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まさむねさん
平均点: 5.86点 書評数: 1189件

プロフィール高評価と近い人 | 書評 | おすすめ

No.1189 5点 からくり富- 泡坂妻夫 2024/10/20 21:03
 江戸を舞台とした夢裡庵先生捕物帳シリーズ。作者らしい捻りが無いわけではないけれど、そういった側面よりも江戸情緒や庶民の心情を感じるべき短編集と言えるのではないかな。

No.1188 6点 成瀬は天下を取りにいく- 宮島未奈 2024/09/29 23:31
 このサイトで書評するのもアレだけど、主人公・成瀬の性格がミステリーなのだと自分に言い聞かせて、書いちゃおう。何卒大目に見てください。
 一話目の「ありがとう西武大津店」を読んで、なぜか泣きそうになりました。成瀬への尊敬と羨ましさと、もうその世代には戻れない悔しさと、内容の清々しさとが綯い交ぜになった感じ。最終話の「ときめき江州音頭」を読んだ後も、なぜか泣きそうに。
 おじさん世代にもグイグイ刺さる小説でありました。こりゃあ、売れるわけだな。

No.1187 7点 ビブリア古書堂の事件手帖IV ~扉子たちと継がれる道~- 三上延 2024/09/23 20:34
 テーマは、戦中に川端康成はじめ鎌倉の文士らが経営した貸本屋「鎌倉文庫」。そこには夏目家から提供された初版本も並んでいたとのこと。
 このシリーズも長くなりましたが、今回は智恵子(昭和)、栞子(平成)、扉子(令和)と篠川家の3代(3時代)にわたる「鎌倉文庫」所蔵本とのかかわりがポイント。前述の史実(らしい)や漱石に係る蘊蓄も含めて楽しめました。色々な家族のつながりを感じさせる点も良かったかな。6.5点の気持ちで、切り上げてこの採点。

No.1186 6点 六色の蛹- 櫻田智也 2024/09/16 17:14
 シリーズ第三弾の連作短編集。前作まで各短編のタイトルは虫に関係する語句が入っていましたが、今回のタイトルは色で統一。虫との関係性も、前2作より薄くなっているような気がします。
 マイベスト短編は「赤の追憶」で、シンプルだからこその鮮やかさが印象的。短編らしい短編です。他の作品の出来栄えには、ちょっと波があったかも。連作短編集としての「まとまり」はシリーズで一番だと思うのですが、この点は好き嫌いが分かれるかもしれません。

No.1185 6点 室蘭地球岬のフィナーレ- 平石貴樹 2024/09/08 23:10
 函館物語シリーズ第4弾にして、おそらくはタイトルどおりフィナーレ。今回の岬は、函館近辺じゃなくて室蘭の地球岬です。
 繋がりそうで繋がりが判明しない3つの事件。特に2つ目の地球岬の事件が浮いています。捜査が難航する中、フランスからジャン・ピエールが来日し、神のような謎解き。すげー。ある一つの推理が大きな転換点となりますが、気づけなかったなぁ。
 書きぶりは丁寧で、伏線の回収ぶりも読みどころの一つ。ある意味古いタイプのプロットなのだけれど、むしろ新鮮に感じましたね。

No.1184 6点 にわか名探偵 ワトソン力- 大山誠一郎 2024/09/02 21:48
 シリーズ続編の短編集。
 警視庁捜査一課の刑事・和戸宋志には、秘めたる特殊能力がある。それは、謎に直面すると無意識に発動し、一定範囲(現時点では半径約20mらしい)内にいる人間の推理力を飛躍的に向上させる能力で、その名も「ワトソン力」。自分の推理力が上がるわけではないところも含めて可愛らしい。
 この設定は、短編構成上も便利で合理的。事件が勃発したらほどなく「どうやらワトソン力が作用し始めたようだ」のヒトコトで、周辺の登場人物たちの推理合戦に持っていけるわけです。非常にコンパクトに、一定のロジックを楽しめるのは好みです。ただ、流れが同じになりがちなので、中だるみ感を抱かれるリスクも併せ持つことにはなりますね。
 個人的に楽しかった短編は「ニッポンカチコミの謎」。ヤ〇ザの方々が推理合戦する姿がシュールなのだけれど、何といっても組長がエラリー・クイーン信奉者であり、全作品(「聖典」と呼んでいました)を神棚に備えているところが素敵。「暴力じゃねえ、ロジックだ」のご発言もいい味出しています。一方で、最終話はちょっと蛇足だったかも。

No.1183 5点 御手洗潔のメロディ- 島田荘司 2024/08/29 23:45
 「IgE」、「SIVAD SELIM」、「ボストン幽霊絵画事件」、「さらば遠い輝き」の4編が収録された短編集。御手洗モノとして典型的な「IgE」を筆頭として、個人的な興味は掲載順に下がっていきましたね。特に最終話は、ファン限定って感じがあります。

No.1182 7点 明智恭介の奔走- 今村昌弘 2024/08/29 23:34
 初の短編集。タイトルどおり、探偵役は神紅大学ミステリ愛好会会長の明智恭介。助手役として葉村譲が登場。剣崎比留子の出番はなし。シリーズの番外編という位置づけになるのでしょうが、本家(?)のシリーズ作品とは雰囲気が異なり、ユーモアにあふれています。これはこれで好印象。
 収録短編の中では「とある日常の謎について」が最も楽しかったですね。ある事実が判明した時点でニヤニヤ。そうか、それだったか。「泥酔肌着引き裂き事件」のバカすぎる謎の提示と、その謎を解かんとする明智と葉村のやり取りも楽しい。記憶なくし過ぎだけどね。

No.1181 7点 そして誰かがいなくなる- 下村敦史 2024/08/18 23:03
 ド直球の本格設定の中での終盤の展開。いいですねぇ。好きですよ。餌が分かり易いだけに、色々想定しながら読んだのですがねぇ…。複数の工夫にも感心。よく練られた作品だと思います。もっと多くの方に読まれていいかも。

No.1180 6点 アルファルファ作戦- 筒井康隆 2024/08/17 20:49
 ドタバタ不条理SF短編集と言ってしまっては一括りにし過ぎかな。盛り上げた割にラストは…といった短編が無いではないけれど、総じて楽しく、一部考えさせられながら読ませていただきました。特に会話部分が面白い。
 表題作に加え、人口爆発後の地球を描いた「人口九千九百億」、若返る薬を巡る騒動「一万二千粒の錠剤」が印象に残りますかね。個人的には「公共伏魔殿」の皮肉たっぷりな書きぶりも、昭和後半以降の時代を示唆しているようで良かったです。

No.1179 6点 お梅は呪いたい- 藤崎翔 2024/08/12 21:31
 戦国時代、呪いで大名一族を滅亡にまで追い込んだ日本人形「お梅」。五百年を経た令和の世に、その封印が解き放たれる…っていう設定のうえでの「お梅」が何とも素敵です。動いているところを、ちょっとだけ見てみたいです。
 呪おうとすればするほど幸せに繋がるという、ネタとしてはありがちではあるけれど、語り口もコミカルで可笑しいし、何気に「人生の転機って何だろうね」という、時代を超えた命題を問うているような気もします(いや問うてないか)。純粋に面白かったですね。続編もありそうなので、楽しみに待ちたいと思います。

No.1178 5点 退職刑事3- 都筑道夫 2024/08/06 23:32
 シリーズ第3弾。このシリーズは、安楽椅子探偵モノの国内代表格と言えると思うのですが、本作は前2作と比べると多少落ちるかな…という印象。真相について他の解釈も可能では?という短編もございましたし、全体的にこじつけ感が強めのような…。
 収録作の中では1作目の「大魔術の死体」がベスト。電話ボックス内に射殺死体が、でもボックスのガラスは無傷…という謎が魅力的(ちなみに近い将来「電話ボックス」も死語になるのかなぁ)。2作目の「仮面の死体」も好みだけれど、胆となる部分が1作目と被っている分、割引か。後半にダイイング・メッセージ系が固まっていることもあるし、短編の掲載順を少し変えてみると短編集全体の印象も変わるのかも。

No.1177 5点 放課後ミステリクラブ1 金魚の泳ぐプール事件- 知念実希人 2024/08/03 20:02
 2024年本屋大賞ノミネート作品。児童書として初めてのノミネートということで、気になっていました。
 体裁としては、文字大き目のフリガナ付き、挿絵もふんだんに挟んであって、まさに「児童書」。一方で、内容としては、シンプルながらも本格ミステリの要件を満たしていると思います。確かに「本格児童書ミステリ」と言えるのではないかな。あっという間に読めるので、試しに一読してみるのもいいかも。
 ちなみに、図書館予約の順番の関係で、夏休みのど真ん中に借りることになってしまいました。しかも親子で楽しむという訳でもなく、おじさん一人で読んでしまい、ちょっとした罪悪感。少年少女の皆さん、ごめんなさい。急いで返却します。

No.1176 5点 緋色の残響- 長岡弘樹 2024/07/30 23:19
 スマッシュ・ヒットとなった「傍聞き」に登場した、シングルマザー刑事と新聞記者志望の娘が主人公となる短編集。
 作者の作品の多くは、一つの蘊蓄ネタだけを拠り所にしながら人間ドラマに結びつけようとする結果、相当のこじつけ感や非現実感、人間ドラマと真逆の作り物感が残るんだよなぁ…というのが私の個人的な印象。本書の短編においても、そういった側面は多分にあるのだけれども、母と娘の関係性や娘の成長という側面がそのマイナスを補ってくれたような気がしますね。もとより、リーダビリティは高い作家さんですしね。

No.1175 7点 名探偵のままでいて- 小西マサテル 2024/07/27 11:29
 孫である小学校教師、楓が持ち込む謎を、元校長の祖父が解き明かす安楽椅子探偵系の連作短編。その祖父は「レビー小体型認知症」を患っていて、時に幻視などの症状も現れる。ここもポイント。
 一部ではあるのだけど、その事実でそこまで推理できるものか、推理の根拠も弱すぎるかなぁ…と思う箇所も。しかし全体としては、心憎い転換等の工夫や終盤の急加速などもあって好印象。会話も含めて読みやすく、ミステリ蘊蓄も楽しかったです。
 ちなみに、個人的には「岩田か四季か?」は蛇足っぽく感じたのだけれど、むしろこういう部分がある方がいいのかしら。

No.1174 6点 高山殺人行1/2の女- 島田荘司 2024/07/21 16:32
 作者曰く「トラベル・ミステリーというと、100パーセント鉄道を使う推理小説をさすのはなぜだろうといつも考える」、「車好きの僕は、以前からこのことが不満だった」…。なるほど。そこで車(ドライブ)を用いた作品が誕生したわけですね。確かに、疾走感はありました。
 一方、途中で事件の大枠に気付く方が多いような気がしますね。主人公の女性の行動にも大いに疑問を感じます。勿論、楽しく読ませてもらったのですがね。

No.1173 5点 浅草殺人案内- 中町信 2024/07/19 21:21
 細かな複数の謎の配置によりグイグイと読まされはしたのですが、作者の作品としては凡庸な部類。
 ちなみに、寿司屋を営む探偵役の母、タツのキャラは結構好きです(「浅草のミス・マーブル」と称されていることはどうかとも思うけど)。警部が二人を頼りすぎ(捜査の過程を話し過ぎ)ではとか、鴨川の件は警察がもっと丁寧に捜査してほしかったよねとか、こういった部分も含めて、ある意味楽しませていただきました。

No.1172 6点 蜂に魅かれた容疑者- 大倉崇裕 2024/07/13 08:00
 警視庁いきもの係シリーズ第2弾。今回は長編。
 薄圭子巡査と須藤友三警部補の絶妙な掛け合いが楽しい。薄の天然ボケもいいが、須藤の突っ込みもなかなかのもの。コンビの信頼関係?は確実に増していますね。
 前作に引き続きこういった雰囲気を楽しむのかな、と思っていたところ(もちろん楽しめるのだが)、終盤の急展開&急加速には結構驚かされました。気軽に楽しめる、読み得な作品。

No.1171 7点 向日葵を手折る- 彩坂美月 2024/07/06 16:42
 父親の急死に伴い母の実家に引っ越してきた少女・高橋みのりの、中学3年までの4年間を描く青春ミステリ。
 母の実家は山形の山間にある集落・桜沢。通う小学校は分校で、全校児童数わずか37人。そこで出会う同級生、西野隼人と藤崎怜との心のやり取りがなんとも言えない感傷を誘います。濃厚な自然や集落の描写と主人公たちの心の動きの組み合わせも見事です。季節の移り変わりも含めて美しい。
 ミステリとして特殊的な部分はないかもしれませんが、久方ぶりに良質な青春ミステリを読ませていただきました。

No.1170 6点 殺意の設計- 西村京太郎 2024/06/27 22:22
 前半は夫の浮気に疑念を持つ妻の視点。心理サスペンスの側面もあって、西村作品としては新鮮な印象も受けます。一転、後半は刑事の視点で、これはいかにも西村先生らしい展開。
 こういった構成も含め、面白く読ませてはいただいたのですが、犯人としては、あまりにも都合の良い手法というか、結構なリスクを負う手法を採っているのではないかという違和感は残りました。特に、井の頭公園、かな。

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まさむねさん
ひとこと
ミステリとしての特別な知識なく乱読していますので、私の書評はあまりアテにしないでくださいね。
好きな作家
道尾秀介・東野圭吾・東川篤哉
採点傾向
平均点: 5.86点   採点数: 1189件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(56)
有栖川有栖(43)
東川篤哉(41)
森博嗣(37)
道尾秀介(27)
伊坂幸太郎(26)
島田荘司(26)
米澤穂信(22)
歌野晶午(21)
西村京太郎(20)