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[ サスペンス ]
レモンと殺人鬼
くわがきあゆ 出版月: 2023年04月 平均: 6.33点 書評数: 9件

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宝島社
2023年04月

No.9 7点 ミステリーオタク 2023/11/30 18:12
 なるほど、これが例の昨年の「このミス」大賞・文庫部門のグランプリ受賞作の改題版ですか。

 宣伝文や何となく見てしまっていたレビューなどの前情報から想像していたほどの派手さは感じられなかったが、終盤の薄っぺらい怒涛の展開は理屈抜きで純なエンターテインメントとしてシンプルに楽しめた。

 しかしエンディングはどう捕らえるべきだろうか。

No.8 6点 名探偵ジャパン 2023/10/09 22:39
 ラストに向けての怒濤の展開は、まあ、確かに凄かったのですが、「サプライズのためのサプライズ」とでも言いましょうか。「みんなこういうの好きでしょ」という作者と、「こういうのが今売れるんだよ」という編集者の心の声が聞こえてくるようで、少し覚めますね。
 本来「どんでん返し」って、想定の外からやってくるものだと思うのですが、今はもう「これは、どんでん返しものだぞ」という、それ自体がパッケージに収まっているのを分かったうえで読んでしまっていますからね。

No.7 5点 HORNET 2023/10/09 18:31
 十年前、洋食屋を営んでいた父親が通り魔に殺されて以来、母親も失踪、それぞれ別の親戚に引き取られ、不遇をかこつ日々を送っていた小林姉妹。しかし、妹の妃奈が遺体で発見されたことから、運命の輪は再び回りだす。被害者であるはずの妃奈に、生前保険金殺人を行なっていたのではないかという疑惑がかけられるなか、妹の潔白を信じる姉の美桜は、その疑いを晴らすべく行動を開始する。2023年第21回『このミステリーがすごい!』大賞文庫グランプリ受賞作。(「BOOK」データベースより)

 読者の想定をひっくり返そうとする姿勢は分かるのだが、人物像(評価)がくるくるとひっくり返される展開は、ちょっと「どんでん返し」を狙いすぎではないかとも感じた。そう感じるのは恐らく、その「ひっくり返し方」に丁寧さが欠けていて、何だかチープな展開になってしまっているからではないかと思う。ストーリーテーリング自体は魅力的で、非常に楽しく読み進められたのだが、終末にかけての展開が「怒涛」というよりは「乱暴」に感じてしまった所があった。

No.6 7点 sophia 2023/10/06 18:52
ネタバレあり

終盤に主人公の家庭の秘密が明かされるところが最高潮でしたかね。その後のもうひとつのどんでん返しは無理にもうひとひねりさせた感じがあり、蛇足に感じました。しかしながらサスペンスとして出来がよく、一気に読ませる力がありました。主人公の妹に対する複雑な感情など心情描写もよく出来ています。それだけに最後の着地をもっとしっかり決めてほしかったかなと思います。それと姉妹が××であることを伏せていたところと、ある人物がある人物を自分が勝手に付けた名前で呼んでいたところは多少引っ掛かりを覚えました。

No.5 7点 まさむね 2023/08/31 21:05
 転がしまくりますねぇ。単なる反転ではなくソコに「歪み」を噛ませていることがポイントで、特に主人公のとあるシーンは記憶に残りそう。不安定さの中の安定さ(意味不明?)とでも言いましょうか、先が気になってグイグイ読まされました。切り上げてこの採点。売れているのも頷けます。
 一方で、最終盤の展開は、やや力技が過ぎるような気がしないでもありません。それと、173ページの、ある人物表記は明らかなミスですよねぇ。

No.4 6点 makomako 2023/08/27 12:27
めまぐるしく変わっていく展開がなかなかすごい。
登場人物もどんどんキャラクターが変化してしまう。
これだけやると普通はあきれるかちょっといやになるのだが、何とか最後まで持たせてくれている。

ちょっとネタバレ

最終的にはとんでもない登場人物たちがとんでもない行動をしていることになるのです。
こういった展開だと性悪でご都合主義のお話となりがちなのですが、何とかうまくまとめてあるので、読後感がそれほど悪くはありませんでした。

No.3 7点 虫暮部 2023/08/10 12:26
 なかなか凄い。特に、ネタを小出しにする呼吸が絶妙。これだけ反転を重ねても自然に読めるなんて。
 但し、厳しく言えば、これはハードウェアの凄さだと思う。ヘヴィ・メタルを聴いて “ギターの速弾きが凄い” と言うようなものである。どんな曲だったかは覚えていない、もしくはたいしたことのない曲でも技術があれば速弾きの素材にはなるのである。あれよあれよと言いつつ読み終え、さて……と一息入れたところで、心に残っているサムシングはあまり無いかな~。
 人間が描けてないとかそういうことではなく、もとより定義出来ない事柄だけれど、特別な一冊になる為の何かを置くべき場所が空白だと感じた。勿論、小説には色々なタイプの良さがあるし、凄い速弾きなのでそれだけで表現になってはいるのだけれど。

No.2 6点 蟷螂の斧 2023/07/12 22:46
四転五転と帯に謳われていますが、やや強引かな?。「このミス・・・」文庫グランプリ受賞作品「レモンと手」を改題のうえ、加筆修正したとありますので、そのあたりに原因がありそうです。つまり五転?あたりを大幅に変更?したため、伏線もなく非常に唐突に感じられるのです。オチとしてはいいんですヨ!。父親殺しの少年が出所した件について、警察の動き等の描写があれば、もっとオチが生きたはずです。惜しい。

No.1 6点 人並由真 2023/05/20 16:08
(ネタバレなし)
 派遣社員として大学の事務員を務める「私」こと20歳前後の小林美桜は、別居していた双子の妹・妃奈が何者かに殺害されたことを知る。妃奈は生前、生命保険の外交員をしており、その妃奈は彼氏らしい男性の死亡時に、多額の保険金を受け取っていたことが明らかになった。妹が保険金殺人を働いていた? 信じられない美桜は独自の調査を始めようとするが、そんな彼女のもとに一人の男性が近づいてくる。

 今年の新刊で話題になってるので、読んでみた。

 妙に腰の据わった、ポキポキと音を立てるような文体は、戸川昌子とかあの手の昭和の女流作家を想起させるものがあり、そういう意味では読みやすい。物語を積み上げる要素も、有力者に寄りかかり庇う地元住民とか、知恵遅れの女性の運用とか、どこか昭和的だ。

 どんでん返しの物量で勝負しているような作品で、そこが魅力なのは確かだが、一方でこれだけ手数が多いとどうしても無理筋めいたものや不自然なものも目についてしまい、それまでウソがウソと露見しなかった都合の良さも気にかかる(叙述的には、作者はいろいろと気を使って書いている、のはわかるのだが)。
 あと、反転の物量が過剰なため、最後の方になると驚きが驚きでなくなってくる。
 まあこれは、作者(作品)と受け手との距離感や相性も大きいとは思うが。

 いびつな力作、なのはたぶん間違いないだろう。
 タイトリングの「レモン」の寓意には、ちょっと感心(そんなに深いものはない? が)。


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くわがきあゆ
2023年04月
レモンと殺人鬼
平均:6.33 / 書評数:9