皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 短編集(分類不能) ] 最後の一壜 |
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| スタンリイ・エリン | 出版月: 2005年01月 | 平均: 6.75点 | 書評数: 4件 |
![]() 早川書房 2005年01月 |
| No.4 | 7点 | 蟷螂の斧 | 2025/12/16 18:29 |
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| ①エゼキエレ・コーエンの犯罪 7点 娘の父親はナチスに同胞を売ったとされリンチにあって死亡…この汚名を晴らせるのか?
②拳銃よりも強い武器 6点 広大な屋敷に住む夫人。今では家具まで売り払う貧しい生活。そこへ10万ドルで屋敷を買う男が現れ…カード好きな夫人 ③127番地の雪どけ 6点 アパートの暖房も入れぬ家主。その息子と住人の娘が恋に落ち…メルヘンチックで残酷 ④古風な女の死 6点 画家の妻の座を奪い取った女の死…容疑者は5人(ダ・ヴィンチやダリもそうだったのかな?) ⑤12番目の彫像 5点 映画関係者が行方不明に…判りやすいが一捻り ⑥最後の一壜 9点 幻のワインを手に入れた大富豪。ついにコルク栓をぬく時がやって来た…十万フランの価値(代表作「特別料理」より、こちらの方が断然好み) ⑦贋金づくり 6点 パリへ旅行中の中年夫婦。妻は蚤の市で買い物。夫は…合言葉(飄々として) ⑧画商の女 6点 老獪な女画商に翻弄される画家。その若妻の策略(頓智っぽく分り易いが笑える) ⑨清算 6点 海辺からホテルに侵入しての殺人…計画的?(ギャップが激しい) ⑩壁のむこう側 7点 精神科医と患者の会話…夢と現実(阿刀田高氏の「冷蔵庫より愛をこめて」は本作がヒント?) ⑪警官アヴァカディアンの不正 4点 誘拐事件発生?。被害者の医師は否定…ある老女の企み ⑫天国の片隅で 5点 アパートの住人は早朝の騒音に悩まされ…観葉植物にとっても? ⑬世代の断絶 7点 ヒッチハイカーのティーンエイジャー娘を乗せた男は…困ったもんです ⑭内輪 6点 父親がなくなり、母親がすべて遺産相続。娘、息子は気に入らないが…数十年経過、事故? ⑮不可解な理由 7点 肩たたきにあった元同僚に偶然出会った。いつか自分も?…上司からの呼び出しの朝(ワンパターン化しているかも) |
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| No.3 | 7点 | クリスティ再読 | 2025/11/22 20:46 |
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| 考えてみれば「特別料理」「九時から五時までの男」の短編集は両方ともおおまかに50年代に書かれた短編を集めた短編集になるわけだが、本書は「年一作主義」になってからの短編集だから、1963年から1978年までの15年間に書かれた短編が収録されている。本書以降には5本の短編があるが、雑誌「EQ」での紹介だけで書籍未収録作が多い。
だから作風も変化してきているな。エリンというといわゆる「異色作家」の中では異議なく「ミステリ作家」と言える人のわけで、正面から犯罪事件を扱っていることが多いわけだけども、「真相の解明」とはちょっと違うあたりでのオチがついている作品が多くなってもきている。そして短い作品が増えていく。最初の「エゼキエル・コーエンの犯罪」はナチ占領下のローマのユダヤ人ゲットーで、裏切り者の名を着せられて死んだ人物の死の真相を、冤罪をかけられて静養中の刑事が解明する中編。デテールの丁寧なエリンらしいミステリ。同様に「12番目の彫像」はイタリアでの映画撮影をめぐって悪名高いプロデューサーの失踪事件と死体の処理法の話。もうここらへんはしっかりしたミステリ短編で申し分なし。表題作「最後の一壜」となると、残っておらず名のみ高い伝説的な名作ワインの最後の一壜を購入した大金持ちによる「使い方」の話。これだと奇妙な味ミステリと呼ぶのがピッタリ。 「精算」は軍人の賭けをめぐる話でハードボイルドな雰囲気が出ているし、「警官アヴァディアンの不正」ともなるとかつて警官汚職をテーマにした「第八の地獄」を書いた人だよね、となるような...でもウィットのある意外な真相(苦笑)で好き。 最終2作は確かに殺人をめぐる話ではあるが、その周囲での人間模様にフォーカスが当たっている感覚。「内輪」は家族内部で疑われる「殺人」の効用みたいな皮肉な話。「不可解な理由」は...うん、最後に派手にぶっぱなしてます(苦笑)こういうオチを書くタイプじゃない気がしていたけど(笑) というわけで、エリンと言えばまず「丁寧」。推敲を重ねたリーダビリティの高さは最初から最後まで一貫している。異色作家というよりも「異能作家」と呼ぶべきだと思っている。 |
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| No.2 | 7点 | 雪 | 2019/06/30 07:56 |
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| そのワインは、1929年にサントアンの葡萄園でわずか40ダースだけが醸造されたという。今日ではそのすべてが失われ、多くの専門家が史上最高の名品であろうとしながら、誰ひとりとして現物を味わったこともなければ、ボトルを見たことすらなかった。その伝説のワイン、ニュイ・サントアンが、たった一本残っていた! 最後に残された至高の一壜をめぐる、皮肉で残酷きわまりない復讐劇とは・・・
1963年から1978年にかけて「エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン」に、ほぼ年一作ペースで掲載された作品を纏めた、エリンの第三短編集。約束された結末に向けた完璧な筋運びと、最後に立ち現れる女心の怖さで読ませる表題作がやはりマストですが、コクのある短編揃いでいくつかの佳作も含まれます。 次点は完璧にシステム化された悪意を描く「不可解な理由」。スケールは小さくなりますが、名作「ブレッシントン計画」の発想をさらに隠微に、綿密に推し進めたような作品。「内輪」と共に雑誌「EQ」初期に「ゆえ知らぬ暴発」の別題で掲載されました。あの号はこれがピカイチだったなあ。高い密度に加えて池央秋さんの翻訳が達者ですね。 続いて長めの「エゼキエレ・コーエンの犯罪」。濡れ衣を着せられて休職旅行中の警官が、戦時中のローマで起きたナチス殺害事件の謎を追う話。清廉で通っていたユダヤ人が仲間を売り、占領軍将校の金を持ち逃げした男として今に至るまで侮蔑されていますが、彼の汚名を雪ぐ過程で主人公が人間として揺るがぬものを掴み取るのが感動的。ただ尺が長い分短編としては若干緩いかな。本当は「内輪」がここに来るのかもしれませんが。 あとはギャンブル物の「拳銃よりも強い武器」。好みの「天国の片隅で」。先の二短編集ほどの出来映えではありませんが、いずれも熟成されたものばかり。充分に楽しめる一冊です。 |
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| No.1 | 6点 | 斎藤警部 | 2018/10/13 10:58 |
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| エゼキエレ・コーエンの犯罪/拳銃よりも強い武器/127番地の雪どけ/古風な女の死/12番目の彫像/最後の一壜/贋金つくり/画商の女/清算/壁のむこう側/警官アヴァカディアンの不正/天国の片隅で/世代の断絶/内輪/不可解な理由 (ハヤカワ・ミステリ)
有名な表題作を始め、洒脱なフレイヴァでシャープに魅せるピースが並びますが、私はむしろ重厚な味わいの「エゼキエレ・コーエンの犯罪」「12番目の彫像」が好きですね。特に後者は不思議な奥行きがあってスィヴィレます。展開がドタバタでうっかり笑ってしまう悲劇「不可解な理由」で〆るという悪だくみも素敵。 「最後の一壜」のオチは。。。ユルくて心動かず。もう一ひねり半できなかったものか。 でもいい寡作家さんです。 |
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