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虫暮部さん
平均点: 6.26点 書評数: 1009件

プロフィール高評価と近い人 | 書評 | おすすめ

No.1009 8点 ブックキーパー脳男- 首藤瓜於 2021/06/22 12:51
 八合目までは寝食を忘れて読み進んだが、結末に大きな驚きが無く以下次号とはぐらかされた気分。続きが出るならいいけど大丈夫?

 厳しく見るなら――連続殺人の目的である権力の源について、理屈としては判らなくもないが、ソレを持っていれば強いよなぁとの実感は得にくい。
 “誰々がいった。”が連続する地の文とか、もう少し工夫を。
 計算せずに風呂敷を広げて膨れ上がってしまった感じ。キャラクターが話を引っ張るのではなく、話の展開に合わせてそれに必要な奇人を新たに登場させる本末転倒な感じ。但し、御都合主義があまり気にならない得な空気感を備えてはいる。
 
 第二章。死者のうち一人(茶屋警部並みの巨漢)は現場に出入りするだけで大変そう。地下室の構造に関する伏線かと思ったが違った。うーむ。

No.1008 7点 櫻子さんの足下には死体が埋まっている わたしを殺したお人形- 太田紫織 2021/06/17 10:56
 語り手がどす黒い思いを改めてはっきり吐露し始めたのが良い。“化け物対決”を単なる伝聞で流しちゃったのは勿体無い。

No.1007 5点 裁きの鱗- ナイオ・マーシュ 2021/06/16 10:03
 ミステリのフィールドの一部に、こういうアガサ・クリスティ的なスタイルがあり、私はそれなりに嗜むけれど全面的支持と言うわけではない。封建的な舞台で思惑があちこち絡み合う群像劇。よく読むと各人は微妙に変かも。しかしいかんせん地味。鱒や猫の使い方もぱっとしない。

 “アーチェリーの矢にご注意”なんて掲示されても、歩行者にどうしろって言うんだ。

No.1006 7点 ドラゴン殺人事件- ヴァン・ダイン 2021/06/12 12:45
 これ昔ジュヴナイル版を読んだなぁ。結末の、とある小道具が出て来るところで、漫画調の挿絵を思い出した。 

 さて今読んで。臨場感があって予想以上に面白くはあった。
 しかし事象としては地味で、“戦慄すべき”だの“あらゆる合理的思考を超脱”だのと煽るようなものではないでしょ。読み終えて苦笑。もっと事件のサイズに合った堅実な書き方をした方が、却って不可解な部分が引き立ったと思う。
 もしくは、現代に奇怪な竜が実在するのか? 因習の一族と謎の客人達の目的は? 狂った老婆の語る伝説とは? と幻想&ホラー風味を前面に出してサスペンスフルに書くか。いや、ヴァン・ダインの筆力では……。

No.1005 4点 ポアロのクリスマス- アガサ・クリスティー 2021/06/12 12:43
 犯人は捜査の落としどころとしてどのようなものを期待していたのか。自殺・事故は端から無理。特定の誰かに濡れ衣を着せようとしたフシも無い。迷宮入り狙い? 窓に施錠して外部犯を否定したのは失敗では。
 もう一つ。トリックに使ったゴムは現場に残る。それは犯人には予め判ることだよね。上手く隠滅出来たのは単なる幸運だよね。発見されたらそれだけでトリックがバレかねない。ではそのリスクを押してでもゴムの使用が必須かと言うと、そんなことはない。家具がひっくり返る音だけで充分に人は集まる。余計なことをして、しかもそれがきっかけで破綻していることになる。

 と考えると、まだ検討の余地がある近視眼的な計画を、こらえきれず実行してしまった、と言う印象。でもこの犯人、そんなキャラかなぁ?

No.1004 5点 ブラウン神父の不信- G・K・チェスタトン 2021/06/12 12:42
 ブラウン神父シリーズを読みこなすのは意外と難しい、かも。“難解”とはちょっと違う。物語の流れに上手く乗る為の然るべきタイミングやポイントがあり、そこを逃すとページを戻して詳細を理解し直しても何か大切なスピリットが流失するような。そうなってしまうと、今読んだばかりだと言うことが却って障壁となり楽しみを遠ざけてしまうので、忘却の恵みによって新鮮さを取り戻した頃に再度試みるしかない。今回私は読み方失敗。

No.1003 5点 男の首- ジョルジュ・シムノン 2021/06/12 12:41
 変な話だ。そんな“実験”、アリか? 死刑判決を下した陪審員は安直だが、メグレも彼のどこに首を賭ける程の信頼を見出したのか?
 語られる真相は存外に面白い。しかしメグレの口による間接的な説明なので、どこか薄い膜の向こうを見ているようで勿体無い。この手の心理は、倒叙形式か、そこまで行かずとも犯行前後の諸々を直接描写出来る形で書く方が良くない? こういうのは我が国の新本格勢のほうが上手く書くなぁ。

No.1002 6点 シャーロック・ホームズの回想- アーサー・コナン・ドイル 2021/06/12 12:41
 “そうか、ホームズ物語ってこういう感じか”と第1集を読んでそれなりに判ったので、然るべき向き合い方で挑む。つまり、捻りの無い実録風犯罪小説兼時代風俗小説として、期待し過ぎずあるがまま流れに任せるが吉。コツが摑めたので前巻よりは楽しめた。
 外国語の暗号も「グロリア・スコット号」ぐらい簡単なら面白い。「ギリシャ語通訳」で証人の安全を確保する前に広告を打っちゃうなんて対処が雑だよ兄貴。「最後の事件」の最後の手紙に涙。

No.1001 7点 消えた断章- 深木章子 2021/06/08 11:19
 被害者達のうち、“失踪者を探し回っているのが脅威だった”とされるSYが殺された理由がよく判らない。そもそもこの人は存在意義が希薄で、ポッと出て来てすぐ殺されちゃった。余分なエピソードなのでは。

 クリスティ談義は某長編('37年)を暗示しているのか。

No.1000 7点 他人の顔- 安部公房 2021/06/05 10:01
 病気で、怪我で、または生まれ付き、顔を失って仮面で生きる男女――御馴染のこのキャラクターの在り方に、ここまで深く潜ったのは初めて。某作も某作も、犯人にはそんな苦悩があったんだねぇ。入れ替わりも楽じゃない。一読、ゴシック系ミステリの見え方を変えてしまう、なかなかの劇薬。仮面製造会社の妄想が昨今のフェイクニュースやマスク社会を射抜いており可笑しい。

No.999 6点 ヴェロニカの鍵- 飛鳥部勝則 2021/06/03 11:17
 確かに一人の画家の死が描かれるものの、それと関係の乏しいサイド・ストーリーにもページが費やされ、読み終えて振り返るとミステリとしては歪な形で、それも作者は承知の上のようだが、謎がポツンと孤立する配置ではなく周囲との有機的なつながりがもっと欲しかった。某が冷静に対処していれば死ななかったかも、と言う皮肉な指摘には唸らされたけどね。

No.998 7点 石の血脈- 半村良 2021/06/01 12:29
 前半はSF伝奇ロマンと言うより企業サスペンスみたい。めまぐるしく場面が変わり、相関関係の把握が大変。結末では作者が息も絶え絶え。ケルビムの居並ぶ異様な情景はもっと堪能したかった。
 雑誌連載じゃないのだから全体をもう少し俯瞰的視点で整理して、ラストにこそじっくり紙幅を費やしても良かったと思う。特に昔の知人を消して行くところ。“あんた、好い人だな”会沢は助演男優賞。

No.997 5点 飢餓同盟- 安部公房 2021/06/01 12:28
 革命を志す秘密結社のアレコレ。面白い場面が無くはないが、思索的な深みも、物語としての興趣も、中途半端で物足りなかった。誰かが安部公房を模倣して書いたものの本家には及ばず、と言った印象。

No.996 6点 交換殺人はいかが? - 深木章子 2021/06/01 12:27
 この作者の長編には非常にパターン化された人物が多く登場してしばしば鼻に付いて感じられるが、パターンでもキャラクターがあるだけまだましなのだと気付いた。本短編集に於ける事件関係者は、事件を構成する役割があるだけの記号と化している。
 トリックが漫画的だったり純粋な推理クイズに近かったり(共に悪い意味ではない)して、そういう記号扱いが嵌まっているものもあるが、幾つかはもっと長くして人物に厚みを持たせた方が説得力が増すと思った。

No.995 5点 涼宮ハルヒの暴走- 谷川流 2021/06/01 12:27
 ハルヒは世界からドッキリを仕掛けられ続けているようなものだから、企画が尽きる前に一つ上の階層を引き込み新たな展開を図る――順当な策だけど、地味になっちゃってない? 謎の数式もなんだかどうでもいいような答だ。一方、SF的不条理をまるで含まない「射手座の日」が結構いい。

No.994 7点 親しい友人たち- 山川方夫 2021/05/30 11:27
 純文学なんか書く人だから、ミステリについての理解が多少的外れでも責められないよね。これは玉石混交でも仕方ないかな。

 と言う偏見の下に読み始めたら、その打率の高さに驚いた。全33編のうち、省いても良かったかなぁと言うものは5編程度。起伏の少ない心理的ミステリも純文学の血を感じられて悪くないが、はっきりと犯罪小説している「三つの声」が(緩い部分もあるけど)一推し。

No.993 7点 菩提樹荘の殺人- 有栖川有栖 2021/05/28 12:27
 有栖川有栖の文章はやはり良い。あちこちに挟まれた批評もナイス。
 「探偵、青の時代」。最後の mew の使い方がいいね。
 表題作。警察が抜いた池の水、元に戻しておいてくれないんだ……。

 余談:とあるCDを聴いていて、ふと気付いた。
 「哀愁トラベラー」作詞:高柳恋 作曲:渡辺真知子
 コマチ刑事の名前の由来はコレ? 偶然かな?

No.992 5点 櫻子さんの足下には死体が埋まっている キムンカムイの花嫁- 太田紫織 2021/05/28 12:17
 第弐骨。疑惑の残る自殺が、実は本当に自殺だった場合、後から証明するのは結構難しい。まぁミステリでそんなオチはそうそう無いか。真相とされた遺体二つの動きはちょっと出来過ぎ。

No.991 7点 白の協奏曲- 山田正紀 2021/05/25 12:40
 こういう“撤去作戦”が実施されたら、私はどうするだろう。火事場泥棒のほうが怖いな~。テレビやラジオを聴取する義務は無いのだから、そんな指示は知らないぞと言い張れる。居留守を使って数日部屋に籠もるか。
 物凄い大金とか財物とか、人間一人の身の丈とあまりにスケール感の違う欲望を見ると、その対比に哀しみを感じてしまうことがある。結末の“散骨”の場面もそんな感じだった。
 第一楽章で説明される“囚人ゲーム”はちょっと説明不足。
 楽団員は全員男性なので表紙のオブジェにはミスがある。

No.990 5点 石の眼- 安部公房 2021/05/25 12:39
 全体を貫く灰色の空気感。謎の成り立ちが曖昧で、人々はその周りをぐるぐる回っている。戯画的な雰囲気にいきなり厚みのある思考が切り込んで来たりして落ち着かない。
 “謎”とはそれを載せるなにがしかの土台があってこそ成立するわけで、そこを不確定にした本作は結果的にミステリに対する批評、と言うにはしかし中途半端で、最終章で何故あんな行動に出るのか不可解。そしてそれでこそ安部公房。

虫暮部さん
ひとこと
好きな作家
泡坂妻夫、山田正紀、西尾維新
採点傾向
平均点: 6.26点   採点数: 1009件
採点の多い作家(TOP10)
西尾維新(59)
エラリイ・クイーン(47)
有栖川有栖(46)
森博嗣(41)
山田正紀(36)
泡坂妻夫(28)
アガサ・クリスティー(24)
小林泰三(21)
法月綸太郎(19)
島田荘司(18)