皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
みりんさん |
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平均点: 6.67点 | 書評数: 443件 |
No.443 | 4点 | 四つの兇器- ジョン・ディクスン・カー | 2025/06/30 21:13 |
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アンリ・バンコランシリーズ第五作。
人狼、蠟人形、髑髏城などで彩られていた怪奇的・退廃的な雰囲気が今作でなぜかガラッと変わった。作風だけでなくあの悪魔的な名探偵も何処へやら消えてしまったようだ。犯行現場に残された四つの凶器の謎は込み入りすぎていて難解だったが、賭博シーンは中々面白かった。 いまのところ不可能犯罪の巨匠というよりは、オカルトの他に犯人の意外性に拘っているように思える。 |
No.442 | 6点 | 蠟人形館の殺人- ジョン・ディクスン・カー | 2025/06/30 21:10 |
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アンリ・バンコランシリーズ第四作。
かつてバンコランがギロチン送りにした殺人鬼が蠟人形として蘇る。サテュロスの蠟人形に抱かれて死んだ貴婦人。舞台装置のオカルト感はこれまででも圧倒的で、淫らな秘密社交クラブに潜入する展開はシリーズ随一の臨場感とリーダビリティを誇る。 『皇帝のかぎ煙草入れ』と同じく読者には明白なヒントが示されるが、真犯人には意外性があり、わかる人にはわかるトリックアートのよう。 アンリ・バンコランは悪魔(メフィストフェレス)の名にふさわしい探偵だ。 |
No.441 | 8点 | 髑髏城- ジョン・ディクスン・カー | 2025/06/30 21:08 |
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アンリ・バンコランシリーズ第三作。
これは面白い!! ライン河畔に聳え立つ髑髏城。バイオリンが奏でるアマリリスと共に炎に包まれながら転落する城主。2人の探偵による推理合戦(未遂)。しかし、この怪奇雰囲気を凌駕するほどに悪魔的な真相が用意されていた。犯人の辿り着いた悲しい真実とその時の絶望、実行に至るまでの途方もない逡巡、そして、悪魔面のバンコランが垣間見せた人間性に強く惹かれた。 加賀美雅之の『双月城の惨劇』はこれに大きく影響を受けたのかな。 |
No.440 | 4点 | 絞首台の謎- ジョン・ディクスン・カー | 2025/06/30 21:06 |
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アンリ・バンコランシリーズ第二作。カーはどうやらスロースターターだったようだ。
読了後は、冒頭の怪奇幻想的な雰囲気で惹きつけて、強引に辻褄を合わせた時の江戸川乱歩作品みたいだという感想を持った。しかし、謎解きの核を怪奇幻想譚の一部にする狙いがあるという解説を読んで納得。 この頃の怪奇>探偵の不等号が後年の不可能犯罪の巨匠という評価と乖離を生んでいるのかもしれない。 |
No.439 | 6点 | 夜歩く- ジョン・ディクスン・カー | 2025/06/30 21:03 |
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世界各地(スウェーデン・フランス・中国)に芽吹いたジョン・ディクスン・カーの弟子達の作品がやたら面白いので、ついに本家を読んでいく。
アンリ・バンコランシリーズ第一作 。 なるほど『皇帝のかぎ煙草入れ』はイレギュラーな作品でカーの作風はこんな感じなのか。古典的なトリックの組み合わせで(というか古典か)、現代の作家がやれば無理筋になるところをこの退廃的な雰囲気で上手く演出している。エドガー・アラン・ポーの『アモンティリヤードの樽』のネタが登場するのも嬉しい。 |
No.438 | 8点 | 変調二人羽織- 連城三紀彦 | 2025/06/29 18:16 |
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このサイトの出版年を信仰しすぎるあまり、処女作は『暗色コメディ』だと勘違いしていた。お恥ずかしい。
いわれてみると『暗色コメディ』ってらしくなかったもんなあ… 表題作は真っ白な丹頂鶴が東京を飛び去る冒頭の叙述から著者の凄まじい熱量とこだわりを感じる。やっぱり探偵小説お好きなんですねぇ… 明治と現代のカットバック技法が最後に全てを氷解する『六花の印』はその抒情性も含めて傑作と思う。 『ある東京の扉』はミステリへの自己言及性の高さが著者らしくないと感じたが、なかなかなトリックと、諧謔的なオチにさす連と唸らされた。ただ、このお話は短編集の中でも浮いてしまっている印象が拭えない。著者の得意とする愛憎渦巻く夫婦関係のお話では『メビウスの環』『依子の日記』があり、いずれも鮮やかな反転であった。 国内オールタイムベスト短編みたいな企画があったら、連城サンだけで何作ランクインするのだろうと気になりますな。 |
No.437 | 6点 | 妖女のねむり- 泡坂妻夫 | 2025/06/29 18:05 |
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アーサカさんの第七長編。幻想とロマンスの塩梅が『湖底のまつり』に近い。
樋口一葉の未発表小説の発見から始まる。戦時中という特殊状況が生んだとある奇蹟に発展し、最終的には輪廻転生の真偽を問うミステリとなる。思想を超えて信念を貫いた者の究極の動機の一つと言えるのではないか。どっかの作家が"観念の動機"と読んでいたものかな(うろおぼえ) |
No.436 | 6点 | 一次元の挿し木- 松下龍之介 | 2025/06/29 18:03 |
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「このミス」はどうも合わないという自覚はあるのだが、本作の持つ謎の壮大さに惹かれて読んだ。冒頭の神秘性は島田荘司っぽい。しかし、この不可解さを説明するには(タイトル的にも)これしかあり得ないだろうと珍しく予想が的中してしまい、不完全燃焼になってしまった。本作は謎の解明よりも、終盤のスリラーに身慄いさせられた。アカデミックな雰囲気もいい感じ。島田荘司もこのくらいのコンパクトさだったらいいのかもしれない。 |
No.435 | 7点 | 写楽 閉じた国の幻- 島田荘司 | 2025/06/29 09:41 |
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読書メーターに私が投稿した感想を引っ張ってきてるので上巻と下巻に分けます。
<上巻> 10ヶ月で140作品を版行し、忽然と姿を消した天才浮世絵師・写楽は出自・経歴・人柄に至るまで全てが謎に包まれている。 Who is Sharaku? 今作はその200年来のミステリーが解かれてしまうのだろうか?歴史ミステリーゆえ敬遠してきたが、傑作の予感! ※ちなみに写楽が世界三大肖像画家の1人という言説は完全なガセらしい <下巻> "どのように考えてもどこかに破綻が生じ、隘路に迷い込む" かのアゾート殺人を彷彿とさせる歴史ミステリーだ。 あとがきによると初出の説でないことが悔やまれるが、"閉じた国の幻"をここまでドラマティックに演出した事で優れたエンタメへと昇華したと思う。面白かった! ところで島田荘司って高飛車で地位が高くて聡明でお嬢様系の強い女性に偏った嗜好があるよね。今どきこんな口調で喋る女の人いるのか?笑 逆にちょっと主婦に対して扱いが雑に感じる。 |
No.434 | 7点 | 御手洗潔のダンス- 島田荘司 | 2025/06/29 09:31 |
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タイトル通り御手洗潔が小躍りするような謎が詰め込まれた短編集 。どいつもこいつも面白い。
特に2つ。『山高帽のイカロス』は空を飛ぶ幻想画家が20m上空で死亡するという衝撃的な導入と真相でグッと引き込まれた。 『とある騎士の物語』くらい強引なトリックとロマンスが組み合わさると島田荘司といえばこれだなあと安心します。 |
No.433 | 7点 | 展望塔の殺人- 島田荘司 | 2025/06/29 09:28 |
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読み落としていた吉敷竹史シリーズ!しかし吉敷はほとんど名前だけの登場であり、シリーズものの楽しみはない。 表題作の展開は『奇想、天を動かす』を想起させる。受験戦争は「父親の経済力」と「母親の狂気」だと40年前に島田荘司によって既に問題提起されていた。 乱歩『目羅博士の不思議な犯罪』の島荘版とも呼べる『死聴率』や、亡霊と偶然と奇想が光る『発狂する重役』が特に面白い。 |
No.432 | 7点 | 切り裂きジャック・百年の孤独- 島田荘司 | 2025/06/29 09:27 |
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あの猟奇殺人鬼がベルリンにも出没。100年の時を経ても、人間の卑小さが不変である限り、時代の特異点のような凄惨な事件は起こり得る。世界で最も有名な未解決事件に本格味溢れる真相と雰囲気を味付けしたのは流石。今作のコンパクトさを御手洗潔シリーズでも見習って欲しいところ。解説でも言われている通り、島田荘司という作家は夢を託せるミステリ作家だなとしみじみ。 |
No.431 | 7点 | 天国からの銃弾- 島田荘司 | 2025/06/29 09:23 |
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粒揃いの中編が3つ。どれも平均以上に面白いが、表題作『天国からの銃弾』は出色の出来栄え。 高度経済成長期の魔都"東京"で蔓延る虚飾・天下り・利権・薬物・風俗を題材にここまでミステリーとして面白くするのは流石としか言いようがない。島田荘司の小説家としての最盛期はこのあたり? |
No.430 | 8点 | 天に昇った男- 島田荘司 | 2025/06/29 09:21 |
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珍しくミステリーではなく、冤罪や死刑制度に対するアンチテーゼとして書かれた作品(あとがきによると) 『涙流れるままに』などでも繰り返し用いられる島荘の一大テーマと思われる。今作は作品の雰囲気を損なうほど主張は強くなく、男の波乱の生涯と儚いロマンスにもの悲しくなった。 島田荘司って童話みたいなモチーフのお話が毎度上手くて引き込まれる。 |
No.429 | 8点 | 死者が飲む水- 島田荘司 | 2025/06/29 09:17 |
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トランクに詰められたバラバラ死体という猟奇的な幕開けだが、牛越警部の地道な捜査がメイン。官僚の天下り問題はこの頃から既に… 鮎川哲也『黒いトランク』が元ネタだろうけど、こちらも島荘流の流石のトリック。個人的にはトリックだけでなく、犯人の造形も強く記憶に残るものでした。白く舞い散る雪と犯人の中に燃えていた憎悪の対比がなかなかに印象的。 |
No.428 | 7点 | 殺人ダイヤルを捜せ- 島田荘司 | 2025/06/29 09:12 |
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これまたノンシリーズ。 この頃の島荘は女性一人称サスペンスものにハマってたのかな?「毒を売る女」や「幽体離脱殺人事件」と同様に虚言癖の奇女を描かせるとなぜこうも面白いのか。 ダイヤルには馴染みがないが、今でもブツさえあれば実現可能なの?時代を感じる。 |
No.427 | 6点 | 高山殺人行1/2の女- 島田荘司 | 2025/06/29 09:11 |
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初期の吉敷シリーズの様なタイトルなのに実はノンシリーズのサスペンス。 トラベルミステリーの時刻表系は退屈だが、正真正銘のドライブミステリーなので、話の展開もスポーツカー並みの疾走感があって心地良い。1980年代はいろんなジャンルに挑戦してるなあ |
No.426 | 7点 | 眩暈- 島田荘司 | 2025/06/29 09:01 |
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『占星術殺人事件』を読んだのでどうせならと『眩暈』も読んだが、こちらは初読時の感慨を偲ぶこともなく、淡々と読み進めた。手記の魅力もその真相も占星術には叶わないから尚更かな。中盤くらいにピークが来るので結構退屈。 教授と御手洗の精神分析や生物・遺伝学談義は興味深く読めた。 |
No.425 | 7点 | 水晶のピラミッド- 島田荘司 | 2025/06/29 08:58 |
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この頃の島荘は叙述が過剰気味なのがかったるいですが、謎の創出と演出がに関しては一流ですね、5000年間も謎に包まれたピラミッドの前には密室も天上溺死という異様な状況も霞む。
ピラミッド○○○説は作中でも示されているように無理がありましたが、密室の方にはガス置換で応用可能なんじゃないでしょうかね 先人が誰かやっていそうですが |
No.424 | 7点 | 人格転移の殺人- 西澤保彦 | 2025/02/22 22:38 |
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6人が"閉ざされた円環"の中で人格が転移していく本作こそが真のクローズドサークル。
人格の入れ替わりという非常にややこしい話をここまで読みやすくしてしまう著者は天才だと思います。特殊設定ミステリーとしての完成度も高い上に、CIAだの異星人だの、仰々しい話をここまで綺麗かつロマンチックに終わらせるのも凄い。『七死男』より好き。 |