海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト

[ 本格/新本格 ]
兇人邸の殺人
剣崎比留子シリーズ
今村昌弘 出版月: 2021年07月 平均: 7.46点 書評数: 13件

書評を見る | 採点するジャンル投票


東京創元社
2021年07月

No.13 7点 測量ボ-イ 2022/05/08 12:51
話題の作品を先日読了。この作品もなかなかのものでした。
詳細は先に書評くださった方の意見と同様なので繰り返しませんが、一口で言えば、
よくこれだけの設定をつくれたなあというところに感心。
CC(クロ-ズドサークル)好きの方にはもちろん、そうでない方にも一読をおす
すめします。
「屍人荘・・」と「魔眼のハコ・・」に続く第3弾ですが、個人的には「魔眼のハ
コ」が最も好みかな。この作者はしばらく追いかけたいと思います。

No.12 7点 パメル 2022/03/24 09:21
このミス4位、本ミス3位。本作も含め、毎回特殊設定ミステリで楽しませてくれる。相性の良いこの作家は、しばらく追っていこうと思っている。
テーマパーク内に放置されたアトラクション、通称・兇人邸。創薬会社社長・成島は、班目機関の研究資料を手に入れるため、事件を呼び寄せる体質を持つ剣崎比留子に同行を申し入れる。剣崎やプロの傭兵たちと共に、兇人邸へ潜入した葉村譲を待ち受けていたのは、殺人事件と●●の存在であった。
海外のパニックホラーを彷彿させる雰囲気が漂っており、冒頭からワクワクさせてくれる。●●の存在と殺人犯と気を付けないといけない対象が複数ある。●●の存在に怯えながら、誰もが怪しく思え疑心暗鬼になり、腹の探り合いをしていくところが読みどころ。
兇人邸には本館と別館に分かれていて、本館にも主区画と副区画とある。建物の構造が複雑で、見取り図を見ながら推理するのも、本書の魅力の一つである。●●の存在には大きな弱点があり、それによって行動範囲が制限されるとともに、潜入した人たちの行動範囲が広がるというのが面白さに繋がっている。心理的なクローズド・サークルで、外に助けを呼ぼうとすれば出来るが、それぞれに都合があり仲間内で意見が割れ、そうはしない。
この特殊設定を活かした殺人犯のトリックと動機、終盤の怒涛の展開が熱い。また、助手役の葉村譲が大活躍し、助手としても人間としても成長しているのも嬉しい。人物像もしっかり描かれており、色々な人の想いが最後に詰まっているラストには震えた。次作も期待したい。

No.11 7点 人並由真 2022/03/04 02:17
(ネタバレなし)
『パックマン』か『平安京エイリアン』を想起させる、迷路的空間を徘徊するモンスターを相手にしたサバイバルゲームのごときシチュエーションは鮮烈。モンスターのSF設定もパズルストーリー部分をふくむ作劇要素に十二分に奉仕し、舞台設定を作りこんだという面では文句なしに三作中、一番であろう。

 ただし波状攻撃のごとく明かされる意外な真相は読みごたえがあった一方、正に手数の多さが読む側の感興を相殺してしまった一面もある(先行の方のレビューで言うなら、個人的には文生さんのものに一番、共感)。入念な作品を楽しむのは、ときに難しいものだと改めて感じた。
 で、イカれた、しかし(中略)動機の真相は、思いきり賞賛したいような反面、反応に困るところも……(汗)。

 なお先にモンスターのSF設定をホメたが、最後に明かされる(中略)のロジックは、ちょっと説明不足だったとは思う。あまり丁寧に書いて読者に勘付かれまいとした配慮かもしれないが、ここはミステリ初心者さんの感想に近しい感慨を覚えた。
 あとこのモンスター、どうやって(中略)してきたのでしょう。そこらへんは不要な生態になっていたのか?
 評点はさすがに6点ではちょっと低すぎるという思いで、この数字で。

No.10 9点 まさむね 2022/01/10 21:02
 シリーズ第三弾。面白かったですねぇ。「屍人荘の殺人」以降、高水準の作品を確実に示してくれている作者に感謝したい。
 やはりクローズドサークルの作り上げ方が巧みですね。巨人の設定もポイントが高い。細かい点ではありますが、各登場人物の設定がスッと頭に入ってくる気配りも素晴らしい。中盤まではドキドキ、中盤以降は完全に作者の掌で転がされていました。真相も印象深いですし、全体として様々に考えられています。個人的には「屍人荘」以上の評価かも。続編も大いに期待します。

No.9 9点 E-BANKER 2022/01/08 18:36
「屍人荘の殺人」「魔眼の匣の殺人」に続くシリーズ三作目。
今回も探偵=比留子、助手=葉村のコンビが当然活躍するのだが、途中は意外過ぎる展開に!
2021年発表で、各種ランキングを賑わせた作品。

~”廃墟テーマパーク”に聳える「兇人邸」。班目機関の研究資料を探し求めるグループとともに、深夜その奇怪な屋敷に侵入した葉村譲と剣崎比留子を待ち受けていたのは、無慈悲な首斬り殺人鬼だった。逃げ惑う狂乱の一夜が明け、同行者が次々と首のない死体となって発見されるなか、比留子が行方不明に。さまざまな思惑を抱えた生存者たちは、この迷路のような屋敷から脱出の道を選べない。さらに、別の殺人者がいる可能性が浮上し・・・。葉村は比留子を見つけ出し、ともに謎を解いて生き延びることができるのか?~

いやいや、こんな”突拍子もない”設定、よく考えたねえー
ただ、個人的な感想でいうなら、大評判となった「屍人荘」よりも、もちろん「魔眼の匣」よりも本作の方が断然上に思えた。(世間的にはそうでもないようですが・・・)
「屍人荘」もかなりの特殊設定だったけど、本作はそれを凌駕する。もはや完全にゲームの世界だ。
なにしろ、訳の分からないほど入り組んだ迷路さながらの「館」だし、人の力を完全に超越した巨人が殺人者(しかも首斬り魔!)だし、探偵役の比留子は脱出不能で完全に孤立するし・・・
もはや、何が何だか、普通なら混乱必至のプロットだと思う。

しかしながら、そうはならない。作者の考えぬかれた「仕掛け」に読者は翻弄されることになる。特に、巨人以外の「生き残り」による殺人、これも首斬りなのだが、アリバイを主に四重五重にも張り巡らされた作者の「罠」にはなかなか感服させられた。久々に聞く名言(?)「困難は分割せよ」(by二階堂蘭〇)の更に上を行く、「困難の三分割」・・・これはかなりの興奮を覚えた。成るほどねぇ・・・、だからの首斬りとは・・・恐れ入りました。
過去の「追憶」シーンはいわゆるカットバック的手法なのだが、これも読者にとっての「罠」として有効に作用している。(読者は当然、アイツがあいつで・・・って予想するもんね)
「巨人」の設定(夜しか活動できない、必ず首を斬るなど)もゲームキャラ的要素満載なのだが、この1つ1つの設定がトリックや仕掛けに活かされているところも評価が高い。特殊設定にばかり目を奪われるけど、要は、ありとあらゆる要素がすべて1つの真相につながっていく、かなり真っ当なミステリーということだろう。

まぁさすがに動機(真犯人以外の行動も含めて)については首肯できない箇所も目立つし、細かい突っ込みどころは多いのは事実だけど、それを補って余りある面白さだった。新年から、こんな作品読めてまずはラッキー。
(単行本135ページの比留子の言葉『…確かに脱出の手段はあるけど、それを使うことで状況がより悪化する可能性がある。これは私たち自身が留まることを選ばざるを得ないクローズドサークルなんだよ』。これがプロットの出発点かな?)

No.8 7点 makomako 2022/01/07 21:32
 このシリーズも3作目となった。こういった設定だと物語の設定はある程度自由度があるのでどんなお話となるかと期待して読みました。
 確かに面白い内容でしたが、初めのほうは推理小説というよりオカルト小説の傾向が強い。
 中盤以後は密室迷路の推理がいろいろされて、いかにも本格推理小説となってきます。これかといった方法が提示されかなりよさそうだがやっぱり無理といった推理が次々と出てきて読者を混乱させます。こういった推理がめんどくさいと思う方にはこの小説は全く向きません。
 かなり後半になりようやく犯人の正体や怪物の正体がわかるような展開となり、私などは久しぶりに名探偵の推理の前に答えがわかったと喜んだのですが、どっこい作者はそう甘くはなくさらに奇抜などんでん返しとなり、哀れ私の推理は木っ端みじん。
 こういった感覚が味わえるのは作者の本格推理作家としての力なのでしょう。
 ただちょっと作風が二階堂蘭子シリーズのようになってきているのが心配です。蘭子シリーズも初めはとても良かったのですが後期にはスカスカになってしまったので。

No.7 8点 zuso 2021/12/28 22:41
舞台となるのは、古さを売りにしたテーマパークにたたずむ「兇人邸」。そこに秘匿されている「重要なもの」を回収するのに同行してほしいと依頼を受けた剣崎比留子は、同じ大学の後輩葉村譲らと共に深夜、屋敷に侵入する。しかし、鉄の扉の先で待っていたのは、大なたで人間の首を刈る隻腕の巨人だった。
外部への脱出が困難になるだけでなく、脱出方法によっては巨人を外界に解き放ってしまう恐れもあるという仕掛けがユニーク。死体が増えていく中で、巨人以外にも殺人者がいることが判明、幾重もの謎が巨人の生まれた悲しい過去に結び付く。物語のラストでは意外な展開が待っており、次作への期待も高まった。

No.6 8点 虫暮部 2021/10/31 13:46
 特殊設定サヴァイヴァルが面白過ぎてフーダニット部分が埋もれちゃったなぁ。
 “あの子”の実体がアレなら、“生け贄”は無意味だったかもしれない?
 雑賀の来歴は一応提示されたが、女性のほうのソレは不明のままで気になる。

No.5 7点 ミステリ初心者 2021/09/20 18:26
ネタバレをしています。

 待望のシリーズ第3作! 非常に読みやすい文章に、丁寧な描写や館見取り図、ワトソン役葉村による容疑者タイムテーブルなど、全くストレスがありません。かつ、今回も現実には存在しない巨人や、人体実験を受けた生き残りなどをうまく絡めつつの犯人当てや不可能トリックは健在です。

 非常に濃厚な本格要素がおおいです。主に4つあり、それぞれすべて水準が高かったです。

 前半の、探偵剣崎比留子による犯人当ては、倒叙形式でのミステリになっており、これだけでも1冊分の価値がありました。正直いって、この部分が一番出来が良かったです。ただ、挑戦状、あるいはそれを示唆する文が無かったために(自分はそう感じましたw)、私があれこれと考える前に比留子が解いてしまいました(涙)。読者と共に解く本というよりかは、探偵比留子が勝手に解くのを眺める小説のようで残念です(笑)。まるで、石持浅海。挑戦状がついていれば大幅加点するのですが、この作者は従来の推理小説を揶揄することを多く書いており、絶対に挑戦状などつけないでしょうね。

 次に、誰が雑賀を殺したか?という犯人当てについてです。中華包丁関連の話や、不木の首切りなど、非常に論理的で隙が無い犯人当てでした。たとえ、雑賀の首の謎(いつ切ったのか、いつ運んだのかなど)がわからなくても、とりあえず犯人当てはできるという趣向(?)であり、フェアさを感じました。

 雑賀の首はいかにして切られたか、については、密室などと同じ系統の不可能犯罪ととらえて読みました(笑)。血のトリックによる、首を切られた時間の詐称は盲点でした…。剛力が雑賀の死体の発見した後では、首を切るのは非常に難しくなってしまうため、むしろ剛力が発見した時点で切れていたのではないかとも考えてしまいましたが、それだと馬鹿ミスですね(笑)。ただし、生き残りは出血死しない的な要素がありますが、これは説明不足と思います。あと、巨人が雑賀を発見して首を切るか?は偶然の要素が絡みますし、第一犯人の狙った通りの時間ではなかった偶然もあっての不可能犯罪なので、どちらかというと好みではありません。

 最後に、いかにして鍵をゲットするかという問題。まるで、北山猛邦氏のような狂気じみた方法で、大変気に入りました(笑)。負け惜しみですが、北山猛邦作品だったなら、解いた自信があります(笑)。

 総じて、個人的シリーズ最高傑作の魔眼の匣よりかは劣るものの、推理小説としての密度と水準は依然として高く、早くも次の新作が待ち遠しいです。

No.4 9点 sophia 2021/08/16 00:23
「屍人荘の殺人」と同じくクリーチャーによって人の行動が支配される特殊設定ミステリー。今作は更にホラーサスペンス色が強いです。毎度映画に例えてすみませんが、これは「バイオハザード」ですね。読者を引き付ける力は作を重ねるごとに上がっています。
恒例のクローズドサークルものでもありますが1、2作目とは性質の異なる第3のクローズドサークルです。なぜテーマパークのど真ん中などという雰囲気の出ない開けたところを舞台にするのかと思っていましたが、そうすることでむしろクローズドサークルになるという逆説的な舞台設定です。
殺人事件の解明は、恒例の細かい論理の積み重ねによる消去法推理です。著者にこの辺りの基礎体力がしっかりあるから奇抜な設定も生きるんですよね。しかし「犯人は探偵の敵なのか」の言葉通り、この作品において犯人当てはさほど重要ではありません。目玉は巨人の正体と鍵を取り戻す方法であり、考え抜かれた建物の複雑な構造がそれを下支えしています。そしてそれは読者を驚かせるのみならず人間ドラマにも繋がっていくのです。これぞ館ものミステリーではないでしょうか。
この作品で語られる名探偵論は阿津川辰海の葛城シリーズと似通ったところがあります。葉村の考えは葛城寄り、比留子は飛鳥井光流寄りでしょうか。しかしながら「雨降って地固まる」で最後に二人の信頼関係が深まったのは良かったと思います。「彼を侮るな」には心を打たれました。
もったいないのは終盤のとある伏線です。あそこまで話が進んだ上でのあの描写ではこの人物が××だと教えているようなものでした。あれはいらなかったかも。最後になりますが、未解決の大きな謎が一つありますね。比留子さん、トイレどうしたんでしょうか。

No.3 6点 文生 2021/08/14 10:53
スプラッターホラー仕立てのストーリーは大いに楽しめましたし、ミステリーとしても決して悪い作品ではないのですが、前2作と比べると目玉となる仕掛けに欠けていた点に物足りなさを覚えます。
一応、兇人邸からの脱出方法が目玉かなとは思うものの、殺人事件の方にも独創的な仕掛けが何かひとつほしかったところです。手数だけ多くてごちゃごちゃした印象を受けてしまったのが残念。

No.2 6点 じきる 2021/08/12 13:20
決して悪い作品では無いし、それなりに面白く読んだのですが、『屍人荘』『魔眼の匣』に比べると物足りなさを覚えてしまいました。

No.1 7点 HORNET 2021/08/11 17:17
葉村譲と剣崎比留子は、とある企業に依頼され、テーマパークに隣接する異形の館「兇人邸」へ行くことになった。邸には、2人にも因縁深い戦後の極秘組織「班目機関」の重要資料があるという。さらにそこでは近年、テーマパークの従業員が何人も行方不明になっているとのこと。真相を暴き、資料を回収するために兇人邸へ赴いた葉村らだったが、そこで待っていたのは、とてつもない怪力をもったモンスターだった――。
 班目機関の研究によって生まれたモンスター、閉ざされた空間内で繰り広げられる惨劇、という点で1作目に似た雰囲気の本作。邸の間取りが複雑なうえ、その間取りがアリバイや犯行の可不可に絡んでくるので少々読むのに手間取った。そうした間取りや、モンスターの性質など、数々の特殊条件が設定されていることから、それを生かしたロジックで推理を展開していく手法は本作者の特徴か。
 多少の複雑さはあったが、論理的な推理を組み立てて犯人を明らかにしていく点ではよい意味でオーソドックスで、本格ミステリを安心して楽しめた。


今村昌弘
2021年07月
兇人邸の殺人
平均:7.46 / 書評数:13
2019年02月
魔眼の匣の殺人
平均:7.50 / 書評数:26
2017年10月
屍人荘の殺人
平均:7.58 / 書評数:33