皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 本格 ] 盲目の理髪師 ギデオン・フェル博士シリーズ |
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ジョン・ディクスン・カー | 出版月: 1962年01月 | 平均: 4.83点 | 書評数: 12件 |
東京創元新社 1962年01月 |
東京創元社 1962年03月 |
東京創元社 2007年02月 |
東京創元社 2018年05月 |
No.12 | 5点 | 虫暮部 | 2022/12/15 15:28 |
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衝撃的とまでは言いがたいファルス。盛り上がる場面はあっても、それらを繰り出すテンポが良いとはあまり思えない。その上で真相がアレじゃあなぁ。作者の意図に無理があるような気がする。
4章。“ネス湖の怪物と同じくらいにしか信じていない”――今読むと味わい深い比喩。JDCは真実を見抜いていた!? |
No.11 | 4点 | クリスティ再読 | 2022/01/12 08:33 |
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時代柄から言えば、マルクス兄弟風の陽気なドタバタを狙ったんだろうけどもね...カーのユーモアって今一つ洒落たところがなくて、どうも泥臭い。
汚らわしい酔っ払いのけだもの! ってことか。風刺性がないからね。フェル博士の安楽椅子っぷりは悪かないんだが、でも推理自体にあまり面白味がないのが難。結局海に放り込まれたのはどっちなんだっけ? 船長の部屋で殺虫剤が...のギャグが、臭いかなんかで手がかりになるのかな~なんて予想したんだけども、これは外れ。殺虫剤セールスマンは、ギャグというよりもイヤな奴度が高すぎて笑えない。 陽気なお笑いのためにはちょっとした「人の良さ」みたいなものが必要なんだけど、カーはあまり「人が良くない」のかな。 1934年のカーは「黒死荘」「白い僧院」「剣の八」に本作とロジャー・フェアベーン名義での歴史小説と5作出版した超絶の忙しい年。カーター・ディクスン側で忙しすぎた反動なのかしら。1930年代のカーは両名義で年4作の新作を書いている。凄いっていえば凄いけど、濫作ってものだろう。 |
No.10 | 3点 | 文生 | 2021/09/27 21:17 |
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ドタバタ劇にまったく面白味を感じられず、読むのが苦痛に感じました。
そのうえ、真相もパッとしなくてがっかり。 個人的には30年代カーのワースト作品です。 |
No.9 | 3点 | レッドキング | 2020/07/10 07:25 |
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航海中の客船で起きた、外交上支障のあるフィルム盗難や宝石紛失事件、さらに殺害された女の死体消失事件。連続事件のフーダニットミステリが、コミカルに誇張された人物達によって演じられるドタバタ劇だが、カーにあるまじき事に不可能事件がなく残念!
※犯人指摘の脚注付きロジックは見事だが、フィル博士には安楽椅子にではなく、ドタバタ渦中にいてほしかったな。 |
No.8 | 7点 | 弾十六 | 2018/11/01 22:28 |
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JDC/CDファン評価★★★★★
フェル博士第4作 1934年出版 創元文庫(1962年)旧訳で読みました。 四十年ほど前に読んだのですが全然覚えていなくて、新訳は手元に無く、井上一夫先生の旧訳で再読。会話が快調で、井上先生なかなかやるな、全然古びていない! 客船が舞台の大騒ぎドタバタ物語です。フェル博士の提示するヒントが漠然とし過ぎていて謎解き要素にドキドキ感が薄いのですが、頭のネジが外れた登場人物たちが歌いまくり暴れまくる無茶苦茶な展開。JDCは酔っ払いが好きですね。探偵小説としてはモーガンに「剣の八」の冴えが見られず、周りのボケ軍団相手にツッコミ役を演じるだけ。夢まぼろしのような事件なので解決もフウンなるほどね!と言った感じです。 沢山出てくる歌を原文から調べてみました。 p52『学生王子』The Student Prince: ミュージカル1924 p112&p129 大海原の波に生き… A Life on the Ocean Wave: 詩 Epes Sargent 1838, 曲Henry Russell p241 『ポール船長はヤンキーの奴隷、あんな野郎はぶっ倒せ』とかいう歌 Captain Ball was a Yankee slaver, blow, blow, blow the man down!: 「ボール」「奴隷商人」ですね… Benetの詩John Brown’s Body 1928から? p250『ロザリオ』を歌う sing ‘The Rosary’: 不明 p255 『サンタクローズの橇鈴』Santa’s Sleigh-Bells: 不明、Jingle bellsのこと? p258『ギルバートとサリバン』やなぎよ、やなぎよ、ちっちゃなやなぎよ Willow, tit-willow: Guilbert & Sullivan作 The Mikadoから p260『ピルセンの王子』The Prince of Pilsen: ミュージカル1903・映画1926 p267 『賣人のむれ、街を去り』When chapman-billies leave the street: Robert Burns作の詩Tam O’ Shanterより p302 協調の手をわかつなく 真理の旗を固守すべし! May the service united ne’er sever, But hold to its colours so true.: “Columbia, the Gem of the Ocean”より p307 『さあ、桑の藪を回ってゆこう』round-the-mulberry-bush: Here We Go Round the Mulberry Bush、English nursery rhyme and singing game. p344 『ラ マデロン』La Madelon: 第一次大戦時のフランスの流行歌 p344 『オール マン リバー』Old Man River: ミュージカルThe Show Boatより p346 『ラ マルセーエズ』La Marseillaise: フランス国歌 荒木飛呂彦先生の作画でミュージカルアニメにしたらピッタリだと思います… |
No.7 | 4点 | makomako | 2018/10/06 07:49 |
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この作品は私には合いませんでした。ドタバタ劇があまりにばかばかしく、かなり非現実的で一体何が起こっているかすら不明な展開。
これが謎に満ちたお話なら良いのですが、語っている本人が何もわかっていない状況で、それを聞いただけで名探偵がこの場の中からの推理を行うといった設定。 こんなことってありえます?事件の次第を話している人がいろいろな人のしゃべった言葉を一字一句間違えずに覚えていて、名探偵がそこの細かい言葉から犯人を推理するなんて。 安楽椅子探偵ものはこういった要素は必ず含まれるものですが、個々の表現から(ご丁寧にしゃべったところのページまで記載してありました)、といっても普通内容全体のことなら納得できますが、しゃべった単語からの推理となると無理がありすぎでしょう。 |
No.6 | 8点 | nukkam | 2016/08/01 00:21 |
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(ネタバレなしです) アントニー・バウチャーが絶賛した1934年発表のフェル博士シリーズ第4作です。カー全作品の中でもファルス(笑劇)要素の強い作品で、まるで映画のように派手などたばたが繰り広げられます。あまりのどたばたぶりに筋についていくのが精一杯で私は謎解きに集中できませんでしたが、本格派推理小説としても緻密に作られていて最後の謎解きシーンでは手掛かり脚注まで用意されています。事件は航行中の豪華客船の中で起きるのですがフェル博士はこの船に乗ってはおらず、乗船客の1人から事件のあらましを聞いて真相を当てるという安楽椅子探偵役です。死体なき殺人(創元推理文庫版の登場人物リストに被害者の名前は載ってません)の謎解きというのも珍しいです。 |
No.5 | 5点 | 斎藤警部 | 2015/07/09 06:58 |
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題名に惹かれ、とてもとても若い頃手にしたもの。ごちゃごちゃドタバタしているばかりでしたが、、船上のざわざわした雰囲気は愉しめましたし、謎解きも驚きは特に無いものの雰囲気勝負でまずまず。 高い評価こそ付けられませんが、良い想い出の一作です。 |
No.4 | 6点 | ミステリー三昧 | 2010/10/30 01:07 |
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<創元推理文庫>フェル博士シリーズの4作目(長編)です。
久しぶりのカー読書です。新版刊行となり比較的新しいということで衝動に駆られ購入。本作の最大の特徴としてカー全作品の中でも、とりわけユーモア色が濃く、酒と笑いに包まれドタバタとした展開が魅力であることが挙げられます。ですが私はその部分を無視して、違う観点で感想を述べさせていただく。。。もうひとつの特徴としてフェル博士が「安楽椅子探偵」として扱われていることが挙げられます。安楽椅子探偵といったら、もう本格推理小説が保証されたようなもの。というかそうでなくてはならない。ただ、話を聞くだけで事件が解決できるなら、それを聞いているというか読んでいる読者だって事件を解決することができるはず。それが安楽椅子探偵の面白みだと思っています。その観点で本作を評価すると、とりあえずクリアしているかなと。推理もしないくせに偉そうですが。。。 以前読んだ『孔雀の羽根』と同じ趣向が安楽椅子探偵のクオリティを保証する上で上手く機能していました。フェル博士が話を聞く段階で提示した16個の手掛かり。それで何が掴めるのかを、解決編ではページ索引付きで解説してくれるあたりがとても丁寧。ひとつひとつは弱いですが、これだけ揃えばこの人が犯人でしか有り得ないと盲目的になり得ます。これは安楽椅子探偵小説として成功の部類だと言えます。 |
No.3 | 4点 | kanamori | 2010/07/01 21:10 |
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フェル博士ものの第4作はファース志向で、船上のドタバタ劇に終始しています。
安楽椅子探偵の形で、「いったい何がおこっているのか」を解く趣向のようですが、嗜好から外れた作品でした。 |
No.2 | 5点 | 空 | 2009/01/30 21:22 |
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船上での果てしないばか騒ぎがすべてを覆い尽くしている作品だと言ってもいいと思いますが、カーのコメディ・センスに対する好き嫌いにとどまらない悪評の理由もわかります。人間消失の謎のからくりはむしろ失望するようなものでしたし、それと関連する謎の犯罪者の正体も、悪くはないという程度です。フェル博士は、推理作家モーガンから事件の顛末を聞いて鍵を並べ立てていきますが、その鍵をつなぎあわせての推理は、結局それほど鮮やかとも思えません。
とはいえ、個人的には、カーの他の10冊分くらいの笑いをつめこんだ船酔いしそうなプロットは、まあまあ楽しめてしまいました。 |
No.1 | 4点 | Tetchy | 2008/12/07 17:49 |
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大西洋を航行する豪華客船上で起こる事件をフェル博士が安楽椅子探偵で解き明かす本作は、カー随一のスラップスティックコメディミステリとして知られている。
こういうドタバタ劇は作者のギャグや悪ふざけを愉しめるか否かにかかっているが、オイラはどうもダメだった。 カーがやりたかったのは一連のドタバタ劇が実はミスディレクションであり、シンプルな事件を複雑に見せるということだろうが、このドタバタ劇のアクが強すぎて、結局、何がやりたかったのだろうという読後感になってしまっている。 まあ、カーもまだ若かったんだろうね。 |