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nukkamさん
平均点: 5.44点 書評数: 2808件

プロフィール高評価と近い人 | 書評 | おすすめ

No.2808 5点 伊集院大介の新冒険- 栗本薫 2024/10/17 12:37
(ネタバレなしです) 1994年発表の伊集院大介シリーズ第3短編集で、シリーズ短編を7作収めています。タイトルから「伊集院大介の冒険」(1984年)と比較したくなりますが、推理による謎解きという点では残念な作品が増えてしまいました。「ごく平凡な殺人」の中で伊集院が自分のことを「新聞で殺人事件の記事を読んだだけで、僕にはどういうわけか、まるでテレパシーか透視能力者みたいに、たいていの殺人事件の真相(中略)がわかってしまうんだ」と語っていますがこれで解決では本格派推理小説としては問題作で、どうやって真相を見抜いたのかの説明が不十分では読者の不満が増すでしょう。その代わりではないでしょうが、本書の作品の多くは事件の背景にある秘密とそれが招いた殺人と言う悲劇性を強調し、伊集院は被害者だけでなく時に加害者への同情も示します。2000年代の長編作品でもこの手法は目立っており、さすがに長編だと謎解きの弱さが気になってしまいますが本書は短編なのでまあ個人的には許容範囲かなと思います。ちなみに「ごく平凡な殺人」は本書の中では推理にも配慮されている作品です。

No.2807 5点 雪山書店と嘘つきな死体- アン・クレア 2024/10/15 22:47
(ネタバレなしです) アメリカの女性作家アン・クレアが2022年に発表したクリスティ書店の事件簿シリーズ第1作のコージー派の本格派推理小説です。創元推理文庫版では本書で小説家デビューと紹介されていますがこれはアン・クレア名義に限った話で、別名義で2015年から何作かのミステリーを出版しています。血縁関係があるかは不明ながら偉大なるアガサ・クリスティを親族同然に愛してやまないエリー・クリスティを主人公とし、クリスティ一族が経営する書店の看板猫の名前がアガサと確信犯的にアガサ・クリスティを意識した作品です。但し謎の盛り上げ方には不満があり、失踪した人物(容疑者でもありますが)の行方を追いかけたり、無実の人間(とエリーが思っている)が罪を着せられそうになっているのを助けようとしたりと脇道にそれるとまでは言わないまでも犯人当てプロットとしては少し冗長に感じます。分量が500ページもあるし人物関係も複雑で誰が誰だか何度も登場人物リストをチェックしました。終盤の解決場面はなかなか劇的で、ミスリードの手法に技巧を感じさせます。

No.2806 5点 壁から死体?- ジジ・パンディアン 2024/10/10 21:42
(ネタバレなしです) アメリカの女性作家ジジ・パンディアン(1975年生まれ)は2012年に作家デビューし(2013年と紹介している文献もあり)、既に2つのミステリーシリーズを書いていますが第3のシリーズである<秘密の階段建築社>の事件簿シリーズの第1作が2022年発表の本書です。ファンタジー小説系かと思わせるシリーズ名ですが本格派推理小説系です。何人もの先祖が怪死したり失踪したりしているマジシャン一族の末裔である元イリュージョニストのテンペスト・ラージが主人公で、壁の中に埋められた死体という風変わりな不可能犯罪の謎解きに挑みます。もっとも被害者が自分の代わりに殺されたのではと思いこんだり、幽霊らしきものに悩まされたり、ラージ家の呪いではと神経質になったりと探偵役としてなかなか推理に専念できないところが本格派のプロットとしてはまわりくどいです。それでも第3部になるとようやく謎解きが前進しますが、トリック解明はともかく犯人当てとしてこの真相は唐突過ぎる解決と思います。一族にまつわる過去の事件についても謎が中途半端に放り出されてしまっているように感じました。

No.2805 5点 恋の森殺人事件- 岩崎正吾 2024/10/07 03:02
(ネタバレなしです) 田園派ミステリーとして書かれた「風よ、緑よ、故郷よ」(1988年)が好評だったのか、1989年に同じ主人公(刈谷正雄)を登場させた続編の本書が発表されました。前作でも山の描写がありましたが本書は舞台が山と言っても差し支えなく、その代わり田園派ミステリーとは言い難いように思います。野猿公園で野外観察授業中の高校生が2人銃撃されて負傷する事件が発生し、さらに第2の銃撃事件が起きます。両方の事件を目撃した正雄がアマチュア探偵として事件を捜査します。推理によって謎解きしている本格派推理小説で手掛かり伏線をしっかり用意してはいるのですが、それでもこのまさかの真相には納得できない読者が多いのではと思います。まあ怪作ですね。警察に協力しつつもかなりのマイペースを押し通して署長をいらだたせる正雄の態度も読者が共感できるかは微妙なところです。

No.2804 5点 冥王の花嫁- 奥田哲也 2024/10/02 21:06
(ネタバレなしです) 1998年発表の本格派推理小説とホラー小説のジャンルミックスタイプです。首を切断され、その首を腹部に埋め込まれるという猟奇的殺人が連続します。それほど描写が生々しくないのは個人的にはありがたいですが、ホラー好きの読者にとっては微妙な評価になるかもしれません。「死者たち」というタイトルの章が複数挿入され、被害者も含めた女性たちが描かれますが誰が誰だかわかりにくく、登場人物リストを作って読むことを勧めます。真相はかなりの衝撃があって印象に残りますが、終盤以外が謎解きもサスペンスもあまり盛り上がりません。

No.2803 5点 殺人は夕礼拝の前に- リチャード・コールズ 2024/09/28 19:39
(ネタバレなしです) 英国のリチャード・コールズ(1962年生まれ)は英国国教会の司祭でラジオパソナリティー、ミュージシャンと多方面で活躍しています。作家としても自伝やノンフィクションを発表しているようですが、初のフィクション作品が2022年発表の本格派推理小説である本書で、主人公はやはり英国国教会の司祭であるダニエル・クレメントです。舞台は1988年の英国の村で、約500年前に建てられた教会に初めてのトイレを設置したいとダニエルが訴えますが反対する村人もいて不穏な雰囲気が漂い始めます。ミステリーの出だしとしては悪くありませんが殺人事件の被害者とトイレ問題との結びつきが弱く、また家族から「礼節がすぎて、争いを恐れて遠慮しすぎ」と評価されているダニエルが探偵役としてあまり積極的でないようにも映り、謎解きプロットが間延びしているように感じました(ダニエルより家族の方がよほど個性的です)。それなりに謎解き説明されてはいますがどうやって犯人を特定したかについては推理が弱いように感じました。ひねった動機は印象的ですが時代背景に関わるところがあるので、どれだけの読者がなるほどと得心できるか微妙な気がします。

No.2802 6点 奈良-紀州殺人周遊ルート- 高柳芳夫 2024/09/23 18:53
(ネタバレなしです) 1988年発表の朝見大介シリーズ第2作の本格派推理小説です。プロローグでアイドル歌手がビルから墜落死し、警察は自殺と判断します。次章では背景が変わり、朝見の書いた推理小説が映画化されることになりロケに立ち会うことになりますが彼の目前で女優が胸を刺した短剣が小道具でなく本物だったという事件が起き、その後も朝見の作品を模倣したような事件が連続します。朝見作品の粗筋は第4章で紹介されますが、作品のトリックでは説明できない謎もあって事件は紛糾します。外交官出身の作者が芸能界の闇をテーマにするという試みをどう評価するかで悩みました。当時の芸能界スキャンダルを参考にしているようですが週刊誌の憶測記事と大差ないようにも感じますし、通俗色が濃いのも読者の好き嫌いは分かれそうです。謎解きはしっかりしており、トリックは小手先レベルの積み重ねですが犯人を追い詰める逆転推理はなかなかよく考えられていると思います。

No.2801 5点 魔術の殺人- アガサ・クリスティー 2024/09/19 09:05
(ネタバレなしです) 1952年発表のミス・マープルシリーズ第5作の本格派推理小説です。英語原題は「They Do It With Mirrors」です。ミス・マープルが何度か魔術について言及してはいますけど劇的どころか非常に地味な展開の作品です。青い車さんのご講評通り、タイトルに期待するとがっかりすると思います。登場人物がやたら多く、それでいて十分に描き分けがされていないので誰が誰だかなかなか理解できませんでした。クリスティ再読さんや了然和尚さんがご講評で某国内作家の作品を連想されていますが、私はクリスティー自身の1930年代の某作品を思い起こしました。クリスティー最盛期に書かれたその作品と比べると本書は劣化コピーみたいに感じられてしまいます。

No.2800 7点 方舟- 夕木春央 2024/09/16 05:54
(ネタバレなしです) 作者にとって第3長編作品となる2022年発表の本書を私は講談社文庫版(2024年)で読みましたが、「各方面から激賞を受ける」と評価されているのも納得の本格派推理小説です。フィナーレでこれほど劇的効果を上げた作品は某国内作家の(やはり第3長編の)1967年発表の本格派推理小説が匹敵するぐらいではないでしょうか。極限状況下という舞台と論理性豊かな謎解きを巧妙に組み合わせています。巻末解説を書いた有栖川有栖でなくとも色々と感想を語りたくなるような作品です。

No.2799 7点 死はすぐそばに- アンソニー・ホロヴィッツ 2024/09/10 16:59
(ネタバレなしです) 2024年発表のダニエル・ホーソーンシリーズ第5作の本格派推理小説です。これまでのシリーズ作品はホーソーンとワトソン役のホロヴィッツ(トニー)の探偵コンビによる(時に対立しながらも)捜査と推理を描いていましたが本書は大きく前提条件を変更しました。作中時代は2019年、ホーソーンとトニーが出会う前の殺人事件の謎解きです。トニーに代えてジョン・ダドリーという男がホーソーンの探偵パートナーです。明らかにトニーより優秀なのですが、名探偵の引き立て役としては物足りません(単なるワトソン役でない、ある重要な役割が与えられているのですが)。第八部「真相」でのホーソーンの推理説明が実に素晴らしく、様々な手掛かりを組み立てて事件を再構築する場面は謎解きのスリルに溢れています。しかしここからの捻り方が非常に独創的で、知的バトルが思わぬ決着になります。印象的な締め括りではありますがどこかすっきり感を欠いたようなところがあり、読者の評価が分かれるかもしれません。

No.2798 6点 アリバイ崩し承ります- 大山誠一郎 2024/09/09 02:16
(ネタバレなしです) 2018年発表の美谷時乃シリーズ第1短編集で、7作のアリバイ崩し本格派推理小説を収めています。「アリバイ崩し承ります」という貼り紙のある時計店の女性主人がアリバイを崩せずに困っている刑事から話を聞いて事件を解決するという安楽椅子探偵ものです。アリバイ崩しは難解で読みにくいという印象がありますが本書の作品はどれも読み易いです。トリックは大掛かりなものはなく、「時計屋探偵とダウンロードのアリバイ」の珍しいアリバイもトリックは結構アナログです。ちょっとした不自然な言動が手掛かりになる「時計屋探偵と死者のアリバイ」と犯人当て要素もある「時計屋探偵と山荘のアリバイ」が個人的には印象に残りましたが、犯罪のない「時計屋探偵とお祖父さんのアリバイ」のゲーム的な雰囲気も悪くありません。

No.2797 6点 真っ暗な夜明け- 氷川透 2024/09/08 13:46
(ネタバレなしです) 覆面作家の氷川透のデビュー作である2000年発表の本格派推理小説です。作者名と同じ名前の主人公を使っていること、「読者への挑戦状」が挿入され、論理を重視した謎解きであることはエラリー・クイーンを連想させます。活躍時期は大変短く、2006年以降は作品を発表していません。エラリー・クイーンがバーナビー・ロス名義を使ったように別名義で活動しているかもしれませんが。論理を重視し過ぎて説明が回りくどかったり屁理屈に感じられる時もありますが全般的には読み易いです。人物描写や物語性はほとんど配慮されず、典型的なパスル・ミステリーですが最終章では人間ドラマを描いています。あらゆる可能性を丁寧に検証するあまり(直接描写でないとはいえ)エロネタやトイレネタにまで踏み込んでいるのは読者の好き嫌いが分かれそうです。キワモノ系が有利とされる某ミステリー賞をガチ本格派の本書が受賞していたのは意外でした。

No.2796 5点 白薔薇殺人事件- クリスティン・ペリン 2024/09/07 01:51
(ネタバレなしです) アメリカ出身で英国に移住した女性作家クリスティン・ペリンが2024年に発表した本格派推理小説です。英語原題は「How To Solve Your Own Murder」で、こちらの方が創元推理文庫版の日本語タイトルよりも内容に合っているとは思いますが魅力的なタイトルとは言い難いですね。約60年前に殺されると予言された大叔母のフランシスが怪死します。主人公のアナベルがこの事件を調べていくことになる一方で、予言を信じていたフランシスが殺された場合に備えて周囲の人間の言動を記録した日記を読むことになるという展開になります。児童書の書き手として活躍していた作者の初めての大人向け作品だからでしょうか、人物描写と複雑な人間関係の構築に随分と力を入れています。巻末解説での「人間模様の丁寧な描写の中に伏線を張り巡らせる」という評価はその通りであるとは思いますが重厚な人間ドラマの中に謎解きの面白さが埋没気味で、せっかく手掛かりを説明されてもそんなのどこにあったかなと微妙にすっきりできませんでした。

No.2795 4点 悪魔の見習い修道士- エリス・ピーターズ 2024/09/04 23:36
(ネタバレなしです) 1983年発表の修道士カドフェルシリーズ第8作の本格派推理小説です。作中時代は1140年9月、荘園主の息子メリエットをシュルーズベリ修道院で見習い修道士と預かるところから物語が始まります。このメリエットが一刻も早く修道士になりたいと焦りにも似た態度を示すこと、そして就寝中にうなされてうめき声を発して周囲から恐れられるようになることが前半の謎と言えるのですが、個人的にはどうでもいい謎にしか感じられませんでした。中盤になって死体が登場してからようやくミステリーらしくなり、終盤には劇的な展開もあって人間ドラマも盛り上がりますが前半を抑えすぎですね。カドフェルも探偵役としては物足りず、証言頼りでの解決です。

No.2794 6点 殺人連結のささやき- 長井彬 2024/08/31 20:27
(ネタバレなしです) 1988年発表の本格派推理小説です。離婚調停中の妻が殺され、最有力容疑者の夫にはアリバイが成立します。しかしこれでアリバイ崩しには安易に走らず、ユニークな謎解きプロットが用意されています。事件前にも事件後にも事件関係者が不思議な行動をとっていてこれが探偵役を大いに悩ませ、ややもすると殺人事件のことを忘れてしまいそうです。最終章の1つ前の第9章で13の謎がまだ残っていますが、かなりの謎がなぜそんな行動をとったのかです。最終章で事件解決後に「せつないか、こわいか」についての議論がありますけど、うかつに答えると炎上しかねない議論なので結論を曖昧にしたままにしたのは正解でしょう(笑)。

No.2793 6点 病院殺人事件- ナイオ・マーシュ 2024/08/31 17:01
(ネタバレなしです) 1935年発表のロデリック・アレンシリーズ第3作の本格派推理小説で、国内では別冊宝石68号(1957年)に掲載されました(ロダリック・アリーンと表記されています)。江戸川乱歩による小伝でヘンリイ・ジェレット(1872-1948)との共作であることが紹介されており、英語表記の作者名は「Ngaio marsh & Henry Jellett」(mが小文字なのはご愛敬)となっているのですが日本語表記はなぜかナイオ・マーシュのみでした。ジェレットはマーシュの父親の友人の医師で、病気になったマーシュの治療を担当しマーシュから「Papa Jellett」と呼ばれるほどの交流があったそうです。本書での手術中の医者や看護師たちの動きの描写や薬品の知識に関する助言を与えたのではと思われます。議会で倒れた内務大臣が病院で手術を受けますが術後に死んでしまいます。他殺を主張する未亡人の求めで検視審問が開かれ、過量に使用すると危険な薬品が過量に投与されていることがわかります。派手な展開はありませんが、第14章でどのように殺害したのか様々な可能性を丁寧に検証されるなど謎解きは充実しており、古い翻訳ながらそれほど読みにくくありませんでした。解決の説得力はやや微妙な出来栄えで、特に動機に関する「狂人の論理」は話が唐突過ぎて唖然としました。余談になりますが本国でも再版時に作者名がマーシュのみ表記になってジェレットが不遇な扱いを受けることがあったらしいです(笑)。

No.2792 5点 殺人名画- 西東登 2024/08/28 11:23
(ネタバレなしです) 1975年発表の毛呂周平シリーズ第4作です(シリーズ最終作)。この作者については私は本書以前に2作品しか読んでおらず、その2作とも私の好きな本格派推理小説ではなかったのでますます敬遠していたのですが本書の青樹社版は「書き下し本格推理」と宣伝されていたので読んでみました。失踪事件の調査に始まり殺人事件に発展するという、いかにも私立探偵ものらしいプロットです。犯人当てとしては他愛もなく(有力容疑者数も少ない)、全17章の第11章で毛呂は犯人の見当がついています。謎解きとして特別なものは感じませんでしたが、関係なさそうな事件と殺人事件を有機的に組み合わせる手法は手堅く、解決はすっきりできました。犬がちょっとだけ登場しているものの、この程度では作者のトレードマークである動物ミステリーとは言えないと思います。

No.2791 5点 楽園の骨- アーロン・エルキンズ 2024/08/28 11:09
(ネタバレなしです) 1997年発表のギデオン・オリヴァーシリーズ第9作の本格派推理小説で、英語原題は「Twenty Blue Devils」ですが別にオカルト要素はありません。「Blue Devlis」はコーヒーのブランド名です。今回の舞台はタヒチで、ギデオンの友人であるジョン・ロウの親族の怪死事件を調べることになります。とはいえ外国なのでジョン・ロウがFBI捜査官であっても地元警察に捜査を強要するのは無理があり、ギデオンも及び腰で前半はなかなか謎解きが進みません。後半になってやっとスケルトン探偵ならではの活躍が見られて殺人事件の捜査に切り替わりますが、他にも色々な小事件や秘密が見え隠れしています。最後は全ての真相が明らかになりますが、推理説明で解決しているものと結果報告のみとが混在しているので本格派としてはどこか中途半端な印象が残りました。

No.2790 6点 疑惑の渦- 左右田謙 2024/08/25 06:07
(ネタバレなしです) 1978年発表の本格派推理小説で、後年には「一本の万年筆」に改題されました。県立高等学校の女性教師が殺され、現場には「M・K」という頭文字が彫られた万年筆が落ちていました。しかし所有者には鉄壁のアリバイがあり、万年筆は紛失したと主張されるというプロットです。登場人物が少なくて犯人は予想しやすいと思いますしトリックも大したものではありませんが、容疑者であることを自認してびくつく教頭、アマチュア探偵として事件を調査する生徒、刑事など登場人物の視点が次々に替わる展開が効果的ですらすらと読めました。最後の刑事の質問に対する犯人の回答がどれだけ読者の共感を得れるかは微妙ですね。

No.2789 6点 カレンダー・ガール- E・S・ガードナー 2024/08/25 05:52
(ネタバレなしです) 1958年発表のぺりー・メイスンシリーズ第57作の本格派推理小説です。殺人事件があった(と思われる)時にメイスンの依頼人が殺人現場を訪問していたというパターン自体はありきたりですが、そこにちょっとした出来事(今回は車の接触事故)を絡ませて謎を複雑化させているのが本書の工夫です。法廷での逆転劇もいつものパターンかと思わせて更にもうひとひねりしているのも効果的でした。

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nukkamさん
ひとこと
ミステリーを読むようになったのは1970年代後半から。読むのはほとんど本格派一筋で、アガサ・クリスティーとジョン・ディクスン・カーは今でも別格の存在です。
好きな作家
アガサ・クリスティー、ジョン・ディクスン・カー、E・S・ガードナー
採点傾向
平均点: 5.44点   採点数: 2808件
採点の多い作家(TOP10)
E・S・ガードナー(80)
アガサ・クリスティー(57)
ジョン・ディクスン・カー(44)
エラリイ・クイーン(42)
F・W・クロフツ(31)
A・A・フェア(28)
レックス・スタウト(26)
カーター・ディクスン(24)
ローラ・チャイルズ(24)
横溝正史(23)