはいろいろ狙ってムチャしているのが凄い)。

で評者の苦手感の理由は、やはりこの人のユーモアセンスが評者にはまったく合わないんだな。笑わせるところで全然おかしくない。だからか戦前派作家だと思ってたのだが、実は戦後デビュー。本作も1959年作品。まあ、生まれは1902年で弁護士生活を経て40代なかばに「メルトン先生」で作家デビュー。1977年まで作品を出しているよ。

でミステリとしては、この私的裁判でのポイントは細かいものだが、これはまあまあか。しかし、大枠の真相は何か馬鹿にされたような気にもなる。「嘘アレルギー」というお笑い込みのポイントを生かしている、といえばそうなのかもしれないが...

まああと「判事に保釈なし」はやる予定。

No.1377 6点 メランコリイの妙薬- レイ・ブラッドベリ 2025/04/01 15:21
ブラッドベリって「すごい!」とは思うけど、評者は「好き」とはならない作家だったりする。少数派かな。何となくその理由というのも了解しかけてきた。

いやある意味ブラッドベリって「異色作家」らしい切れ味の作家ではないんだよね。「切れ味」のシンプルさではなく、矛盾する方向に引き裂かれて読後ハタと当惑しつつ「じわじわと感じる」タイプの作家だろう。

一年中雨が降り続く惑星金星の子供たち。七年ぶりに晴れ間が見え太陽が見えるという予報があり、子どもたちは太陽を見るのを待ちわびていた。

太陽は花だとわたしは思います。
一時間だけ、ひらく花です。

この詩を書いて太陽を待ちわびた少女マーゴウ。しかし、最近金星に移民してきたマーゴウは同級生から孤立しており、やっかみから貴重な「太陽の時間」のあいだじゅう、戸棚に閉じ込められてしまう....

「すべての夏をこの一日に」はこんな話。この短編集ではベストと思う。
センチメントを超えた感覚の「爆発」、絵画的な描写力が凄すぎて圧倒されるのだが、これをイジメを背景にした「こころの痛み」と一緒に語る。この矛盾がやはりブラッドベリなんだろう。太陽による束の間の解放とそれを奪われた少女の痛み。感覚と感情が矛盾する中間で宙ぶらりんに立ち尽くす姿。これがブラッドベリ独特の「ムード」とでも呼ぶべきものなのだろうか。
都会的なポオ的な幻想には、周到なまでにトムソーヤー的な野人が異を唱えるべく待ち構えている。火星に圧倒される開拓者地球人は、知らず知らずのうちに「火星人」に自身が「侵略」されていく「金色の目」の逆説。

こんなムードの「矛盾」がブラッドベリらしさのように感じる。

(まあ素直に宇宙旅行をクリスマスストーリーにした「贈りもの」みたいな作品もあるんだけどもねえ。あ、あと砂浜で無心に砂絵を描くピカソに遭遇する「穏やかな一日」はいいな)

No.1376 7点 メグレの財布を掏った男- ジョルジュ・シムノン 2025/03/31 10:59
通勤途中のメグレは、バスの中で尻ポケットの財布を若い男にスリ取られた...「プロの仕業ではない」とメグレは諦めていたが、財布はメグレの元に郵送で送り返された。そして犯人からの電話。誘い出されたメグレは、その男と同行してその妻の他殺死体に遭遇する...

こんな導入。この若い男リカンが属する、映画プロデューサーの取り巻きグループと、彼らが集う元スタントマン経営のビストロが舞台。早い話、映画周辺のボヘミアングループの話で、なかなか男女関係も乱れている(苦笑)このリカン、自称ジャーナリスト、コントやシナリオを書いて持ち込んだり、映画監督になろうと売り込んだりする男。住むアパートといえば、床が黒、壁が赤、家具が白と塗り分けられていて、少なくとも「アーチストを気取っている」というのは伝わる。才能はというと、「天才」と評価する声もあれば、「ただの出世欲だけ」と評する声も。メグレとの遭遇についても「不安定さ」だけは確か。

ミステリは一般に「優れたアーチスト」を登場させるのが難しいジャンルでもある。描くのが難しい上に意味ないからね(苦笑)なんだけども、本作、ミステリ的というよりも、シムノン論的にとても面白い作品なので、バレを厭わずにちょっと書きたい。

(バレるかも)
というのか、本作のリカンって、初期の有名作の有名犯人をリライトしたようなキャラなんだ。その有名作では「若さ」についてのめり込むような熱気があって、青年期の終わりを迎えたシムノンの「青春の決算」とでも言いたいようなパッションが伝わる作品でもある。本作執筆は63歳。メグレ後期というか、末期に入りかかるくらいの時期。ここであえての「青春」を取り上げているわけだ。

奴は理想主義者だったんだな。理想どおりの生活ができなかった哀れな理想主義者だったんだ。

本作がある意味、自己を投影して描いた有名犯人についての、シムノンの人生をかけた最終結論のようにも思われる。
こんな「再論」というべき作品があるというのも、長く続くシリーズものならではの奥深い話だ。

No.1375 7点 マクベス夫人症の男- レックス・スタウト 2025/03/30 09:45
原著1973年刊、翻訳は1983年。最後から1つ前のネロ・ウルフでも最末期の作品。ヒッピーとかパレスチナ問題とかウーマンリブだとか、そんな単語が出てきたりするし、事件自体、航空会社の社内で副社長のデスクに仕掛けられたブービートラップで爆死するというかなり物騒な事件(スタウトって爆弾が凶器って設定が妙に多い気がする)。そのトラップが仕掛けられた背景にLSDをウィスキーに混入するとかそんな話もある。ウルフだってしっかりと「サザエさん時空」に突入している。依頼者はMLBのファンでアーチーと、トム・シーバーが投げてるTVの中継を一緒に見てたりする。

このところウルフの事務所は依頼が少なくて、経営が四苦八苦になっていて、アーチーが積極的に「お客」を取りに行くところとか、読者を喜ばせるギミックがいろいろあって興味深い。こう問うてみたいだろうだろう?「ウルフものって、マンネリなのか?」末期作だからこそ、振り返ってみたいのだ。

いやいや、作品ごとにそれぞれギミックみたいなものがよく考えられているのが、このシリーズなんだと思う。ウルフの娘が登場したり、ユーゴに潜入したり、FBIと対決したり、などなど作品ごとのギミックの面白さが長期シリーズとしても「マンネリ」にならずに続いてきた証拠のように思うのだ。

訳者あとがきだと「日本では不当に冷遇」と述べているが、このところの論創社からの中編集の出版でも分かるように、海外ミステリ雑誌の「呼び物中編」としてはウルフ物は重宝されてきた、という印象の方が評者は強いんだ。長編の未訳が多いのが不思議だが、中編はほぼすべて訳されている。日本でもファンに愛されたシリーズには違いないと思っている。

しかしなぜ、評論家筋に取り上げられづらいのか、といえば界隈での「トリック至上主義」みたいな「本格」の美学から外れている部分があるためだろう。本作でもそうだが、複数の人物の供述の間での微妙な齟齬・矛盾を突いて、なぜ嘘をついているのか?を追求して真相を炙り出していく経緯が、なかなかシブすぎるところも影響しているのではないか。本作あたり典型的な「ロジック派」と呼ぶべきだと思うんだ。何というのかな、人狼っぽいというのか(ウルフなだけにねw)。

「ここが凄い」と持ち上げるポイントが難しい作家なのだと思う。
でもスタウトって評者にとっては読めば読むほど「すごいな〜」と感じることが多い作家である。

No.1374 7点 日影丈吉傑作館- 日影丈吉 2025/03/26 15:00
河出文庫の傑作選。

考えてみれば、日影丈吉って「戦後派」の中で、ミステリ趣味と文学性を完璧に両立した「文学派」の最上の作家かもしれない。探偵作家クラブから裏方をいろいろ勤めたり、フランス作品メインで翻訳をやったりと、派手な文壇中心人物でもないのだが、読後の印象ではカテゴリーから外れた「異端作家」というよりも、「文学派」の実力者という評価になりそうだ。

まあ当然「かむなぎうた」とか「狐の鶏」とかは読んでいて実力のあたりは把握しているんだけど、それでもやはりまとめて読んで、ミステリ趣向を小説にする力が傑出していると思う。「かむなぎうた」でも主人公の少年の幻想と奇抜な凶器の組み合わせの妙が、土俗的な背景の上で融合しあって「名品」と呼ぶべきものに昇華している。すごいな。

秋成で有名な「吉備津の釜」をヒネって使った同題作も、久々の水上バスから子供の頃のふしぎな記憶を介在させて間一髪で犯罪の犠牲になるのを回避する、サスペンスフルのな話。文学的な元ネタを背景に少年時のイメージを重ねて膨らませて..という丁寧なプロセスに敬服する。

だから確かに凄いけど、職人的なうまさ、が前面に出過ぎるのかもしれない。
そうしてみると真正面のファンタジーになる「泥列車」あたりは、「うまさ」が必ずしも作品としての独自性として花開かない恨みがあるようにも感じる。
いやいやそれでも、この人長編もいくつもある。ちょっと気を付けて読むようにしたいなあ。

収録「かむなぎうた」「東天紅」「彼岸まいり」「ねじれた輪」「食人鬼」「吉備津の釜」「消えた家」「天王寺」「夢ばか」「人形つかい」「ひこばえ」「泥列車」「明治吸血鬼」
「彼岸参り」は月を墓地として使うアイデアのSF。「食人鬼」は戦争末期の南方で、飢餓からの食人の噂に追い詰められる話。「天王寺」「夢ばか」はショートショート。「人形つかい」「ひこばえ」はモダンな怪談。「明治吸血鬼」はハイカラ右京の一編。
傑作選だけあって、バラエティ豊かで、それぞれ高レベル。

No.1373 6点 九人と死で十人だ- カーター・ディクスン 2025/03/25 16:30
カーの第3期でまとまりよくリーダビリティのいい作品。戦時中の灯火管制輸送船でのクローズトサークルもので、設定の特異さが楽しい。ミステリとしては、たしかに犯人の予定通りにいかずに謎が謎を呼ぶモダン・ディティクティヴだよね。

指紋の謎については、どこかで読んだ覚えもあって「これ?」と疑いながらは読んでた。まあだけど、本当に見逃すかなあ、というのは昔から感じていた疑問ではある。そして、この指紋が引き起こす矛盾が気にはなっていたから、それがすっきり解決するのがいいあたり。本作を高く評価する人がいるのは頷ける。

そういえばさあ、タイトルがちょっとしたヒッカケにはなっているよね(苦笑、9人と4人なら13人、かもよw)

(本作ではHMのドタバタっぷりは控えめ。ヴァレリーくんのツンデレっぷりはやや不発かな。でもエステル・ジサ・ベイ夫人の蓮っ葉でも愛嬌のあるキャラは好き)

No.1372 6点 怒りっぽい女- E・S・ガードナー 2025/03/24 17:37
そういえば「E. S. ガードナーの「ペリー・メイスン」 絶滅の謎」という論文をネットで見つけたよ。ある意味「読めば、分かる(面白い)」を体現したシリーズであるにもかかわらず、現在日米ともに電子書籍以外では現役本がほぼ絶滅している状況にあることについて考察したものなんだ。
いやミステリマニアの立場では、「当世流ペリー・メイスンの読み方」というようなことを、しっかり考え直すことの方が、大事なのではないのかとか思うのだ。

というわけで第二作。初の法廷場面あり。ハヤカワでは「怒りっぽい女」だが、「すねた娘」の創元が訳題では圧勝。ヒロインで依頼人のフランセスの甘え切った「すねた娘」っぷりが、まさに「まんま」。それをかばって嘘自白をしたがるロミオとか、今じゃ阿呆呼ばわりされても仕方ないが、昭和エンタメ感を盛り上げる(苦笑)
でなんだが、一応「ミステリらしい」仕掛けもある。しかし、ぺリイ・メイスンの「読み方」は、揃ったデータから静的に推理するのを楽しむものではなくて、ダイナミックな法廷駆け引きの中で推理内容をどう「武器化」するのか、というあたりを想像しながら読むということだろう。メイスンが「何を狙っているか」がホントに大事で、これを割ってしまうとつまらない。だからこそ、ポイントを際立てるためにメイスンの意図を探る「質問役」が要るわけだ。今回これが見習い弁護士フランク・エヴァリーくん。しかし、ちょっとばかり役者が不足。実際、デラくんとかドレイクくんとかで十分な気もするから、フランクくんはフェードアウトしたのだろう。

勿論ペリーメイスンで描かれる「ボクシングみたいな」アメリカの刑事裁判という日本の常識からやや外れた「珍しい」話の興味と、メイスンが活用して見せる特殊なルールに対する「あこがれ」みたいなものが、日本の読者にはあったんだろう。メイスンが勝つに決まってるんだもん、無責任に楽しめるちょっとした「背のび感」を持った読書体験だったともおもうのだ。
まあだけど本作はミステリっぽいと言えば大変ミステリっぽい話。仕掛けがメイスンの法廷闘争に噛み合っているのがナイス。

No.1371 6点 犯罪カレンダー (7月~12月)- エラリイ・クイーン 2025/03/22 14:49
皆さんと同様に、1~6月と比較すると、やや落ちるかなという感想。

いやそれでもラジオドラマ由来のミステリとしてのネタを、月ごとの風物詩に合わせて短編小説に仕立て上げる腕前の良さを楽しむという視点だと、そう悪くはないか、とも思える。評者何といっても、華麗なリーの文章が好きなんだ。

まあ、批判も多いだろう「三つのR」だけど、これって小説の通りに事件が起きる、というメタを扱ったプロットのわけで、クイーンに親しんでいるとアノ作品コノ作品と連想が働くという面白味がある。オチがつまらないから、それが問題なんだけども、楽しく読めることは確かなんだ。

そういう「楽しさ」という面では、クリスマス・ストーリーについて前説を長々と繰り広げる「クリスマスと人形」とかね、単純に楽しいお話。このシリーズではエラリーとニッキーがレギュラーで、準レギュラーで警視とヴェリー部長がでたり出なかったり。このシリーズだとヴェリーがコメディ・リリーフになることが多く、「クリスマスと人形」ではサンタに扮して、とても楽し気。
で、この「クリスマスと人形」に関しては、国名の頃に警視の下で捜査に当たった刑事たち、ヘイグストローム・ヘス・ピゴットといった連中が登場するのが、なんかとっても懐かしい。

No.1370 6点 貸しボート十三号- 横溝正史 2025/03/21 14:16
それぞれ猟奇的な味をスパイスにしつつ、パズラー的興味を両立させる中編三作。「湖泥」は磯川、表題作は等々力、「堕ちたる天女」では両者ご対面!

中では「湖泥」が一番パズラー的な味わいがある。「農村のほうが犯罪の危険性を内蔵している」という最初のテーゼが、犯罪として激発するためには外部からの刺激が必須、という結論で上書きされるのは、確かに横溝ミステリの基本構図に他ならないよね。義眼が示す「モダン」がキーとなるのが作品のキモだと思う。

「貸しボート十三号」は中途半端な2つの死体というヘンさが猟奇の味わいになっている。実際、本作って「犬神家」の複雑バージョンみたいなものだというべきだから、モダン・ディティクティブになっているといえば、なっている。「犬神家」が示唆する「猟奇ミステリの合理的解釈」のバージョンアップというわけだが、やや不自然でもあるか。まあとはいえ、提出された謎のヘンさがオリジナルな味わいだから、成功していないわけでもないか。

「堕ちたる天女」って、これ乱歩「蜘蛛男」とか「地獄の道化師」とか、乱歩お気に入りの猟奇の幕開け。乱歩への挑戦みたいなカラーを感じる。昭和のホモ・レズ風俗を取り上げている側面もあって貴重と言えば貴重。軍隊で覚えた、というのも職業軍人だった「やなぎ」のママの話などから、当時珍しいことではないよなあ。

ややバレ。
つっかさあ、同性愛とか言っても、ホントにそうか、バイの気がないかとか、わかるわけないじゃん?というのもポイントなんだよね(苦笑)いやそういう話。それにリアリティがある。

No.1369 7点 霧の旗- 松本清張 2025/03/17 22:04
評者世代は百恵だなあ。

いや清張だと結構異色作だと思う。「社会派」だったら裁判制度批判とかいうことになるのかもしれないけど、これそういう作品じゃないと思うよ。一種の不条理劇だと思う。この作品では九州での金貸し老婆殺人事件の前半と、桐子の復讐の後半とがかなりパッキリと分かれている。桐子の復讐話の後半を独立した「奇妙な味」的な話として読むのがいいと思うんだ。

考えてみれば、真っ当なミステリだったら、弁護士と桐子が協力して兄の無実を晴らして...なんて話になるはずなんだ。それでもそうしない清張の小説的な狙いの部分が垣間見れて、評者なんぞとっても面白い。冒頭の清純な小娘が、「汚れ」を意に介さないしたたかな女に変貌していく。これが女優にとってとっても「おいしい」からこそ、繰り返し映画・TVで取り上げられる。

しかし、なぜ桐子が弁護士への復讐にこだわるのかは、読んでいて少しもわからない。アナーキーともいえる問答無用、無理を押し通す底の抜けた「怖さ」を描けているのが、全盛期の清張の「こわさ」なんだとも思う。

だから、この桐子を演じきれた女優って、きっと誰もいないんだろうなあ。

No.1368 6点 ロリ・マドンナ戦争- スー・グラフトン 2025/03/13 23:45
グラフトンはキンジーのシリーズを書く前に、二作の長編小説があり、とくに二作目の本作が映画化されたのをきっかけにハリウッドでのライターのキャリアを開始している。なんだけどね、この作品、ある意味「有名な」映画だったりもするのだ。
評者実はアメリカン・ニューシネマって嫌いなんだよね。ロックオペラを除いたら「グライド・イン・ブルー」と「バニシング・ポイント」くらいしか好きな映画がない。で本作は大好き「バニシング・ポイント」の監督リチャード・C・サラフィアンの作品で、曲者俳優多数のヘンな作品、しかも長らくソフト化がされずに「まぼろし」化していたことでも有名な映画だったりする。というわけで、「グラフトンしようか?」と思った時に「え〜ロリマドンナ原作がグラフトン!」と知って読書予定に入れたわけである。

テネシー州の山岳地帯に住んで、いがみ合う2つの家族、フェザー家とガッシャル家。ネイティヴアメリカンの血を引いて密造ウィスキーを作るフェザー一家と、フェザー家の税金滞納から競売になった土地を取得した牧畜を営む退役軍人のガッシャル家。この2家の確執はなかば儀式的な嫌がらせとして燻り続けてきたのだ。ガッシャル家の側で次男ルディの嫁としてロリ・マドンナという女を迎えるという虚報を流した。フェザー家がこの女を拉致しようと仕掛けてくるのを見越して、その隙に密造ウィスキーをダメにしてやろうという計画だ。しかし、偶然通りかかった女性ルーニーがこの架空の女ロリ・マドンナと誤解されてフェザー家に拉致される。意外な結果で無関係の女を巻き込んだことにガッシャル家は困惑するが、折りも折りガッシャル家の末娘シスター・イーが、フェザー家の長男トラッシュと次男ホークにレイプされる事件が起きた。この落とし前をつけさせようとガッシャル家はフェザー家に迫るが、交渉は決裂し犠牲者も出てしまい全面戦争に突入する...

こんな話。アメリカのカントリーの狂気が全面に出た作品。女性作家が書いたことが意外なほどのバイオレンス。フェザー家五人、ガッシャル家4人の兄弟たちと父母で、多めの登場人物もしっかり書き分けられており、かつさくっとした結末など、なかなかの構成力。とくに若い兄弟たちは冷静で、両家の対立を陰で何とかしようとするのだが裏目に出てしまう、誤解された女ルーニーとフェザー家の末弟コックとが徐々に接近していくさまなど、読みどころは多い。

とはいえ、テネシー州の山奥で孤立して生活する2つの家、というのがどんなものなのか、書籍だと日本人は具体的に理解し難いものがある。映画は必須。
(でも最後に明かされる設定年代が1961年というのに呆然とするよ...映画は71年設定のようだけども)

No.1367 6点 クレアが死んでいる- エド・マクベイン 2025/03/13 09:54
評者は最近87を大体順に読み出していたから、何となく87を「クリングくん物語」っぽく読んでいるところもある。「警官嫌い」でパトロール警官で、「通り魔」でクレアと知り合い、刑事になって「ハートの刺青」でクレアとの仲が進展し....でこの悲劇。書店での乱射で四人が死亡。その一人がクリングの恋人クレアだった!というこの回。
クリングくんは悲嘆にくれ、それでも捜査に志願するのが痛々しいし、周りの刑事・警官たちもこの事件を「クリング事件」と通称してスペシャルな事件として扱う描写が心に染みる。

今もアメリカでは中絶問題が社会対立になっているわけで、アメリカという国家のややこしさが本作にも反映しているわけだ。この件がクレアという女性の描写にもなっているあたりが、87らしいうまさ。しかし、捜査は行き詰まり....で意外なところから真犯人が浮かび上がる。

なるほど空さんが「エラリーなら」。読んだ人は分かると思います。

No.1366 6点 犯罪カレンダー (1月~6月)- エラリイ・クイーン 2025/03/12 16:32
さてクイーンでも短編集をやり落としていたのを再開しよう。
パズラー作家の短編集の存在意義というのもいろいろ考えたりもするのだが、クイーンだとどうみてもベストは新冒険のスポーツ4連作だろう。ストーリーと謎解きがしっかり噛み合って、短編ミステリの面白さをしっかりと伝えていてくれた。
後期のクイーンだとなぞなそ的な短編が目立ったりして、白けるのもある。「犯罪カレンダー」はどうかといえば、「謎」に到達するまでの場面設定が凝っていてなかなか、読ませる。とはいえ、謎が最後10ページくらいで提示される規模で小粒だったりアメリカ史の造詣が要ったり、なかなか素直に楽しめない部分もある。
ストーリー的には皮肉な五月「ゲティスバーグのラッパ」に一番雰囲気が出ているようにも思う。蘊蓄だって、初期の軽薄さがなくなって、面白い小ネタとして小説の膨らみにはなっていると思う。

法月氏の解説はなかなか読ませるなあ。確かにニッキー登場に関して、ラジオドラマ〜カレンダー〜緋文字、という流れは正鵠を得ていると思う。
(「推理の芸術」によると、この連作はダネイのラジオドラマの梗概に基づいているが、連作短編自体はリー主導のように読める。とすればニッキー重用はリーのアイデアとも想像する)

No.1365 5点 帰ってきたイモジェーヌ- シャルル・エクスブライヤ 2025/03/11 21:23
海軍情報部を定年退職した赤毛の猛女イモジェーヌ・マッカーサリーは、スコットランドの故郷キャランダーに帰還した。万一の際には上司のウーリッシュ卿が力になることを確約して...キャランダーではイモジェーヌを崇拝する男たち、排斥する女たちが大騒ぎの中、イモジェーヌを迎えた。そして荒っぽい町対抗のラグビー試合の日、イモジェーヌの貢献によりキャランダーのチームは逆転勝ち。しかし、イモジェーヌに相談を持ちかけた学校教師が大騒ぎの最中刺殺された!イモジェーヌは学校教師から、学内で話されていた殺人計画を聞かされていたのだ!イモジェーヌはウーリッシュ卿の手配でその学校に新任教師として訪れたのだ...

いやはや、赤毛の猛女イモジェーヌのドタバタの活躍話。エクスブライヤというなかなか珍味な作家には、民話の味わいがある。イモジェーヌの無敵っぷりと言ったら、007もかくや、というくらい。ボンドもスコットランド系(コネリーもね)設定だから、共通点かもよ。

とはいえ泥臭いのは相変わらず。この泥臭さにはドーヴァー警部も連想する。だから笑えるユーモア、というとちょっと違う気もしないでもない。

法律外なんだよ、神父! あの女は人殺しも、暗殺もしていいんだ! 学校をひっくり返してもいい、わしのような人間の一生を台無しにしてもいいんだ!

まさに「殺人許可証を持つ女」イモジェーヌ!

No.1364 5点 バレンタインの遺産- スタンリイ・エリン 2025/03/10 13:28
怪我で引退した元テニスプレーヤーの主人公は、レッスン生徒から遺産相続のために形式的な結婚をすることを持ちかけられる...しかし競争相手がいるためにこの契約は秘密とされた。主人公に向けられた尾行・嫌がらせや結婚相手への脅迫が続き、ついには主人公も拉致される...この遺産の謎とは何か?

という話。マイアミからボストン、ロンドンと舞台が移るさまがスパイ小説風だけど、実際ちょっとだけそんな背景も覗く。そのうちに形式的な結婚、とされていた相手とも愛情が芽生えるとか、これはお約束。ポイントは挫折した元プロプレーヤーでフィジカルではエリートなあたり。ギャングなどと渡り合うがそれなりに強い。ここらへんディック・フランシス風。

問題は全体の真相が不明のまま怪しい人物が理由もよく分からないまま主人公たちを迫害する格好になって、フラストレーションが大きいこと。また主人公をなぜか贔屓にするギャング、結婚相手の相棒のような奔放な女、真面目な主人公の弟といった序盤で印象的なキャラが中盤から完全に置き去りになって、それを埋め合わせるほどの真相の面白さがないこと。

スリラーとしてはそれなりで、真相も予感はするが意外系。まあだけど作者にいいように引きずられたような読後感。真相もとある人物が全部教えてくれるとか、カタルシスがない。描写の細かさとか「エリンらしさ」はあるんだけどもねえ。

No.1363 7点 虹をつかむ男(早川書房)- ジェイムズ・サーバー 2025/02/26 09:33
評者前から感じていることだけど、「ハードボイルド」って小説とくに御三家を読んでいるだけじゃ、わからないことが多すぎると思うんだ。

こんな風にサーバーを読むと実感もしてしまう。え?って思う人も多かろうがね。「ザ・ニューヨーカー」で活躍したユーモア作家&漫画家というイメージだと、ハードボイルドとの接点が何か、見当がつかないかもしれない。しかし「ホテル・メトロポール午前二時」「一種の天才」などが、リアルに犯罪事件とその裁判を巡る成り行きを客観的な筆致で描いているさまを見ると、そういう風にも感じてしまうのだ。映画での「スクリューボール」の世界(キャプラとかワイルダーとか)、あるいはウイージーの写真、小説ならデイモン・ラニヨン、マンガならディック・トレーシー。そんな20年代30年代のアメリカ・サブカルの宇宙からやはり「ハードボイルド」は生まれ育ったということが実感させられるのだ。

だから広義のミステリに属する作品も結構多い。「世界最大の英雄」は世界無着陸一周を達成した飛行家(リンドバーグとか皮肉ってる)が、紳士どころかならず者だったらどうか?というアイデアから、ジャーナリスト・政治家がよってたかって飛行家を殺害する...これ「トンデモ動機」として秀逸だと思う。偶然凶悪犯と人相が共通する小市民の悩みを描いた「プルーフ氏異聞」。シェイクスピアのマクベスをミステリとして読んで真犯人を推理してしまう「マクベス殺人事件」なら、パズラーの流行を皮肉ったものとしても読めるだろうね。

そして代名詞的作品の「虹をつかむ男」。いわゆる「ユーモア」として分類される作品だけど、冒険小説というものの読者論としても秀逸だったりするわけだ。いやそういう「冒険」というものを、「日常生活の冒険」として解釈しなおすサーバーの視点というものが、都市生活者の「解放」めいたものを示唆するように感じられる。

ハードボイルドをこういう風に評価しなおしたら、実に魅力的だと思うんだ。

No.1362 7点 モンド氏の失踪- ジョルジュ・シムノン 2025/02/16 12:45
シムノンらしさは全開だけど、ミステリ色はかなり薄い。でも話は結構シムノンの定番話。パリに住む富裕な中年の商人、モンド氏が突然失踪し、身なりを変えて南仏に逃亡する話。蒸発話といえばそう。乱歩も「二重生活」とか変身願望が強く現れた話が好きだけど、本作気に入るんじゃないかな(苦笑)だったらミステリ周辺という見方もできるかも。

シムノンのミステリと本格小説の違いって何か、と考えたら、「理由を説明する」か「しない」かの違いのようにも感じる。メグレという最高の説明役がいて事件を解明し説明するからこそ、「メグレ警視もの」というミステリが存在する。「シムノン本格小説」と銘打ってもも実は「メグレのいないメグレもの」なのかもしれない。だから、本作ではモンド氏がとくにきっかけもなく失踪した理由も丁寧に説明するわけではない。まあこれ多くのメグレ物を含むシムノンの登場人物の行動そのものだから、シムノン読者には目新しいわけではない。

しかし本作だと、南仏に逃れてホテル隣室で棄てら自殺しかけた女ジュリーと同棲。自ら望んだ委細承知の没落。一緒にダンスホールと賭博が売り物の店に就職し、とある意外な事件に出くわして、再度の「モンド氏の変貌」起きる。これがなかなかの見もの。しかもこの理由をちゃんと説明しない、でもそれが腑に落ちる。意外な再変貌が興味深いのは別にして、この理屈もへったくれもなく「腑に落ちる」あたりが、高評価の理由。
この「説明のしなさ」がハードボイルドのようにも感じられてしまう。
それは「説明しない」潔さのようなものが窺われるからだろうか。「理由が説明できるか」は、実は「人間の自由」ともかかわっている。モンド氏の変貌はこのような「自由」に向き合い、それをモンド氏が主体的に「自由」を解釈し、受け入れることから起きているのだろう。
たしかに「シムノン本格小説」は、しっかりした現代文学なのだと思う。

No.1361 6点 ファミリー シャロン・テート殺人事件- エド・サンダース 2025/02/12 17:45
別な必要があって読み始めた本。このサイトでもとりあえず許容範囲だろう。念のために説明しておくと、1969年に起きた映画女優でポランスキー監督の妻シャロン・テートとその友人たちが自宅で惨殺された事件に、犯人グループとして逮捕されたチャールズ・マンソンが率いるヒッピーコミューン「ファミリー」の軌跡を描いたドキュメンタリである。

評者くらいの世代だと、ヒッピー然としたマンソンの振り返った全身像が採用された背表紙、斜めに影文字で「十字架にかけられたキリストと砂漠のコヨーテは同じものなんだぜ」とニューエイジ臭たっぷりのマンソンの言葉が入り、カヴァーを取ればマゼンタとイエローでマンソンの顔が浮かび上がる....この装丁のインパクトの凄さってなかったな。ブックデザインの神・杉浦康平の作品である。

内容はマンソン・ファミリーの集結とシャロン・テート事件などを経て逮捕に至るまでを客観的なデータ中心にドキュメントしたもの。ファミリーだけで21人、被害者など11人の名前が登場人物紹介として載っているが、登場人物はこんなものじゃ済まない。さらにファミリーは名で呼ばれたり名字で呼ばれたりあだ名で呼ばれたり、一貫性が薄く「誰が何した」的に文庫700ページほど延々と続く。結構読むのが大変である。作者はビートニク世代からアングラに関わる詩人。なのに感情描写を避けて淡々と事実だけを記述していく。会話さえほとんど、採用されていない。

恐ろしい話。しかしこの平板さの中に、ファミリーが根城とした砂漠の風と地獄がある。唯一著者がファミリーを「ゾンビ」と形容するあたりに、マンソン・ファミリーが耽溺した世界と、「邪悪な」リーダーによる洗脳の実態が顕れている。乱交とドラッグとスピリチュアルな教説、儀式と集団生活と終末論。「愛と平和」の花影にぱっくりと口を開ける地獄「ヘルタースケルター」。

デューンバギーは、ヨハネ黙示録の第九章に現われる"炎の胸当て"をつけたヘルター・スケルターの騎馬であった。そして彼らのまだ未知なるビートルズは、人類の三分の一に死をもって報いる"四人の使徒"だった。

さまざまな意味で「しんどい」本。だがこの「しんどさ」にはwoke思想にも現れたハリウッドとアメリカ中産階級の罪と罰、そしてオウム真理教もどこかしらに顔を出すアクチュアリティが潜んでいる。

No.1360 7点 小麦で殺人- エマ・レイサン 2025/01/26 15:35
評者CWAとの相性がいいというのは何度も言っているけど、本作もゴールドダガー(1967)。この時期のゴールドダガー受賞作って、評者は大好きな作品が多い。「ドルの向こう側(65)」「シロへの長い道(66)」「ガラス箱の蟻(68)」「英雄の誇り(69)」「若者よ、きみは死ぬ(70)」。こんな流れの中だから、本作も評者は気に入ったのは当然かも。

米ソデタントの背景から、ソ連によるアメリカ小麦買い付けの決済を主人公サッチャーが副頭取を勤める銀行が行うことになった。入港したソ連船に小麦が積み込まれ、その証拠として船荷証券が銀行に提示され、添付された小麦ブローカーの書類もソ連領事館の証明書も揃っていたため、代金の小切手が渡された....しかし、書類はすべて偽造。銀行は100万ドルの詐欺に逢ったのである。その小切手を運んだ運転手がソ連領事館の前で射殺され、手がかりは失われる。米ソデタントに水を差しかねない問題に直面したサッチャーは、NYの捜査当局・ソ連要人と協力して、小切手を取り返すべく真相究明に乗り出す。

こんな話。あらすじでも分かるように、船荷の貿易のデテールがしっかりと描かれて社会派的な、というか経済小説的な面白味がある。けどね、何度も評者は吹き出したくらいにユーモアたっぷり。その分キャラも背景もしっかりと描かれて、これぞ「イギリス好み!」と言いたくなるような小説。ミステリ的にも「知識と機会がある人物」の絞り込みが論理的で、狭義のミステリ的な面白さも充実。人間観察のシビアさもあり、とぼけたような文章に歯ごたえもあり、小説的にしっかり楽しめる。事態収拾に派遣されたソ連要人が、アメリカのヒッピーと議論し、「長い間マルクス主義的論争で訓練された」ソ連要人が、ヒッピーをやりこめるあたり、評者大爆笑。

(サッチャーの勤務するウォール街の銀行は商業銀行ではなく、投資信託銀行のようだ。なるほど)

No.1359 5点 アリバイのA- スー・グラフトン 2025/01/23 17:52
ヴィックやるならキンジーも...もあるんだけど、ちょっと別な狙いでグラフトンをしたい、という考えもあって、取り上げることにした。シリーズ自体初読。

イマどきハードボイルドにこだわるのも何なのかもしれないが、ヴィックがチャンドラー流をうまく女性視点で消化していることで、評者的には大変印象がいい。私立探偵小説かハードボイルドか、という設問で考えたら、やはり御三家へのまねびみたいなものがあって、初めて「ハードボイルド」と呼ぶべきだとも感じるのだ。だからヴィックはハードボイルドだが、キンジーは違うと思う。女流私立探偵小説であり、「女には向かない職業」のコーデリアに近い。

まあとはいえ、夫殺しで服役し、出獄してきた女性が訴える冤罪の再調査をキンジーが請け負った。夫の死の直後、夫とも縁がある女性が「夾竹桃の樹皮」を混入した薬という同じ手口で殺されており、そちらは迷宮入り...周辺の人に手堅く聞き込みを行うキンジーは、ラスベガスに飛ぶ。電話越しで殺人を知ったキンジーは...

こんな話。ラスベガスの殺人で本の半分を消化。展開が遅め。女関係が派手な被害者ということもあって、聞き込み先は女性が多い。その聞き込みでキンジーが「シスターフッド」といった感覚で共感していくのが、女性らしいよね...となるあたり。キンジーはバツ2子なしの独身で、とある男性のフェロモンにキンジーがやられる話とかもあるよ。

まあ普通に私立探偵小説。手堅くて意外とかそういうことはない。「ピーター卿が白馬の王子様」のヴィックがキャッチーすぎる。

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クリスティ再読さん
ひとこと
大人になってからは、母に「あんたの買ってくる本は難しくて..」となかなか一緒に楽しめる本がなかったのですが、クリスティだけは例外でした。その母も先年亡くなりました。

母の記憶のために...

...
好きな作家
クリスティ、チャンドラー、J=P.マンシェット、ライオネル・デヴィッドスン、小栗虫...
採点傾向
平均点: 6.40点   採点数: 1378件
採点の多い作家(TOP10)
ジョルジュ・シムノン(102)
アガサ・クリスティー(97)
エラリイ・クイーン(47)
ジョン・ディクスン・カー(32)
ボアロー&ナルスジャック(26)
ロス・マクドナルド(26)
アンドリュウ・ガーヴ(21)
エリック・アンブラー(17)
ウィリアム・P・マッギヴァーン(17)
アーサー・コナン・ドイル(16)