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たかだいさん
平均点: 5.10点 書評数: 157件

プロフィール高評価と近い人 | 書評 | おすすめ

No.157 4点 蒼い鳩殺人事件- 馬場信浩 2025/04/12 00:38
とある禅寺では庵がラブホ代わりに貸し出されており、その庵で面を被った全裸の女が首を吊る事件から話が始まる。さらに、そこにブルーフィルム(非合法なアダルト映画)まで絡んでくる為、官能ミステリーの類かと思えてくるが、そこはしっかり真面目(?)なミステリー作品でした
本来なら主題に挙げられる筈の密室の謎は(作中的にもあまり意味がない事もあって)はっきり言ってオマケ程度であり、本質的には(著者自身の経歴が活きているのか)生々しさすら感じられる人間模様がメインのミステリー作品だと感じました
そうゆう意味ではトリックありきの作品の方が好みな私としてはあまり刺さらない作品でしたが、とは言え読み応えはある力の入った作品ではあったかと思います

No.156 3点 武蔵野アンダーワールド・セブン 多重迷宮- 長沢樹 2025/04/10 10:09
近未来SF的な設定で、やや荒廃したイメージの世界観の中、天然の鍾乳窟を利用した地下シェルター的な居住施設に閉じ込められた男女が何者かに殺されていくクローズドサークル物のミステリー作品
正直、ミステリー小説として見ると真相や仕掛けの観点から言っても真新しさはなく、かと言って近未来SFとして見てもあまりパッとしないというのが読んでみた感想です
結構手堅くまとまっている気はしたので、シチュエーションミステリーの類としては無難な作品かと思いましたが、それでもミステリー小説をある程度嗜んだ方を満足させる出来とは言えないかと…。初心者に薦められるかと言えば、設定が足を引っ張るのでそれも難しい。
ちょっと微妙な立ち位置の作品でした

No.155 7点 案山子の村の殺人- 楠谷佑 2025/04/08 10:07
毒矢を使って野生動物や看板を射抜く悪質なハンターの存在に騒つく元山村を舞台に、降り続いた雪の影響で『雪の密室』の様相を呈した殺人事件が起こり…
密室の分類に含まれる雪の密室を扱った話で、トリック自体は可もなく不可もなく。個人的にはこう言った(リアリティは傍に置くとして)ギミックありきというか、大掛かりと言って差し支えないトリックは割と好きです。案山子が紛失した理由なんかも、すんなり納得できましたし
犯人が特定されるまでの過程も良かったと思います。いろいろと疑惑のある人物や事柄があちこちに散らばっていて、ある種のダミーとして事件を良い意味で複雑にしていたように思え、楽しめました
あと、作品自体とはあまり関係ない話ですが、著者が「小説家になろう」出身の方と知って意外に思いました。いわゆるなろう系と言えば「転生したらスライムだった件」や「オーバーロード」のような異世界転生ファンタジーのイメージでしたので、このような本格推理小説を執筆する方も居るんだなと軽い驚きを覚えました

No.154 6点 グラスバードは還らない- 市川憂人 2025/04/05 18:42
近未来的な要素も絡めたエンターテイメント小説って感じのミステリー
某テロ事件を想わせる高層ビルの爆破事件と、特殊な仕組みの硝子で作られた閉鎖空間に閉じ込められた男女。両方が同時進行しながら、やがて両者が混じり合って一つの真実へと繋がっていく
タイトルにもなっているグラスバード(硝子鳥)の仕掛けは驚きもあって結構好きで、作中に登場する光学迷彩じみた素材の布硝子だとか、屈折率を可変出来る硝子の壁といったギミックも現実味があって興味深かったです
一連の犯行の流れも、なかなか複雑ながらすんなり納得も出来る塩梅で良し
シリーズ物をいきなり読んだ為に一部よく分からない単語(ジェリーフィッシュ等)がありましたが、本筋とはそこまで関わらないのでその辺りは流しても楽しめました
文章も読み易い部類で好感が持てたので、他のシリーズも追って読みたいと思います

No.153 6点 僧正殺人事件- S・S・ヴァン・ダイン 2025/04/05 03:46
ミステリーの古典的名作であり、いわゆる見立て殺人物の原点とも言える作品
マザーグースの童話に見立てた手口でそれに見合った人物が次々に殺害され、さらに現場や新聞にメッセージを送り付ける異常犯『僧正』の正体は誰か
あらすじの時点で未だ色褪せない魅力を個人的には感じるわけだが、実際、内容もそれに見合って面白い
見立ての理由や犯行動機は現代的で納得感があり、この手の推理小説で『動かぬ証拠を突き付けて言い逃れが出来ない状態』を勝敗の基準とするなら本作は犯人の勝利、もしくは痛み分けの引き分けなのも興味深い所
ああいった結末でしか犯人の凶行を止められなかった辺り、『僧正』という犯人の因果な魅力と、本作というか本シリーズにおける探偵の思慮と行動力は目を見張るものがある
ただ、内容的に前作を読んでないとピンとこない記述や事件の確信が隠された劇なんかも知ってる前提みたいな所があり、それらを全く知らない側からすると作中にあまりにも注釈が多く、読む勢いが削がれる気がしたので読み易さの点で少々マイナスに感じる点はありました
そのうち、機会があれは『グリーン家殺人事件』も読んでみたいものです

No.152 3点 屋上の道化たち- 島田荘司 2025/03/31 22:31
飛び降りる理由が全くない者達が相次いで身投げをする怪事件。身投げをする者としない者の違いとは何か。過去の強盗事件や、周辺の人間関係なども絡んだ事件の真相とは⁉︎
あらすじやこれらの状況設定は満点で、どんな真相だろうかと心躍って読み進めた期待の作品でしたが、なんとも拍子抜け…
偶然と言えば偶然で、結果は因果応報とも言える……道化とはよく言ったもの
詰まらないとは言い切れないまでも、がっかりした部分もあり、やはり拍子抜けという感想が一番しっくりくる内容でした
正直、私としては島田荘司の作品は文章がやや苦手な部類で読み難いんですが、それこそ代表作『占星術殺人事件』のようなトリックと異才が光るパワー溢れる作品も多くて苦手でも期待してしまうのですが、本作はイマイチでしたね

No.151 4点 閻魔堂沙羅の推理奇譚- 木元哉多 2025/03/27 21:58
ラノベチックな変則的ミステリーで、何らかの事情で死亡した人間(被害者)がその死亡理由(犯人など)を推理するという変わり種
死後の世界で閻魔大王の娘を名乗る少女との生き返りを賭けた推理ゲームという設定は中々面白く、短編形式な点も読み易い
しかしながら、いささかワンパターンが過ぎるのも実情で、あの世で閻魔大王の娘・沙羅と邂逅、様々な事情から「死者復活・謎解き推理ゲーム」に挑む、制限時間内に概ね正解の推理を披露、細かな部分は沙羅が補足説明、無事に生き返る事が出来て未来が変わる、収録されている4話全てがこの流れを踏襲しており、良く言えば予定調和で安心感だけは保証出来る
とは言え、はっきり言えばそれ故に平坦で面白みや盛り上がりに欠ける作品と言わざるを得ない
ゲーム失敗のバッドエンドを見たいわけではないけど、せめて1話くらいゲーム失敗…と思わせてからのどんでん返しくらいの仕掛けがあっても良いだろう、と思わずに言われません
シリーズ化している作品ですが、2冊目以降を読もうとは(少なくとも今の時点では)思えません。1冊(4話)でお腹一杯です

No.150 5点 密室殺人講座- 水野泰治 2025/03/26 20:42
廃病院の地下室を利用した作家主催のミステリー講座で起こる連続殺人。講座の一興として3日間出入り口が施錠された閉鎖空間で、主催の作家が死亡し、その後、死体が忽然と消え失せて…
状況設定はなかなか面白いと思い、なんやかんやで登場人物全員が作家を憎く思っていたりと人間関係も興味深い
その上で惜しいと思うのは、高まる期待感に反して真相が微妙だという事
犯人、殺害方法、死体消失トリック…あらゆるものが単純な代物なのだが、シンプル・イズ・ベストとはどうにも思えず、結構無理矢理に感じてしまいました
ただ、それらがある種の伏線となって、実は全ては○○○である事が明かされる展開は意外性があり、その上で更なる事件が起こる点は珍しさがあった気がします
総じて、ちょっと荒削りな部分が見え隠れしますが、展開の意外性で読ませてくれる変わり種のクローズドサークルって感じでしょうか

No.149 6点 即身仏の殺人- 高橋克彦 2025/03/24 22:11
映画のロケ地で見つかったミイラを発端に、それを宣伝に利用しようとするプロデューサー兼地主と、村の共有財産を主張する村長側の対立。やがて、問題のミイラが盗まれ、事は殺人にまで発展する
地元・山形が舞台だから興味を持っただけで正直それほど期待してなかった作品でしたが、読んでみると意外と良作で満足度は高めでした
一歩進んでまた下がるを繰り返す(良い意味での)進展の無さが意外とクセになるというか、ミイラの盗難然り、事件のアリバイ然り、何かしらの推理(説)を提唱するとすぐに矛盾が出てきて話が降り出しに戻る為、先の展開が読み難いという楽しみがあります
歴史ミステリーと銘打ってあった為、「なんかお固い話っぽいかな…」と若干身構えた部分もあったのですが、キャラクター同士の砕けた話し方だとか著者の読みやすい文章などのお陰もあってかかなりラフに読み進められたのも良かったかと思います
この著者に関しては以前ホラー小説を読み漁っていた頃に読んだ『私の骨』以来ご無沙汰…というかほぼ知らない作家でしたが、本作をきっかけに他のミステリー作品も読んでみたい気にさせてくれました

No.148 6点 幻影の手術室 天久鷹央の事件カルテ- 知念実希人 2025/03/22 12:23
毎年何かしら人体の不思議を医学的検知から謎解きに組み込んで読者を楽しませてくれる人気シリーズの一つで、今回のテーマは幽霊騒動と透明人間
術後の手術室にて、麻酔科医が見えない何者かと争い、首を切り裂かれるというまさに透明人間の仕業としか思えない魅惑的な謎がメインであり、それに加えてその手術室に患者として居合わせたという理由からあの人が最重要容疑者にされるという特大のオマケ付き
個人的に透明人間の謎に関しては、ちょっと無理がないか?と思いつつ、それはそれとして面白い真相だったなという感じ。むしろ、結果的に裏目に出たとは言え、最後まであがない、そして患者を気遣う事を忘れなかった麻酔科医がかっこいいなと思った。亡くなられたのが非常に残念な良心的なキャラクターです

No.147 5点 天国からの銃弾- 島田荘司 2025/03/20 21:53
ノンシリーズ物の(ちょい長めの)短編を3話収録した短編集
スターになる事が確定している完璧な女性が幸せの「Xの扉」を探し回る『ドアX』は、独特の読み心地を味わえる妙作で、(最初の方の女性の1人語りは辟易した所があれど)徐々に不穏な空気が流れて事実というか現実が見え始め、締めに多少なり報われるラストへと繋がる塩梅の良さはある
次いで、とある事情で死んだ男の死体処理に奔走する者達を描いた『首都高速の亡霊』はサスペンスとして出来は良く、前述のように死体の始末をしたい者達が右往左往する様が生々しく、そのオチもご都合主義ではあるものの因果応報、皮肉が効いていて結構好きです
最後は、あるビルの屋上に設置された自由の女神の赤く光る目の謎を追う表題作『天国からの銃弾』であるが、個人的に3話の中では抜きん出てこの話が面白かった。謎解きの過程はちょい唐突ながら真相はなかなか面白い上に、主役となる老人がかっこいい。この話に関しては、特にこれといっ不満点も無かったです
とまあ好意的に書きながらも点数が振るわない理由としては、(3話目はともかくとして)話の中に読んでてダレてくる箇所があり、完璧な女の1人語り然り、2話目の談合に関するやりとり然り、ちょっと読むのがしんどく感じる所があるのでその辺が大分足を引っ張ったかなと感じてます

No.146 6点 体育館の殺人- 青崎有吾 2025/03/18 22:28
体育館という学生時代に誰しも過ごした事のある馴染みの場所を舞台とした密室殺人物
密室の真相というか謎が一つずつ検証され証明されていく過程がロジカルで中々面白かったし、犯人の絞り込みも条件を1〜4まで順番に提示して外堀を埋めていくように狭めていくのが結構痛快でした
ただ難点を挙げるなら、探偵役のキャラがちょいくどかったかな、といった辺り
その気になれば学年1位の成績を取る事も造作ない頭脳を持ちながら、本人はわざと中間を維持しながら密かに占拠した部室に泊まり込んでアニメ鑑賞に勤しむ自他共に認めるダメ人間。こういったミステリーの探偵は多かれ少なかれ変態性(悪い意味ではないので悪しからず)があった方が面白いと思っているので、その設定自体はギャップもあって好きですがちょいちょいアニメに言及したネタを突っ込んでくるのはちょっとくどかったかなと思いました

No.145 4点 生命の略奪者 天久鷹央の事件カルテ- 知念実希人 2025/03/17 23:10
今回は臓器移植がテーマとなる話で、臓器コーディネーターが襲われ移植用の臓器を強奪される凶悪事件の真相に迫る内容
割と胸くそ系のストーリーで、臓器を奪った黒幕の目的だとか、臓器強奪の実行役を担う半グレの集団だとか、その他諸々で嫌な気持ちにさせる陰鬱さが本作にはあった気がします
とは言っても別に嫌ミスって程ではなく、あくまでこのシリーズの他作品に較べて嫌な要素多めかなって程度ですが…
あと、古代エジプトの死生観についての話は興味深い一方、今回に関しては病に関するあれこれはあまり期待出来ません
話の規模は大きめですが少々期待はずれっていうのが個人的な総評です

No.144 6点 新任警部補- 佐竹一彦 2025/03/16 22:37
古の推理小説の王道パターンを地でいく安定したスタイルと、元通訳係で現場経験はからっきしの警部補を主役に据えるという今時のミステリーでもあまり見ない奇抜な設定が内混ぜになった独特の警察小説
とある老夫婦が何者かに惨殺され、しかもその状況は家の鍵は全て閉められた密室であり、凶刃を振るった犯人は忽然と消え失せてしまった…いわゆる雪の密室を扱った本作であるが、そのトリックというか真相は中々面白く、(犯人以外)誰が悪いとも言えないリアリティがあって興味深かった
一方、そう言った話の核心については供述調書という形で犯人自身の口で語られる辺りも個人的には新鮮に映った部分で、昨今の警察小説と比べてもやはり本作の立ち位置は独特だと改めて思います
ついでに言うと、こんなにもセンス0の改題も珍しいなと少々呆れる思いもあり、正直この改題されたタイトルを見て「面白そう」と手に取ることはほぼないと断言出来るくらいには魅力を感じません。その点は非常に勿体無く思う一方で、カッパ・ノベルス版の方を知れて本作を読めた事はある種の幸運だったと言えるかも知れません

No.143 7点 ヨモツイクサ- 知念実希人 2025/03/16 13:02
アイヌの伝承とバイオホラーをうまく融合させ、そこにミステリー要素も掛け合わせたホラーの大作といった作品
タイトルにもなっているヨモツイクサをはじめ複数種の化け物が登場する為に読んでいて(種類の区別が)訳がわからなくなる部分もあったものの、人を襲い喰らう正体不明の化け物としての恐怖感はあったので満足出来ました
また、著者が医師だからか医療的な観点から化け物の存在にアプローチする場面があったかと思いますが、その辺りにもフィクションの中にもリアリティが感じられて個人的には好感が持てました
クライマックスのミステリー的な仕掛けも併せて、バイオホラー物としてはここ最近で一番面白かったように思います

No.142 3点 霧枯れの街殺人事件- 奥田哲也 2025/03/15 18:27
長編デビュー作という割には、良く言えば『落ち着いていてしっとり』、悪く言えば『徹底して地味でパンチがない』作品だなというのが率直な感想
日常的に深い霧に包まれる田舎町を舞台とした殺人事件の謎を追う話なのだが、いまいち本作の面白みが分からない
(話の構成を無視してインパクトのみを追求するなら)後半に登場する男の首無し死体を最初に持ってきた方が猟奇性が上がって読み進める意欲にも繋がろうというものだが、実際には女の首吊り死体か見つかった事から全ての事は始まる
一応、現場に残された足跡の謎であったり、わざわざ林業署の職員を巻き込んで死体を発見させた通報者の意図といった謎は提示されるが、それだけで読み進めさせるには文章や構成にパワーを感じられない
また、4人の刑事があれこれ話ながら事件を解決していく流れではあるのだが、その話の最中にちょいちょい茶々が入るのも、話をぶった斬られるようで個人的には不快に感じた部分です
あと、のちに改題されていた事をこの場で知ったのですが、改題しない方がしっくりくるタイトルだったように思えてなりません

No.141 4点 動く家の殺人- 歌野晶午 2025/03/13 22:55
初っ端に探偵の死を告げられ、それから少し時間軸を戻して本編が始まるというのは掴みとしては良い
動く家(実際には家ではなく劇場だが…)というあからさまに怪しいタイトルでミスリードを誘う姿勢は割と嫌いじゃない
だが、「面白かったか?」と問われると、非常に微妙な所です
劇場を丸々使ったトリックだと思わせてからの真相が個人的にイマイチで、噛み砕くと「実は単なる自己満足の○○でした」「動機は、確証はありませんがこうゆう事では」な内容になる為、若干白ける
それだったら、作中で否定された上演中の凶器入れ替えトリック(とその際の犯人)が真相だった方が、トリックの観点では面白かったように思えた

No.140 5点 魔神館事件 夏と少女とサツリク風景- 椙本孝思 2025/03/13 18:04
ライトノベルとして楽しむ分には十分楽しめる一方、「館ミステリーへの挑戦」という謳い文句を鵜呑みにガチガチのミステリー小説を期待すると肩透かし、人によっては憤りを覚えかねない作品
この作品自体は単行本の方を発売当時に読んで、尚且つ以降のシリーズ作品も読了した上での感想としてはミステリー云々よりか主人公とヒロインのラブコメ的な絡みの方が面白味の比重は重いというのが正直な所で、2人のやり取りはほっこりして安心感があります
一方で「ミステリー的な部分はどうか?」としては、ヒロインの正体には「おぉ…」というある種の戸惑いを覚えた記憶があれど、事件の真相自体はライトノベルとして見るなら許されるって感じかな…
このシリーズは毎回何かしらの挑戦をしていますが、館ミステリーとしては禁じ手的で異端な気がしないでもないです
ミステリーの雰囲気を楽しむライトノベルとして、私としてはシリーズ通して好きな作品ではあります

No.139 6点 雪密室- 法月綸太郎 2025/03/11 06:15
降り積もった雪に残された足跡は第一発見者のものしかなく、すべて内側から鍵が掛けられた室内で女が首を吊った。事件現場、検死結果、動機…あらゆる状況が自殺を物語る中、名探偵「法月綸太郎」が見出した真相とは?
読者への挑戦状も付いた古き良き推理小説って具合で、雪という自然の産物が生み出した強固な密室の謎(トリック)が見所となってくるわけだが、肝心となるこのトリックもなかなか悪くない。ある種の意外性と大胆さが売りと言える大味なトリックだと個人的には感じたが、しかし、幾ら時間帯に気を遣った不意打ちとはいえ「(積極的なネタバレを避ける為に一部伏せ字で)○を○と○○させるのは苦しくない?」とも思えたので緻密さには欠ける印象も受ける
また、個人的に話の主体となる探偵・法月綸太郎の父・法月警視のキャラが(この作品中では)イマイチ掴み切れなかったのは残念な所。私の読解力不足もあるかも知れないが、(話の都合もあるとは言え)自殺を否定し殺人と断ずる根拠が薄弱過ぎて警視自身が周りの話を聞かない独断の人というか頑ななわからず屋というマイナスの印象を受ける(実際の所、他作品も見るとそんな事はないと分かってくるが…)
とりあえず、残念に感じる部分はありつつ、トリックであったり犯人の正体であったりといった推理小説としての根幹部には概ね好感が持てる良作だったとは思います

No.138 5点 葡萄街道の殺人- 平岩弓枝 2025/03/09 21:28
ドイツにおける葡萄栽培やワイン醸造が盛んな地方「葡萄街道(ワインロード)」を巡る旅の最中、粗暴な弟とその妻が殺され、犯人と思しき人物は服毒自殺を遂げた
作品のおよそ半分くらいのページ数を費やして被害者へのヘイトを稼いだ後に一気に4人もの人が同日に死亡する急転直下、事件は一応解決するも不審点が残る中盤から後半に掛けてのサスペンス性、クライマックスにおけるちゃぶ台返しの如き真相が明るみになっての、引きのラスト…
特別なトリックが仕掛けられている訳でもなく、わりと地味めな作品です。ですが、その地味な内容を丁寧に描く事で読後に満足感を得られるだけの力もあるお話かと思います
また、事件が起きてからの後半は前述のようにまさに怒涛で、一気にラストまで引き込む展開のスピーディさも当作の魅力だと思います

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