みりんさん |
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平均点: 6.49点 | 書評数: 70件 |
プロフィール | 高評価と近い人 | 書評 | おすすめ
No.70 | 4点 | 半落ち- 横山秀夫 | 2023/03/20 03:58 |
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作中の謎としては「空白の2日間」と「50歳で自殺する理由」の2つです。
異なる役職を持った6人の視点からこの事件を追う群像劇的な作品に仕上がっていて、その分嘱託殺人や検察と警察の軋轢、記者間の闘争など社会派な要素がふんだんに盛り込まれているミステリでした。 |
No.69 | 5点 | クライマーズ・ハイ- 横山秀夫 | 2023/03/19 21:43 |
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途中からノンフィクションなのかと錯覚させられるくらい重厚なヒューマンドラマでした。
新聞社の描写が非常に克明でへえ〜こんな感じで新聞作ってるんだ〜となりましたが作者の前職業が新聞記者だったと聞いて納得です。 ミステリ要素はほぼ皆無です。 |
No.68 | 2点 | 点と線- 松本清張 | 2023/03/18 21:25 |
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九州から北海道なんて間に合わないのでは?→飛行機使ったら行けるよ。
乗り物に乗った物的証拠は?→実は共犯者(×6)いました。 歴史的価値のある作品であることは理解していますが時刻表アリバイトリックものとしてあまりに拍子抜けの真相でした。 |
No.67 | 9点 | 名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件- 白井智之 | 2023/03/18 03:04 |
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信仰と現実の齟齬をテーマにカルト宗教内で起こる連続殺人事件。
犠牲者を最小化しようとするりり子・信仰者・余所者 すべての殺人が不可能犯罪であるにも関わらず、これらの3つの立場からそれぞれ3通りの真相を作り出す作者の引き出しの多さ。そして、複数の真相を示すことでカルト宗教を集団自殺に追い込むという怜悧さ。名探偵のいけにえというタイトルに隠された本当の意味。どんな頭脳を持ってすれば、こんな洗練されたシナリオが思いつくのか…ひたすら作者の発想力に圧倒される作品です。もし「このミステリーの作者が怖い」大賞があれば堂々の1位です。 しかし、信仰による現実誤認のなんでもあり感はあまり好きではない。 |
No.66 | 6点 | 99%の誘拐- 岡嶋二人 | 2023/03/16 02:54 |
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暴力を行使しないIT誘拐が斬新で面白かった。
倒叙形式なのでその分驚きは少ないので物足りないけれど、たまには殺人事件のないミステリも良いなあと思えた1作。 |
No.65 | 9点 | 霧に溶ける- 笹沢左保 | 2023/03/15 02:00 |
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名作と呼ばれている古典作品は今読むと「まあこんなもんか」と思ってしまうことが多いのですが、本作品は1960年代に書かれたとは到底思えないほど本格度が高いミステリでした。
最近自分が読んだ小説は密室といえど「被害者が鍵をかけた」「本当は人が隠れていた」パターンが多く、少し密室殺人に対して食傷気味でしたが、この作品の密室はシンプルで分かりやすいながら心理的ミスディレクションを含む秀逸なトリックで敬服しました。 ミスコンという動機や三人とも自らの手を汚さずに殺害することなど(冷蔵庫殺人は少しグレーだが)、三つ巴殺人という本来は限りなく実現可能性の低いトリックに少しでも説得力を持たせていたのが良かったです。 |
No.64 | 8点 | 女王国の城- 有栖川有栖 | 2023/03/14 00:50 |
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購入したものの、分量が多すぎてなかなか手が出なかったこの作品。読み始めるとあーやっぱこの5人好きだし落ち着くわ〜となった。
ロジック重視の作品は探偵役が論理的に真相を解き明かす必要があるため、常識を大きく逸脱したようなトリックや展開は描き難いという弱点がある。今回も読者への挑戦状があるものの、少し消極的な内容になっており、やはりロジックだけでは導けない真相がいつもよりは多かったように思う。逆に言えば同シリーズ恒例のロジック詰めのフーダニットに加えて、ハウダニットも楽しめるという過去作にない楽しみ方ができた。また、不穏な新興宗教であることを最初から最後までずっと匂わせておいて、痛快なオチが待っているのもなかなかパンチが効いていて、自分の中では「双頭の悪魔」「孤島パズル」より好き。 しかし、上の二つに比べてかなり展開が冗長的だったので8点にします。読破に10時間もかかったせいか最初のバンとの接触事故未遂や10時と11時17分の2回の花火があったことなどすっかり忘れてしまっていた。 学生アリスシリーズ長編はこの作品でラストかと勝手に思っていたら、あと1作あるみたいなので楽しみですね。 |
No.63 | 8点 | クラインの壷- 岡嶋二人 | 2023/03/11 16:22 |
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「クラインの壺」という題名通りなので真相はとても当てやすい。と偉そうに言いながら仮想現実の二重構造(もしくは三重構造)までは読めなかった…。
現実と仮想現実(壺の内側か壺の外側)を見分ける術がなく堂々めぐりになってしまうという問題に対して、「はじめのところから始めて、終わりにきたらやめればいいのよ」という言葉を実践するという終わり方が好み。今やVRは一部の産業では実用化され、SFの題材としても使い古されているネタとなっているが、この作品を1987年(解説によるとドラクエⅢが発売された頃)に発表したという衝撃。 |
No.62 | 7点 | そして扉が閉ざされた- 岡嶋二人 | 2023/03/09 23:46 |
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タイトルと帯の本格煽りからクローズドサークルで一人一人殺されていく王道パターンだと思っていたら作中では殺人は起こらず、過去の事件を謎解きするちょっと珍しいタイプだった。
車を時間差で落とすトリックは名探偵コナンでほぼ同じのを知っていたので、簡単だなあと思いながら出版年を見ると本作品の方が先だったのか…。真相は記憶障害でもなく二重人格でもない「信頼できる語り手」が犯人パターンであるが、そこに至るまでの過程が秀逸でゾクゾクする。過失致死なのであまり罪には問われないのかなあとか気になって、もっと続きが読みたいと思える小説でした。 新装版は島田荘司の解説付きで、ミステリーと推理小説の違いについてわかりやすく説明されていて(本作品はその定義によると"本格"推理小説らしい)それも楽しめたので読む方がいれば新装版をお薦めします。 |
No.61 | 5点 | 七日間の身代金- 岡嶋二人 | 2023/03/09 13:23 |
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初岡嶋作品ですが序盤から誘拐事件で緊張感があり、島からの犯人消失という魅力的な謎でグイグイ読ませる力がありました。
十中八九警官に変装して出ていったんだろうなと思っていたら、中盤でその可能性について指摘され、完全に作者に心を見透かされているような気がした。肝心の密室&アリバイトリックは良い感じなんだけど、あそこまで計画性の高い犯人が接着剤を遠くに投げて処分というのが腑に落ちなかった。 |
No.60 | 8点 | 星を継ぐもの- ジェイムズ・P・ホーガン | 2023/03/08 00:21 |
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SFはあまり読まないのですがこの作品は楽しめました。
作中に出てくる専門的な用語や知識ほとんどわからないのですが、最も重要な謎である「チャーリーは何者であるのか」とそれを既存の枠組みから説明しようとすると現れる多数の矛盾についてはとても理解がしやすいです。あらゆる謎や矛盾をたったひとつのシンプルな仮説で説明できるようになるのは正にミステリー的要素ですね。ジャンルや時代、キャラの国籍など何から何まで違いますが「占星術殺人事件」や「首無の如き祟るもの」を読んだ時と同じような爽快感があります。 |
No.59 | 6点 | Yの悲劇- エラリイ・クイーン | 2023/03/05 23:32 |
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人生で1番最初に読んだ長編推理小説。
犯行の計画者と実行者が異なることや犯人の年齢などに驚いた記憶がある。あとはやはり撲殺に使われたマンドリンが強烈。当時はinstrumentなんて単語知らなかったので当てようがない!と不満を感じたが、今もblunt instrumentという単語にこの小説以外で出会っていないので今初めて読んだとしても同じ感想を抱いただろう。 物議を醸すラストだが、とても好み。 |
No.58 | 4点 | Xの悲劇- エラリイ・クイーン | 2023/03/05 23:25 |
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ロジックというよりは誰もが疑問に思うことをあえて描写せず、解決編でドルリー・レーンがそのことについて指摘し、警視が過剰に持ち上げているという印象を受けた。
展開がかなり単調で冗長かつ「犯人は誰か?」ということ以外に謎はあまりないのでリーダビリティも微妙。Yの悲劇の方が評価が高いのも納得。 |
No.57 | 5点 | 殺しの双曲線- 西村京太郎 | 2023/03/04 16:45 |
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新装版の表紙に双子トリックだと宣言してあったので逆に気になって購入した。
双子トリックはまずまずと言ったところ。しかし、本題は「双子である以上犯人がどちらか断定できないため、罪に問われない」という司法を利用した斬新なトリックだった。実際、法でこんな理屈がまかり通るのか(詳しい方がいれば教えて欲しい)は置いといてミステリとしてユニークだと思う。 ただ、読み終わった後もタイトルがしっくりこない… |
No.56 | 7点 | 王とサーカス- 米澤穂信 | 2023/03/03 12:30 |
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ミステリにおいてエンタメ性とメッセージ性を両立させるのはとても難しいと思いますがさすがは米澤穂信。ちょうど良いバランスどころか相乗効果を生んでいると言える珍しい作品です。
「自分に降りかかることのない惨劇は、この上もなく刺激的な娯楽だ。意表をつくような者であれば、なお申し分ない。」 ジャーナリズムに対する作中のこのセリフが正にミステリ読者への皮肉にもなっていてギクッとしました。 |
No.55 | 6点 | そして誰もいなくなる- 今邑彩 | 2023/03/01 01:58 |
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本家の「そして誰もいなくなった」ではあまり掘り下げられなかった「裁かれざる犯罪」の方がテーマになったオマージュ(パロディ?)作品 。そのかわりクローズドサークルではないし、3人くらい生き残る。
ミステリとして読むと見立て殺人をする必要性が感じられて面白かったが皆川警部が真犯人である松木と向坂に辿り着くロジックが雑だったのが少し残念。「そして誰もいなくなった」への重要なネタバレはありませんでしたので本家未読の方も楽しめると思います。 |
No.54 | 8点 | そして誰もいなくなった- アガサ・クリスティー | 2023/02/26 23:33 |
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中学生の時に読んで以来の再読
本格推理小説の歴史を大きく動かした一冊としてその地位を確固たる物にしているこの作品。 原点にして頂点とまでは言いませんが、あらゆる本格ミステリの元ネタであり続けながら、いま読んでも面白い古典作品というのは珍しいですね。 |
No.53 | 4点 | 満願- 米澤穂信 | 2023/02/26 02:44 |
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夜警 5点
死人宿 4点 柘榴 4点 万灯 3点 関守 6点 満願 5点 ミステリとして読むとどの短編もあまり捻りがなくイマイチだった。「関守」はおしゃべり好きのおばちゃんに完全に油断しきっていたので短編らしい良い結末。犯罪を隠すために犯罪を重ねるのありがちだが、石像が接着剤で止めてた事くらいしか気づかなかった男女やフィールドワークにきた程度の学生をわざわざ殺すのはやりすぎかなあと思いました。 ただ米澤穂信の文章は好き。 |
No.52 | 9点 | 硝子の塔の殺人- 知念実希人 | 2023/02/25 16:06 |
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「これを超える作が現れることはないだろう」と島田荘司が帯にコメントしていたのでこれは読まないといけないと即購入後、今読むのはもったいないと思ってずっと温めていた作品。
ネタバレ ミステリにおけるドッキリオチが大嫌いであるが「硝子の塔の殺人」は傑作だと断言できる。 この作品は本格推理小説をテーマとした本格推理小説であり、倒叙・建築基準法を完全無視した奇怪な建物・クローズドサークル・名探偵と助手・密室殺人・ダイイングメッセージ・謎の暗号・2度にわたる読者への挑戦状・メタミステリなど本格ミステリのベタな要素を強欲に取り入れられている。そして途中で違和感を感じながら、解決編でトリックなどの質に対する不信感を抱いていると全て作者の意図通りであることが明かされる。この作品には斬新なトリックなどは存在せず、緻密に広がる作者の仕掛けがすべてフーダニットへと収束する。その動機は馬鹿らしいながらも犯人のキャラクター性から納得感が増し、本格ミステリへの愛無くしては思いつけない悪魔的な発想である。 作品の核が本格ミステリ好きにしかピンとこないと言う欠点と、ラストはライヘンバッハの滝に飛び込んで心中エンドの方が美しかったと言う個人的な好みで-1点です。 あと綾辻行人の帯コメントの意味が読み終わってからようやく理解できてそりゃびっくりするだろうなと笑ってしまった。 |
No.51 | 8点 | あなたのための誘拐- 知念実希人 | 2023/02/23 15:57 |
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作中のヒントから新犯人が導き出せるようになっているのでしっかりミステリー作品。
少し洗脳が便利すぎるなとも思いましたが「犯人の意外性」という点では仮面病棟よりも洗練されていて驚けた。また、親から子への歪んだ愛情が動機となる推理小説は何度か読んだことがあったが、その逆は初めてだったので新鮮だった。 あと、レビューを投稿する際にタイトルが「誘拐遊戯」から「あなたのための誘拐」に改題されたことを知った。結末を知れば、たしかに遊戯ではなかったし改題後の方がタイトル回収にゾッとできたと思って少し損した気分に笑 |