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[ 本格/新本格 ]
明智恭介の奔走
剣崎比留子シリーズ
今村昌弘 出版月: 2024年06月 平均: 6.71点 書評数: 7件

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東京創元社
2024年06月

No.7 6点 みりん 2024/10/17 19:11
前回最下位の者として、今年の「みんな教えて」のこのミス予想企画をガチで当てに行くために(嘘)、注目度の高い新刊も読みます。
ネタバレになるからあまり言えませんが、これはシリーズのファンにとっては待望の一冊だったのではないかと思います。自分はあっちよりこっちの方が好きです。
大学が舞台の学園ミステリをあまり読んだことがないので、『最初でも最後でもない事件』と『宗教学試験問題漏洩事件』の2つは特に楽しかったです。前者は動機の推理、後者は事件の規模の割にかなり本格風トリックで嬉しくなります。
「とある日常の謎」については夫婦関係に焦点が当てられる日常の謎ミステリです。夫婦という題材にせよ、日常の謎にせよ、今まで本格の中の本格を書いてきた今村昌弘とは一風変わった作風といった印象で、読了後に心が温まるお話です。『でぃすぺる』も早く読まないとな。

No.6 6点 虫暮部 2024/09/26 12:22
 シンデレラの罠?
 広辞苑で “奔走” を引くと “物事がうまく運ぶように、いろいろと世話をやくこと” 。すると寧ろ奔走しているのは葉村君の方では……。
 最後の話。あれっぽっちの示唆でピンと来て罠に引っ掛かれたとは、犯人も結構鋭い名探偵であるね。

No.5 7点 まさむね 2024/08/29 23:34
 初の短編集。タイトルどおり、探偵役は神紅大学ミステリ愛好会会長の明智恭介。助手役として葉村譲が登場。剣崎比留子の出番はなし。シリーズの番外編という位置づけになるのでしょうが、本家(?)のシリーズ作品とは雰囲気が異なり、ユーモアにあふれています。これはこれで好印象。
 収録短編の中では「とある日常の謎について」が最も楽しかったですね。ある事実が判明した時点でニヤニヤ。そうか、それだったか。「泥酔肌着引き裂き事件」のバカすぎる謎の提示と、その謎を解かんとする明智と葉村のやり取りも楽しい。記憶なくし過ぎだけどね。

No.4 7点 sophia 2024/08/25 23:16
「〇〇の殺人」と銘打たれる剣崎比留子シリーズの緊迫感とは好対照のコミカルな作品集です。剣崎比留子のような天才型ではありませんが、ミステリー愛をエンジンに日常に潜む謎に取り組む努力型の明智恭介の姿勢には好感が持て、それだけでも読む価値があるというのに、どの作品もレベルが高いです。これを読んだ今「屍人荘の殺人」を再読したら泣いてしまうかもしれません。

追記 いつもこの方の作品は高評価してばかりなのでたまには難癖でも。「泥酔肌着引き裂き事件」に関して。そこまでやったなら覚えときましょうよ。というか、そこまでやれるなら泥酔してないでしょ(笑)

No.3 7点 メルカトル 2024/08/22 22:30
神紅大学ミステリ愛好会会長・明智恭介。小説に登場する探偵に憧れ、事件を求めて名刺を配り歩く彼は、はたしてミステリ小説のような謎に出合えるのか――大学のサークル棟で起きた不可解な盗難騒ぎ、商店街で噂される日常の謎、夏休み直前に起きた試験問題漏洩事件など、書き下ろしを含む全五編を収録。『屍人荘の殺人』以前、助手であり唯一の会員・葉村譲とともに挑んだ知られざる事件を描く、待望の〈明智恭介〉シリーズ第一短編集!
Amazon内容紹介より。

第一話から全てワトソン役の葉村の一人称で綴られるかと思いきや、全く別人の一人称であったりするのが意外でした。それがどうという訳ではありませんが。
様々な日常の謎に挑む明智恭介ですが、完璧と思われたロジックも空振りに終わったり、愛嬌のあるところを見せています。又、葉村も助手にしては鋭い考察を見せる辺りは、単なる名探偵と助手の関係とは若干異なります。

『とある日常の謎について』と『宗教学試験問題漏洩事件』が双璧でこれらは捻りと意外性があって、最も好感が持てました。伏線の回収も見事で、そう繋がるのかと思わず唸ってしまう出来です。
他はどちらかと言えば平凡。特に最後の書下ろしは要らなかったかな。まあファンにとっては嬉しい一編かも知れませんけどね。

No.2 7点 HORNET 2024/08/13 19:34
 大学のコスプレ研究部に侵入していた窃盗犯。ところがその窃盗犯は何者かに襲われ、のびてしまった。本人は何も盗んでいないという。果たして真の窃盗犯は?(最初でも最後でもない事件)ある朝、前夜泥酔して帰った明智が目覚めると、何故かズボンをはいていた状態ながらパンツだけが引き裂かれて玄関付近に放置されていた。一体その真相は?(泥酔肌着引き裂き事件)神紅大学ミステリ愛好会会長・明智恭介が、唯一の会員である葉村譲と共に日常の謎解きに挑む、ユーモラスながら本格的な連作短編集。

 いわゆる「日常の謎」レベルの不可解事案を、でこぼこコンピ(?)が滑稽かつ快活なやりとりで解決していく。本編「〇〇荘の殺人」では、第一作で死んでしまった明智恭介をフィーチャーしたスピンオフは、愛読者としては嬉しい。出色の傑作ということはないが、一つ一つ本格ミステリとしてきちんと立てつけられていて、十分に面白い。本編の次作にも自然、期待が高まる。

No.1 7点 文生 2024/07/09 06:04
時系列的には『屍人荘の殺人』以前の話で、主な舞台は神紅大学。そこで起きるちょっとした事件に自称名探偵の明智恭介と助手の葉村譲が挑む剣崎比留子シリーズの番外編です。
本作の面白さのポイントなんといっても明智恭介のキャラクター性にあります。重度なミステリーオタクでトラブルメーカー。迷走しつつも完全なポンコツというわけではなく、たまに見せる鋭い推理と見当違いの暴走を繰り返しながら徐々に真相に近付いていく姿が魅力的です。葉村譲との掛け合いも面白く、優秀すぎるために(出ずっぱりだとすぐに事件が解決してしまうので)途中で行方不明になったり、閉じ込められたりする剣崎比留子よりも探偵としての面白みという点では上かもしれません。
ミステリーとしてもよくできており、5つの短編はどれも高水準。特に大学生らしいノリが楽しい「泥酔肌着引き裂き事件」が個人的にお気に入り。逆に、明智が大学の1回生時における興信所でのアルバイトの様子を描き、唯一葉村の登場しない「手紙ばら撒きハイツ事件」はいつもとノリが違うためか、他のエピソードと比べるとイマイチに感じました。


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今村昌弘
2024年06月
明智恭介の奔走
平均:6.71 / 書評数:7
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