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[ サスペンス ]
鏡よ、鏡
スタンリイ・エリン 出版月: 1974年01月 平均: 5.80点 書評数: 5件

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早川書房
1974年01月

早川書房
1979年12月

No.5 4点 クリスティ再読 2018/12/22 22:05
いいか?これ。どうも評者はノレないなあ。
幻想的な内的独白、はまあいい。けどね、幻想だとそこに辻褄があるのかないのかが、ホント作者のさじ加減だけで決まっちゃうので、そこに謎を隠しても出来レースみたいにしか評者は感じないんだな。一時サイコスリラーの映画が流行った時に、登場人物の幻想をしっかり絵にしちゃって、評者は「だったら何でもアリじゃん?」とシラけたのと同じようなものだよ。反則だらけの大味なプロレスを見たような気分とでも言えばいいのか。
「信頼できない語り手」ってね、「だったらお前の言うことなんて信じる必要ないじゃん?」とならないようにする芸が必要なんだと思うよ。今回妙チクリンな精神分析まがいなのが嫌い。けどエロいなあ...成人指定である。要するにスエーデン、ていうとポルノだった時代だね。

No.4 7点 mini 2016/12/31 10:21
* 私的読書テーマ”生誕100周年作家を漁る”

今年は異色短編作家とB級スパイ小説作家の当たり年で、ダールとエリンという異色短編の2大巨頭が揃い踏みだった
第1弾はエリンから始まったが、年末を締めくくるのもエリンにしよう
”生誕100周年作家を漁る”、第1弾スタンリイ・エリンの4冊目

エリンは長編も結構数多く書いているが、やはりエリンと言えば短編でしょう
ところがね、エリンに関してはある不思議な読者層が存在するんですよ
エリンの長編での最高傑作の1つなのはMWA賞も取った「第八の地獄」だと思うけど、この作はハードボイルド色が強いのがおそらく理由なのだろうけど案外と読まれていない、ハードボイルドというだけで敬遠する読者って居るからね
そうなるとエリンの本領の短編分野となるわけで、まずは短編集『特別料理』から読むのが王道でしょう
ところがね、一部に短編も全く読まず、長編の中で唯一特定の1作しか読んでいないという読者層が存在するんですよ
私はその手の読者層が大嫌いなのだけれどね
でその特定の1作とは、それが「鏡よ、鏡」、つまりそういう読まれ方をする作なのですよ
エリンは「鏡よ、鏡」しか読んでないという読者は、十中八九エリンという作家自体に興味はないのだと思う
興味有るのだったら普通は『特別料理』にまず手を出すでしょ
じゃあ何故「鏡よ、鏡」にだけは手を出したのか?
多分だがその手の読者は、叙述トリックサスペンスものを漁っているんですよ、きっと、そして何かで「鏡よ、鏡」の噂を聞いて手を出したに違いないんだ
エリン作品で「鏡よ、鏡」だけしか読んでいないという読者の多くはこのパターンだと思っていいんじゃないかな
私がその手の読者層が大嫌いな理由は、つまりエリンという作家自体には全く興味が無く、ハードボイルドにも興味が無く、ただ叙述トリックものという観点だけの興味で探しているからである

たださ、じゃあ「鏡よ、鏡」がエリンの中で異色作かって言うと、結構エリンらしい作ではあるんだよね(笑)
エリンの短編分野での代表作の1つ、「パーティの夜」でもやってるからね、叙述
数多い異色短編作家の中でもエリンは技巧派だからねえ
でもエリンのよいこところは、技巧派でありながら話の展開に重厚感が有るところで、決して軽妙一辺倒にならないんだよね
今年の書評がエリンで始まりエリンで締めくくれたのは良かった、来年の”生誕100周年作家”はどんな顔触れになるのだろうか

No.3 5点 nukkam 2016/05/08 02:44
(ネタバレなしです) 米国のスタンリイ・エリン(1916-1986)はジャンル的にはサスペンス小説の書き手、「奇妙な味」のミステリーの書き手として有名です。1972年出版の本書はエリン唯一の本格派推理小説とも言われていますが、クリスティーやカーやクイーンのような本格派を期待してはいけません。物語は「わたし」の視点で描かれていて、この一人称形式というのは本来なら読者が一番感情移入しやすいはずなのに、読むほどに読者は眩暈を感じるでしょう。まるで悪夢か幻想の中のような物語は最後には衝撃的結末へとなだれこみます。そして謎は全て解かれます。犯人も、どうやって誰も入れないはずのアパートに死体が転がっていたのかも、女の素性も、そして不思議なメッセージの意味も。そういう意味では本格派の要素もありますが、謎が解けても悪夢は終わりません。

No.2 6点 蟷螂の斧 2015/08/20 09:37
全篇、独白が続くのですが、これが実に悩ましい。時系列がバラバラであり、現実とは思えない裁判が開かれたりと、精神的に病んでいるかのような独白です。性的な問題を中心に独白者の人格が徐々に露わになっていくという展開です。その点では読者を選ぶ作品かも?。ラストのどんでん返しや、題名の意味、意味不明の伝言の解明など佳作にふさわしい点は多々あるのですが、読後、ちょっとアンフェアかな?と思ってしまったのでこの点数にしておきます。

No.1 7点 kanamori 2015/06/02 18:07
〈わたし〉が自宅の浴室で目にしたものは、拳銃で撃たれて半裸で横たわる”見知らぬ女”だった。しかも部屋の鍵を持っているのは〈わたし〉と息子のニックだけ。精神分析医エルンスト博士と弁護士ゴールドが主導する”あべこべの裁判”での尋問によって、錯綜する過去と現在のエピソードから戦慄の真実が現れる--------。

本書はビル・バリンジャー「歯と爪」などと同様、米ランダムハウス社の初出では、”途中まで読んで面白くなければ代金を返却します”という、結末部分が帯封された返金保証付で出版されました。30年以上前に読んだ時はあまり良い印象はなく、日本で同じことをやっていれば、かなりの返金請求に見舞われたのでは?と思ったものですw が、再読してみると思っていた以上に面白かったです。
出版社に勤める〈わたし〉ピ-トは精神科医にかかっており、いわゆる”信頼のおけない語り手”で、現場の浴室には大勢の人物がいる描写があったり、いきなり状況があいまいな裁判シーンに移行し、その中で精神科医が裁判長になっているなど、書いていることが素直に受け入れられない、読者を困惑させるような前衛的な構成手法はかなり読み手を選ぶことは確かでしょう。
しかし、これらの不可解な謎が一気に氷解する結末はやはり見事です。ネタバレになるけれど、ピートの特殊な嗜好や、ユダヤ系の学校に通う息子、家政婦の謎の伝言などの多くの伏線に加え、読み終えて意味がわかるタイトルが秀逸。ちなみに、本作は殊能将之が選ぶ変態本格ミステリ・ベスト5の一冊でもありますw


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スタンリイ・エリン
2005年01月
最後の一壜
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