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sophiaさん
平均点: 7.00点 書評数: 297件

プロフィール高評価と近い人 | 書評 | おすすめ

No.297 10点 黒牢城- 米澤穂信 2021/10/24 18:45
わたくし日本史にはとんと疎く、どこまでが史実かも分からなかったのですが、それが却ってよかったのでしょうか、フィクションと割り切って楽しむことが出来ました。行き詰った捜査員が囚人の知恵を借りて事件を解決するなどというのは映画などでもままあるパターンですが、本作は囚人の官兵衛からの働きかけもある点が新しいです。いや、壮大な遠望です。この戦乱の時代の武士道や死生観が四つの大きな事件と絡み合っており、ミステリーとしても時代小説としても一級品です。この作品を著者名を伏せられた状態で読んでいたとしたら、米澤穂信だとはまず分からなかったと思います。まさに新境地です。個人的に著者の最高傑作は「折れた竜骨」でしたが、これはあるいは超えたかもしれません。

No.296 6点 金色の獣、彼方に向かう- 恒川光太郎 2021/10/15 21:28
文句なしに面白いのは歴史スペクタクル「異神千夜」だけです。「風天孔参り」は「夜行の冬」と「秋の牢獄」を足したような話。中盤まで面白かっただけに、オチをちゃんと付けて欲しかったです。「森の神、夢に還る」と「金色の獣、彼方に向かう」はいずれも超自然的な存在とシンクロする話です。この二話は抽象的で、私があまり好きじゃない方の恒川光太郎でした。

No.295 9点 硝子の塔の殺人- 知念実希人 2021/10/10 22:14
若干ネタバレ気味です

外界から孤立したガラス張りの奇妙な塔で起こる連続密室殺人。知念実希人氏が満を持して贈る本格ファン待望の館ミステリー。と思いきや、まさかの倒叙もの?えっ、どういうこと?とプロローグの時点で術中に嵌ってしまいました。最初から最後まで意表を突く展開でずっと面白く、舞台設定ともリンクしている二段構えの構成は実に美しいです。
この作品は「問題作」や「賛否両論」という触れ込みですが、真相は私が思っていたほど滅茶苦茶なものではなく、普通に傑作だと思いました。動機部分が問題ということなのかもしれませんが、私は割とすんなり受け入れられました。これはコテコテの舞台設定や人物設定、本格ミステリーへの愛が止まらない探偵など序盤からメタミステリーのオーラがこれでもかと充満していたことが大きいと思います。これは本格ミステリーの新たなマイルストーンと呼んでも良い作品なのではないでしょうか。しかし「硝子館の殺人」より出来の悪い館シリーズありますよね(禁句?)。

No.294 7点 崩れる脳を抱きしめて- 知念実希人 2021/10/02 23:53
第二部で病院側が採った「君の××だよ」作戦はだいぶ無理があると思いますけれども(笑)、無駄のない文章とストーリー運びですらすら読めましたし、プロローグで描かれている主人公の決意が読者の思っていたものとは全く異なるものに変貌する様が素晴らしかったです。注文を付けるとするならば、第一部で「ユウさん」の描写をもう少し緻密にしていたら最後真相が明らかになるところで効いたのではないでしょうか(敢えてそうしなかった面もあるとは思いますが)。

No.293 7点 超短編!大どんでん返し- アンソロジー(出版社編) 2021/09/27 23:02
初歩的な叙述トリックの作品、期待とは違うあらぬ方向に着地する作品、読者の想像に委ねる味わい深い作品等々、一口に「どんでん返し」とは言っても作風に幅の広さがあり中々楽しめました。各作家の個性もよく表れています。後半に進むに連れて凝った作品が増えていきますが、私が好きな話は前半に多いです。ベストは法月綸太郎「親友交歓」、2番目は蘇部健一「トカレフとスタンウェイとダルエスサラーム」、3番目は葉真中顕「究極の密室」です。あ、似鳥鶏だけは許しません(笑)

No.292 6点 流れ星と遊んだころ- 連城三紀彦 2021/09/21 19:32
復刊を機に読んでみましたが、だいぶ疲れました。本作は技巧派ミステリの肩書き通りの作品ですが、技巧を凝らし過ぎたあまりストーリーは支離滅裂です。メインの三人の関係が面倒臭すぎますし、全員ひねくれ者で何がしたいのかが分かりませんでした。例えが秀逸な心情描写は著者の持ち味だと思いますが、今回はくどくどしさも感じてしまいました。長編だからなのでしょうか。

以下ネタバレ

一人称視点と三人称視点が入り混じるという奇妙な構造の意味を考えると叙述トリックを疑うのは必然であり、身構えて読んでしまったために種明かしにそこまで驚けませんでした。「俺」の使い分けを許容するかどうかでこの作品の評価は決まるのかもしれませんが、自分はずるいと感じてしまいました。不必要に思えた三人称視点をちょくちょく挟むのは二人の「俺」のクッションの役割だったのでしょうが、それを加味しても力技の印象を拭えません。読むのに使った労力に見合ったリターンではなかったというのが正直なところです。

No.291 9点 兇人邸の殺人- 今村昌弘 2021/08/16 00:23
「屍人荘の殺人」と同じくクリーチャーによって人の行動が支配される特殊設定ミステリー。今作は更にホラーサスペンス色が強いです。毎度映画に例えてすみませんが、これは「バイオハザード」ですね。読者を引き付ける力は作を重ねるごとに上がっています。
恒例のクローズドサークルものでもありますが1、2作目とは性質の異なる第3のクローズドサークルです。なぜテーマパークのど真ん中などという雰囲気の出ない開けたところを舞台にするのかと思っていましたが、そうすることでむしろクローズドサークルになるという逆説的な舞台設定です。
殺人事件の解明は、恒例の細かい論理の積み重ねによる消去法推理です。著者にこの辺りの基礎体力がしっかりあるから奇抜な設定も生きるんですよね。しかし「犯人は探偵の敵なのか」の言葉通り、この作品において犯人当てはさほど重要ではありません。目玉は巨人の正体と鍵を取り戻す方法であり、考え抜かれた建物の複雑な構造がそれを下支えしています。そしてそれは読者を驚かせるのみならず人間ドラマにも繋がっていくのです。これぞ館ものミステリーではないでしょうか。
この作品で語られる名探偵論は阿津川辰海の葛城シリーズと似通ったところがあります。葉村の考えは葛城寄り、比留子は飛鳥井光流寄りでしょうか。しかしながら「雨降って地固まる」で最後に二人の信頼関係が深まったのは良かったと思います。「彼を侮るな」には心を打たれました。
もったいないのは終盤のとある伏線です。あそこまで話が進んだ上でのあの描写ではこの人物が××だと教えているようなものでした。あれはいらなかったかも。最後になりますが、未解決の大きな謎が一つありますね。比留子さん、トイレどうしたんでしょうか。

No.290 5点 虹の歯ブラシ 上木らいち発散- 早坂吝 2021/08/05 23:58
「緑」まではまあよかったです。「黄」はちょっと推理不可じゃないですか?一応「青」に伏線のマジックはありましたけど、そこに繋げるのは飛躍な気がします。その後の「橙」で軽くパニックになりまして、最後の「赤」はもう真面目に読む気がしませんでした。これは前作と違い単なる悪ふざけになってしまったと思います。××が客というのも前作ですでにやっていますし。で、結局何歳なのよ?

No.289 6点 アデスタを吹く冷たい風- トマス・フラナガン 2021/07/29 00:29
訳が古臭くて大変読みにくかったです。まず本当にそれが大問題です。まあ面白かったと言えるのはテナント少佐の四編だけですかね。「アデスタを吹く冷たい風」と「国のしきたり」、「獅子のたてがみ」と「良心の問題」はそれぞれ発想が同じではありますが。そして解決がいつも唐突なので推理の過程をもっと描いてくれるとよかったです。「獅子のたてがみ」は状況に無理がありますよね。どうやったらそんな錯誤が生じるんでしょうか。

No.288 7点 うるはしみにくし あなたのともだち- 澤村伊智 2021/07/14 21:27
最終盤のユアフレンドの正体が明らかにされるところはよかったのですが、××さんが開けっぴろげ過ぎであること、そしてスマホが便利過ぎであることに少し醒めてしまいました。登場人物は下衆な人間が多いです。それも生徒以上に親や教師に問題があります。特に犯人の親はあり得ないでしょう。それでも人の親なのか。

以下ネタバレ

犯人は自分で思っているように醜くはないのではないかという私の読みは、スケープゴートの登場で一旦はかわされた形になりましたが、しかしそのスケープゴートの方も最初はあまり醜いという扱いはされてませんでしたよね。この辺りのバランスは作者も苦心したのではないでしょうか。それと「誰にも気付かれないように渡す」の定義が最後までよく分かりませんでしたね。「誰にも」に相手本人も含まれるのかどうかがまず意見の分かれるところだと思いますし、メールがありなら封筒を相手に直接手渡すのもありになりませんか?

No.287 7点 神の悪手- 芦沢央 2021/07/11 00:19
●弱い者 6点・・・そんなボランティアが本当にいるんですかね
●神の悪手 9点・・・文字通りの将棋ミステリーで完璧な作品
●ミイラ 5点・・・死生観と詰将棋の関連付けが無理やりに感じます
●盤上の糸 4点・・・何を表現したかったのか分からない。叙述トリックも不要
●恩返し 8点・・・タイトルも伏線

表題作「神の悪手」は一文が短くテンポのある筆致が主人公の心境のめまぐるしい変化とシンクロしており、アリバイ作りと棋士としての矜持がせめぎ合う展開も斬新で、かなり読み応えのある作品に仕上がっています。
将棋をテーマにした連作短編集としてはあまり成功しているとは言えないのですが、何しろ表題作が素晴らしいので、そのためだけにでも手に取る価値のある本だと思います。

No.286 6点 僕が答える君の謎解き 明神凛音は間違えない- 紙城境介 2021/07/04 16:50
相沢沙呼の「medium 霊媒探偵城塚翡翠」とマツリカシリーズをミックスしたような作品。推理の直線アプローチと迂回アプローチの二段構えの構造は前者の特徴です。設定や大まかなストーリー運びは面白いのですが、如何せんひとつひとつの事件があまり面白くありません。ゴチャゴチャしてますし、推理にも飛躍が多いです。というか「つづく」んですか(笑)ならばこの作品単体での評価は難しいのですが、暫定的に6点にしておきます。

以下ネタバレで疑問や不満

第1話 親友の二人が学年が違うという設定にした意味はあるのか。
第2話 犯人が落ち葉を体に付けて教室に入ってきた可能性がなぜ無視されているのか。あと校内の見取り図が欲しい。
第3話 逢引きが真相なら鍵を持っていればレンチはいらなかったのではないか。窓から見えない死角で飲食ぐらいは出来たのではないか。

No.285 9点 六人の嘘つきな大学生- 浅倉秋成 2021/06/30 23:45
人や社会の表と裏、善と悪の二面性にスポットを当てた青春就活ミステリー。ミステリーを読み慣れている人なら第一部終盤に用意されている反転は何となく読めるのではないでしょうか。そして「まだページが半分ぐらい残ってるけど、第二部で何を描くんだろう」などと思うわけですが、第二部でも構図はさらに二転三転していくのです。第一部は過去、第二部は現在という構成ですが、第一部の随所に現在からの振り返りを挿入することが第一部の補完となり、第二部へ向けての伏線にもなっているという実にテクニカルな作品です。8点か9点か迷いましたが、「教室が、ひとりになるまで」を超えなおかつ今回は著者得意のSF要素を使わずにこれだけの物を読ませてくれましたので9点といたします。

No.284 7点 人魚の眠る家- 東野圭吾 2021/06/16 00:04
脳死と植物状態の違いも分かっていなかった私ですのでこの作品は大いに勉強になりました。目次の各章サブタイトルで物語の大まかな流れが分かってしまうにも関わらず、続きが気になって一気に読まされるのはこの作者の力だと思います。ただし、中盤の募金活動のくだりはサプライズを狙い過ぎたあまり本編から浮いてしまった気がします。あれがないと大方の予想通りの起承転結になってしまうので、アクセントの意味でも入れたくなる気持ちは分かるのですが、あの一途な人物がああいう回りくどいことをするのにはやはり違和感がありました。

No.283 8点 オーブランの少女- 深緑野分 2021/06/06 19:14
●オーブランの少女 8点・・・時代や民族などの背景を隠したのが巧み
●仮面 7点・・・気分が悪い(笑)
●大雨とトマト 7点・・・洒落が利いていてコンパクトにまとまった好編
●片想い 8点・・・なぜか急に朝ドラに
●氷の皇国 8点・・・展開の読めない一大叙事詩

古今東西を舞台にして少女を主役に立てた粒揃いの短編集。初めの2つを読んだ時点ではいわゆるイヤミス集なのかなと思っていましたが、「大雨とトマト」はコメディタッチで、そして「片想い」は女学生の切なくも爽やかな青春を描いてきました。著者の作風の多彩さには感心するばかりです。「氷の皇国」は「オーブランの少女」と構成が似てしまっているのですが、間に毛色の違う話を挟んだことであまり気にならないようになっています。収録順もよかったですね。著者は近年は専ら長編を書いておりそちらも傑作揃いなのですが、是非またこういう短編集も書いてもらいたいものです。

No.282 5点 密室殺人ゲーム・マニアックス- 歌野晶午 2021/05/23 02:12
「2.0」で既にげんなりした部分はあったのですが、毒を食らわば皿まで(?)の精神で3作目にも手を出しました。結果やはりと言うべきか、1作目から順調にクオリティが下がっていって、今作終了後にはもう草も生えない状態となりました。まずゲームの存在が世間に知れ渡ってしまったのが興醒めなんですかね(例えるならば、デスノートの存在を知るのはキラだけであってほしかったというような)。
「王手飛車取り」のコロンボは「出題者の用意した解答ではなくても矛盾がなかったら正解として認めろ」とキレましたが、今作のコロンボは「制作者の意図を汲み取り、制作者が用意した結末に向かうのがゲーム」と随分大人なことを言います(別人だから不思議はないのですが)。「密室殺人ゲーム」はどうあるべきなのか、この命題に読者の私も振り回されたシリーズでした。

No.281 7点 ○○○○○○○○殺人事件- 早坂吝 2021/05/17 23:32
文庫版を読みました。タイトルだけは当てることが出来ました。どうしようもなく下品でアホな作品ですが、「ミステリマニアの主人公がアレを疑わない理由」という隠し問題を設定するなど、実は高度なことをやっているんですね。漫才コンビの笑い飯を初めて見たときのような衝撃を受けました。この作者の「思い付いたら書く」という精神は大いに評価したいです。

No.280 5点 天使の屍- 貫井徳郎 2021/05/14 00:08
自殺するほどのことかと思ってしまうのは20年以上前の作品だからでしょうか。それと優馬がどういう子なのかよく分からなかったので、回想シーンでも随所に挿入して描いてくれるともっと父と子の問題に感情移入できたと思います。

No.279 6点 密室殺人ゲーム2.0- 歌野晶午 2021/05/08 01:52
続編を作るようなものではないですね。前作との関連性が判明した中盤がピークでした。しかもこれは実質的に前作のリブートのようなものですし、各出題も前作の二番煎じです。最後どうなるのかだけを期待して読み進めましたが、またしても消化不良の終わり方でした。やはり前作だけで綺麗に完結させた方が良かったと思います。
「相当な悪魔」の犯行当日の生配信で出題者が堂々と嘘を吐いているのはいいんですかねえ。このゲームのフェア-アンフェアのラインが未だによく分からないんですよ。

No.278 7点 スケルトン・キー- 道尾秀介 2021/04/22 23:50
この手の作品としてはネタばらしが随分早かったので心配しましたが、失速することなく最後まで緊迫感を維持できています。ある意味でこの作品の肝だと思いますが、反転の芸が細かいですねえ(笑)綾辻行人の某作品のアレみたいなものですが大変分かりにくく、恐らく多くの読者はしばらく気付きません。そして頃合いになったところで分かりやすいやつが出てきてまさかと思いページを戻る、作者の狙い通りの読み方をさせられるでしょう。いや、久しぶりに騙されました。ジャンルはサスペンスにしましたが、取りようによってはクライムかもしれません。

sophiaさん
ひとこと
採点がやや甘いかもしれませんが、世評の高い物を中心に読んでいっているので仕方がありません。点数はミステリーとしてのみならず、読み物として面白いかどうかを考慮して付けています。
好きな作家
採点傾向
平均点: 7.00点   採点数: 297件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(30)
米澤穂信(14)
伊坂幸太郎(13)
綾辻行人(13)
島田荘司(12)
道尾秀介(12)
泡坂妻夫(9)
恒川光太郎(9)
アガサ・クリスティー(9)
倉知淳(8)