皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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まさむねさん |
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| 平均点: 5.89点 | 書評数: 1272件 |
| No.1272 | 7点 | 一次元の挿し木- 松下龍之介 | 2025/10/23 22:08 |
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| 第23回『このミステリーがすごい!』文庫グランプリ受賞作。本人は「大賞」受賞に自信があったようで、文庫グランプリはちょっと悔しかったようですが。
標高5千メートルのヒマラヤ山中の湖で発掘された二百年前の人骨と、四年前に失踪した妹のDNAが一致した…。なかなかに魅力的な導入であります。 視点となる人物が多く、時系列も入り繰りがありながらも、混乱させずに引っ張り、反転・ラストまでもっていく点は素直に評価したいですし、サスペンス要素も含め、熱の入った力作であると思います。ちょっと強引かなと感じる点もありましたが、個人的には良かった点の方が目についたかな。 |
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| No.1271 | 8点 | 有栖川有栖に捧げる七つの謎- アンソロジー(出版社編) | 2025/10/15 23:35 |
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| 有栖川有栖デビュー35周年を記念した、「有栖川ワールドを自由に使って短編を競作するトリビュート企画」だそうです。錚々たる7名の作家が参加。様々な角度で楽しめる一冊だと思います。個人的には①と④がおススメ。②、⑥、⑦が次点グループかな。
①縄、綱、ロープ:青崎有吾 火村シリーズとしての再現度がスゴイ。二人の会話などの雰囲気はもとより、オチを含む全体構成もまさに「完コピ」と言っていいでしょう。ある意味で、ファン必読かも。 ②クローズド・クローズ:一穂ミチ これも火村シリーズ。作者の作品は初読なのですが、火村、アリスが女子高を舞台に活躍、という設定はなかなかレアであるし、内容としても好感。 ③火村英生に捧げる怪談:織守きょうや これも火村シリーズ。小ネタの集合体という感は否めないかも。最後に登場?する別シリーズキャラクターにはちょっとにんまりしたけど。 ④ブラックミラー:白井智之 モチーフは当然「マジックミラー」。でもソロで火村が出演。白井智之&アリバイ系がそもそも珍しく、マジックミラーの元ネタを活かしながらの作者らしさの演出は流石。内容的には本作中のベストか。 ⑤有栖川有栖嫌いの謎:夕木春央 有栖川作品を読み尽くしているのに、酷評する男の謎。動機が弱すぎるし、設定にも穴があるような…。 ⑥山伏地蔵坊の狼狽:阿津川辰海 連作短編集である「山伏地蔵坊の放浪」をモチーフにする渋さに好感。確かに「狼狽」していますし、締めも粋でした。 ⑦型取られた死体は語る:今村昌弘 最終話でようやく学生アリスシリーズ。でも、序盤からスマホが登場するなど時代設定は現在に移行されています。ダイイング・メッセージ風からの展開は面白かったけれど、アレでソコまでするかなぁ、という違和感も正直あったかな。 |
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| No.1270 | 7点 | 禁忌の子- 山口未桜 | 2025/10/11 23:12 |
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| 第34回鮎川哲也賞受賞作。救急医・武田の元に搬送されてきた溺死体は、武田と瓜二つであった…。導入から惹きつけられます。
その真相は、おそらくは多くの方が想定するとおりだと思うのですが、それは物語の一端に過ぎません。読中深く考えさせられる部分が多々あり、中盤以降は、驚きとともにグイグイ引っ張られました。探偵役・城崎の描き方にも好感。何より、タイトルの浮かび上がらせ方が素晴らしい。デビュー作としては出色の出来栄えです。 |
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| No.1269 | 7点 | アミュレット・ワンダーランド- 方丈貴恵 | 2025/10/05 22:36 |
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| 犯罪者御用達のホテルを舞台にしたシリーズ第2弾。
前作に比べ、ホテル探偵も含めた登場人物の魅力が強く出ている感じ。切迫感もありつつ、絶妙なコミカルさも兼ね備えていて、エンタメ性も増しています。短編ごとにパターンを変えている点にも好感。マイベストは「落とし物合戦」かな。 |
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| No.1268 | 8点 | サーカスから来た執達吏- 夕木春央 | 2025/09/28 21:29 |
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| 借金に苦しむ華族の令嬢・鞠子と、サーカス団出身の借金取り・ユリ子という、少女コンビによる宝探し冒険譚。鞠子の成長譚でもあります。
二人(と馬一頭)の冒険も勿論楽しいのだけれど、終盤の連続転回も素晴らしい。大正という時代設定もマッチしていて、純粋にワクワクしながら楽しく読ませていただきました。何といってもユリ子がスゴイ。鞠子&ユリ子(&かつよさん)の活躍を、また読みたいものです。 |
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| No.1267 | 6点 | 下り特急「富士」(ラブ・トレイン)殺人事件- 西村京太郎 | 2025/09/23 18:48 |
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| とある事件で刑に服していた元刑事・橋本豊は、網走刑務所を出所する際、所内で死亡した宇野晋平の遺品を東京の指定先まで届けるよう、所長から依頼される。宇野に所内で命を救われた恩もあり、依頼を引き受ける橋本。旧知の青木亜木子とともに、網走から東京、さらに寝台特急「富士」で宮崎に移動することに…。
不可解な謎の提示や急転換もあり、グイグイ引っ張られます。ラストまでサスペンスフルな展開。青木との関係も華を添えています。結構強引な面は否定できないのですが、氏のトラベル・ミステリーの中で強く記憶に残りそうな作品。前日譚となる(らしい)、「北帰行殺人事件」も今後読んでみようかな。 |
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| No.1266 | 6点 | 私はチクワに殺されます- 五条紀夫 | 2025/09/18 22:43 |
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| タイトルをうろ覚えで、「チワワ」に殺されるのかと思い込んでいたところ、某書店の本棚の前で「え?チクワ?竹輪?」と勘違いに気付き、そうなるとまぁ、手に取らざるを得なくなる私であります。
文庫で200ページ弱。ある男の手記から始まりまして、その後の展開も想定しやすそうだな…と思いながら読み進め、あれ?こんな単純に終わるはずないよね…と逆に不安にさせられつつ、ラストはそう来たか…といった感じ。ラストの評価は色々ありそうだけど、個人的には肯定的に捉えています。そういえば、チクワ、最近食べてないな。 |
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| No.1265 | 5点 | ペンギンを愛した容疑者- 大倉崇裕 | 2025/09/14 22:19 |
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| 警視庁いきもの係シリーズ第3弾。前作は長編でしたが、本作は中短編集に戻っています。
ミステリの部分よりも、薄圭子巡査と元捜査一課の鬼刑事・須藤友三警部補のやり取りを楽しむべき作品かも。天然ボケ&ツッコミの相棒感は嫌いじゃないです。 今夏登場する動物たちは、ケープペンギン・シバヤギ・リスザル・ヨウム(オウムとは別らしい)。作者は動物が好きなんだろうなぁ。 |
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| No.1264 | 8点 | 阪急電車- 有川浩 | 2025/09/08 22:26 |
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| 阪急今津線を舞台に、緩やかに繋がる16短編。あー、いいね。純粋にいいね。恋の始まりも終わりも、グッとくるねぇ。登場人物一人ひとりの人生を応援したくなるねぇ。世間は色々あるけど、こういう小さな繋がりを積み重ねられるのなら、日本の未来はまだまだ明るいんじゃないか…そんな思いを抱きました。
ミステリか?と問われるとちょっとアレなのですが、前向きになれる、心地よい読書時間をいただいたので、この採点で。今津線には人生で2回しか乗ったことがないので、機会があれば、いくつかの駅に降り立ってみようかな。 |
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| No.1263 | 5点 | あなたに会えて困った- 藤崎翔 | 2025/09/06 21:45 |
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| 「逆転泥棒」と改題された文庫版で読了。ヒットした「逆転美人」の刊行が2022年10月で、本作の改題+文庫化が2023年10月。出版社の営業戦略への評価は置いておくとして、本作は事後的な「逆転シリーズ」って位置づけでいいのかしら。
他の逆転シリーズ(逆転美人+逆転ミワ子)とは仕掛けの根っこが異なるけれども、まぁ確かに様々「逆転」ではあるか。でもなぁ…その逆転が物語全体に及ぼす重要性が低すぎるような気も。「それで?」などと思っちゃたりして。ちなみに、1990年代の社会・芸能ネタはとても懐かしく読ませていただきました。 |
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| No.1262 | 7点 | 模倣の殺意- 中町信 | 2025/09/02 20:44 |
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| 興味深い展開でグイグイ読まされました。そして終盤…確かに驚きはしたものの、偶然性の強さがどうしても引っ掛かりましたかね。それを言っちゃあ、小説として成り立たないのですがね。「やられた!」というよりも、「ああ、そういうことでしたか」という面の方が大きかったりして。創元推理文庫版で読んだのですが、もう少し「ほのめかし」があっても?
でも、同じパターンの他作品を読んだことがあるからこその感想かもしれません。この作品が書かれたのは50年以上前ですので、おそらくはこの作家のこの作品が先達。その点を考慮すれば、素晴らしいトリック&プロットと言えると思います。その点を考慮しての採点。 |
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| No.1261 | 6点 | 夏、19歳の肖像- 島田荘司 | 2025/08/28 21:22 |
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| バイク事故で入院中の青年が、病院の窓から眺めていた女性に恋心を抱く…。
作者としては珍しい青春恋愛小説。ミステリとしての側面は、想定の範囲内といったところですが、この作品はその部分よりも何より「青さ」がいい。青いからこそ、熱い。15年を経て振り返る切なさ。彼女は今どうしてるのだろうか。懐かしさと、切なさと、もうその時代には戻れない哀しさのミックス。グッとくるねぇ。 |
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| No.1260 | 7点 | コージーボーイズ、あるいは四度ドアを開く- 笛吹太郎 | 2025/08/24 14:10 |
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| コージーミステリ短編集第2弾。今回は7編を収録。
荻窪のカフェで月に一度開催される「コージーボーイズの集い」。それは、コージーミステリ好きな出版関係者がお茶を囲んでゆるゆるとミステリ談義を行う催し。ゲストらから謎が持ち込まれ、皆で推理合戦。推理が行き詰まったところでカフェのマスターが…という基本スタイルは前作同様。(新キャラ・黒木くん登場などの変化も多少あるけど。) 個人的な評価は短編ごとに分かれるのだけれど、総じて見れば、気軽に読める短編集としてイイのではないかな。個人的には、初めての怪談風「~あるいは笛吹き男の怪」、呑み助や駄洒落好きの気持ちはよく分かる「~あるいはふたたび消えた居酒屋の謎」、が好み。 短編ごとに挿入されている、作者からの解説も(短編内で触れたミステリ作品の紹介も含めて)楽しかったです。作者の「黒後家蜘蛛の会」への愛を感じました。切り上げてこの採点…かな。 |
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| No.1259 | 6点 | 出版禁止 いやしの村滞在記- 長江俊和 | 2025/08/22 21:14 |
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| 一通り読み終わった後、「ああ、そういうことね」と一定の驚きはあったものの、何ともスッキリしない印象も抱きました。少しだけ読み直し、「なるほどねぇ」という個所も複数確認できたものの、「自分は絶対に取りこぼしているな」との確信も。
そんな時は、迷わずネタバレサイトを覗いてしまうワタクシなのですが、それを読んでみても、期待していたようなカタルシスは得られなかった。色々と丁寧に仕込んでいるし、雑学的な面白さもあったのだけれど、「親切な」作品とは言い難いし、読後感がいいものでもない。私の好みからは少しズレていたかな。 |
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| No.1258 | 6点 | 奥只見温泉郷殺人事件- 中町信 | 2025/08/13 22:55 |
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| 「悲痛の殺意」と改題された文庫版で読了。温泉宿を出発したスキーバスが川に転落し、5人が死亡。しかし、死亡した者のうち1名は絞殺されていた…。宿の宿泊客は、いかにも何かを抱えていそうな者ばかりで、冒頭からスルスルと読まされました。様々に捻りのある展開で、古さは否定できないものの、嫌いではないタイプです。
一方で、ズバリ「ここ伏線ですよ」と語りかけられているとすら感じる側面も。また、章冒頭の日記部分の仕掛けは本当に必要だったのだろうか…むしろ分かり易くなりすぎていないか…といった印象も。 |
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| No.1257 | 6点 | どうせ世界は終わるけど- 結城真一郎 | 2025/08/11 20:22 |
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| 小惑星が地球に激突し、人類は滅亡する。ただし100年後に…。絶妙な設定の中で描かれる連作短編集。100年の猶予は長いのか短いのか。自分ならどうするのか、深く考えさせられます。
終末系小説でイメージされるような寂寥感はなく、むしろ〝希望〟を感じます。マイベストは3話目の「友よ逃げるぞどこまでも」か。最終話は、無理に色々詰め込まなくても良かったような気も。 |
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| No.1256 | 6点 | 谷根千ミステリ散歩 密室の中に猫がいる- 東川篤哉 | 2025/08/06 21:40 |
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| シリーズ第2弾。探偵役は谷根千エリアで開運グッズを扱う「怪運堂」の店主であり、作務衣を好む竹田津優介。ワトソン役は、近所の大学に通う「岩篠つみれ(いわしのつみれ)」。同エリアで鰯料理メインの居酒屋を経営する「岩篠なめ郎(いわしのなめろう)」の妹であります。
居酒屋「鰯の吾郎」を含めた雰囲気、そして読み心地は、何気にほっこりできて嫌いじゃないです。でも、ミステリとしての小粒感は否めない。基本に忠実な?謎はしっかり用意されているし、地味だけど小技の組み合わせは評価したい短編もあるのですがね。総合的には、「気軽に読む分には悪くないかな」といった印象。 |
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| No.1255 | 5点 | あの日、タワマンで君と- 森晶麿 | 2025/08/03 14:10 |
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| 王様のブランチで紹介されたことから手にした次第。流行りに弱いんです。
舞台は六本木にあるタワマン最上階の一部屋。配達員をしながら日々を凌いでいる山下創一が、ある日その部屋に配達をすると…という出だしからの展開で、先が気にはなったのだけれど、ずっと違和感が脇にあったことも事実。自分ならこうするけどなぁ…と思いながら読んでましたね。 最大の肝については、読み返してみるとどうなんだろう。ギリギリセーフなのか。あのシステムもよく分からなかったしなぁ…。 それと、結末とその後予測される展開を良しとしてよいものなのだろうか。何か釈然としないものがありました。 |
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| No.1254 | 7点 | 嘘つきたちへ- 小倉千明 | 2025/07/31 23:35 |
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| 5編を収録したノンシリーズの短編集。タイトルどおり「嘘つき」がテーマ。
①このラジオは終わらせない:ラジオの生放送の中での駆け引き。反転攻勢は嫌いじゃないけど、ちょっとっしつこすぎた感も。 ②ミステリ好きな男:嘘つきのオンパレード。 ③赤い糸を暴く:20ページ程度の文量。真相は想定の範囲内かもしれないが、この文量の中での仕掛けとしては良。 ④保健室のホームズ:保健室登校を続ける小学生との友情物語…であります。何も考えずスラスラ読んでしまったけれども、この短編集を読み進めた方なら、分かっちゃう方も多いかも。 ⑤噓つきたちへ:第1回創元ミステリ短編賞受賞作。過疎の町で起きた、小学校5年生の水難事故について、20年以上を経て再開した同級生たちが語り合う。やはり本作中ではベストか。 |
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| No.1253 | 6点 | あなたが誰かを殺した- 東野圭吾 | 2025/07/28 20:07 |
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| タイトル的に加賀恭一郎の「~が~を殺した」シリーズということになるのだと思うのですが、前2作とはテイストが異なり、犯人も含めて事件の真相が読者に示されます。相変わらずリーダビリティが高く、スラスラ読まされますし、意外性もあって流石と感じさせられました。
一方で、個人的には何か釈然としない部分も。負の感情が集まりすぎているというか…。全体的に感情移入はしにくかったかな。まぁ、ミステリとは直接関係ない部分だけど。 |
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