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[ 本格/新本格 ]
アンデッドガール・マーダーファルス1
<鳥籠使い>輪堂鴉夜
青崎有吾 出版月: 2015年12月 平均: 6.29点 書評数: 7件

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講談社
2015年12月

No.7 6点 E-BANKER 2021/11/20 10:44
~吸血鬼に人造人間、怪盗・人狼・切り裂き魔、そして名探偵。異形が蠢く十九世紀末のヨーロッパで、人類親和派の吸血鬼が銀の杭に貫かれ惨殺された! 解決のために呼ばれたのは人が忌避する怪物事件専門の探偵・輪堂鴉夜と奇妙な鳥籠を持つ男・真打津軽。彼らは残された手掛かりや怪物故の特性から推理を導き出す~
2015年の発表。

①「吸血鬼」=敢えて、この“とてつもない”特殊設定には触れないでおこう。その「特殊設定」さえはぎ取れば、いかにも作者らしいロジックに拘った謎解きミステリーになる。中途で探偵役の輪堂鴉夜から示される「7つの疑問」・・・この疑問が解き明かされるとき、事件は解決されることとなる。そして、この特殊設定=吸血鬼だからこそのロジック! これこそが本作の白眉だろう。なかなかに納得の一編。
②「人造人間」=『キカイダー』ではない(古いな!)。どっちかというと『フランケンシュタイン』である。これも敢えてこの大いなる特殊設定には触れないでおこう。テーマは密室殺人である。ただし密室内には生まれたばかりの異形の人造人間がいた!ことはいたのだが、彼は生まれたばかりの赤ン坊程度の知能しかなかった、という設定。これも最終的には「人造人間」設定が生かされた解決をみることにはなる。
それはともかく、ベルギー警察の切れ者刑事として登場するのは、灰色の脳細胞を持つあの男!

以上2編。
上でも触れたけど、特殊設定は特殊設定として楽しめばよいのだが、根本的にはいつもどおりロジック重視の本格ミステリー。そして、特殊設定を生かしたロジックもなかなかの切れ味。
ということで、ごちゃごちゃした設定はあまり気にせず、普通のミステリーとして接すればNo Problem。
Part.2へ続くということなので、それも読むだろうな。
(次作の舞台は英国。この時代の英国と言うことは、やっぱり・・・あの人物が出てくるんだろうな)

No.6 7点 mediocrity 2021/01/29 06:58
特殊設定で突飛なことも起こりますから、読者が完璧な推理ができるわけではありません。
しかしながら、キャラクターもストーリーも魅力的で、アニメ化すれば人気が出そうな作品です。
吸血鬼の話の方がミステリとしては良く出来ていたと思います。

No.5 6点 八二一 2020/11/26 17:51
空想世界に作者得意のクイーンばりのロジックが組み込まれており、ホラー・SF的要素を含みつつ、ミステリとして十分に魅力的。

No.4 5点 makomako 2017/12/26 20:04
 推理小説はしょせんほとんどありえない世界のお遊びといってしまえばそれまでなのですが、私は現実との交差点が乏しいお話はあまり好みではありません。
 このお話はあり得ない設定のルール上で起きうる推理小説ということになるのでしょうか。
 作者の青春推理小説に非常に期待していたものとしては、違和感がぬぐえませんでした。

No.3 7点 メルカトル 2017/08/02 22:24
「怪物」が跋扈するパラレルなヨーロッパを舞台にした、本格謎解きミステリ+アクション娯楽小説、ですかね。
実に面白く楽しいです。かなり風変わりな探偵と「鳥籠使い」の探偵助手、そしてメイドの静句。三人の個性的な登場人物のやり取りだけでも楽しめます。その他にも灰色の脳細胞の小男の警部や、名前だけですがルールタビーユも出てきます。その辺り、ミステリファンの遊び心をくすぐる技に長けているとも言えそうです。
第一章は吸血鬼が主役です。特殊な舞台設定を存分に生かしたトリックや謎解きは、さすがに作者らしく、端正で過不足のないものとの印象を受けます。そして真相が判明した後のアクションシーンも、おまけとして十分すぎるくらいなサービス精神でもって描かれています。
第二章は人造人間がメインテーマです。ダミーの解決編も悪くないですが、真相は解りやすく、多くの読者の予想通りでしょう。ですが、その見せ方が堂に入っているので、「分かってるからとっととやってくれ」とはならないと思います。そしてまたしてもアクションシーン。やや長いですが、それなりに読み応えはあります。
続編は評価が低いようですが、どうしますかね・・・。

No.2 7点 名探偵ジャパン 2016/07/29 21:13
昨年末に創刊された、講談社の新文庫ブランド「タイガ」ロンチの目玉作品。
書き手は「平成のクイーン」こと青崎有吾。

吸血鬼や人造人間などの「怪異」が実在し、しかも人間と一部共存しているという特殊世界もの。平成生まれの作者は、こういったガジェットに物心ついた頃から接していたはずで、ある意味本領発揮といえるのではないでしょうか。さらにそこに、「ベルギー人の探偵(この時点では官職で警部)」「Mを頭文字に持つ教授」など、本格ミステリ界の重鎮も加わって、さながら「スーパーミステリ大戦」の様相を呈してきます。

怪物、魔術などが存在する世界とはいえ、推理はあくまでロジカル。ファンタジックなガジェットを前提として、作者得意の理詰めの展開が繰り広げられます。
第一章の最後で、犯人が判明するや否や、いきなり主人公が犯人をボコり始めたのには、唐突すぎてちょっと笑ってしまいましたが。

「高度に発達した技術は魔術と見分けがつかない」とは、SF作家、アーサー・C・クラークの有名な言葉ですが、携帯電話やパソコン、地球外にまで飛びだすロケットなど、百年前の人から見れば、まさに「魔法」としか思えないでしょう。そんな「魔法」に囲まれた我々の世界でも、今でも変わらず本格ミステリは生み出され続けています。「魔法」があるからといって、そこにロジカルな思考と解決が無意味になることなどないのです。
「魔法とか怪物とか出てくるのか……」と食わず嫌いをせずに(それは本作を読む前の私だ)本格ミステリファンにはぜひ読んでほしい一冊です。

No.1 6点 kanamori 2016/02/04 18:30
19世紀末、怪物が跋扈するパラレル・ヨーロッパを舞台に、怪物専門の少女探偵・鴉夜(あや)と、助手の”鳥籠使い”津軽、メイドの静句のトリオが怪事件に挑む、UGMF(死なない少女の殺人笑劇)シリーズの第1弾。

第1話は、人類親和派の吸血鬼一家が住むフランスの古城で起きた”吸血鬼殺し”というフーダニットもの。古典的トリックを吸血鬼特有の属性に活かしたアイデアが面白い。
後半の第2話では、人造人間の製造に成功した博士が、密室状況の地下研究室で首なし死体で発見される。ベルギー警察時代の”あの名探偵”による「アリバイ」崩しのダミー解決にニヤリとさせられるが、推理の選択肢が少ないので生首消失トリックの難易度はそう高くはないと思います。
謎解き部分以外では、怪奇小説やミステリ作品でお馴染みの名探偵や怪人・怪物の”著名人”の名前が多数出てくるのも愉しい趣向です。”教授”や”ジャック”らが登場するラストの引きで、続編への期待値を高める手際も上手いと感じた。
裏染天馬シリーズほどクイーン流ロジックにこだわっていない分、ギャグあり、アクションありで、キャラの立ったライトノヴェルとしてなかなかの出来映えだと思う。第2弾を楽しみに待ちたい。


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