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まさむねさん
平均点: 5.88点 書評数: 1245件

プロフィール高評価と近い人 | 書評 | おすすめ

No.1245 6点 だるまさんが転んだら- 堀内公太郎 2025/06/22 21:59
 ミステリー新人賞における盗作を巡るお話。
 前半の緩やかな進行(決して悪い意味ではない)から一転する、終盤の展開は好みが分かれそう。まぁ、ストーリー的にはやむを得ないのだろうけど。
 ネタとしては可もなく不可もなく…って書いたら怒られそうだけれど、サクサク読み進めてほぼ一気読みだったし、読書としては楽しかったですね。ちなみに、とある登場人物が(死亡フラグをイイ感じで立てちゃったこともあって)結構可哀そうだったな。

No.1244 7点 月蝕島の信者たち- 渡辺優 2025/06/21 22:56
 伝統的かつ正当な孤島ミステリ。展開のパターンは想定できるのだけれど、ソコも含めてとても楽しい読書だったなぁ、と素直に思います。この手の作品、やっぱり好きな方は多いと思うな。コテコテ感がいい。
 なお、設定した動機を否定するつもりはないけれども、犯人は犯行後どうしようとしていたのかな…という点は、確かに読後気になりましたね。

No.1243 5点 神津恭介、犯罪の蔭に女あり: 神津恭介傑作セレクション2- 高木彬光 2025/06/15 14:04
 神津恭介が登場する短編を集めた傑作セレクション第2弾。前作は密室縛りでしたが、本作は女性絡みの6つの事件を収録。
 古典的な構成と筆致を存分に味わえる一方、令和となった時点ではちょっと古臭く感じてしまう面も。警察もその辺りは調査というか裏取りしておこうよ…なんて感じちゃったりして。
 収録作の中では、意外性や探偵らしさの演出という点でも「青髯の妻」がベストかな。

No.1242 6点 ひとんち 澤村伊智短編集- 澤村伊智 2025/06/09 21:01
 色々な「怖さ」を感じることができる8編を収録した短編集。同じパターンが揃うと怖さよりも飽きが先立ちそうなものですが、バラエティに富んだ怖さを滲みだしている点が特長。グイグイ読ませる引力もあります。
 ストレートな恐怖という観点では「死神」がベストか。それとは全く異なる角度で切り込まれたのが最終話の「じぶんち」。「シュマシラ」は作者のシリーズに通じるジャパニーズな怪奇モノ。「宮本くんの手」の原因には早い段階で気づくのだけれども、一気読みせずにはいられない流れでした。読み得な短編集と言えるのでは。

No.1241 7点 世界でいちばん透きとおった物語2- 杉井光 2025/06/06 22:53
 「仕掛け」が印象的だった前作に比して絢爛さはないけれど、ミステリの側面で見れば本作の方が上位かもしれません。作中作の使いぶりが面白いし、そのような使い方をした必然性の演出も上手いと思います。編集者・霧子さんの存在も含めて読み心地も良。スマートに纏まった好編。

No.1240 6点 砂男- 有栖川有栖 2025/06/01 22:25
 作者の単行本未収録作品を集めた作品集。江神シリーズ2本、火村シリーズ2本、ノンシリーズ2本の計6作品を収録。出来栄えはマチマチといったところですが、個人的には青い目・緑色の目の既存パズルを活用した「推理研VSパズル研」がベストか。既存パズルの回答後の展開が江神シリーズらしい。
 何より、2つのシリーズを同一の文庫で読めたことが、ファンとしては楽しかったですね。

No.1239 7点 神様の次くらいに- 久住四季 2025/05/24 15:47
 日常の謎5編から成る短編集。派手さはないけれど、バラエティに富んでいるし、心憎い反転もあって水準以上に楽しめました。
①さくらが丘小学校四年三組の来週の目標
 若き小学校の教師が主人公。コミカルな好編。
②ライオンの噓
 高校が舞台。肝となる部室での出来事は、いくら何でも気付かれると思うな。
③神様の次くらいに
 大学生の男女が主人公。謎というよりも、爽やかなラストが印象的。
④小さいものから消えよ
 探偵と推理作家のコンビが、公園から毎日何かが(しかも小さいものから順に)消えていくという謎を追う。王道ではあるが、もうワンパンチ欲しかったかも。
⑤デイヴィッド・グロウ、サプライズパーティーを開く
 「星読島に星は流れた」に脇役として登場したデイヴィッド・グロウが再登場…らしいのだけど、全く記憶になかった。粋な反転に好感。

No.1238 6点 倒産続きの彼女- 新川帆立 2025/05/16 22:05
 シリーズ第2弾。剣持麗子と同じ事務所の後輩弁護士・美馬玉子が主人公を務めますが、剣持麗子もしっかりと脇を固めています。しかも結構カッコいい。主人公の祖母「シマばあちゃん」もいい味を出しています。
 転職するたびにその会社が倒産するという謎も魅力的ですし、それなりに意外な結末も用意されています。展開もスピーディで、玉子の成長も面も含め、結構楽しませていただきました。
 ちなみに、デビュー作にしてシリーズ第1弾「元彼の遺言状」から、本作を飛ばしてシリーズ第3弾の短編集を読んでしまったワタクシですが、本作を経たうえで読んでいれば、もっと楽しめたのかもしれないな、と反省?いたしました。

No.1237 5点 嘘でもいいから殺人事件- 島田荘司 2025/05/10 23:26
 島荘としては珍しいコメディ・タッチの作品。一方、死体消失など謎の演出はいかにも島荘らしい。真相は色々と無理があるような気がするのですが、全体的な「軽み」も含めて楽しませていただきました。

No.1236 7点 サクラオト- 彩坂美月 2025/05/06 18:50
 五感(聴覚・視覚・嗅覚・味覚・触覚)をテーマにした5編に加え、最終話で「第六感」を扱う連作短編集。
 結構イイですよ。ミステリとして突き抜けた何かがあるとは言えないまでも、青春ミステリとして鮮やかで沁みる短編も。1作前の「向日葵を手折る」に通じる巧さを感じました。こうした年代・雰囲気が得意なのかもしれませんね。締めとなる最終話についても、個人的にはプラスに評価したい。良い連作短編を読ませていただきました。

No.1235 3点 Rのつく月には気をつけよう 賢者のグラス- 石持浅海 2025/05/04 23:11
 シリーズ第2弾の連作短編集。とはいえ、前作からはおよそ12年。
 前作は、大学時代からの3人の飲み仲間の誰かがゲストを連れてきて,一緒においしい酒と肴を囲みつつ、謎を…という流れでした。その後、海外に転居したメンバーもいて、集いにくくなった時期はあるものの、また日本に戻ってきたため、同様の酒と肴の会合が定期的に開催されることに…という設定であります。
 で、個人的には前作はそれなりに楽しく読んだ記憶があるのだけれど、本作はちょっと…。まず、4人の大人の会話が癇に障って仕方がなかったです。料理と謎の結び付け方も無理やりすぎる。そして何より、これって推理ではなくて想像もしくは妄想ってことはない?真実だとする根拠が弱すぎるし、そんなに人の心情を覗き見しない方がいいのでは?というのが率直な感想。最終話の仕掛けも、想像できましたし、どうにも安易な感じが…。
 積極的にはおススメできない作品、と言わざるを得ないかな。

No.1234 7点 七人の証人- 西村京太郎 2025/05/04 22:02
 帰宅途中の十津川警部は突然何者かに鈍器で殴られ気を失う。気付いたら孤島に人工的に作られたセットのような街にいた。同様に孤島に運ばれたのは七人。七人は、1年前の殺人事件を目撃した証人であり、セットのような街もその現場を再現したものだった…。
 冒頭から突っ込みたくなるものの、これらの荒唐無稽さに身を委ねて読み進めてみますと、その後の展開はなかなかに面白い。十津川警部モノとしては珍しいプロットです。新たな殺人の意義とか突然の物語の幕引きとか、突っ込みたくなる点も次々に出てはくるのですが、結果として楽しめたからよしとしましょう。

No.1233 6点 架空犯- 東野圭吾 2025/04/29 21:29
 「白鳥とコウモリ」に続く、シリーズ第2弾。
 火災現場から見つかった都議会議員と元女優夫婦の他殺体。捜査の中で浮かび上がってきた容疑者とは…。五代刑事を中心とした警察小説としても良。さすがは東野さん、今回も読ませてくれました。

No.1232 7点 観覧車は謎を乗せて- 朝永理人 2025/04/25 22:13
 観覧車のゴンドラ内で繰り広げられる6つの密室劇。個々のゴンドラ内の謎も悪くはないのだけれど、ポイントは全体を通した仕掛けでしょう。
 とはいえ正直、読了後はちょっと戸惑いました。大きな狙いは理解したけれども、何とも消化しきれない部分が、微妙な表記も含めてあったのです。一晩を経て、おそらくはこうなのだろう、こう解釈せざるを得ないという自分なりの解はあるのだけれど、正しいかどうかは分からない。よく練られたプロットだと感心しつつも、正答はもう少しスッキリ示してほしかったかな、という気もします。

No.1231 7点 奇岩館の殺人- 高野結史 2025/04/21 21:30
 「探偵遊戯」の設定が絶妙な効果を発揮しています。誰が探偵なのか…といった点以外にも、様々な面で興味深く読ませていただきました。個人的にはメタ・ミステリー的な面が楽しかったりして。ちなみに、小園間さんに同情し、応援したくなっちゃう方って、多いと思うな。

No.1230 7点 ホテル・ピーベリー- 近藤史恵 2025/04/16 20:40
 舞台はハワイ島の小さなホテル。日本人夫婦が経営しており、長期宿泊している客たちも日本人。ハワイ島の気候も相まって、何とも居心地がよさそうなホテルなのですが、宿泊客も経営者も謎めいた雰囲気が…。
 非常に読みやすく、また絶妙な空気感で次々にページをめくらされました。終盤、真相の解明過程があっさりしていて、それが余韻にもつながるのだとは思うのですが、この点は好みの問題かな。

No.1229 7点 目には目を- 新川帆立 2025/04/13 15:00
 N少年院の同じ班で過ごした6人。退院後、その中の少年Aが殺害される。犯人は娘を少年Aに殺された母親で、被害者遺族が加害者に復讐した「目には目を事件」として注目される。母親は少年Aの情報を、同時期に少年院にいた少年Bから入手したらしい。被害者Aは誰で、密告者Bは誰なのか…。
 そのうちの一方は中盤で明かされるのですが、他方はなるほどそうか、言われてみればそうか…と印象深い。ルポルタージュ風に物語が進行する中で、各々の登場人物への自分の感情が次々に変わっていきました。罪とは何か、贖罪とは何か、考えさせられる作品です。

No.1228 7点 コロナと潜水服- 奥田英朗 2025/04/10 21:22
 ノンシリーズの短編集。主人公も内容もバラバラだけど、共通するテーマ(のようなもの)はあって、それがイイ味を出しています。スラスラ読めてほっこりできる短編が揃っています。(ミステリーとは言えないけどね。)
①海の家:まるで家族シリーズ。娘も少年もいいぞ!
②ファイトクラブ:サラリーマンたちの哀愁とおじさんたちの強さ。グッとくる。
③占い師:どっちもどっちと思うけど、いずれも幸せになってほしい。
④コロナと潜水服:コロナ禍の初期を思い出しました。これも家族シリーズっぽい仕上がり。
⑤パンダに乗って:切なさと温かさを感じる本作中のベスト。初めての愛車を久方ぶりに思い起こし、愛おしくなりました。

No.1227 6点 カラット探偵事務所の事件簿3- 乾くるみ 2025/04/07 23:30
 シリーズ第三弾の連作短編集。
 個々の短編は小粒というか、小粒すぎる感じもあるのですが、なるほどねぇといった部分もあり、また、ユーモラスな語り口もあって、まずまず楽しく読ませていただきました。
 でも、ポイントは最終話。アイドルグループの謎自体はちょっとアレだけど、ラストにはちょっと驚かされたかな。(でも多少あざと過ぎるか?) シリーズ第一作の最終話も確かに記憶にはあったのですが、何故かあまり気にせず読み進めていたから尚更でしたね。

No.1226 6点 少女Aの殺人- 今邑彩 2025/04/03 22:36
 ラジオの深夜放送に、養父からの性的被害に悩む女子高生から匿名の手紙が届いた。手紙には「わたしは自殺するか、養父を殺してしまうかもしれません」との記載が。彼女の手掛かりの一つは「F女学院1年の少女A」というペンネーム。ラジオの女性DJは、その手掛かりを基に「芙蓉女学院」で教師を務めている同級生に連絡をする。直後、同高校の生徒の養父が寝室で殺害される事件が…。
 序盤からグイグイ読まされました。話がどんどん広がっていき、その展開もスピーディ。読者の興味を掴むことに長けていますね。真相は比較的分かりやすく、最早明らかであろう時点からも引っ張りすぎでは、といった印象もありましたが、総じて良くまとまった作品だと思います。

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まさむねさん
ひとこと
ミステリとしての特別な知識なく乱読していますので、私の書評はあまりアテにしないでくださいね。
好きな作家
道尾秀介・東野圭吾・東川篤哉
採点傾向
平均点: 5.88点   採点数: 1245件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(57)
有栖川有栖(45)
東川篤哉(43)
森博嗣(37)
島田荘司(28)
道尾秀介(27)
伊坂幸太郎(26)
米澤穂信(23)
西村京太郎(23)
歌野晶午(21)