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名探偵ジャパンさん
平均点: 6.21点 書評数: 341件

プロフィール高評価と近い人 | 書評 | おすすめ

No.341 7点 鳥居の密室 世界にただひとりのサンタクロース- 島田荘司 2021/06/19 23:03
久しぶりの島荘、そして御手洗! やっぱり好きだなぁ。出てくるだけでワクワクします。

本作のトリックについて、密室をどうやって作ったか、のハウダニットだけを取り出してしまうと、確かに、どうよ?となりますが(あんなこと、本当に起きるの?)、この話(トリック)の肝は、「どうして密室になったのか?」というホワイダニットにあります。そこに犯人の心情や、ある種の被害者であるヒロインの立場も絡んできて、そういう視点で読まないと、本作のトリックを味わい尽くすことはできないでしょう。作品からトリックだけを抜き出して語れないトリック、になっていますし、ミステリのトリックって、そういう使い方をするのが一番効果的なんだと思います。

No.340 6点 透明人間は密室に潜む- 阿津川辰海 2021/01/08 21:37
特殊設定あり、法廷もの(?)ありと、バラエティに富んだ短編集なのですが、私は一貫性がなく「とりあえず書いたものをまとめただけ」という印象を持ってしまいました。作者はまだ若いのですから、それぞれのテーマごとの短編をもっと書かせて、一貫性のある短編集として出したらよかったのではないかと思います。表題作が明らかに浮いています。

この作者、「紅蓮館」がライトノベルレーベルの文庫で出て、本作はハードカバーですね。どういう扱いを出版社からされているのか、いまいち掴み切れません(個人的には逆がよかったと感じます)が、次世代の本格の旗手になる可能性は十分秘めていると思います。

No.339 7点 サーチライトと誘蛾灯- 櫻田智也 2021/01/08 21:25
「虫に関する事件」という結構コアな縛りで、なかなかの短編集に仕上がったのではないかと思います。どの話も丁寧で職人芸を感じさせますね。
「キャラクターミステリ」という程には探偵も主張しすぎることなく、読者を謎解きに専念させているのも好印象です。続編も出ているので、そちらも読んでみたいです。

No.338 7点 東海道新幹線殺人事件- 葵瞬一郎 2021/01/08 21:19
本サイトの皆様のレビューで興味を惹かれて読んでみました。これは確かに「隠れた名作」と呼ぶにふさわしいかもしれません。このタイトルからこの内容はちょっと想像できませんでしたね。逆に、このタイトルを信じて買って、「もっとユルいのを読みたかったんだ!」という逆クレーム(?)が来てもおかしくありません(笑)
続編もあるようなので読んでみたいと思わせる、思わぬ拾い物の逸品でした。

No.337 7点 ノッキンオン・ロックドドア2- 青崎有吾 2021/01/08 21:12
当初の予定からかなり期間を空けての刊行となってしまいました。
キャラクター小説という側面がある以上、登場人物のキャラクター像や人物関係をおさらいしてから読むべきで、そうしないと面白さが半減してしまうのでしょうけれど、面倒くさくてそのまま読んじゃいました(登場人物の名前も含めて、「探偵が二人組」ということ以外、ほとんどすべての設定を忘れていました)
こういうことがあるから、キャラクター小説は読者の記憶が確かなうちに矢継ぎ早に出していかないと駄目なのです。

相変わらず手堅いミステリを量産できる器用な作家ですね。「ハズレ」のない良い短編集でした。
最後に登場人物の関係性の総決算が行われるので(少年漫画の打ち切りラストみたいな駆け足感でした)、できれば前作から続けて一気読みすることをおすすめします。

No.336 6点 たかが殺人じゃないか- 辻真先 2021/01/08 21:03
本作がミステリ賞三冠というのは、確かに「?」と思ってしまいます。
他のレビュワーの方も書いているとおり、ミステリ部分というよりは、大ベテランである作者へのねぎらいの意味も含めての受賞なのかなと思います(それが悪いとは言いませんが)

作品の結構リアルな雰囲気と、二件の殺人のいかにもなトリック(金田一少年みたい)が嚙み合っていない感じがしますし、「三冠」という前情報を知ってから読んだため、勝手に期待値を上げてしまいました。まっさらな状態で読めたら、もっと違った評価、印象になっていたかもしれません。

No.335 5点 天城一の密室犯罪学教程- 天城一 2020/09/01 09:41
頭の良い人の書く文章というのは、凡人には容易に理解させてもらえません。事件の謎ではなく、どういう状況なのか? 何が起きているのか?を読解するほうに余程頭を使いました。自作解説パートで、「一般の読者には受け入れてもらえなかった」みたいなことが何度か書かれていますが、そりゃそうだろ、と突っ込みたくなります。ミステリを楽しむのはインテリばっかりじゃないぞ。

問題の(?)「高天原の殺人」ですが、これ単体で読めば「そんなうまいこと行くんかいな」と懐疑的な目で見てしまいますが、本作がチェスタトンの「見えない男」にインスパイアされて、日本的「見えない男」というか、作者自身の体験を踏まえて「見てはいけない男」(ネタバレ?)に着目して書かれた、ということを知れば、なるほどと思います。ミステリの発想って、こういうところにあるんだなと面白く読みました。

No.334 3点 狼と兎のゲーム- 我孫子武丸 2020/08/06 11:36
ちょっと、作者が何を書きたかったのか不明な一作。
あとがきによれば、作者は「逃亡もの」が好きで、ただ単にその系列で書いただけのようですが、トリック的な驚きもなく、悪人は最後にあっさり捕まるだけで、ひどい話という印象しか残りませんでした。
本作は元々、子供向けの「ミステリーランド」用に構想されていたものだそうですが、「ひどい話」で子供に読ませるのはどうか、と考え直して「ミステリーランド」には別の作品を提出したそうです。
作者は「子供のトラウマになるような話を書こう」と最初から考えていたそうですが、「子供のトラウマ」って、そもそも大人が狙って書いていいものなのか?と疑問です。「子供向けとオブラートに包まずに、大人が真剣に子供に向けてメッセージ性を持って書いたものが、結果的にトラウマになる」みたいなのが正しいトラウマ(?)だと私は思っています。メッセージも何もなく、端から「子供のトラウマにしてやろう」などと邪心を持って書くものは、ただの加虐趣味的な嫌がらせでしかないと思うのは私だけでしょうか。

No.333 7点 名探偵は嘘をつかない- 阿津川辰海 2020/08/06 11:24
序盤から「死んだ人間が別の死体に魂を入れて『転生』する」とか出てきて、叙述的なトリック的な何かかと思ったら、マジものの転生でびびりました。特殊設定ミステリって、もう完全に市民権を得ましたね。本作なんて、それを匂わせるタイトルとか売りにする惹句とか一切ないまま、仕掛けのある館や、絶海の孤島みたいに、その世界に存在するのが当たり前のように普通に出てきましたからね。「この館は建築基準法に違反している」とかいう突っ込みを入れて楽しんでいたのも今は昔。読む側も頭を柔軟にしていかなければ、これからのミステリ業界で取り残されてしまいます。
そんなぶっとんだ本作ですが、殺人事件に対してのロジックなんかは驚くほど精緻に作られていて、本格ミステリとしての強度は十分に持っているといえるでしょう。「名探偵」が資格となってそれを育成する機関が存在するとか、中二な設定もありますが、楽しめることは確かです。

※以下、もしかしたらネタバレかもしれません※



ひとつだけ気になったのは、序盤の事件で阿久津が主人公を見殺しにする必要は、結局なかったような?
阿久津は犯人の動きを完全に把握して逆トリックを仕掛けていたわけなので、犯人がそれに乗っかるのを隠れて見ているか、監視カメラでモニターしておいて、いざとなったら乗り込んで現行犯逮捕しても問題なかったのでは? まあ、ここで主人公を殺さないと、彼が転生できなくなって以降の話が進まなくなるという事情があったのかもしれませんが。

No.332 7点 永遠の館の殺人- 黒田研二 2020/07/27 22:56
「KillerXシリーズ」完結!
シリーズものとはいえ本作単体でも楽しめますが、この作品は前二作を読んだうえで(出来るなら連続して読んで、記憶が確かなうちに)取り掛かっていただきたいですね。
館に住む人たちの秘密、死体が消えるホワイダニット(ハウダニットではないところがミソ)などは、今どきの20代の若い作家が好んで書きそうな常軌の逸し方ですが、当時45歳の二階堂黎人(共作の黒田研二でも当時35歳)が書いているんですね。こういったものを書ける若い感性って貴重だと思います。

No.331 4点 黒い森- 折原一 2020/05/16 15:57
折原一はときどきこういうことをやりますね。
本の前後がそれぞれ「生存者」「殺人者」というタイトルになっていて、その両方を読み終えたら、いよいよ完結編ともいうべき「206号室」に進みます。この「206号室」は袋とじになっていて、否が応でも期待を高まらせます。ですが……
完全な「ギミック負け」の一作になってしまった感があります。「前後どちらから読んでもよい」と言いながらも、「なるべく「生存者」のほうから読んでくれ」とも書いてあるので、こんなことなら普通に前後編にしたほうがよかったのでは。
作中の「ミステリーツアー」の目的も早々に察することができますし、ラストも特に意外性のあるものでもなく、「インパクトがあったのは本のギミックだけ」という作品になってしまったと思います。
折原一は多作ゆえか、当たりはずれの落差が他の作家よりも激しいように感じます。

No.330 6点 七色の密室- 佐野洋 2020/04/29 22:48
ある日、佐野が「七人の作家による密室特集」という企画を編集者に持ち掛けたところ、「密室と限定するとトリックや設定がぶつかる恐れがある。それなら佐野さんが一人で書いてみませんか?」と返され、生まれたのが本作だそう。確かに一人の作家が書くなら、トリックや設定がぶつかることはあり得ないわけで、まさに「一人アンソロジー状態」
「現代のミステリファンでも遜色なく読める」とはさすがに行きませんが、初出の1977年という年代を考えれば(そして一人の作家が全て書いていると思えば)十分及第点を付けられるレベルの短編集だと思います。

No.329 6点 千年岳の殺人鬼 - 黒田研二 2020/03/15 22:36
一作目『Killer X』は趣向を凝らした怪作で、本作も楽しめたことは楽しめましたが、なぜか前作のようには乗れませんでした。
「趣向を凝らしたトリック」は本作にもあるのですが、タネを明かされても、「あっそ」で終わってしまうというか。一作目と比較して、トリックの質自体に大きな差があるとも思えないので、こればかりは読者の趣味、好みの問題でしかないのでしょうね。
思うに、叙述トリック(あー、書いちゃったわ)に最も必要なのは、確か綾辻行人がどこかで書いていたことですが、トリックが明かされる前と後の「落差」です。そう考えると、本作にはその「落差」がなかった(私が感じなかった)のが原因なのかもしれません。

No.328 5点 皇帝と拳銃と- 倉知淳 2020/03/09 16:12
本作にキャッチコピーを付けるなら、「ザ・可もなく不可もなく」というものに私はしたいと思います。
もう、本当に普通の倒叙ものです。ラスト一話だけが少し凝っていますが、それ以外はもう本当の本当に普通。
主人公が死神みたいな容姿をしていて、相棒がスーパーイケメンだそうで、そこが他の類似作品との差別化になってはいます。
ですが、本作は基本、犯人も含めて聴取を受ける人物の視点で書かれているのですが、新しい登場人物が出てくるたび、「刑事が死神みたいで、相棒はイケメンだ」ということに驚く描写が入り、しかもそれが結構な行数に渡って続けられて、それが正直しつこいです。この場面を集めただけで、全文章量の一割くらいは消費しているのではないでしょうか。繰り返されるこの描写がラストへの伏線になっているのか? とも思っていたのですが、全然そんなことはありませんでした。
倉知淳はこんなものではないはずだぞ。

本筋とは全然関係ないのですが、倒叙もので主人公が慇懃な口調の刑事、という共通点から、主人公の台詞をかなりのシンクロ具合で「古畑任三郎」の喋り方で脳内再生することができます。途中で飽きたら、こんな楽しみ方も一興です。

No.327 6点 無事に返してほしければ- 白河三兎 2020/03/02 14:06
この著者の作品は初めて読みました。
どうやら、青春ミステリ系を得意としている作家のようで、本作を読んでいて、どうもこなれないな、と感じたのはそういったところによるものかもしれません。
やりたいことはよく分かるし、「読者を驚かせよう」という気概も伝わってきて、実際それは十分驚きに値するものなのですが、書き方がやはり、こなれていない感じです。読者にトリックを見破られるのを過度に恐れているのか、ぼかしすぎなところもあったり。
同じプロットを別の、こういうものを書き慣れている作家(折原一とか、などと名前を出すとネタバレっぽくなってしまいますが 笑)が書けば、もっと完成度の高いものに仕上がったと思います。難しいですね。

No.326 6点 ナポレオン狂- 阿刀田高 2020/02/27 09:00
表題作はある人物が出てきた時点でオチが読めてしまいますが、これは様々な作品に触れた現在の目で見るためなのかもしれません。何せ40年前の短編集ですから。それを考えれば、収録作品どれも読んでいて古びた感じがほとんどしないというのが凄いですね。
個人的ベストは「来訪者」です。主人公の二人、どちらに肩入れしてよいのか迷いながら読み進めていって、最後にあのオチ。素晴らしかったです。

No.325 7点 Wの悲劇- 夏樹静子 2020/02/27 08:47
「タイトルが海外有名シリーズにあやかっているだけで、中身は二時間ドラマ並みの小粒ミステリ」と勝手に偏見を持っておりました。
読んでみると、かなり本格度高めのうえ(過度にエキセントリックでなく、ほどほどリアルなのも一般受けする要因でしょう)、クイーン本人公認(?)だったとは!
現在の目で見るとそれほどでもないでしょうが、発表当時はかなりの驚きを持って迎えられた作品だったのだろうと思います。
ミステリファンなら押さえておきたい一作です。

No.324 5点 流転の女- 松下麻理緒 2020/02/09 23:06
『転落』と改題された文庫版で読了しました。
「普通」という感想以外、特にありません。
でも、これは別に貶めているわけではなくて、こういう「普通さ」って重要だと思うのですよ。これは多分、誰でも読めます。「ミステリって面倒くさいから苦手」という人も、これなら読めます。で、「ミステリって難しいと思ってたけど、意外といけんじゃん」と自信を持ってくれたら、さらに世間で話題になっている有名どころのミステリに手を伸ばしてもらえたりする可能性があったりなかったりしますから。

No.323 6点 怪物の木こり- 倉井眉介 2020/02/01 16:23
物語の開始早々「脳チップ」という架空のアイテムが出てきて面くらいました。この「脳チップ」に関する設定のご都合主義がなければ成立しないストーリーのため、登場人物の葛藤などを説かれても、「そりゃ、作者がそういう設定にしたからね」というメタレベルの「覚め」がどうしても出てきてしまい、いまひとつ乗れませんでしたね。これが漫画やドラマなどで、引き込まれるビジュアルや役者の好演で、そういった不自然さを覆い隠してくれていたら、もっと楽しめたように思います。「小説」って、そういう意味で作家の「生の力」がモロに反映されるので、難しいんだなと改めて思いました。

No.322 7点 時空旅行者の砂時計- 方丈貴恵 2020/01/29 13:51
鮎川哲也賞受賞作品だというのに、発売から三ヶ月一件も書評がないというのはどういうことでしょう?
やっぱり皆さん、このタイトルを見て「あ、これヤベーやつだわ」と嗅覚を発揮したのでしょうか?
本作の概要は、「主人公が過去にタイムトラベルして、妻の命を救うため、その遠縁となっている過去の連続殺人事件の謎を解く」というものです。これを読んで「俺の嗅覚は正しかった」と安心した方もいると思います。さらにこの「タイムトラベル」という要素は舞台設定だけで終わりません。トリックにもがっつり絡んできます。正真正銘「特殊設定ミステリ」なわけですね。ですので「この手のミステリが苦手」という方は回避してもいいのではないかと思います。私は、それでもよく出来ていた(「特殊設定」のトリックへの使い方も含めて)と感じたので、この点数を付けていますが。

ここからは余談です。
本作(及び今回の第29回鮎川哲也賞への全ての応募作品)は、時期的に、近年まれに見る大怪物作品へと成長した第27回の受賞作品を踏まえたうえで応募されたものであるためか、巻末に掲載されている講評にあった最終選考作品にオーソドックスなミステリは一本もなく、全てが何かしらの「色物系」属性を持った作品だったようでした。
そもそも「新人賞」には「これまで誰も読んだことのないような斬新な作品」が求められがちですが、それを考慮するとしても、もはや現代ミステリにおいては「オーソドックスなミステリ」は必要とされていないのかな?と少し寂しい思いをしました。「江戸川乱歩賞」や「横溝正史ミステリ大賞」などの受賞作を見ても、「色物系」「社会派」「医療系」のどれかが受賞している印象がありますし。

名探偵ジャパンさん
ひとこと
絶対に解かなければいけない事件が、そこにはある。
好きな作家
有栖川有栖 綾辻行人 エラリー・クイーン
採点傾向
平均点: 6.21点   採点数: 341件
採点の多い作家(TOP10)
三津田信三(14)
綾辻行人(10)
北山猛邦(9)
深水黎一郎(9)
青崎有吾(8)
東川篤哉(7)
歌野晶午(7)
詠坂雄二(7)
早坂吝(7)
折原一(7)