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[ 本格/新本格 ]
屍人荘の殺人
剣崎比留子シリーズ
今村昌弘 出版月: 2017年10月 平均: 7.64点 書評数: 39件

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東京創元社
2017年10月

東京創元社
2019年09月

No.39 7点 斎藤警部 2024/04/09 21:47
「いけ、そこだ。頑張れ、殺せ」

被害者の意外性(!!!)はそのまま物語構造への湧き立つような疑惑に直結。 一見目新しいような探偵役が、話が進むにつれぐだぐだに類型的な存在に落ち着いたり、パニックやら恐怖やらがさっぱりリアルに迫って来なかったり(私のホラー感覚欠如障碍もあるが)。 なかなか冴えたるロジック含めて情報はギンギンに詰まっている筈なのに、なんなのこの謎の中だるみは。 しかしリーダビリティは終始丸ビル並みに高いだな。 鋭いロジックの付け込めそうな隙というか場というか違和感がそこかしこふんだんにジャカジャカ踊っているのは見逃せない美点でありましょう。 専門筋からやたらな高評価を受けるのも納得のブレイクスルー新機軸。 ですが、個人的には文章の好みの壁を越えられなかったですね、ミステリそのものの熱エネルギーが。それでも充分に高く評価しちゃいますよ。

“食糧危機と●●●と殺人者、複数の波濤がぶつかり打ち消し合う、不思議な平穏の中に俺たちは身を置いていた。”

エレベーターには、●大●●●がある。。。。 意外な組み合わせの男女に意外なミステリドラマもあった(そこにちょっとした短いアレも。。)。 或るカウントダウンにそこまでスリルを感じる登場人物がいたのは、そういうわけか。。

「おっしゃるとおりです。実際に殺人は起きているのだから、それが可能であることを証明してもなんら意味はありません」

物語の根幹に纏わる所で、ホワイダニットとハウダニットが異例なほど不即不離に連結した或る人間ドラマ事象には、強い力がありましたな。 ところで、プロローグのとエピローグの繋がりは、ちょっとやばくないですか。。。

No.38 9点 密室とアリバイ 2023/05/03 09:25
圧巻のパニックホラークローズドサークル イロモノと思いきや正統派本格ミステリ

No.37 6点 take5 2023/02/19 21:30
鮎川哲也賞受賞作
オカルト+本格
大学生のサークルのノリが懐かしく
(しかし2017年の割りにかなり古い感じ
六人の嘘つきな大学生-
浅倉秋成の30年前位)、
途中に挟まる語呂合わせの
登場人物暗記法が秀逸。
しかし本格と●●ビってどうなんでしょう。
私の一作前の書評が
天使の登場する『カラフル』で好みでしたが、
個人的にゾ●●にしっくりこなかったです。
クローズドサークルのためだけではない
意味深い存在にしていますが、
私には刺さらなかったというだけです。
バ●オ●ザ●ドとかやっていた人には
よいのかも。
Who、How 、Why 全て網羅する力作なのに---

もうひとつ。 、、、、、、、
種明かしで文に点を打ち過ぎのきらいあり。

No.36 10点 モグ風 2023/01/03 01:50
前代未聞の特殊設定の新本格。
ミステリー性とロジック性の高さ、斬新さ、リーダビリティ、すべていいとこ取りして独り占めしたような作品です。
作品の骨組みやロジックがしっかりしているため、
クローズドサークルにするためだけの飾りの特殊設定でなく、緻密に作り込まれていて考え尽くされている。
至る所にヒントが散りばめられていて、謎解きの助力となり好奇心や想像力を駆り立てられるようになっている。
本作品を読んだ方は自分と同様に、
是非続編を読みたい、いやシリーズすべて読みたいと思うであろう。

No.35 8点 みりん 2022/12/25 01:29
本格ミステリとして非常に骨格がしっかりしていて、ベテランが書いたような作品だった。

No.34 8点 びーじぇー 2022/10/28 22:41
主人公である大学一回生の葉村譲は、所属するミステリ愛好家の先輩であり、名探偵でもある三回生の明智恭介とともに、映画研究部の合宿に参加する。同じ大学のもう一人の名探偵、剣崎比留子の導きによるものだった。紫湛荘での合宿初日は、ホラームービー撮影やバーベキュー、肝試しと進行するが、その最中に事件が。
この紫湛荘が、クローズドサークルになるのだが、その密閉環境が新鮮極まりない。その紫湛荘で人が次々と殺されていく。密室状態とか奇妙なメッセージとか奇怪な姿態の状況とか、そうした彩りを伴って殺人が連続するのだ。
その果てにある謎解きも、圧倒的に素晴らしい。不可解な死体の状況は真相を知ると必然としか思えなくなるし、細かな手掛かりを積み重ねることで犯人を特定していくロジックの丁寧さも嬉しい。
名探偵はなぜ事件を解くのか、という興味までもが新鮮な味付けでトッピングされており満足。

No.33 7点 2020/12/04 07:59
 神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と会長の明智恭介は、曰くつきの映画研究部の夏合宿に加わるため、同じ大学の探偵少女、剣崎比留子と共にペンション紫湛荘を訪ねた。合宿一日目の夜、映研のメンバーたちと肝試しに出かけるが、想像しえなかった事態に遭遇し紫湛荘に立て籠もりを余儀なくされる。緊張と混乱の一夜が明け―。部員の一人が密室で惨殺死体となって発見される。しかしそれは連続殺人の幕開けに過ぎなかった・・・!! 究極の絶望の淵で、葉村は、明智は、そして比留子は、生き残り謎を解き明かせるか?! 奇想と本格ミステリが見事に融合する選考委員大絶賛の第27回鮎川哲也賞受賞作!
 2017年発表。ミステリ四冠を総ナメにした作品で、作中起きる三つの殺人のトリックに全て○○○が用いられています。それでいてイロモノ性はカケラも無く、むしろ即物的なまでに○○○の習性を考察し活用しているのが異色。作者が最初に思いついたものの初期バージョンからかなり図面を書き直したという、第二の殺人のトリックはその好例と言えるでしょう。巻末に二冊だけ載っている、主要参考文献のタイトルを見ると結構笑えます。特に捻り鉢巻とかしなくても、面白いモノを書ける人というのはいるのだなあ。
 ちょっと多いかなと思われた登場人物たちが、1/3ほどでいきなり削られて十人余りに。そこからは定番の阿鼻叫喚と共にテンポ良くサクサク進みます。クイーン張りに綿密な犯人特定もGOOD。
 難点を言えば処女作ゆえか、特に後半詰め込みすぎが目立つところ。○○○サバイバル+ガチミステリ展開だけで正直読者はお腹いっぱいなので、『鋼鉄都市』のロジックを思わせる第一の事件をメインに、この上の叙述トリックや俺のホームズ云々の濃厚なドラマは削るか、次回作以降に回した方がバランス良くなったと思います。そこらへんはマイナス要素ですかね。とにかく凄いパワーを感じる人なので、勢い余ってつんのめったような今の内容もいいんですけど。
 そういう意味で8点には届かず7.5点。四冠云々は評価のし過ぎだと思いますが、どう転んでも良作なのは間違いない。これからも注目すべき作家さんの一人でしょう。

No.32 6点 いいちこ 2020/10/20 19:17
意欲は買うし、特殊過ぎる舞台設定は目を瞑ってもいいのだが、犯行のフィージビリティが低すぎる点を大きく減点して、この評価

No.31 7点 Kingscorss 2020/08/26 00:56
デビュー作とは思えない素晴らしい出来。あの奇抜な設定は漫画とか映画ですでにたくさん似たようなものがあるので目新しいとは思わなかったが、ミステリー小説でやるのはかなり珍しいので新鮮。(有名なあの作品とは趣旨が違うし)

鮎川賞を受賞しただけあって設定以外は奇抜なことはせず、本格ミステリーとしてキチンと機能しており、物語の構成を含めても完成度はかなり高い。

あえて言うなら少しラノベっぽい文章の言い回しの部分が個人的に嫌いなのと、トリックやプロットの根底がベタすぎてその辺は全く新しさがないこと、犯人の動機があそこまでの犯罪を犯すに値しない現実味のなさ等が気になりました。特に犯人の動機。あんな動機で人殺しまくるなら自分だったら今まで100人ぐらい殺してますよ…(~_~;)

何にせよ安心して楽しめる作品なので必読です。ちなみに実写化映画も拝見しましたがあっちは1点で。全く原作愛がなく、設定も変えまくりでどうしようもないダメ映画でした… 容易にお金のため何でもクソ実写化しちゃう日本映画界の未来はまだまだ暗い。

No.30 7点 じきる 2020/08/23 20:37
舞台設定はオリジナリティが高いが、ミステリとしての骨格は細やかで丁寧。

No.29 7点 okutetsu 2020/07/24 01:36
設定はとても面白いし、内容にも引き込まれた。
若干納得の行かない部分はあるけど、読んでてなんの違和感も感じさせなかったトリックは見事にやられたと思った。
続きを意識した内容になってるので次も読もうと思っている。

No.28 7点 あびびび 2020/06/19 00:02
現代風の孤島ミステリ。ホテルの周囲にゾンビがいて、外に出られない!何人も殺すのには動機がしょぼい気もするけど(自分自身の事ではないので?)、アリバイとか、密室とか、色々な要素が散りばめられていて、最後まで楽しめた。有栖川さんが激賞しているのも納得できます。

No.27 9点 ぷちレコード 2020/03/19 20:07
人里離れた山奥の山荘に集まった学生たち。やがて彼らは閉じ込められて、事件は起こる。ミステリ読みに慣れた方にとっては飽きるほど使い古された展開。
しかし、この作品はありきたりを大胆に裏切る。そのあまりにも斬新すぎるアイデアには驚かずにはいられない。突飛な舞台設定ではあるが、特筆すべきは謎解きの論理性の高さ。それをしっかり踏まえているからこそ、型破りな設定が際立つ。
読む人を選ぶ部分は確かにあるが、なるべく多くの人に読んでいただきたい。

No.26 8点 YMY 2020/01/08 19:52
神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と明智恭介は、同じ大学の探偵少女・剣崎比留子と共に、映画研究会の夏合宿に参加する。「今年の生贄は誰だ」という脅迫状が届き、辞退者が続出していたのだ。合宿一日目の夜、みなで肝試しに出掛けるが、そこで生死を分ける極限状況に直面し引き返す。やがて部員の一人が密室で惨殺死体となって発見される。
閉鎖された環境での密室殺人を探偵少女が名推理で解き明かす・・という、ありきたりな設定だが、本書が異色なのは、誰もがみな命を狙われる状況にあるということ。死と対峙する絶望的な状況下で、なぜ犯人は殺人を犯すのかが大きく問われることになる。このロジックが実に緻密で面白い。

No.25 7点 ボナンザ 2019/12/20 22:54
パニックものと山荘ものを組み合わせた野心作。
意外にも叙述トリックなどの大技一発ではなく、小技を積み重ねていく作りなのは嬉しかった。
今後に期待できそうな新人。

No.24 6点 E-BANKER 2019/11/05 22:24
第27回の鮎川哲也賞受賞作であり、その年の「このミステリーがすごい」など三冠を達成した超話題作。
そんな超話題作を文庫化に当たり、ようやく読了。華々しいまでの作品に相応しい出来栄えなのか?
2017年の発表。

~神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と明智恭介は、曰くつきの映画研究会の夏合宿に参加するため、同じ大学の探偵少女・剣崎比留子とペンション紫湛荘を訪れる。しかし想像だにしなかった事態に見舞われ、一同は籠城を余儀なくされる。緊張と混乱の夜が明け、部員の一人が密室で惨殺死体となって発見される。それは連続殺人の幕開けだった。奇想と謎解きの驚異の融合。衝撃のデビュー作~

“数々の絶賛と多少の不満と疑問”・・・本作に対する世間の評価をひとことで表すならこういう感じか。
確かにデビュー作としてはかなりの高レベル。特に解決パートで示されたロジックには唸らされた。
まず第一の殺人では、『私たち(人間)には密室が突破できるが殺せない。〇〇〇は殺人ができるが密室を突破できない』・・・この欺瞞を一刀両断に解決に導くトリック(というべきか)が見事に嵌っている。
そして第二の殺人では、やはり〇〇〇ー〇ーを使った欺瞞とトリック。そこまでやるか?という動機の問題はあるものの、これも大げさに言うなら「青天の霹靂」のような衝撃を受けた。(ただ、いくら睡眠薬を使ったとはいえ、かける時間が膨大すぎ!)
それもこれも、やはり〇〇〇という特殊設定が大きく寄与している。
巻末解説によると、作者はまず〇〇〇ありきの設定からプロットを膨らませたということだから、まさにアイデア勝ちということ。

では褒める一方かというと、どうもそこまでにはならない。
一番気になったのはやはり動機、というか必然性。〇〇〇の襲撃は全くの想像外だったわけで、そんな特殊設定のなかでわざわざ連続殺人を綱渡りで行うなんて・・・通常の人間心理では考えられないことだ。
もちろんパズラー型の本格ミステリーなんだから、そんなリアリティを要求されても・・・ということは分かる。
もはや本格ミステリーの鉱脈は「特殊設定条件下」にしか有り得ないということなのかな。

本作を読んでると、有栖川有栖のデビュー作「月光ゲーム」をどうしても思い浮かべてしまう。
両作とも学生のサークル内での人間関係のもつれが事件の背景にあるし、学生たちが突如思わぬ事態に巻き込まれる点も同様(一方は火山の噴火で一方は〇〇〇の襲撃)、これは作者が意識していたことなのだろうか。
文庫版解説をかの有栖川氏が行っていることも偶然ではないのだろう。
いずれにしても、数多のミステリーファンを唸らせる作品というだけでもスゴイことだ。
さすがに鮎川哲也賞はハズレなし。ますますそういう評価が高まりそうだね。
(確かにAmazonのレビューでは辛口の評価が多いな・・・)

No.23 7点 ボンボン 2019/11/05 18:03
これはやはり、既存の作家が突然書けるようなものではないと思った。“新しい人”の仕業だろう。使い古された道具や設定を使って、全く見たことのない新品が作られている。
すごいのは例の特殊設定のことだけでない。細々としたロジカルなネタが、ずーっと敷き詰められているところが力強い。
本格度だけでなく、読みやすさも切ないドラマもちょっとした笑いも含め、これがデビュー作とは、今後が楽しみすぎる。


ただ、こんなに面白いのに、犯人に意外性がなさ過ぎて、少し興奮が冷めた。逆に、敢えてミステリによくあるベタな犯人を切れたロジックで炙り出そうという趣向か。
もう一つ、震災時のトラウマの話には違和感があった。たくさんの伏線を張って、最後の大事な話に絡ませている太めの筋だが、なんだかうまくつながらない。考え方と結果の行動が、(こちらはベタとは正反対)特殊に個人的過ぎて、話の邪魔になってしまう。
なかなか難しいものだなあ。

No.22 5点 mediocrity 2019/09/12 07:21
文庫化されたので早速買って読んでみました。

まず文章に関して。
正直所々もうちょっとうまく書けないものかと思いましたが、デビュー作ですし、全体としてのリーダビリティーは高いですから、点数を引いたりはしていません。

で、内容ですね。
私の勝手な思い込みで、読んでいる最中「アレ」の存在は、クローズドサークルを更にクローズする程度の役目だと思い込んでいました。よって「アレ」がトリックに大きく関わってくるのはちょっと予定に入っていませんでした。
3冠作にこんな微妙な点数を付けたのは、そのあたりを今の所、完全に受け入れられないからです。それさえ許容できれば、細かい所まで非常に凝った良い作品だと思います。

No.21 8点 青い車 2019/06/27 07:16
 大ネタ一発勝負というより、小刻みにポイントを稼いで面白く仕上げている作品。「いいアイデアが湧いたから書いてみました」ではなく「書き方を熟知して書いた」という感じで、作者がミステリ一辺倒ではなく幅広いジャンルの本好きと知って少し意外でした。舞台の屍人荘を活かした殺害方法やその解明も新鮮で、画的な派手さよりも理詰めによる快感が味わえる最近では稀有な収穫ではないでしょうか。

No.20 7点 レッドキング 2019/05/12 19:06
このサイトで知って読み、期待以上に面白かった。「二重の密室」の外壁を構成しているのがゾンビの群れって・・・少年漫画「進撃の巨人」を連想した。トリックとしては第一の不可能殺人が面白い。というよりこの部分だけをもっと徹底的に「密室=不可能」に作り込んでもらえたら、第二第三の不可能事件は別にいらないとさえ思った。
ところで、あの第一の殺人のエピソードで、子供の頃に見た円谷プロ「怪奇大作戦」の、吸血鬼になってしまった女とその恋人の男の切ないラストを思い出した。


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