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[ サスペンス ]
彼女たちの牙と舌
矢樹純 出版月: 2025年05月 平均: 6.50点 書評数: 4件

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幻冬舎
2025年05月

No.4 6点 パメル 2026/06/10 07:36
中学受験を控えた4人の母親たちが、思いも寄らぬ形で犯罪に巻き込まれていくサスペンス。
序盤はママ友同士のマウンティングや嫉妬を描くイヤミスのような雰囲気だが、中盤から一気に犯罪組織との命懸けの攻防へとシフトしていく。物語は4人それぞれの視点で語られ、互いに抱える不満や表面上は見えない本音、誰が味方で誰が敵なのか分からない関係性が徐々に露になっていく。この見えていたはずの現実が何度も反転する構造によって真相はつかめないまま翻弄され続ける。
この作品で描かれるのは、特殊詐欺や闇バイト強盗といったニュースでよく見る犯罪。4人がどのように事件に関わったかが描かれるが、次の章に移る直前で意外な情報を突きつけてくるので、誰を信用していいのか分からなくなってくる。
4人の女性が犯罪に手を染めるという構図から、桐野夏生の「OUT」を彷彿させ、非常事態に陥った女性たちの強さが印象的であるが、緊迫感がやや弱いところが残念。

No.3 7点 HORNET 2026/01/25 20:04
小6の息子を中学受験させるために塾に通わせている後藤衣織は、同じ塾に子供を通わせる「お受験ママ」の3人とお仲間として集う日々を送っていた。ある日、4人でのティータイムの帰り道にメンバーの手島知絵に「相談がある」と呼び止められる。話を聞くと何と、智絵がバイト感覚で詐欺グループの仕事に加担してしまい、深みにはまっているという。対応策を練る中で、グループの他の主婦たちも関わっていることが分かってきた…



<ネタバレ>
 4人の主婦それぞれの視点からの物語が章立てされ、それによって智絵の悪事への加担から始まった物語が、実は衣織以外のメンバーすべてが関わっていたという驚きの全体図が見えてくる。桐野夏生の「OUT」さながらに、一般的な生活を営んでいた主婦たちが、いとも簡単に犯罪のハードルを越え、「〇しちゃいましょうよ」という話にまで至ってしまう非日常への飛躍。主人公的な存在の衣織の推理力により、それが段階的に明かされていく構成はうまかった。
 ラストの締め方も面白く、現実的ではないにせよ物語としての面白さは十分にあり、かなり楽しめた。

No.2 7点 虫暮部 2025/10/31 13:11
 随所に捻りがあって息をつく暇も無い。ただ、全体として、“言質を取る” とか、相手のフェアネスを信頼し過ぎな感がある。殺人も辞さない反社なのに。反撃したら駄目だろう。ロックオンされないように逃げることをもっと重視しないと。
 まぁ最後の落としどころは、それを踏まえて上手いところを突いていたと思う。

 ところで第一話。あの人が相手方に情報を売ったなら、前半の “どうして素性がばれたのか?” の推理は机上の空論? でもそれは釣りメールが来た現実と矛盾してない?

No.1 6点 人並由真 2025/08/19 12:48
(ネタバレなし)
 息子・蒼祐を進学塾「和光ゼミナール」に通わせることになった40歳の後藤伊織は、息子の幼稚園時代の園児仲間の女児・紗羅の母親である久代澄佳(42歳)と再会した。紗羅も同じ進学塾の生徒となるらしい。そして伊織は澄佳の紹介で、やはり自分の息子や娘を同塾に通わせる34歳の吉葉杏里、49歳の手島知絵と受験生の子女たちの親同士のコミューン的な場を築き始めた。本当にプライベートな事情だけは秘めながら少しずつ距離を縮めていく4人の母親たちだが、やや複雑な状況のなかで彼らの距離感は少しずつ変遷していく。

 秀作もあれば凡作っぽいのも出す、という印象の作者だが、本作は中年女性たちのノワールっぽい作品。
 なんか噂だけ聞いてる桐野夏生の『OUT』みたいな? とも思うが、評者はそっちは大メジャー作品ながらまだ未読なんで比較はできない(笑・汗)。  ただまぁ、世代人のミステリファンのヒトは、本作の設定を聞いてたぶんそっちを連想するのではないか。

 でまあ感想はそれなりに面白かったが、あちこちから集めて帯に載せた激賞の数々ほどに楽しめたとは、とても思えず。

 4人の中年ヒロイン主人公が、大別して全5章のそれぞれのパートで交代しながら一人称「私」の語り役を担当。それぞれの抱える事情を読者に向けて明かしながら、経糸のドラマ(事件)を奥へ奥へと転がしていく。
 一見、凝ってるようで、実は意外によくある(というかどっかで見たような)構成だよね、という感じであまりテンションが上がらない。
 個人的にはAmazonのレビューのひとつにあった<各ヒロインの似たような別の内容のグチを、どれも同じようなテンションで聞かされる、そんなかったるさ(大意)>というのが一番近かった。

 ただまぁ、小規模なサプライズはそれなりに用意されているし、実質5人目の主人公? ともいえる某キャラの扱いも悪くは……ないかな(いろいろと問題のある人物ではあったが)。
 あと、主人公たちの描写のまとめと、ストーリーの着地点はちょっと印象に残る。特に後者はある意味、人を食った感じで、この作者らしいといえばいえるか。
 評点はこんなもんで。


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矢樹純
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