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[ 本格/新本格 ]
水族館の殺人
裏染天馬シリーズ
青崎有吾 出版月: 2013年08月 平均: 6.60点 書評数: 20件

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東京創元社
2013年08月

東京創元社
2016年07月

No.20 6点 虫暮部 2023/11/24 14:14
 出た、忍切蝶子さまっ! 爽やかで傲慢そうで実は生真面目そうな実力者。台詞がいちいち様になって決まってる。対する佐川部長だって負けてないぞ。“そういうところは嫌い” と言ってのけるのは愛だね。うーむ、どっちのキャラも美味しい。強敵と書いて友と読む。竜虎相打つ決勝戦は事件のせいで見損なってしまったが、非公式の頂上対決なんて贅沢な。

 あ、殺人の方は、手掛かりがやたらチマチマしている。容疑者が属性だけ貼り付けたロボットみたいで、11人は流石に多過ぎ。EQ的ロジックを重視した結果そうなってしまう(こともある)のは判るが、もっと上手く書いている作家だっているわけで。試行錯誤の途中経過、って感じ。

No.19 7点 mozart 2023/06/23 08:18
本作も前作同様緻密で丁寧なロジックで事件を解決に導く名探偵の話でかなり楽しめました。動機はちょっと気になりますがヒロイン役(?)との関係性とかもラノベ風で面白かったです。

No.18 6点 斎藤警部 2022/06/13 11:42
「オランダ靴」に萌えないが「フランス白粉」には萌えるおいらにとって、本作の犯人特定に向かうシーンそのものは実にスリリングで良かった。特に、犯人と仮に目される属性グループが切り返し鋭く入れ替わった瞬間、チリチリ来ちゃったねえ。だがその割に、犯人特定のロジックを構成するパーツが所々脆弱だったかな。「血」の件にはなるほど唸ったもんだ。「時計」のナニもなかなかだ。せっかく英題にも選ばれた「モップ」の云々は、その四分の三くらい(?)は大したもんだと思うけど、重要な残り四分の一の所で、見せ方があからさま過ぎないか?「トイペ」に至ってはあんだけバカ実験させときながら机上の空論感で芬々。「体格」の件も何だか。。物語の中核かと思われたアリバイ検証もアリバイ偽造も、とにかくアリバイと名の付く部分にゃあ何のスリルも感じられませんでした。結果として、自分にとっては、二段構えオチ的に語られる 『 動 機 』 こそが本作最大のミソ、という認識になってしまった。クレイジーな面がある動機背景だけど、これには意外性方向の深さがあって、本格ミステリとしても小説としても刺さりました。●●の対象が実は。。。。って目の前にありながら大きすぎる盲点でした。でもまあひっくり返る程ではない。 探偵役が推理披露の場面で唐突に豹変する浅い作り物感は若干醒めるかな。探偵役の、これから深堀りされそうな個人的背景への興味は、、微妙なところ。 まあ減点対象もいろいろありますが、犯人特定シーンと動機設定の二点突破でそこそこ高得点になっちゃいましたね。

No.17 7点 ボナンザ 2021/03/21 01:49
二作目でこの水準なのはこの作者が本物な証拠だと思う。
論理の緻密さで群を抜いている。

No.16 6点 ミステリ初心者 2018/10/25 23:29
ネタバレをしています。

 前作に続いて、非常に読みやすかったです。本格度?の高い犯人当てもにくわえて、アリバイ崩しの要素も加わりました。

 評価の点数に迷いました。自分は犯人当ての解決編を読むときは、あたっていてもいなくても楽しいことが多いのですが、今作はいまいちピンときませんでした。それは自分の読解力の低さからくるもので、例えると、ウィキペディアの数学の定理の項目や物理学の項目ページを見ているときの理解できない感じと同じでした。そんな未熟な人間が、この作品を評価していいものやら;; 

 お蝶婦人的なキャラがでてきて、物語とどう絡んでくるか(天馬とも関係がありそうな描写)たのしみでしたが、そのまま終わって残念でした。たぶん、次あたりに出るのでしょうね?

No.15 5点 パメル 2018/06/10 01:08
何気ない小道具や手掛かりから、消去法で徐々に犯人を絞り込んでいき、犯人を特定する丁寧な推理は読み応えあり。アリバイ崩しがメインではあるが、ロジック好きには楽しめると思います。
しかし、不満な点も多い。動機には全く納得できないし、違った方法で解決できたはず。さらに、序盤の卓球大会の描写はなんだったの?何かしら事件に絡んでくるのかと思いながら、読み進めていったが、全く関係ないなんて酷すぎる。探偵役のキャラクターも、変なノリだしどうも気に入らない。

No.14 8点 makomako 2017/10/30 20:25
 作者は平成のクイーンといわれているそうですが、この作品を読むとまさにクイーンですね。
 たくさん登場人物が出てきて、ほとんど完全犯罪みたいで、手がかりは実に小さなところからであり、探偵が少しずつ論理を積み上げてついに犯人指摘に至るといったところはクイーンそのものといった感じ。
 さらに若き現代日本人が書いているので、感情の移入がしやすく、はるかに読みやすい。登場人物も探偵はともかく相手役の柚乃ちゃんなんかはかわいいねえ。ファンになってしまいました。
 こういった作品はきっと書くのが大変だと思いますが、作者は前作の体育館の殺人よりさらに強烈な殺人現場を用意したうえで、さらに精緻な論理をくみ上げています。すごい才能だと感じました。

No.13 5点 ねここねこ男爵 2017/09/21 12:13
本体である推理のロジック部分はよくできていて楽しめる(他の方も書かれているが足跡が入り口まで続いているのが意味不明。作画のミスか?)。

問題なのは小説部分で、個人的には読むのがなかなか苦痛だった。
この作者はメディアミックス欲が先行するあまりアニメウケするテンプレに沿わなければいけない強迫観念が強すぎる。
こういう『ノリ』なのは前作で分かっていたけど、今作はそれが前面に出すぎていて、

①会話やドタバタの大半が無意味(いわゆるテンプレばっかり)
この作者は『普通の人物』を書くつもりがないのか書き分ける力量がないのか、登場人物が見事にテンプレそのままで、会話やドタバタもありがちな『オイシイ場面』のオンパレードで不要なものばかり。「こういうのいいでしょ?楽しいでしょ?」の押し付けがキツイ。
②作者が①を書きたいあまりに登場人物が人格障害としか思えない
テンプレ通り『頭が固く物わかりの悪い大人』が『生意気で変人だけど有能すぎ俺つえーw』に振り回される様子を書きたすぎて無理やり突っ込んだためかなり不自然。警部さんが人格障害レベル。自分で呼んでおいて「とっとと帰れ!」って、アタマ大丈夫か?さすがに不自然だと思ったのか作中でも「呼んでおいて扱い悪くない?」「お前に頼んだのはアリバイ崩しだけ」と言ってフォローはしているけどね。
あと、ドタバタを書きたいのは分かるけど、乱暴にエアコン(のリモコン)壊したりスマホを叩き落しておいて逆切れする刑事妹はさすがに頭おかしい。作中だと変人扱いの探偵役だが実はだらしない以外は結構まともで、警察陣営と刑事妹がかなり異常者。
③最後の一対一が白々しい
多分作者が「テンプレばっかりじゃなく俺ってこういうのも書けちゃうんだぜ!」ってやりたいんだろうけどね。最後だけまじめに手品するマギー司郎か。
④続編に登場させる気満々なのはいいが不要な登場人物+章が多すぎ
卓球の試合のくだり丸々いらん。なんだこれ?

あるあるの集合体ゆえ話がとてつもなく不自然なこと、あるあるに当てはまらない人物を登場させると途端に影が薄くなることが目に付くかつかないかで評価が分かれるだろう。
繰り返すが、推理部分はよくできている。物理的に苦しいのは目をつぶろう。…理系学部を出た人間なら分かってもらえるだろうが、再現性の厳しい現象は本来採用しないんだけどね。

No.12 6点 りゅうぐうのつかい 2017/07/17 17:09
水族館の営業時間中に、職員がサメ水槽に転落して、サメに食べられるというショッキングな事件の発端、容疑者のアリバイが全員成立したのちに、一転して全員にアリバイがなくなるという展開、時計にまつわるロジックなどは面白いと感じた。しかし、アリバイトリックで使われた方法、犯人の動機など、疑問に感じる箇所があった。また、現場図が示されているにも拘わらず、現場の状況がわかりにくいというのが最大の難点。

①アリバイトリックの方法(アリバイトリックの方法は物語の早い段階で明かされている)
アリバイトリックで使われた方法は確実性や再現性に乏しく、正常な思考力を持った犯人であれば、このような不確実な方法を採用したりはしないだろう。はっきり言って、ショボいトリックだ。落下するまでの時間を犯人はどうやって知るなり、予測できたのだろうか。被害者の仕掛けへのもたせかけ方によって、仕掛けにかかる荷重が変わり、落下する時間が違ってくると思うが。また、トイレットペーパーの巻き方(巻く密度)によっても、落下時間は変わるはず。さらに、空調等で空気の流れがあれば、仕掛けに同じように水が落下するとも限らない。最悪の場合、すぐに落下してしまう危険性もある。
裏染が落下までにかかる時間を調べるために、このトリックの再現実験をしているが、杜撰すぎる。演劇部員が制作した模型を使った再現実験にどの程度の信憑性があるのだろうか。落下するまでの時間の推定方法もよくわからない。
『死体を支えるのに一キロあたり紙が何センチ必要で、それが何秒で溶けるかってのがわかれば、あとは計算できるから問題ない』
いったい、どんな計算式を使って、計算したのだろうか?「死体の重さ」と「それを支えるのに必要なペーパーの長さ」が必ずしも正比例するとは思えない。また、落下してくる水滴と紙が溶けるまでの時間との間にどのような関係があるのだろうか。
裏染がこのトリックを説明した時に、周囲の人間が大袈裟に感心するのだが、手前味噌というか、作者の自画自賛に感じた。

②犯行の動機
非常に意外で屈折した動機ではあるが、いくらなんでもこんな動機で人殺しをするというのは常軌を逸している。

ところで、犯人の足跡がドアの前まで続いていた理由について、どこかで説明されているのだろうか?

No.11 7点 測量ボ-イ 2017/03/19 13:05
前作同様、上々の内容。
わずかな手がかりから、容疑者を絞っていく過程はまさしく
クイ-ンのよう!
正直、難易度は難しいですけどね。
(真犯人もあまりマ-クしていなかった・・・)
動機もなるほどとは思いますが、これは推理できないです。
でも総合的には高評価できる作品。次作も期待。

No.10 8点 邪魅 2017/02/25 18:43
凄かった、ですねこれは
良くこれだけ考えられるものです
途中から血液が混ざっている、のだから、そこから派生して犯人はあの四人に絞られる
確かにそうなのだけれど、論理的に考えるのならそうなのだけれど、やはり凄いの一言でした

これは是非もう一度じっくり読み直したい作品です
それと、これは蛇足ですが私自身もドラえもんが凄く好きなのでルフィンの名前が出たのは嬉しかった、と同時に動機を聞いて悲しくなりました
けれど、その動機も好きでした

No.9 7点 E-BANKER 2016/12/31 14:07
衝撃のデビュー作「体育館の殺人」に続く、裏染天馬シリーズの二作目。
今回もロジック全開(!)の作品なのか?
2013年発表。
(なお、「読者への挑戦」の挿入は文庫版のみとのことなので、文庫版を手に取る方がベターでしょう)

~夏休み最中の八月四日、向坂香織たち風ケ丘高校新聞部の面々は、取材で横浜市内の穴場スポット、丸美水族館に繰り出した。館長の案内で取材していると、B棟の巨大水槽の前で驚愕のシーンを目撃。なんとサメが飼育員と思われる男性に食らいついている! 駆け付けた警察が関係者に事情聴取していくと、容疑者は十一人にも及ぶことが判明。しかもそれぞれに強力なアリバイが・・・。袴田刑事は仕方なく、あのアニメオタクの駄目人間、裏染天馬を呼び出すことに・・・~

まさに『平成のエラリー・クイーン」という称号に相応しい作品だろう。
本格ミステリーの書き手にとって受難な時代にも拘らず、ここまで「正統派」で「ド・ストレート」な本格ものにチャレンジする作者には、やはり敬意を表せざるを得ない。

巻末解説を読むまでもなく、本作が国名シリーズの二作目である「フランス白粉の謎」のオマージュであるのは明らか。
多すぎる容疑者を数々の物的証拠をもとに、ひとりひとり消去法で潰していくという、もう本格ファンには堪らないシチュエーション! あの「フランス白粉」が現代に蘇ったわけだ。
前作は「一本の傘」が象徴的な物証として取り上げられていたが、本作は英語タイトルの“The Yellow Mop Mystery”どおり、「一本のモップ」が鍵となる物証として登場する。
モップはなぜ犯行現場に持ち込まれたのか? そして、真犯人は犯行時、犯行後どのように行動したのか?
天馬の推理を読むだけでもかなりのゾクゾク感が味わえる。

そしてプロットのもうひとつの軸が容疑者たちの“分刻みのアリバイ”。
これこそがまさに「水族館のバックヤード」という限定空間に事件現場を設定したひとつの根拠だろう。
消去法によるフーダニットなんてやろうというなら、こういうCC設定は必須条件となる。
単なるアリバイトリックに終わらせない辺りも、作者のただならぬ才能を示しているのかも。

もちろん細かな齟齬はある。
動機もそうだろうし、なぜ監視カメラで囲まれた空間で殺人を犯さねばないないのか?という根本的な疑問には応えてないようにも思う。
登場人物の書き分けも然り・・・etc
でも、そんなマイナスを引いても余りある魅力と可能性。
そこもエラリー・クイーンをオーバーラップさせてしまう一因かもしれない。
言い過ぎかな? 多分言い過ぎだな・・・
(2016年ラストの書評。来年は「量」より「質」優先で読書していきたいと考えてますが・・・できるか?)

No.8 8点 青い車 2016/09/29 22:08
 物証による細かい推理を繋げてフェアなフーダニットに仕上げた、という意味でクイーンの『フランス白粉』とよく似通った作品です。感心したのは、元ネタの詰めの証拠がなくハッタリで解決しているという弱さを解消している点です。じわじわと消去法で犯人を絞り込む手堅さを見せた上で、決定打の証拠によるこちらの想定を超えた解決が見事です。先達の作品をベースにした上で、ちゃんと発展を見せています。前作以上に解決編の凄みが大きく、熱量を感じさせる秀作。

No.7 6点 メルカトル 2016/09/14 22:19
デビュー作に続いてガチガチの本格。でありながら、青春ミステリの側面をチラッと覗かせているところは、作者のサービス精神からなのだろうか。
被害者がサメの餌食になるというショッキングな滑り出しは瞠目させられるが、その後は論理による謎解きの連続で、ややロジックに偏りすぎな感がしないでもない。その中にもハッとするようなトリックや仕掛けが隠されているのならばメリハリも付くのだが、そうした意外性がないのはやや拍子抜けの思いが拭いきれない。勿論、論理によるアリバイ崩しから11人もの容疑者を絞っていくというのも本格ミステリの醍醐味だろうとは思うが。
なお、動機に関しては個人的には納得とまではいかないが、アリだという気がする。読後感も思ったほど悪くはなかった。

No.6 9点 505 2015/10/27 11:52
平成のクイーンの称号に恥じない傑作。
鮫に人を喰わせるという凄惨でインパクト大な事件は、なによりも人を作品へと一瞬で人を飲み込む事だろう。前作では、密室+現場に残された一本の傘を論理で展開していく様が徹底的に描かれていたが、本作は容疑者11人のアリバイ崩しがメインとなっている。そのアリバイトリック自体そのものの露呈を引っ張ることなく、比較的あっさりと解明することで、〝容疑者11人のアリバイが有った状態からアリバイが無い〟状態へと持っていく構成力が技巧的である。このトリックの段階で、容疑者の数を減らさないという点で、妥協なく犯人を最後の最後まで明らかにせずに、探偵の裏染天馬に追い詰めさせようとする意図が見えてくる。
そして、肝心の時限装置的トリックが分かっても尚、犯人を特定する直接的な手掛かりはなく、現場に残された様々な小道具をベースに、犯人が〝どのような行動を取ったのか〟ということを明瞭に浮き彫りにする圧巻の推理は、流石の手腕と言わざるをえない。
そこから導き出された犯人の行動した時間、工程、犯人たる条件を全て包括した消去法による推理は、淡々としつつも着実に犯人を追いつめていくものがある。推理中に自身の推理を否定するものの、確実に爪痕を残す論理の堅牢さが売りであるために、アクロバティックさはない。
それでも推理の過程に、積み重なっていくことで生まれるサプライズがある。具体的には、犯人の特定に至る上で欠かせなかった〝モップ以外の何かに付着した血痕〟であり、服や手袋でもないことを証明しつつ、タオルという小道具を出すタイミングが秀逸。そこから丁寧な推理で、タオルを使用したであろう可能性を否定し、容疑者を減らしていく様だけでも本作が必読の価値があることを証明しているといっても過言ではない。タオル以外にも小道具が提示されていくが、最後に腕時計の存在をもって犯人を特定する流れの中に、様々な気づきで〝見え難かった真相〟が明らかになり、繋がるという具合で、伏線回収の技巧が凄まじいとしか言いようがない。

そして、触れなければならないのは動機面だろう。ロジック重視で動機が軽んじられているという類の意見があるにしても、動機自体は良く出来ていると感心する外なかった。計画殺人にも関わらず、殺人を〝必要以上に主張〟する現場の痕跡や同時始末という意外な真相に、人間の厭らしさが描かれている。確かに、ロジックのパートに対してエピローグが寂しいと思う人もいるだろうが、裏染天馬の容赦なき言動や私利私欲に動く人間の惨たらしさが、衝撃的な事件から静かにフェードアウトするように書かれているのは、個人的には印象に残るものなので違和感なく読了することが出来た。
探偵対犯人という構図が、情け容赦なく描かれているのは当然であるが、これこそが私自身がロジカルのみならず探偵・裏染天馬を愛する理由なのかもしれない。

No.5 7点 名探偵ジャパン 2015/07/02 10:15
前作「体育館の殺人」の続編のため、前作読了は必須。
別に続きのストーリーではないのだが、前作で容疑者だった人物が普通に登場したりしているので、先にこちらを読んでしまうと、「体育館の殺人」を読む時に大変なことになってしまう。
解決編での展開は、「みんな遅れないようについてこい」状態で、読むスピードがいつもの半分になってしまう。
卓球大会だの、妹登場、探偵の家族の秘密など、キャラクターものの側面も強めてきた。間違えて本作や、次巻以降から読んでしまう人が出ないように、シリーズナンバーを振るべきではないだろうか。
キャラクターものは、ばらまいた設定を読者が忘れないように、期間を置かずに出版することが求められるが、この作風ではシリーズを量産できない。作者、過酷な道を歩み始めたなぁ、と思った。頑張れ、とエールを送りたい。

No.4 6点 まさむね 2013/11/25 22:57
 「体育館の殺人」に続く,裏染シリーズ第2弾。
 体育館の次は図書館かと勝手に想像してましたが,水族館でしたか~(笑)。
 しかし,学校外の設定ながらも,違和感を抱かせずに前作の登場人物たちを絡ませています。
 前半で,アリバイトリックを潔く開陳する構成は支持します。これが後半の怒涛の展開に繋がるわけですしね。
 後半のロジック・フルモードは実にお見事。容疑者は当初から絞られているし,急転直下の驚きがあるわけでもないので,「地味」という評価もあり得るとは思いますが,ロジック好きの方には一読の価値があると思いますね。
 ホワイについては評価が分かれるところでしょう。個人的には微妙な印象を抱きましたが,確かにコレがないと,(ミステリ読みとしては禁句的な側面もありますが)何故ソコまでやったのかという根源的な疑問のみが残ってしまう可能性もあるので,突き詰めて考えないことにします。
 次回作こそ「図書館」なのか。はたまた「公民館」あたりなのか。これも楽しみになってきました。是非,短編も読んでみたいですし,今後の活躍を注視すべき作家のひとりです。

No.3 6点 HORNET 2013/11/11 19:58
 キャラ立てされた登場人物によるコミカルな展開の中に、しっかりとしたロジックが組み込まれている内容は健在。殺人のシーンは非常に残酷・劇場的で、一時の海外古典のような事件の幕開けもよかった。
 ただ精緻なロジックが氏の真骨頂なのは間違いないが、個人的にはここまでなくてもいい。現場の状況や些細な違和感を一つ一つ解決していく、裏染天馬の推理の克明な描写が軸となっているのだが、その長さの割には真相に意外性がない。一つの事件を解決するプロセスなら、もうすこし精選して短編、中編ぐらいでもいいと思う。このシリーズの短編とか出てほしい。

No.2 6点 アイス・コーヒー 2013/10/12 18:33
新聞部が取材をしていた水族館の水槽で、サメがひとに咬みついた。しかも、容疑者の職員たちにはすべてアリバイがあり、現場には不可解な点が多くあった。裏染天馬シリーズ第二作。
前作よりフェアで分かりやすく、「館」に対するこだわりは健在。いささか「館」に執着しすぎな気がするが。クイーンを彷彿とさせる遺留品の推理や、ロジックはとてもよくできていたように思う。伏線もうまく回収していて、謎解き部分が楽しめた。
ただ、最後の○○○の推理の部分は伏線がわかりやすすぎで、違和感を感じる。もう少しあのセリフとあの描写を離した方が良かったのでは?容疑者が多くてなかなか感情移入できない点もある。それと、前作同様にエピローグの後味が悪く、読後感が微妙だ。
主要キャラは性格が細かく描写されて、ギャグもそれなりに楽しめて満足だが、あの「黒幕」と天馬の関係がどうも…

No.1 6点 kanamori 2013/09/13 23:10
アニメオタクのダメ人間、高校生・裏染天馬を探偵役に据えた本格パズラー、「体育館の殺人」に続く”館”シリーズの2作目。

水族館のサメ水槽に落下する飼育員の死体という発端こそ派手ですが、今回も、現場近くに残された備品から細かい推理を次々とつなぎ合わせて地道に真相に迫っていくロジック中心の犯人当てパズラーです。
最終章の50ページにわたる、関係者を一堂に集めた天馬の精緻な消去法推理の開陳シーンに全てが凝縮されていて、この部分の読み応えは圧巻です。その反面、伏線を仕込む中盤はややダレる感じもしましたが。
レギュラー陣は前作よりキャラが立ってはいるものの、11人に絞られた容疑者の書き分けが弱く、犯人の存在感もいまいちなので、犯人に意外性がないのが難点かなと思います。
最後に明かされるホワイに関しては賛否が分かれるところかもしれませんが、肯定派です。


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