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sophiaさん
平均点: 6.95点 書評数: 344件

プロフィール高評価と近い人 | 書評 | おすすめ

No.344 5点 一寸先の闇 澤村伊智怪談掌編集- 澤村伊智 2023/09/22 00:37
全21編、分かりやすい幽霊話か意味の分からない話か大体どっちかです。面白かったのは「せんせいあのね」「さきのばし」「はしのした」ぐらいでしょうか。「さきのばし」のような非心霊系の現実的な話がもっと欲しかったです。

No.343 4点 プリズム- 貫井徳郎 2023/09/18 23:35
ネタバレあり

これは難解な作品ですが、要は各章の視点人物の間で疑惑の連環を作りたかっただけの作品ですよね。最後に疑惑を向けられる第一章の男子児童がシロなのは明白ですし。その構造を面白がれるかどうかが評価のポイントなのでしょうが、自分はいまいちでした。それをやりたいがために終盤で急に話が変わるのがどうにも不自然でしたし。やはりリドルストーリーは基本的に合わないようです。

No.342 5点 恋する殺人者- 倉知淳 2023/09/11 19:14
この構成とギミックは著者の過去作の二番煎じでありますし、今回はスケールも小さく真相が脱力系です。サラッと読めるところ以外に特に評価するポイントがありません。しかしこのトリックを成立させるためだけに舞台をヨガ教室に設定したのかなどと考えるとちょっと微笑ましいのです(笑)

No.341 7点 十戒- 夕木春央 2023/09/04 22:25
ネタバレあり

タイトルを「百戒」に改めてほしいんですけど(笑)それはさておき。「方舟」とは違い、最後のどんでん返しがあまり効いていません。最初の解決で終わっていても、この作品の評価に変化はそう生じないと思うのです。「十戒」というテーマもあまり活かされていません。読み終わって「十戒」の内容を思い出せる人はあまりいないでしょう。なぜそのような条項を入れたのかというような謎があったりするとよかったんですかね。それとアリバイに関する記述がフェアなのかどうかはこの作品の問題点だと思われます。

追記 上記を書いた後しばらく考えていて気付きました。そういうことだったんですね。なぜ主人公以外は苗字しか出さないんだろうという地味な疑問がずっとあったんですが納得しました。しかしそれはあくまでプラスアルファの部分であって、分かったからと言って点数をプラスするには及ばないかなあと判断します。

No.340 6点 大雑把かつあやふやな怪盗の予告状: 警察庁特殊例外事案専従捜査課事件ファイル- 倉知淳 2023/08/31 00:16
「片桐大三郎とXYZの悲劇」と同様、どの話も内容に比して冗長で筆がくどいです。ページ数を稼ごうとしているのが見え見えで何とも嫌ですね。7割ぐらいの分量に収めてくれていればプラス1点したかもしれません。ミステリーの本質とは関係ない部分かもしれませんが、どうしても密度が薄くなってしまっているように感じるのです。
このよく分からない組織の設定も活かし切れているのかどうか。表題作だけはまあまあ面白かったと思いますが、人間の心理として果たして入れたままにしておくだろうかという疑問が残ります。

No.339 7点 しおかぜ市一家殺害事件あるいは迷宮牢の殺人- 早坂吝 2023/07/24 23:59
ネタバレあり

「迷宮牢の殺人」のグズグズっぷりに立腹しかけていたのですが、それすらも伏線でしたか。キーパーソン死宮遊歩の正体へ迫るヒントが初登場シーンに示されているのは実にフェアです(しかも助詞一文字の違和感という細かさ)。これはこれで面白かったのですが、当初期待していた通り真っ当なクローズド・サークルものとして読みたかった気もしますし、六つの未解決事件のインパクトの強さの余りスケールダウンした印象で損をしてしまったのではないでしょうか。しかしこの作品は誰もがあの新本格作家のあの作品を思い浮かべると思いますが、オマージュなのですかね。米澤穂信のあの作品っぽくもありますが。

No.338 8点 清里高原殺人別荘- 梶龍雄 2023/07/10 19:18
ネタバレあり

「梶龍雄 驚愕ミステリ大発掘コレクション」と仰々しく銘打たれた本作。こんなに面白い作品がよく今まで未文庫化だったものです。別荘(ビラ)に最初からいた秋江と闖入者の勝浦グループの双方が秘密を抱えており、解決編で2つのサプライズが味わえます。目ぼしいトリックはそう使われていないのですが、唯一と言ってもいいとあるトリックが明かされることで犯人の抱える秘密も明らかになるという技巧が冴えます。また本作は本格ミステリーと恋愛小説が融合しているとも言えるでしょう。難点を挙げるならば、章タイトルである程度結末が予想できてしまったことです。それと序盤から頻繁に名前が出る「川光」という人が何者なのかよく分からなかったので早めに説明してほしかったです。いやしかし、勝浦の女性蔑視がすごいことと呉殺しの動機が酷いこと(笑)

No.337 9点 ヨモツイクサ- 知念実希人 2023/07/02 22:04
ネタバレあり

「エイリアン2」様のパニックホラーとしては大変面白かったのですが、ミステリーの観点から言うと、行動を支配されるという設定にした以上何でもありになってしまいましたし、ヒントが多かったので終盤の丸々1ページを使った満を持した真相開示にも「やっぱりそうなのね」という気持ちが勝ってそこまで驚けませんでした。とはいえ××であることまでは読めませんでしたし、改めて章タイトルを見返すとその真の意味が分かる仕組みが優れており戦慄が走ります。このギミックは目次で「エイリアン2」を思い浮かべた私のような人間に特に有効でしょう。それ故にこの話は第三章で終わっていれば奇麗だったのではないかと思うのですが、エピローグは必要だったでしょうか。

追記 再読すると作者が整合性にとても気を遣っている作品だと分かりましたので1点プラスします。

No.336 8点 逆転美人- 藤崎翔 2023/06/13 22:45
若干ネタバレ気味です

以前某所でこの作品のネタバレ(誰々の何々という作品と同じトリックが使われているという)を見てしまい、その作品を既読の私は興味半減の状態で読むことになったのですが、それでも最後まで気付きませんでした。まあミステリーなんて騙されるために読んでいるようなものなので、まだしも幸運だったと言えるでしょう。前例(遥か昔ではあります)があるとはいえやはりよく頑張りましたし、この作品はこの作品でトリックの必然性が高いので賞賛に値すると思います。特に畳みかけの二つ目には参りましたよ。ただ「紙の本でしかできないトリック」という煽り文句も見かけましたが、そんなことはないですよね。

No.335 6点 七人の証人- 西村京太郎 2023/06/01 17:39
ネタバレあり

無駄な描写を極力排したプロット特化型の文章が大変読みやすいです。これは量産型作家の長所ですね。それで内容ですが、これはちょっと簡単でしたね。1年前の事件に真犯人がいると仮定すると、明らかに矛盾した証言をしている人物がいますし、凶器を手に入れることが出来た人物も限られますからね。これはミステリー小説というよりも推理クイズの域であって、トリックらしいトリックもないですし、文章の読みやすさと設定の面白さを加味しても6点が精々です。しかし「殺しの双曲線」もそうでしたが、最後唐突に終わるんですね。「殺しの双曲線」の方はそれが余白を生むという効果を上げていたと思いますが、本作の方は投げ出したように感じられました。

No.334 7点 栞と噓の季節- 米澤穂信 2023/05/16 23:58
ネタバレあり

まず、前作と同じく連作短編集だと思って読み始めたら長編で不意を突かれました(笑)タイトルに偽りなく主要人物がみんな嘘を抱えており、その嘘が暴かれる度に真相に近付いていくという趣向がよかったです。ラストに明かされる配り手捜しの真の動機にも唸らされました。事件のスケールが大きくなった割に結局は身近な人間ばかりで固まっているところがご都合主義と言えばそうなのですけど。

No.333 6点 キングを探せ- 法月綸太郎 2023/05/02 23:06
ネタバレあり

捜査陣が交換殺人に気付いてからそれが四重であることにまで思い至る過程や、中盤の脅迫状を起点とする捜査陣と犯人グループの攻防の図は凝っていて面白いはずなのですが、終盤で付いて行けなくなってしまいました。著者の過去作「怪盗グリフィン、絶体絶命」もやや複雑な話でしたが、あちらは考える楽しさというものがありました。ですので比較してマイナス1点かなあと。

No.332 8点 雷神- 道尾秀介 2023/04/25 00:07
ネタバレあり

二つの大きな取り違えがストーリーの肝となった作品。何と言っても「二本の線」のミスリードが秀逸で、完全に誤った読みをさせられました。途中に挿入された直筆の手紙が中間的な答え合わせの役割を果たしています。著者が過去作「いけない」でやろうとしたことは、本作において完成したのですね。登場人物の心情描写も作品の物悲しい雰囲気とマッチいていて素晴らしい。最後の最後の毒がなければもうプラス1点したかもしれません。どうしようもなく救いのない話だったので、せめて最後ぐらいは希望を感じさせて欲しかったのです。

No.331 8点 屋上のテロリスト- 知念実希人 2023/04/18 23:25
クライムノベルというかテロ小説としては意外とよく出来ていて面白いけど、この物語において主人公の男子高校生が存在する意味はあるのかと思いながら読んでいました。この点がまさに評価の分かれ目だったのですが、最後に上手くまとめてくれましたのでプラス1点します。

No.330 7点 灰かぶりの夕海- 市川憂人 2023/04/11 23:25
ネタバレあり

「揺籠のアディポクル」と似通っていますが、どこが似通っているのか書くと致命的なネタバレになってしまうのでさすがに書けません。これはみんな騙されるのではないでしょうか。とは言え騙しを成立させるために主人公が情報をかなりの部分隠しているところが文句なしの高評価とはいかなかった所以です。プロローグで語られている前置きも限りなくアウトに近いですし。しかしながら、そのような難点もラストシーンの感動で許しちゃおうかなあと悩むところも「揺籠のアディポクル」と同じです。特に今作は新海誠監督の映画みたいですね、うん。
余談ですが、2021年時点で20歳の主人公が千円札のことを野口英世ではなく夏目漱石と表現することに違和感があったのですが、特に伏線ではなかったようですね。

No.329 7点 サクリファイス- 近藤史恵 2023/03/22 00:00
必要最低限の風景描写しかされていませんし、物語自体もコンパクトにまとまっていて読みやすかったです。過去の事件を絡めて不穏な空気を醸成していくのが上手く、サスペンスとしても読めたのですが、やはり他の選手のためにそこまで自己犠牲の精神を持てるものなのかという大きな疑問は付きまといます。心変わりするに至った経緯をもっと描いてくれると得心がいったかもしれません。

No.328 7点 十字架のカルテ- 知念実希人 2023/03/14 18:53
十字架から逃れようとする者、十字架を背負おうとする者、被疑者の視点、家族の視点、実に色んなパターンが網羅されていて、精神科ミステリーの王道ともいえる連作短編集です。特に最終話のどんでん返しにはぞっとさせられました。注文を付けるとするならば、凛だけではなく、影山が精神科医を志した理由なども語られると物語にもっと深みが出たのかなと思います。

No.327 7点 君のクイズ- 小川哲 2023/01/22 23:44
ネタバレあり

構成はどうしてもアカデミー賞映画「スラムドッグ$ミリオネア」がちらつきましたが、真相は真逆になっているのかなと思いました。クイズという競技の戦い方やプレイヤーたちの矜持なども描かれており、200ページ足らずの作品とは思えないほどの読み応えがあったのですが、「本庄絆は最終問題でなぜあのような答え方をしたのか」という最大の謎の答えが想像を超えてこなかった感じです。

No.326 4点 11 eleven - 津原泰水 2022/11/21 23:57
先日訃報が流れた方。筆力が評価されている方のようですが、私にとっては異様に読みにくい文体で、斜め読みしない限りとても読み進められませんでした。内容も説明不足で起承転結のはっきりしない、言っては何ですが雰囲気だけの独善的なエログロ作品集で、読む人をかなり選ぶ作風だと思われました。幻想的な11の短編と聞き及び、恒川光太郎の「白昼夢の森の少女」のようなものを期待して手に取ったのですが、こうも違いますか。最後の「土の枕」のようなまともな話がもっと読みたかったです。

No.325 6点 此の世の果ての殺人- 荒木あかね 2022/10/23 20:13
世界の滅亡を仕方のないものと受け入れ残りの人生を淡々と生きるハルと、この期に及んでもなお正義の暴走に歯止めがかからないイサガワのコンビには引き付けられるものがありますし、文章も読みやすいのですが、ただいつになったら面白くなるのかと思っているうちに終わってしまった感があります。私のように派手なギミックを期待して読むとがっかりするかもしれない渋い作品です。ミステリーではなく純文学だと思って読んだのなら違う読後感を持ったかもしれません。偶然が幾重にも積み重なって出来たストーリーも賛否が分かれるところだと思います。

sophiaさん
ひとこと
採点がやや甘いかもしれませんが、世評の高い物を中心に読んでいっているので仕方がありません。点数はミステリーとしてのみならず、読み物として面白いかどうかを考慮して付けています。
好きな作家
米澤穂信 今村昌弘 方丈貴恵 知念実希人
採点傾向
平均点: 6.95点   採点数: 344件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(30)
米澤穂信(15)
綾辻行人(13)
伊坂幸太郎(13)
道尾秀介(13)
島田荘司(12)
倉知淳(10)
アガサ・クリスティー(9)
泡坂妻夫(9)
恒川光太郎(9)