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[ サスペンス ]
彼女たちの牙と舌
矢樹純 出版月: 2025年05月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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幻冬舎
2025年05月

No.1 6点 人並由真 2025/08/19 12:48
(ネタバレなし)
 息子・蒼祐を進学塾「和光ゼミナール」に通わせることになった40歳の後藤伊織は、息子の幼稚園時代の園児仲間の女児・紗羅の母親である久代澄佳(42歳)と再会した。紗羅も同じ進学塾の生徒となるらしい。そして伊織は澄佳の紹介で、やはり自分の息子や娘を同塾に通わせる34歳の吉葉杏里、49歳の手島知絵と受験生の子女たちの親同士のコミューン的な場を築き始めた。本当にプライベートな事情だけは秘めながら少しずつ距離を縮めていく4人の母親たちだが、やや複雑な状況のなかで彼らの距離感は少しずつ変遷していく。

 秀作もあれば凡作っぽいのも出す、という印象の作者だが、本作は中年女性たちのノワールっぽい作品。
 なんか噂だけ聞いてる桐野夏生の『OUT』みたいな? とも思うが、評者はそっちは大メジャー作品ながらまだ未読なんで比較はできない(笑・汗)。  ただまぁ、世代人のミステリファンのヒトは、本作の設定を聞いてたぶんそっちを連想するのではないか。

 でまあ感想はそれなりに面白かったが、あちこちから集めて帯に載せた激賞の数々ほどに楽しめたとは、とても思えず。

 4人の中年ヒロイン主人公が、大別して全5章のそれぞれのパートで交代しながら一人称「私」の語り役を担当。それぞれの抱える事情を読者に向けて明かしながら、経糸のドラマ(事件)を奥へ奥へと転がしていく。
 一見、凝ってるようで、実は意外によくある(というかどっかで見たような)構成だよね、という感じであまりテンションが上がらない。
 個人的にはAmazonのレビューのひとつにあった<各ヒロインの似たような別の内容のグチを、どれも同じようなテンションで聞かされる、そんなかったるさ(大意)>というのが一番近かった。

 ただまぁ、小規模なサプライズはそれなりに用意されているし、実質5人目の主人公? ともいえる某キャラの扱いも悪くは……ないかな(いろいろと問題のある人物ではあったが)。
 あと、主人公たちの描写のまとめと、ストーリーの着地点はちょっと印象に残る。特に後者はある意味、人を食った感じで、この作者らしいといえばいえるか。
 評点はこんなもんで。


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矢樹純
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