海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

[ その他 ]
でぃすぺる
今村昌弘 出版月: 2023年09月 平均: 6.83点 書評数: 6件

書評を見る | 採点するジャンル投票


文藝春秋
2023年09月

文藝春秋
2023年09月

No.6 6点 メルカトル 2024/02/10 22:09
残念ながら期待を上回る事はありませんでした。小学生が主役のせいか、ジュブナイル寄りな為か、折角の七不思議という魅力的な題材を上手く料理出来ていない気がしてなりません。もう少し怪談話らしく禍々しさを強調して欲しかったです。その謎に挑む三人の小学六年生の男女は中途半端に謎を残しながら、少しずつ真相に迫りますが、手付かずの疑問を残し過ぎではないでしょうか。結局最後にはその疑問点は全て解明される訳ですが、道中何だかモヤモヤする気分が抜け切れず、あまり乗れませんでした。

そして最大の不思議な点が最後に残った感じでしたね。何故そんな事をしたのか、もっと他に最善手が無かったものかと個人的に思ってしまいます。私の読みが甘いせいかも知れませんが。いずれにせよ、あまりスッキリした読後感ではありませんでした。ただ、なかなかの反転や、ミステリとオカルトの境界線を渡り歩きながら子供たちが協力して過去の事件の謎解きをしていく姿はまずまず描けていたと思います。それとミナの意外な活躍のシーンには感動しました。

No.5 7点 mozart 2024/01/24 19:29
最初はちょっと……となりましたが(所謂特殊設定モノを含む)従来のミステリー的価値観と常識(?)を一旦捨てて再読するとこれはこれで作中に「魔女」からの助言で示された前提条件に対して「ロジカル」に合致する解になっていることに気付いてすこぶる納得させられました。三人が登場するシリーズ物として続編を読みたいところですがなかなか難しそうではありますね。
ちなみにジャンルは「その他」となっていますが「『新』本格」としても良いのかも。

No.4 8点 sophia 2024/01/21 19:10
ネタバレあり

謎が多すぎるよ!と悲鳴を上げつつメモを取って読み続けましたが、頑張った甲斐がありました。この手の作品はリドルで終わるのが常だと思うのですが、まさかの完全決着で新鮮でした。それに伴いジャンル投票がネタバレになってしまいかねないという、このサイト特有の問題が発生していますね。「ノックスの十戒」が出てきたのにもびっくり。そしてただ出しただけではなく、謎解きの重要なファクターだったのにもびっくり。小学校の卒業を間近に控えた少年少女のセンチメンタルな冒険譚としても読めます。ラストの主人公の心情描写が素晴らしかったです。この方の例のシリーズ以外の作品は初めて読みましたが、作家としての底の深さを思い知らされました。ただ、ジュブナイルというには少々難解に過ぎるでしょうか。

No.3 7点 虫暮部 2023/12/29 15:22
 これはジャンル不明で読むのが得策だと思う。推理合戦の形態からも、どちらへ転ぶのか最後まで明かさず引っ張ろうと言う意図を感じる。
 語り手の内省がしっかり描かれていて良い。ただそのせいで、小学生の限界が物語の壁になってしまったかも。
 あと、マリ姉の回りくどい伝え方のおかげで無用な誤解が生じて被害が拡大した側面もあるよね。本作に限らず “策を講じ過ぎ” な話には若干乗り切れない部分が残ってしまう。

No.2 7点 人並由真 2023/11/05 14:16
(ネタバレなし)
 とある地方の三笹山(みさまやま)の周辺。「おれ」こと小堂間(こどうま)小学校の6年生の男子「ユースケ」(木島悠介)は、前期まで学級委員長だった女子・波多野沙月(サツキ)そして4月に転向してきた女子・畑美奈(ミナ)とともに、二学期から、学級新聞を編集製作するクラス内の「掲示係」になる。オカルトマニアのユースケは、学級新聞の紙面を借りて自分の知識や知見をアピールしたいという狙いがあったが、サツキの方にはまた別の目的があった。それは先に変死したサツキの年長の従姉妹の「マリ姉」こと波多野真理子がパソコンの中に書きのこしていた「七不思議」の怪談にからむものだった。

 ローカル・ホラーの大枠の中で、いろいろ謎解きミステリ好き向けに仕掛けて来る、ジュブナイルっぽい(ただし目線は大人向けだろう~ませた子供にも、読んでほしい気もするが)ハイブリッド作品。
 
 作中作のような感じで語られる複数の怪談の秘密、世界観の深淵、そして終盤のサプライズの連打と、かなりよく出来ている一冊。楽しく読んだ。
 ジャブ的に繰り出される小技の連打で稼ぎまくる、そういう形質の作品でもある。
 
 シリーズものになってほしいような、これ一本での完結感を大事にしてほしいようなそんな味わいの長編でもあった。

 一か所だけ惜しいのは、322ページの4行目
ユースケとサツキは(誤)
ユースケとミナは (正)
だね。
 まさかのいきなりの叙述トリックの仕込み? かと思ったが、ただの誤植または誤記であった。再版か文庫化の際に、直しておいてください。

No.1 6点 文生 2023/10/03 07:04
小学生の少年少女が謎解きを通して成長していく姿を描いたジュブナイル的な作品です。その点はよくできているのですが、探偵役が普通の小学生なのであまり込み入った推理をさせるわけにもいかず、剣崎比留子シリーズに比べると謎解きが軽量級に感じます。一方、地元の怪談話が事件の鍵を握るホラーミステリとしては節々にぞっとするシーンをちりばめているものの、こちらもイマイチ振り切れてない印象を受けました。全体としてはそれなりに楽しめたものの、やはり剣崎比留子シリーズと比べると一歩及ばずといったところでしょうか。


キーワードから探す
今村昌弘
2024年06月
明智恭介の奔走
2023年09月
でぃすぺる
平均:6.83 / 書評数:6
2021年07月
兇人邸の殺人
平均:7.39 / 書評数:23
2019年02月
魔眼の匣の殺人
平均:7.48 / 書評数:33
2017年10月
屍人荘の殺人
平均:7.64 / 書評数:39