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ぷちレコードさん
平均点: 6.24点 書評数: 317件

プロフィール高評価と近い人 | 書評 | おすすめ

No.317 5点 ゆうずどの結末- 滝川さり 2026/04/09 21:17
呪われた本というメタ趣向の都市伝説もの。
自殺した作家・鬼多河さりが遺したホラー小説「ゆうずど」を一行でも読んだ者は市が訪れるという。たとえ途中で読むのをやめても、どこかに捨ててもその呪いから逃げることは出来ない。
様々な場に現れる「ゆうずど」が発動する呪いに救いはないが、それを受ける者たちもまた闇を孕んでいる。定番のテーマ、モチーフをグロテスクなディテールと歪な心理描写で捻るのがいい。

No.316 5点 ラザロの迷宮- 神永学 2026/04/09 21:12
湖畔の洋館に8人の男女が集まり、殺人事件を題材とする参加型の謎解きゲームに興じる。真相解明まで館から出られないというルールのもと、ゲームが始まった。程なく彼等の眼前に転がった死体は本物だった。
典型的な閉鎖環境ミステリだが、そこに血塗れで警察を訪れた記憶喪失者の素性を探る警察小説が絡んでくる。
多様な驚愕が連続したあげく、思いも寄らない角度から真相が顔を出す。ギリギリの綱渡りが楽しめる。

No.315 8点 木挽町のあだ討ち- 永井紗耶子 2026/03/25 21:18
江戸期の芝居小屋を舞台に、ひとつのあだ討ちを目撃した、様々な人の現実を描くことによって、あだ討ちの正体を少しずつ明かしていく。
語り手を変えた「自分語り」を積み重ねた構成。いわゆる聞き書き形式の筋立てで、語り手たちのキャラクターはよく考えられており、それぞれの語りは謎を隠すと同時に真相の一部分を示す形になっており、精緻かつ周到である。
奇想天外なアイデアを、手の込んだ文章が支えている。笑いあり涙あり、芝居の観客や上演に携わる人たちへの敬意にあふれている。

No.314 7点 地雷グリコ- 青崎有吾 2026/03/25 21:12
高校生の射守矢真兎は、ゲームを通して次々と現れる強敵と頭脳戦を繰り広げる。そのゲームは他愛のない子供の遊びに独自のルールを追加し奥深い頭脳ゲームに仕立てている。
射守矢は対戦相手の言動から性格や癖を見抜き、それを活かして相手を出し抜こうとする。初体面の相手がどんな人間かを見抜いていく。そして対戦相手が知り合いの場合は、さらに知り尽くそうと執念深く観察し、関係性の変化を呼ぶ。
勝負は文化祭の屋上使用権を賭けたゲームに始まり、しまいには数千万円がかかった勝負にまで発展する。しかし、ゲームを楽しむ高校生たちの青春小説としての趣が、最後まで失われないのも魅力のひとつである。

No.313 5点 花の下にて春死なむ- 北森鴻 2026/03/10 21:08
舞台は三軒茶屋の知る人ぞ知るビア・バー「香菜里家」。マスターの工藤が常連客とともに訪れる客が持ちかけた謎を推理するという構成。
全ての話に共通しているのは、提出された謎が解明される時、そこに込められた人間の想いが明かされる点。単なる謎解きゲームの域を超えて、叙情的な感銘をもたらす。

No.312 7点 殺戮にいたる病- 我孫子武丸 2026/03/10 21:04
快楽殺人者を中心に立場の異なる視点から物語は展開していく。
サイコスリラーの傑作であるだけでなく、驚愕の結末のために作者が仕掛けた周到な準備の巧妙さに舌を巻く。しかもそれがこの小説の隠された重要なテーマを浮かび上がらせる鍵にもなっている。現代社会の病理を描いた筆致は見事。

No.311 5点 魔術はささやく- 宮部みゆき 2026/02/18 21:36
両親のいない日下守少年は、伯父大造一家のもとで暮らしていたが、ある日、大造が若い娘を車ではねてしまった。ここから思わぬ事件に巻き込まれていく。
物語は、伯父とその家族を救おうとする守の姿がメインに描かれていくが、作者はそこにサブストーリーを用意し、話を膨らませていく。大造一家をはじめ、高校の友達やバイト先の従業員たちとの交流を通じ、それまで失われていた絆を徐々に取り戻していくことになる。その意味で本書は、成長する少年の姿を生き生きと捉えた青春小説ともいえる。

No.310 5点 歌麿殺人事件- 水野泰治 2026/02/18 21:29
歌麿の謎を追ったルポライターが自殺を遂げ、彼の親友だった男女二名がそれを追うという、歴史ミステリらしい展開を見せながら、歌麿自身も含めた登場人物たちの恋愛模様が、次第に多動的に浮かび上がってくる。
ルポライターの死は、その死因を追う二人の間に微妙な亀裂をもたらし、徐々に崩れ始める。その崩壊感覚が引き起こすサスペンスが、事件の謎以上にカタルシスをもたらす。

No.309 5点 楽園のカンヴァス- 原田マハ 2026/01/29 21:58
ルソー研究者のティム・ブラウンは美術商コンラート・バイラーの邸宅に招かれる。そこで見せられたのは、ルソーの最晩年の大作「夢」とほとんど同じ内容の作品だった。死期迫るバイラーは、ブラウンともう一人呼び寄せたルソー研究者・早川織絵に真贋鑑定を依頼する。
ミステリでありながら美術の知識が身につき、さらには恋愛小説としても愉しめる。最後にほっこりするのが、またいいところ。

No.308 10点 奇想、天を動かす- 島田荘司 2026/01/29 21:54
浮浪者の老人がわずか十二円の消費税を請求された腹いせに、菓子屋の女性店主を殺害。吉敷刑事は、事件の背景を探り出すため、現場の浅草界隈に聞き込みに回る。
冒頭から怪奇趣味を漂わせた不可能犯罪が登場するが、本筋はオーソドックスな社会派推理的な展開を見せていく。次第に事件の背景が判明したところで、奇想に富んだ謎を仕掛けることで、昭和三十二年に北海道の国鉄札沼線で起きた事件が絡んでくるあたりからは、まさに作者の独壇場。本格ミステリと社会派ミステリが融合した傑作。

No.307 5点 幸福な朝食- 乃南アサ 2026/01/15 21:47
アイドルになり損ねた人形使いを主人公にしたサイコスリラーだが、冒頭からヒロインの血生臭い夢のシーンが描かれるなど、一貫として暗いトーンに包まれている。
ヒロインの狂おしい心理が描き込まれていくほど暗さも増していくが、それが妖しい魅力となって心理サスペンス的効果を高める仕組みとなっている。ただサイコスリラーとしての仕掛けに物足りなさを感じた。

No.306 6点 火の接吻- 戸川昌子 2026/01/15 21:44
火遊びがもとで火災を起こした三人の幼稚園児が二十六年後、それぞれ消防士、刑事、放火魔として成長する。この三人がライオンを飼っている一人の女性を焼死させた放火事件を契機に再会するが、さらにそこから新たな殺人事件へと展開していく。
主要人物の三人をはじめ、登場人物たちは名前ではなく、役割名でしか出てこない。実名が出るのはプロローグとエピローグにあるような記録の上だけである。これによって悪夢を装った舞台劇のような様相を呈する。丹念に仕立てられた舞台装置の中で、ドラマは終焉を迎える。幻想的な心理ミステリの妙が存分に味わえる。

No.305 8点 孤島パズル- 有栖川有栖 2025/12/25 20:50
推理小説研究会に所属する有栖川有栖は、部長の江神二郎とともに、新入部員・有馬麻里亜の伯父の別荘へ遊びに行くことになる。麻里亜の祖父・鉄之助は、島のどこかに五億円相当のダイヤを隠し、その在処の謎を解く鍵として二十五体の木製のモアイ像を残したというのだ。しかも三年前には謎に取り組んだ麻里亜の従兄が海で溺死するという事件も発生していた。
いわくありげな人物が登場し、台風が接近、徐々にサスペンスが高まったところで事件が発生し、それと共に外との連絡も絶たれる。かくて不安な状況の中で宝探しと殺人劇が同時進行していく。ユーモラスな会話に、青春小説のような印象的な描写を交えながら、クイーンばりの論理主体の謎解きが展開されるという本格ミステリファンにとって至れり尽くせりといった感がある作品。

No.304 6点 月光ゲーム- 有栖川有栖 2025/12/25 20:40
英都大学の推理小説研究会は、夏休みを利用して矢吹山へキャンプに出掛け、そこで他の大学の学生たちと合流する。そして三日目の朝、女子大生の一人が置き手紙を残して立ち去った後、突如山が噴火し、下山コースを絶たれてしまう。さらに翌朝にはメンバーの一人が刺殺体となって発見され、現場には「Y」と書かれたダイイングメッセージ残されていた。
噴火と殺人という二重のサスペンスに加え、初対面同士であるはずのグループ内で殺人が起きるという設定は充分生かされている。ラストの胸キュンシーンは余韻が残る。

No.303 6点 猟犬探偵- 稲見一良 2025/12/09 21:14
少年とトナカイのクリスマス・ストーリーの「トカチン、カラチン」、夜の町を流し歩く艶歌師と失踪した犬の奇妙な関係を描いた「ギターと猟犬」、伝染病と診断されたサラブレッドとシェパードを連れて逃げた男を追う「サイド・キック」、血統書付きの猟犬連続失踪事件を通して、ストリート・ファイターの慕情が胸に迫る「悪役と鳩」。
事件が解決しても、物語から立ち去らない登場人物が竜門に絡んで、次の事件ではサポートに回る構成が憎い。失われた者への哀惜の念が歌声となって流れる最後のページが泣かせる。

No.302 9点 凍てつく太陽- 葉真中顕 2025/12/09 21:07
舞台は、第二次大戦の敗戦間近から敗戦直後の北海道。
戦時下の緊迫感、特高警察の異様な雰囲気、そしてアイヌ民族への差別など、当時の社会情勢が克明に描かれており、圧倒的なリアリティを感じさせる。
連続毒殺事件の謎、陸軍の軍事機密、そして主人公の冤罪と脱獄など、複数の様相が複雑に絡み合い、最後まで目が離せなく惹きつけられる。
戦争という極限状態における人間の姿を深く考えさせられる骨太なミステリ。

No.301 6点 一八八八 切り裂きジャック- 服部まゆみ 2025/11/22 21:19
世紀末のロンドンを舞台に、二人の全く生まれも育ちも違う若き日本人留学生が切り裂きジャックの正体を追って推理を巡らす物語。
コンプレックスの塊であった主人公の柏木薫が「光の君」と呼ばれる美貌の貴族・鷹原惟光と出会い、反発しながら心を通わせ、いかにして自己を解放していくかが一番の読みどころとなっている。歴史伝奇ミステリであると同時に、優れた青春小説でもある。

No.300 6点 弁護側の証人- 小泉喜美子 2025/11/22 21:14
元ヌードダンサーの漣子は、八島財閥の息子と結婚し玉の輿に乗った。そんなある日、当主の龍之助が屋敷の離れで殺されているのを、彼女が発見してしまう。夫を疑惑から助けるべく奮闘するが、裁判長の「死刑に処する」という判決を聞く羽目になる。
各章ごとに過去の回想と現在が交互に語られる構成で、その平易な語り口は終盤での衝撃度をより高めている。法廷ものとしても読み応えがあるが、数々の伏線の上に感動的なラストが待っている。

No.299 5点 「死霊」殺人事件- 今邑彩 2025/11/07 21:35
妻に殺意を抱いていた経営者が密室状態の自宅の一階で変死、そこには彼の共同経営者の他殺死体が転がっていた。さらには二階で妻の死体も発見される。どうやら殺された妻が蘇って二人の男を殺したらしいという具合で、出だしはカーを彷彿させる。
そこにアリバイ崩しや展開仕掛けを加味させたり、シリーズキャラクターの貴島柊志にピント外れな現代娘刑事を組ませたりもしているのだが、せっかくの多彩なミステリ趣向も、謎解きが真っ当すぎて、いささか拍子抜け。

No.298 6点 リア王密室に死す- 梶龍雄 2025/11/07 21:28
「私」は行きつけの飲み屋で常連の金谷から、かつて推理小説になるような事件があったと教えられる。本書は金谷の旧制高校時代の日記体で描かれている。
金谷の友人・堀分が睡眠薬自殺した。金谷は自殺に疑問を抱いていたところ、金谷の疑惑を聞き入れる刑事が現れた。堀分の死に端を発した事件は、考古学者・大平先生の家を舞台に禍々しく展開していく。本格ものとして目新しい仕掛けはないが、いかにも高校生らしい感傷が全編に満ちている。

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ぷちレコードさん
ひとこと
中学生の頃、ミステリにはまった。でも続いたのは3年間ぐらい。今また、ミステリにはまりつつある。やっぱりミステリは最高だ。
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