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nukkamさん
平均点: 5.44点 書評数: 2962件

プロフィール高評価と近い人 | 書評 | おすすめ

No.2962 5点 仮面劇場の殺人- ジョン・ディクスン・カー 2026/07/17 21:06
(ネタバレなしです) 1966年発表のフェル博士シリーズ第22作の本格派推理小説で、イギリスからニューヨークへ向かう客船、37年前に劇の上演中に舞台で俳優が急死した劇場、そして最後は雷雨の遊園地と映像化したら見応えありそうな舞台が用意されています。事件も準密室状態のボックス席で(本書の英語原題は「Panic in Box C」です)鉄の矢で背中を貫かれての殺人、容疑者たちはアリバイあり(劇場の見取り図はほしかったですね)と凝った謎づくり、歴史の蘊蓄や第13章でのどんちゃん騒ぎもまたこの作者ならではの個性です。しかし会話が回りくどかったり、話の途中で腰を折られる場面が多くて読みにくいのが残念です。最終章のフェル博士の推理説明での「的外れのカード」は余計なミスリードだったと思いますし、空さんのご講評で指摘されているようにアリバイトリックも残念レベルだと思います(フェル博士が「そう、いや、ちがう」と苦しい言い訳)。殺害トリックが旧作トリックの使い回しなのは犯行状況を変えるなどの工夫で欠点とまでは思いませんけど。余談ですが序盤に「囁く影」(1946年)の後日談が語られていますが、まさかの内容の後日談でした。

No.2961 5点 歌人探偵定家- 羽生飛鳥 2026/07/16 19:56
(ネタバレなしです) 平家物語推理抄シリーズでミステリーデビューした作者が2024年に発表した新シリーズの短編集(5作の短編を収めています)で、藤原定家を名探偵役にして平家物語推理抄で名探偵役だった平頼盛の息子の平保盛をワトソン役にしています。作中時代は1186年から1187年にかけてで平頼盛は既に世を去り、源平の争乱は終息したものの盗賊や放火などまだまだ平穏とは程遠い荒れた世界です。作者あとがきで藤原定家や百人一首が好きな読者は当時の文化風俗を、本格ミステリが好きな読者はバラバラ殺人、密室からの人物消失、見立て殺人、火事の出火原因、連続殺人の各種謎を楽しめるよう趣向を凝らしておりますと紹介しています。文学歴史に弱い私は後者を楽しみました。時代知識が必要な謎解きもあって読者が自力で真相を見抜くのは難しいと思いますが、説明は非常に丁寧でわかりやすいです。病弱の身ながら和歌を汚す行為にはたけり狂う定家のエキセントリックぶりが印象的です。

No.2960 6点 彼女たちの謎解きの夜- ニーナ・サイモン 2026/07/12 05:54
(ネタバレなしです) 様々な職歴を経た米国のニーナ・サイモンのミステリーデビュー作が2023年発表の本書です。創元推理文庫版の巻末解説で紹介されているように家族ドラマと本格派推理小説を主軸としています。文章はとても上手く、人物描写はきめ細かいし序盤のカヤックツアー描写は臨場感があります。500ページ以上の作品にしては読みやすいと評価するか、500ページ以上あって読むのに苦労したと評価するか微妙なところです。主人公である祖母ラナ(57歳)、母(娘)ベス(17歳で妊娠したと語られるので33歳か)、孫娘ジャック(ジャクリーン)(15歳)が織り成す家族ドラマは前半が一枚岩でないこともあって読み応えたっぷりです。エネルギッシュなファイタータイプながらガン治療の影響で時々衰弱してしまうラナの描写が印象的です。謎解きも潮の満ち引きによる死体の移動(地図は欲しかった)や、土地の権利を巡る駆け引きや思惑など結構手の込んだネタを放り込んでいますが犯人特定の推理が少し回りくどい感があります。

No.2959 5点 鳴き竜殺人事件- 草野唯雄 2026/07/08 19:16
(ネタバレなしです) 1972年発表の本格派推理小説です。竜の絵が描かれた天井の下で柏手(かしわで)を打つと竜が鳴くような音が響く「鳴き竜」で知られる薬師堂が焼失し、その復元に関する研究記録が随所で挿入されているのが異色ですが、犯罪の方は女子大生暴行殺人に容疑者の怪死事件と通俗的です。27年前の1945年の戦争末期の軍隊で起きた殺人事件が回想されたり時には組織犯罪的な事件が起きるなど予想を超える展開を見せ、巧妙なミスリーディングやとんでもないトリックが使われるなどアイデアは豊富です。説明は丁寧ながらかなり強引さを感じさせる謎解きではありますけど、それもこの作者らしいです。

No.2958 5点 イスタンブールの殺人- エリカ・ルース・ノイバウアー 2026/07/08 09:15
(ネタバレなしです) 2023年発表のジェーン・ヴンダリーシリーズ第4作です。アメリカ人のジェーンが過去作品でエジプト、イギリスと続いた旅もようやく終わって帰郷と思ったら、多額の借金を抱えて失踪した父ヘンリーを探しにトルコへ行く羽目になります。ヘンリーはスレイマン大帝にまつわる秘宝をさがしているらしく、手掛かりを求めるジェーンとレドヴァースの前に怪しい人物がぞろぞろ登場する冒険スリラーです。父の安否を危惧するジェーンの乱れる心理描写がよく描かれており、サスペンスを盛り上げます。トルコの旅情描写も抜かりありません。

No.2957 5点 コンピューター殺人事件- 藤村正太 2026/07/07 15:38
(ネタバレなしです) 1971年発表の社会派推理小説と本格派推理小説のジャンルミックスタイプで、私の読んだ講談社文庫版の山村正夫による巻末解説では「数ある代表作中でも、いまなお随一に挙げ得る力作として世評に高い」と激賞しています。コンピューター導入のシステム化を巡って推進派と反対派が対立する企業で起きた殺人事件というプロット設定はいかにもな社会派で、当時としてはモダンだったと思います。半世紀以上前の作品ならではの古さを感じさせる部分もありますけど第8章での合理化を巡る議論や第12章でのコンピューター公害に関する意見などは現代の読者でも共感するところがあるかも。本格派としてはアリバイ崩しと犯人特定を両立させた謎解きが特徴です。第1の事件ではやや専門的ながら印象的な小道具が使われています。一方で第2の事件のアリバイは証人の勘違いに頼って成立させているような危うさが気になりました。

No.2956 6点 楽員に弔花を- ナイオ・マーシュ 2026/07/04 10:59
(ネタバレなしです) 1949年発表のロデリック・アレンシリーズ第15作の本格派推理小説です。ジャズ・バンドの演奏会で奏者に向かって空砲で銃撃し、曲が葬送行進曲に切り替わり、倒れた奏者を担架で運び出すという演出が企画されます。ところがこれが殺人事件に発展します。個性的な登場人物、機会・手段・動機の丁寧な捜査、巧妙なミスリーディング、人並由真さんのご講評でも指摘されているように読みやすいストーリー展開と作品としての完成度はなかなかのものだと思います。もっとも殺人手段についてのアレンの説明を読むとそれって本来は初期捜査段階で明らかになっていないとおかしいのではと気にはなりましたが。

No.2955 6点 狂骨の夢- 京極夏彦 2026/07/03 10:10
(ネタバレなしです) 1995年発表の百鬼夜行シリーズ第3作の本格派推理小説で、講談社文庫版で950ページを超します(全3巻の分冊文庫版もあります)。「何度も妻に殺されては復活する夫」という事件が記憶のあやふやな証言で語られたり、時系列が逆転してどくろに肉がつき生首になる怪現象が起きたらしいなど非常に幻想性の強い作品です。妖怪要素はそれほど濃厚ではありませんが、宗教要素、哲学要素、神話要素が濃厚です。巻末解説を山田正紀が書いていて、このシリーズは一般には幻想的な探偵小説と解されているが実ははなはだしいまでにリアルと主張しています。そして探偵小説にリアリティを持ち込んだ作家として松本清張を紹介していますが、京極夏彦は清張とは異なるリアリティを持ち込んだと評価しています。この解説も私には難解でよく理解できませんけど、本書での幻想を解き明かして真相に導く京極堂の推理は圧巻です。

No.2954 5点 公爵さま、謎解きディナーです- リン・メッシーナ 2026/07/03 03:34
(ネタバレなしです) 2020年発表のベアトリス・ハイドクレアシリーズ第7作のコージー派の本格派推理小説です。「公爵さま、執事には負けません」(2020年)の事件でベアトリスが切られた首を調べていたと新聞記事になってしまいます(実際は死体は片付けられていて触れてもいないのですが)。公爵夫人としての面目を保つために謎解きディナーパーティーを開催するという流れになりますが、そこで本当に殺人事件が発生します。早く帰ろうとする社交界でもトップクラスの貴族たちをベアトリスが阻止したところからがとても面白く、想像以上の批判と非難をあびながらの事情聴取がスリルにあふれています。余談になりますがコージーブックス版のカバーイラストのベアトリスのスプーンの持ち方が変です(どうでもいい指摘)。

No.2953 5点 龍臥亭幻想- 島田荘司 2026/07/03 02:49
(ネタバレなしです) 御手洗潔シリーズ番外編の「龍臥亭事件」(1996年)の続編として2004年に発表された本格派推理小説で、作中時代も「龍臥亭事件」の8年後の設定です。「龍臥亭事件」には及ばないものの本書も光文社文庫版で上下巻合せて750ページを超す大ヴォリュームです。前半は不思議な現象の謎はありますが犯罪性が希薄なためか盛り上がりに欠けた感がありますが、後半は巻き返します。あまりにも忍耐力を求めるトリックには唖然とさせられます。なお光文社文庫版の巻末解説で「ファン待望!御手洗潔と吉敷竹史の推理が、いま初めてクロスする!」と紹介されているので大きく期待される読者もいると思いますが活躍は極めて限定的なのでシリーズ番外編作品と評価すべきと思いますし、両者が邂逅するわけでもありません。「龍臥亭事件」と同じく主人公は石岡和己が務めます。

No.2952 5点 上流の一族でも- レックス・スタウト 2026/07/03 02:06
(ネタバレなしです) 1950年発表のネロ・ウルフシリーズ第13作で、アーノルド・ゼック三部作の最終作となった作品です。大富豪の夫人から7ヶ月も夫に金を渡していないのに以前よりも大金を使っているらしいので調べてほしいと依頼されたのがきっかけで殺人事件とゼックからの脅迫に直面することになります。第5章の終わりで衝撃の出来事があり、助手のアーチー・グッドウインがてんてこ舞いする展開が本書のセールスポイントになっています。反面、警察も手出しできないほどの犯罪組織の大物という三部作を通じての設定の割にはゼックとの決着場面はあっけなくて物足りませんが、ではアガサ・クリスティーの「ビッグ4」(1927年)みたいな派手派手な演出の方がよかったかというとそれも微妙ではあります。証拠が強力ではないようにも思えますが、きちんと推理で殺人事件を解決して本格派推理小説として着地しているのはよかったです。

No.2951 5点 天帝のはしたなき果実- 古野まほろ 2026/07/03 00:20
(ネタバレなしです) 新本格派推理小説の発展に力を注いだ編集者として知られる宇山日出臣(1944-2006)が最後に発掘した新人と言われる古野まほろのデビュー作が2007年発表の本書で、私の読んだ幻冬舎文庫版で750ページ近い大作です。裏表紙で「青春×SF×幻想の要素を織り込んだ」と紹介されていますが、SFらしさを感じさせたのは自然界に存在しない青いバラの栽培に成功したくだりぐらいでした。とはいえ作中時代は1990年秋ながら舞台は架空の「日本帝国」となっており、登場人物には貴族の子供がいます。冒頭で中井英夫の「虚無への供物」(1964年)が引用されていることからかなり癖のある作品かと思っていましたがその予想は当たりました。難解な用語多数、意味不明な会話も多くてとても読みにくいです。それでも事件が起きてからは謎解きにまともに取り組み、推理合戦や2度に渡る「読者への挑戦状」など本格派らしさを十分に楽しめました。しかし第4章での犯人との対決場面はまるで悪魔と天使のいる世界のようで、普通の本格派の枠組を超越しています。

No.2950 6点 水面の弔花- アン・クリーヴス 2026/06/23 10:57
(ネタバレなしです) 2007年発表のヴェラ・スタンホープ警部シリーズ第3作の本格派推理小説で、英語原題は「Hidden Depth」です。母親が自宅に帰って浴槽に沈んだ息子の死体を発見します。死体の周辺に花がばら撒かれているところはジューン・トムスンの「ローズマリーの追憶」(1988年)を彷彿させます。そして海辺でやはり花をばら撒かれた死体が新たに見つかりますが被害者同士の関連がわかりません。ヴェラだけでなく事件関係者たちの視点での心理描写も織り込まれ、人間関係に潜む秘密が少しずつ見えてくる展開は地味ですが終盤にはサスペンスを盛り上げる演出があります。真相はアガサ・クリスティーの某作品を連想させます。

No.2949 6点 ちぎれた鎖と光の切れ端- 荒木あかね 2026/06/12 17:49
(ネタバレなしです) SF設定本格派推理小説の「此の世の果ての殺人」(2022年)で作家デビューした荒木あかね(1998年生まれ)の第2作が2023年発表の本書で、講談社文庫版で550ページ近い大作です。二部構成となっており第一部では孤島を舞台にした連続殺人事件というアガサ・クリスティーの「そして誰もいなくなった」(1939年)や綾辻行人の「十角館の殺人」(1987年)を連想させつつも、殺人を企む男を語り手にしながら別人が殺人を犯していくという設定で読ませる本格派推理小説として楽しめます。第二部はその三年後、舞台も都会になり登場人物リストも第一部と総入れ替えになります。こちらは新たな語り手が無差別連続殺人事件の次の犠牲者になるかもしれないという巻き込まれ型サスペンススタイルで、物語が進むにつれ複雑な人間模様が明らかになっていく展開は社会派推理小説的でもあります。個人的にはこの第二部、本格派要素が薄まったことや重要人物が登場人物リストに載っていない点などは不満ですが、ジャンルミックス型が好きな読者ならむしろプラス評価するかもしれません。裏表紙の「伝統と革新が詰まった」という紹介はなるほどと思いました。余談ですが作中でアガサ・クリスティーの「ABC殺人事件」(1935年)のネタバレしてますがせめて作品名は伏せてほしかったです。「ネタバレしてもいいですか?」(中略)「わたしネタバレ全然平気」って自分勝手に進めないでほしかった(涙)。

No.2948 5点 シャーロック・ホームズは引退しました- ホリー・ヘップバーン 2026/06/09 07:48
(ネタバレなしです) フィールグッド(心温まる)小説の書き手として知られる英国の女性作家ホリー・ヘップバーンが初めて手掛けたミステリー作品が2024年発表の本書です。シャーロック・ホームズはあくまでもコナン・ドイルの小説の人物として扱われています(創元推理文庫版の巻末解説では「広義のパロディ」と解釈していますが)。ホームズの活躍拠点であるベイカー街221番地宛てにホームズへの相談や依頼の手紙が次々に送られたことは有名ですが、本書はそこに実在した住宅金融組合で手紙処理担当をしているハリエット(ハリー)・ホワイト(こちらはもちろん架空の人物)を主人公にしています。作中時代が1932年で、既にドイルも死去していますが巻末解説によるとホームズ宛ての手紙は現在でも送られてくるようです。ハリーがホームズの秘書を演じながら行方不明のメイドを捜査することになるのが本書のプロットです(英語原題は「The Missing Maid」)。捜査を助けてくれる人は登場しますけどアマチュア女性探偵としてのハリーの苦労が読みやすい文章でよく描かれていますし、メイドの行方が判明してから盛り上がる展開も巧みです。犯罪の黒幕が誰だったのかが説明不足に感じられるところがミステリーとしては物足りませんが、冤罪被害者の救済を優先させているところがフィールグッド小説らしいです。

No.2947 5点 二重殺人トライアングル- 由良三郎 2026/06/05 21:39
(ネタバレなしです) 1989年発表の本格派推理小説です。私は「偽装自殺の惨劇」に改題された光文社文庫版で読みましたが自殺かどうかの議論は後半になってからなので、旧題の方がよかったように思います。大学のロックバンドがステージでの演奏中に事件が起きるのですが、演奏描写が全く劇的でないところがこの作者らしいです(笑)。毒殺トリックは使われている薬物こそ異なりますが手段は某フランス作家の1970年代後半の本格派を連想させるものでしたし、鎖切断トリックは某国内作家の1980年代前半の本格派のトリックを連想させるものです。トリックの謎解きが中心の前半から犯人探しの謎解きの後半という展開となりますが、1940年代後半の某英国作家の本格派を連想させる大胆な真相と思わせてそこから更にどんでん返しを狙っていますけど結果的にありきたりの真相に落ち着いてしまったように感じました。

No.2946 5点 ブック・フェスティバルは大騒ぎ- E・C・ネヴィン 2026/06/05 03:04
(ネタバレなしです) 英国の女性作家E・C・ネヴィンはさまざまな職歴を経て作家デビュー、2025年発表の本書は売れないミステリ作家ジェイン・ヘップバーンを主人公にしたコージー派ミステリーのシリーズ第1作です。プロローグを死体発見の場面にしてその後は時間をさかのぼって殺人に至るまでを描いているのはジョアン・フルークのハンナ・スウェンソンシリーズをちょっと連想させます。本書の場合はその殺人もすぐに起きるのですけど。ジェインだけでなく容疑者たち視点も随所で織り込んでいるのが作品個性ですけど、読者の謎解き興味をかき立てるのには工夫がもう一歩という感じがします。さすがにアガサ・クリスティーの名作「そして誰もいなくなった」(1939年)の手法と比べるのはアンフェアでしょうけど。あと46章の終わりである謎(というか前提?)が明らかになるのですが、あれはもっと早く明らかになっていないとおかしいのではという気がします。

No.2945 5点 怪しい店- 有栖川有栖 2026/05/11 14:04
(ネタバレなしです) 2014年に発表された火村英生シリーズの中短編5作を収めて同年に単行本化されたシリーズ第15短編集です。倒叙本格派や日常の謎系もあり、全体的に小粒ですが作品の質は揃っているように思います。中編「古物の魔」では「辻褄が合う」で犯人扱いされてはかなわないと開き直る犯人に、論理的推理でないことを認めながらも自分の辻褄合わせは決定的な証拠にまっすぐつながっていると犯人を追いつめる火村が印象的です。変わり種の印象を受けたのが表題作の「怪しい店」で、ずばりその人物が犯人と(火村が)名指ししたわけではない解決となっています。この実験的な試みは読者の賛否両論かもしれませんが。

No.2944 4点 時計殺人事件- ルーファス・キング 2026/05/08 17:37
(ネタバレなしです) 米国のルーファス・キング(1893-1966)は1920年代後半から1930年代までは全11作のヴァルクール警部補シリーズの本格派推理小説が創作の中心を占め、1940年代からはサスペンス小説系の非シリーズ作品や短編ミステリーに力を入れたそうです。1929年発表の本書がシリーズ第1作です。英語原題は「Murder by the Clock」でジョン・ディクスン・カーの「死時計」(1935年)を連想する読者もいるかもしれませんが、拍子抜けすると言っていいほど時計に重要な役割が与えられていません。ヴァルクールが容疑者の1人から「人の心の中にありもしないことを見たり読み取ったりしている」と批判されていますが、そういう容疑者たちだって何を言っているのかよくわからないことしばしばで、とにかく会話がぎくしゃくしています。論創海外ミステリ版の巻末解説で二階堂黎人が意外性を誉めていますけど、こうも読みにくいと意外性以前に読者の謎解き意欲が削がれてしまうのではないでしょうか。

No.2943 5点 憎悪の化石- 鮎川哲也 2026/05/08 04:04
(ネタバレなしです) 1959年発表の鬼貫警部シリーズ第4作の本格派推理小説です。容疑者全員にアリバイが成立するのですが犯人の正体については見当がつきやすいと思います。ちょっとしたどんでん返しもありますが意外性は感じませんでした。犯人のアリバイトリックは意表をついたアイデアで印象に残りますが、マニアックな知識頼りなので読者の評価が分かれそうです。余談ですけど私の読んだ創元推理文庫版には作者ノート(1975年)が巻末に付いていますが、「近い将来もう一本の星影物を書く予定でいるけれど(「朱の絶筆」(1977年)のことですね)、私のホームグラウンドは何といっても鬼貫物であった」とアリバイ崩しの鬼貫警部シリーズが創作の中心であることを再認識しています。個人的には王道の犯人当て本格派の方が好きなので複雑な気持ちになりました。

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nukkamさん
ひとこと
ミステリーを読むようになったのは1970年代後半から。読むのはほとんど本格派一筋で、アガサ・クリスティーとジョン・ディクスン・カーは今でも別格の存在です。
好きな作家
アガサ・クリスティー、ジョン・ディクスン・カー、E・S・ガードナー、D・M・ディヴ...
採点傾向
平均点: 5.44点   採点数: 2962件
採点の多い作家(TOP10)
E・S・ガードナー(84)
アガサ・クリスティー(57)
ジョン・ディクスン・カー(45)
エラリイ・クイーン(43)
F・W・クロフツ(33)
レックス・スタウト(30)
A・A・フェア(28)
ローラ・チャイルズ(27)
カーター・ディクスン(24)
横溝正史(23)