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nukkamさん
平均点: 5.44点 書評数: 2934件

プロフィール高評価と近い人 | 書評 | おすすめ

No.2934 4点 ブレンド・ティーは死を占う- ローラ・チャイルズ 2026/03/02 23:48
(ネタバレなしです) 2025年発表のお茶と探偵シリーズ第27作のコージー派ミステリーです。映画の撮影中に殺人事件が起きます。死因が何と感電死というのが珍しく、容疑者の中で電気に詳しいのは誰だろうというセオドシアの着眼点はなかなかだと思いましたが、31章で明かされる真相はがっかりでした。15章でセオドシアが「(被害者の)殺され方は、アガサ・クリスティの密室殺人の謎を彷彿させます」と語っていたので、期待して損した気分です(笑)。洗練された文章による舞台やお茶会の描写は相変わらずでいかにもコージー派な雰囲気が濃厚ですが、一方このシリーズとしてはかなりスリラー要素があります。27章でセオドシアが「やみくもにいろいろためしているだけ」と言っているように行き当たりばったりな捜査のまぐれ当たり的な解決で、本格派推理小説好き読者の満足は得にくいと思います。

No.2933 6点 ハムレットの殺人一首- 岩崎正吾 2026/02/28 19:37
(ネタバレなしです) 1989年発表の本書はミステリー作品としては「風よ、緑よ、故郷よ」三部作の「恋の森殺人事件」(1989年)と「夜叉神山狐伝説」(1990年)の間に発表された本格派推理小説です。ハムレットと百人一首という異質の組み合わせの文芸ミステリでもあり、作者は「田園派ミステリ」の四冊目の長編ですとコメントしています。土地買収に揺れる山村を舞台にして名門一族の屋敷に百人一首が書かれた札が警告状のように次々と出現します。派手な仕掛けの殺人事件が地味な演出なのは少し惜しまれます。男女のイチャイチャ描写よりもそっちに注力してほしかったです(笑)。丁寧な捜査と推理の末に復讐犯の存在が浮かび上がるプロットは読者が自力で推理する楽しみがあまりなく、最後は推理で真相説明されるとはいえ多くの読者にとって予想の範囲内ではないでしょうか。「恋の森殺人事件」が意外性を追求し過ぎて怪作になってしまった反省かもしれませんけど(笑)。

No.2932 6点 修道女フィデルマの洞察- ピーター・トレメイン 2026/02/25 15:36
(ネタバレなしです) 修道女フィデルマシリーズの短編本格派推理小説15作を収めた英国オリジナルの第1短編集「晩祷の毒人参」(2000年)を日本国内では創元推理文庫版で全3巻の分冊で出版されましたが、2巻目となる本書は「毒殺への誘い」(1998年)、「まどろみの中の殺人」(1993年)、「名馬の死」(1995年)、「奇蹟ゆえの死」(1993年)、「晩祷の毒人参」(1993年)の5作を収めています。歪んだ悪意が暴かれる「毒殺への誘い」、犯人の意外性はありませんが複雑な動機が印象的な「まどろみの中の殺人」、フィデルマが自分の推理を上書きするどんでん返しの「晩祷の毒人参」が個人的にはお気に入りです。

No.2931 5点 七つの棺- 折原一 2026/02/24 18:49
(ネタバレなしです) 折原一(おりはらいち)(1951年生まれ)は当初は新本格派推理小説の作家として認知されていましたが、叙述トリックを駆使したサスペンス小説が高く評価されてそちらの方が主力作品となったので今では新本格派の作家と紹介されることはなくなりました。デビュー作が1988年発表の短編集「五つの棺」で当初は5作品を収めていましたが、2作品を追加して1992年に「七つの棺」に改訂されました。密室が大好きで密室事件に遭遇すると嬉しさを隠せない黒星(くろほし)警部を主役にしていますが、推理に当たり外れがあるのは(外れの方が多い?)ジョイス・ポーターのドーヴァー主任警部シリーズを彷彿させます。古典ミステリーのパロディー要素があるのも本書の特徴で、原典作品を知っている方が望ましいですけど知らなくてもそれなりに楽しめます。「密室の王者」(1989年)は追加2作品の1つで、1番シンプルな謎解きなので冒頭に配置したのかもしれませんが馬鹿トリックの一発勝負は由良小三郎さんやE-BANKERさんのご講評の通りくだらないとしか評価できず、後続作品を読むのが不安になりました。もう一つの追加作の「不透明な密室」(1990年)もトリックはかなりのご都合主義を感じさせます。よくできていると思われるのが「脇本陣殺人事件」で、どんでん返しの連続する謎解きを楽しめるし横溝正史の「本陣殺人事件」(1947年)のパロディーとしてもよくできています。「懐かしい密室」は作中作を用意した凝った作品で、作中作では読んだ黒星警部が怒ったのも当然のひどいトリックが使われていますけどこの作中作を謎解き推理に活かしているところが巧妙です。ただカーター・ディクスンの「ユダの窓」(1938年)のパロディーとして書かれたようですが密室からの消失を扱っているので個人的には同じ作者の短編「妖魔の森の家」(1947年)の方を連想しました。

No.2930 6点 完全不在証明- クリストファー・セント・ジョン・スプリッグ 2026/02/23 02:30
(ネタバレなしです) 英国のクリストファー・セント・ジョン・スプリッグ(1907-1937)がミステリー界にデビューしたのは1933年ですが、共産主義に傾倒してスペイン内乱に義勇兵として参戦し1937年に29歳の若さで戦場に散ってしまいました。わずか4年ほどの作家活動でミステリー作品を長編7作といくつかの短編を残して旺盛な創作力を見せていただけに早過ぎる死が惜しまれます。1934年発表の本書は新聞記者ヴェナブルズシリーズ第3作の本格派推理小説です。多彩な登場人物を揃えたことをドロシー・L・セイヤーズが誉めたそうですが、第19章でヴェナブルズがピーター・ウィムジイ卿の真似をするのをやめろと責められたと言及していたのもセイヤーズの心に響いたかも。容疑は転々とし、探偵役としてスコットランドヤードのブレイ警部、事件の起こった地元ペパリング警察の巡査、アマチュア探偵なども入り乱れて少しごちゃごちゃした感はありますが、F・W・クロフツの「ポンスン事件」(1921年)を連想させる第28章の追跡劇の末に第29章の最後でヴェナブルズが暴いた真相は非常に印象的です。第30章ではヴェナブルズが推理説明する前に「必要な事実や手掛かりはすべて、私たちの手に入っていたのです。(中略)この世で最もフェアな探偵小説の世界のようにね」と宣言します。

No.2929 5点 地獄の同伴者- 楠田匡介 2026/02/12 20:55
(ネタバレなしです) 1958年発表の短編集で3つの作品全てに田名網警部が登場していますが、過去のシリーズ長編の「模型人形殺人事件」(別題「冷たい眼」)(1949年)と「いつ殺される」(1957年)でも無能ではないけれど名探偵役として脚光を浴びたのは別の人物という、微妙な役回りを演じていましたけど本書でも2作品がやはり似たようなパターンでした。「地獄の同伴者」は犯罪小説風なプロットで、殺人を計画した男がそれを息子に知られたことから思わぬ逃避行になるスリリングな展開で読ませます。作中でエラリー・クイーンの「Yの悲劇」(1932年)の犯人ネタバレがありますので注意下さい。最後は本格派推理小説として着地しており、ルーファス・キングの「不変の神の事件」(1936年)を連想しました。100ページ近い中編の「追いつめる」は第1章はホテルでの怪死事件の捜査という普通の本格派風ですが、第2章になると横領犯の逃亡劇という急変化に驚かされます。解決は読者が推理する余地のない後出し的な推理説明で残念。1番王道的な本格派なのが「雪」で、しかもついに田名網警部が文句なしの名探偵となります。密室トリックが古典的です。

No.2928 5点 ブック・フェスティバルの殺人- キャロリン・G・ハート 2026/02/11 04:21
(ネタバレなしです) 1992年発表のデス・オン・ディマンドシリーズ第9作の本格派推理小説で英語原題は「Mint Julep Murder」です。南部随一のリゾート島のヒルトンヘッドで作家、書店主、出版関係者など数千人の参加者を見込むブック・フェスティバルが開催されることになり、アニーも事務局の手伝いをします。殺人事件が起きて刑事から容疑者とみなされたアニーが憤慨するのはわかりますけど、犯人探しに乗り出したアニーの強引な捜査も容疑者たちを憤慨させるには十分で、刑事の推理の方が一応は状況証拠に基づいており説得力が高そうです(笑)。18章の最後でアニーが語った真相は魅力に欠け、19章での推理説明は人物の心理分析が中心で具体的な物証に乏しく、あまりすっきりできませんでした。

No.2927 5点 女囮捜査官 3 聴姦- 山田正紀 2026/02/06 23:01
(ネタバレなしです) 1996年発表の囮捜査官シリーズ第3作の本格派推理小説ですが誘拐事件、政治家の贈収賄事件に発展するかもしれないある個人情報の漏洩、自分が多重人格者なのではという疑心暗鬼などサスペンス、社会派推理小説、サイコ・スリラーなど様々なミステリー要素を含んでいます。作中の時間軸も過去と現在を往復しており、北見志穂が誘拐犯の指示で身代金を運ぶ場面が誘拐事件の発生よりも先に描かれています。犯人の計画には強引な感もありますが細かく考えられており、複雑に絡み合った謎は最終章できれいに解かれています。

No.2926 5点 セント・アガサが揺れた夜- ジル・ペイトン・ウォルシュ 2026/02/03 20:30
(ネタバレなしです) 2007年発表のイモ-ジェン・クワイシリーズ第4作でシリーズ最終作となった本格派推理小説です。第3章でドロシー・L・セイヤーズの「学寮祭の夜」(1935年)が長年、痛烈に批判されていたと紹介されていたのに驚きました(第20章でも言及されています)。それを意識したのか謎解きよりも大学生活の描写の方に力を入れたような印象を受けました。これが面白いかというと個人的には微妙で、序盤で大学のフェローが学寮の塔から転落死して事故死と判断されますが殺人ではないかと疑惑が持ち上がるまでにかなりのページを費やしており、前半はミステリーらしさが希薄に感じます。特任フェロー選任を巡るごたごたとか学生の失踪とかを挿入してモジュラー型のプロットになっていることや、真相を明確に説明して決着しないのも(ほのめかしてはいますが)読者の好き嫌いが分かれそうです。イモージェンの恋愛が(ページ数は少ないですが)描かれているのも「学寮祭の夜」の影響があるかもしれません。

No.2925 5点 大臣の殺人- 梶龍雄 2026/01/30 23:09
(ネタバレなしです) 青春三部作の第2作「海を見ないで陸を見よう」(1978年)に次いで1978年に発表されました。戦中戦後を舞台にした青春三部作よりもさらに昔の1880年(明治13年)が本書の作中時代で、登場人物リストには実在の人物である黒田清隆(1840-1900)、寺島宗則(1832-1893)、樺山資紀(1837-1922)、野村文夫(1836-1891)らが載っています。警視庁の探偵である結城真吾(元旗本士族)が殺人犯の追跡を命じられ、北海道からの汽船で東京へ逃亡したと推測して船長に面会しようとしますが間一髪で船長は殺されてしまいます。その後も謎の人物が出没しては関係者が殺されていきます。最終章でさまざまな伏線を回収しながらの推理説明で真相が明らかになるところは本格派推理小説の雄である作者ならではですが、読者に謎解きを挑戦するプロットではないので個人的には本格派の手法を取り入れたスリラー小説に分類します。おっさんさんのご講評で指摘されているように、黒田清隆のスキャンダル疑惑という史実をミステリーに上手く絡ませているところは小林久三の「暗黒告知」(1974年)を連想させます。タイトルは雑な感じのネーミングですが結構な力作だと思います。

No.2924 5点 「古き沈黙」亭のさても面妖- マーサ・グライムズ 2026/01/29 18:01
(ネタバレなしです) 1989年発表のリチャード・ジュリーシリーズ第10作の本格派推理小説で、文春文庫版で600ページを越す大作です。過労のため休暇旅行中のジュリー警視がウエスト・ヨークシャーのイン(宿)の「古き沈黙」亭で妻が夫を射殺する場面を目撃するところがレジナルド・ヒルの「骨と沈黙」(1990年)をちょっと連想させます。8年前に少年が誘拐され、一緒にいた友人も同時にいなくなる事件があり、この夫婦は少年の両親でしたが警察の勧めで資産家である妻(少年の継母)が身代金の支払いを拒否して少年は戻らず未解決となっていました。ジュリーが妻を殺人に駆り立てた動機は何なのかを探ろうとするところは東野圭吾の「悪意」(1996年)や「希望の糸」(2019年)との親和性を感じる読者もいるかもしれませんが、本書では新たな事件を起こしたり終盤に派手な場面を挿入したりしているのが個性です。人間関係が複雑で真相はひねり過ぎの感もありますが、ちゃんと説明しているところはシリーズ前作の「『五つの鐘と貝殻骨』亭の奇縁」(1987年)から改善していると思います。

No.2923 5点 夕暮れ- 笹沢左保 2026/01/26 14:11
(ネタバレなしです) 1991年発表の夜明日出夫シリーズ第4作です。過去のシリーズ3作はアリバイ崩しを中心にした本格派推理小説でしたが、本書以降は作風の幅を広げました。借金を返さずに失踪した債務者を追いかける3人組のやくざが死後切断された腕を発見して殺人事件の犯人と目されてしまいます。このまま彼らを主人公にすれば典型的な巻き込まれ型サスペンス小説の展開となったかもしれませんが、夜明を絡ませることによって会話メッセージの謎解きを中心にした本格派となります。もっとも被害者の素性がわからないこと、手先を使っての依頼殺人らしいことから王道的な犯人当て本格派の楽しみはありません。犯人にたどりつく推理にはかなりの飛躍があるように感じましたし、メッセージの謎解きも夜明が「日本語は難しい」と述懐してますけど相当ひねった解釈での解決でした。

No.2922 6点 二度目の告白- レックス・スタウト 2026/01/24 21:30
(ネタバレなしです) 1949年発表のネロ・ウルフシリーズ第12作の本格派推理小説で、アーノルド・ゼック三部作の第2作でもあります。ある人物が共産主義者であることの証拠がほしいというウルフが受けた依頼は「赤狩り」が本格化しつつあった当時の米国社会ならではのもので、そこが現代読者になじめるかどうかは微妙かもしれません。また「忌まわしき悪党」(1949年)を未読のままで本書を読むとゼックに関する予備知識がないので序盤がちょっとわかりにくいと思いますが、第7章でウルフが彼との過去からの因縁を説明してくれます。殺人犯をどうやって特定したのかの推理説明が十分でないように感じますが、先の読めない展開(特にアーチー・グッドウィンがあんな目にあったりこんな目にあったりと受難が半端ない)、大胆などんでん返し、ユニークな動機となかなかの力作です。

No.2921 5点 8の殺人- 我孫子武丸 2026/01/21 02:43
(ネタバレなしです) 我孫子武丸(1962年生まれ)が1989年に発表したデビュー作のユーモア本格派推理小説です。後年にはホラー要素の濃い「殺戮にいたる病」(1992年)を発表することになるのですけど、本書の作者あとがきでは「楽しいミステリを読み続けていきたい。そして自分が読みたいものを書き続けていきたい」と書いています。トリックの謎解きにこだわっており、海外の本格派作品を引き合いに出して議論しているところは高木彬光の「能面殺人事件」(1949年)を彷彿させますが、高木作品と同じく海外作品のネタバレになってしまっているので未読の読者層にとって賛否両論でしょう。作者名や作品名を伏せるとかの工夫があればなあと思いました。解決場面の最初のはずれ推理があまりにもインパクトが大きく、そのため真相が平凡に感じられてしまうのも一長一短に感じました。余談ですが巻末には島田荘司による評論の「本格ミステリ宣言」(1989年)が付いています。本格派の冬の時代が終わったことを確信して書かれたのが伝わってきます。

No.2920 5点 死へのダイヴ- レオ・ブルース 2026/01/16 05:19
(ネタバレなしです) 1962年発表のキャロラス・ディーンシリーズ第11作の本格派推理小説です。母の昔からの友人であるゴート夫人から彼女が宿泊したゲストハウスで起きた、バルコニーからの墜落死事件のことでキャロラスは相談を受けます。そのゲストハウスでは二ヶ月前にも滞在客が死亡しており、原因は心臓病とされていましたがゴート夫人はゲストハウスに疑惑と陰謀の雰囲気を感じ取っていました。第2章から第8章まではゴート夫人の1人称で語られる日記、第9章以降はキャロラスの捜査という構成です。人物の感情描写がドライなので日記からサスペンスをあまり感じ取ることができないのが惜しいし、どちらの死亡事件も殺人なのかはっきりしない状況が長く続くため謎解きも盛り上がりを欠いていますが、その埋め合わせをするかのように終盤は大袈裟なまでに劇的な展開があります。余談ですがROM叢書版の巻末解説で本書を「ジャックは絞首台に!」(1960年)に続くシリーズ作品と紹介していますが、シリーズ第7作の「ジャックは絞首台に!」と本書の間には「怒れる老婦人」(1960年)、「骨と髭」(1960年)、「狂ったシナリオ」(1961年)があり、正しい紹介ではありません。出版順に読まなくても大丈夫なシリーズではありますが念のため。

No.2919 5点 不確定性原理殺人事件- 相村英輔 2026/01/07 22:46
(ネタバレなしです) 相村英輔(あいむらえいすけ)の1999年発表のデビュー作である本格派推理小説です。私は随分と前に入手していたのですが難解そうなタイトルにびびって読むまでには結構な年月が経ちました(笑)。作中時代は昭和40年代後半と記述されているので1970年代前半でしょうか。その名も昭和荘というアパートで起きた変死事件の謎解きで、「完璧な密室」と「完璧なアリバイ」が立ちはだかります。物語の後半になってケーヒニスベルクの七つ橋、シュレディンガーの猫、メービウスの帯などが紹介されますが事前に危惧したほど理系要素は強くありませんでした。もっともそれらが謎解きにどれほど役に立ったのかは私には理解できませんでしたけど。読者への挑戦状に相当する幕あいでは、犯人の正体も含めて5つの謎を解明せよと読者に迫ります。真相を構成する珍しい現象は1930年代の海外本格派推理小説の某作品を連想させ、そんなのは当てられないと不満を抱く読者も少なくないと思いますが。あとkanamoriさんのご講評での「もう少し華のある設定にすればいいのに、場末のアパートでは読む気が失せてしまう」には同感です。そこは早見江堂の「青薔薇荘殺人事件」(2008年)を連想しました。

No.2918 5点 恐ろしい玩具- E・S・ガードナー 2026/01/04 03:13
(ネタバレなしです) 1959年発表のペリイ・メイスンシリーズ第58作の本格派推理小説です。婚約破棄した男性から(と思われる)嫌がらせを受けた女性が男性の前妻から男性をやっつけるための証人になってほしいと協力を求められます。前妻の言動もかなり怪しい点があり、いつのまにか殺人事件に発展して女性は逮捕されます。メイスンが「市(ロサンジェルス?!)の半分は彼の持ち物」と評する財界の大物が捜査に横槍を入れ、第15章ではハミルトン・バーガー地方検事が意外な証人を用意していると自信満々ですが、いずれもメイスンにしてやられるところが面白いです。メイスンの推理が外れてしまいハミルトン・バーガーは笑いますが、何ごともなげに落ち着いているメイスンの即座の逆転推理で一気に解決です。余談ですが弾十六さんのご講評情報によると本国出版が1959年1月で、ハヤカワポケットブック版の初版もamazon情報では1959年1月となっているのであまりに超特急でびっくりしましたが、これはamazon情報が誤っていて1959年10月が正しいようです。それでもかなり早い翻訳出版ですが。

No.2917 5点 追憶の殺意- 中町信 2026/01/02 21:32
(ネタバレなしです) 「自動車教習所殺人事件」というタイトルで1980年に発表された長編第4作の本格派推理小説で、後年に「追憶の殺意」に改題されましたが個人的には旧題の方が合っていると思います。kanamoriさんのご講評で指摘されている通り、刑事たちが探偵役であることや犯人の正体が早めに見当がついてアリバイ崩しの謎解きになる展開が鮎川哲也の鬼貫警部シリーズを彷彿させているところはこの作者としては異色作だと思います。密室トリックは成立する伏線が用意されているとはいえ失敗するリスクが高そうな気もします。アリバイトリックも複雑な分結構綱渡りに感じますが、こちらはなかなかユニークなアイデアで印象的です。

No.2916 5点 アガサ・レーズンと猫泥棒- M・C・ビートン 2025/12/31 16:47
(ネタバレなしです) 1993年発表のアガサ・レーズンシリーズ第2作のコージー派の本格派推理小説です。気になる隣人ジェームズ・レイシーの気を引こうとするアガサは空回り気味で、それならと村で新たに開業した獣医に目をつけますが今度は殺人事件に巻き込まれます。押しが強い一方で相手が寄ってくるとびびって引いてしまうアガサの言動は支離滅裂で、これを楽しめるかいらっとしてしまうかで読者の評価も分かれそうです。本書でアガサと探偵コンビ役を務めることになるジェームズもまともなようでいて結構曲者でした。謎解きはビル・ウォン刑事曰く「幸運な推測」で真相が明かされ、しっかりした本格派を期待しない方がよいです。事件解決後も心の傷が癒えないアガサを村の婦人会メンバーが支えてくれたのはよかったですね。

No.2915 5点 森江春策の災難- 芦辺拓 2025/12/24 11:06
(ネタバレなしです) 冒頭の「開幕前のご挨拶」で「未収録作品のコレクション」と紹介されていますが、森江春策の登場する短編、ショート・ショート、他の名探偵との架空座談会など2003年から2020年までに新聞や雑誌に発表された13作品と書き下ろしの戯曲1作を追加して収め、「日本一地味な探偵の華麗な事件簿」というサブタイトルを付けて2022年に出版されたシリーズ第5短編集です。寄せ集め感は否めませんが、4つのPARTに分けてPARTの間には「幕間がわりのあとがき」を挿入して各作品を作者が解説紹介し、人物イラストや(戯曲には)写真も挿入するなど単行本の付加価値を付ける努力をしています。これはという傑作はないように思いますが、個人的に印象に残ったのは1990年代の某国内本格派推理小説の仕掛けを連想させる「読者よ欺かれておくれ」(2009年)と、作中時代(何十年も昔)にそんな技術的トリックが可能だったのかと驚かせる「解凍された密室」(2020年)です。横山光輝(1934-2004)のSF冒険漫画の鉄人28号が登場する「寝台特急あさかぜ殺人事件」(2012年)は「読者諸君への挑戦」を付けた本格派ですが、低温・低気圧の空を鉄人28号の手のひらに乗って飛行した人間(防護服の着用なし)が五体満足なんて設定がまかり通っている世界とはいえ、何でもあり的な真相は読者の賛否両論かも。

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nukkamさん
ひとこと
ミステリーを読むようになったのは1970年代後半から。読むのはほとんど本格派一筋で、アガサ・クリスティーとジョン・ディクスン・カーは今でも別格の存在です。
好きな作家
アガサ・クリスティー、ジョン・ディクスン・カー、E・S・ガードナー、D・M・ディヴ...
採点傾向
平均点: 5.44点   採点数: 2934件
採点の多い作家(TOP10)
E・S・ガードナー(84)
アガサ・クリスティー(57)
ジョン・ディクスン・カー(44)
エラリイ・クイーン(43)
F・W・クロフツ(33)
レックス・スタウト(29)
A・A・フェア(28)
ローラ・チャイルズ(27)
カーター・ディクスン(24)
横溝正史(23)