皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
makomakoさん |
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平均点: 6.17点 | 書評数: 891件 |
No.891 | 6点 | 栞と噓の季節- 米澤穂信 | 2025/08/16 08:11 |
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「本と鍵」の続編です。
今回は長編となっており、シリーズ化しそうな感じです。 青春物としての熱がほとんど感じられない、冷めた登場人物ばかり出てきます。 みんな頭がよさそうだが、個人主義で友人でも自分の家を明らかにしないため帰り道は自宅の方角と違ったところで別れるような嫌な奴も主人公です。 抜群の美人だがこれまた性格が悪く、都合が悪ければ嘘をついたり喋らなかったり。この人も重要な登場人物。 こんないやな面があるのですが、どこかに若くて正義感があるところが見えるためそれほど拒否反応は起きませんでした。 でも個人的には古典部シリーズのような感じのほうが好きだなあ。 |
No.890 | 5点 | アミュレット・ホテル- 方丈貴恵 | 2025/08/09 11:07 |
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一定の制限をかけた世界での推理小説です。
制限そのものを受け入れればその世界での本格推理が楽しめる。 受け入れられない人にとっては触れ合うところがないお話となってしまうのでしょう。 このサイトの方は本格推理のファンの方が多いので評価が高いのでしょう。 確かに作者は頭がよく、私のような鈍重な読者が考えるよりいつも先を言った展開を見せてくれます。 これがたまらない方はきっと面白く読まれるものと思いますが、あまり深く考えずすらすら読んでしまおうとする人にとっては、ごちゃごちゃ言っていて複雑すぎてよくわからなくなってしまったといった感想となりそうです。 私も一部推理についていけないところがありましたので、ちょっと評価が低くなりました。 |
No.889 | 6点 | スクイッド荘の殺人- 東川篤哉 | 2025/08/02 07:22 |
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このサイトで評価されているように。この手のお話としてはちょっと長すぎる気がしました。
いかにもどこかで見たような出だしだが、それにユーモアがたっぷりとふくまれているので結構面白い。 トリックもそれなりにあるしどんでん返し的な展開もあり、最後まですらすらと読めるのですが、これだけ長いお話となるとユーモアで押し切ることがかなり難しいのでしょう。 もともと氏の作品はユーモアの中に本格推理をきちんと?組み込んでいるところが魅力なのです。ただし本格としてはちょっとと思われるところをユーモアで振り切っているところもある。まあこれはこういった話だからと許してしまえるねえ、と面白く読んでしまうのですが。 これがこれほど長いお話だとちょっと無理が目立ってしまうのではないでしょうか。 ちょっと話を変化させればほかの人が犯人でも成り立ちそうです。 昔好きで読んでいたシリーズの作者が、書き始めはだれが犯人か決めておらず、途中でこの人が犯人ということとなるといったようなことを読んで急に嫌になってしまったことがありますが、この作品ではエピローグできちんとプロットを考えておられたような感じでしたので、納得していますが。 でもエピローグを読むとやっぱりきちんと考え抜いて書かれたお話なのでしょう。 |
No.888 | 6点 | 南朝迷路- 高橋克彦 | 2025/07/23 20:16 |
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本棚をかたずけていたらこの本が出てきました。1995年発行の文庫本。
当時高橋氏の作品が好きで結構読んでいましたが、このシリーズはどちらかというとあまりピンとこないものでした。 何十年ぶりの再読。内容などはすっかり忘れてしまい始めて読んだのとほぼ同じ状態でした。 歴史推理は私の好みなのですが、初めて読んだ時の感想を覚えていないということはそれほど心に残らなかったということだったのでしょう。 今回も悪くはないがとても感心するというほどでもないといった印象でした。 このシリーズはすべて読んだと思いますが、このころから高橋氏の作品から少しずつ離れていきました。 私が変わったというより、氏の作風が変化したためのように思います。 |
No.887 | 6点 | 金環日蝕- 阿部暁子 | 2025/07/05 07:39 |
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小説としてはきちんとした出来のお話と思います。
登場人物がそれほど多くないが、なんせ詐欺のお話が主体なので偽名がいろいろ使われて、のちのそれがこの人物だとわかるといった仕組みにもなっているため名前を覚えるのが苦手な小生にはちょっとわかりにくいところもありました。 それにしても詐欺が撲滅されないのは、だましておいてだまされた人がだめになっていくのを見るのが好きといった人が存在する、というくだりにはちょっとびっくり。 私も何人か詐欺師という人種?と話したことはありますが、いずれも初対面ではとても感じが良い。この人が人をだますとは信じられない雰囲気でした。だからこそ人をだませるのでしょうが。 この小説でもそういった人種が出てくるのですが、一面はとてもまじめで正義感が強そうなのが一転人をだます。 こういったお話は本質的に好きではないので本サイトの方々よりちょっと評価は低めです。 |
No.886 | 5点 | シンデレラ城の殺人- 紺野天龍 | 2025/06/22 09:38 |
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シンデレラ城といってもシンデレラのお城ではなく、シンデレラがお城のパーティへ出かけるというお話です。
初めはまさにシンデレラのお話風です(ちょっとシンデレラの性格が悪そうですが)。 その後とんでもない事件が起きてシンデレラは密室殺人の犯人とされます。 絶対言い逃れできそうにない状態を、得意の屁理屈で次々と突破していく。お姉さまもまあシンデレラの味方となってくれます。 お遊びで出来上がったお話といえばそれまでですが、一応最後までそれなりに読んでいけるのは作者の力なのでしょう。 ただこんなお話を次々に読みたい読者はあまりいないでしょうから、また新たなお話を期待しましょう。 なんだかとんでもないお話を考えてくれそうな方ですので。 |
No.885 | 7点 | 神薙虚無最後の事件- 紺野天龍 | 2025/06/16 06:05 |
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読み始めると登場人物が皆へんてこりんな名前で、さあこれからエキセントリックな推理ゲームを始めますよといった作者の大見えが気になりました。
大丈夫かな? 作中作が提示されこのお話をみんなで推理することとなります。 ほう。時に見かけるスタイルだな。 時代がかった名探偵が 推理する側にも作中作にも出現、作中作ではとんでもない怪盗が主催するパーティーがとんでもない建物で開かれ、そこでの殺人事件が起きる。 これを推理するといった代物。 したがって本格ものが好きな人には魅力たっぷりだが、そうでない人にとってはばかばかしくてやってられない作品です。 本格ものが好きな私は初めはばかばかしかったが次第に興味が引かれ、結構面白く読みました。 このサイトは本格好みの方が多いと思いますので、自然評価は高くなるものだと思います。 作者はなかなかの力がありそうです。 ほかの作品も読んでみましょう。 |
No.884 | 5点 | 星くずの殺人- 桃野雑派 | 2025/06/08 12:40 |
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宇宙空間の殺人事件は確かに密室ものとして究極の一つではあります。
もともとかなり無理がある設定なので、ある面都合よくお話が進められそうだなあと感じながら読みました。 以下多少ネタバレ。 重力がないと首つりは困難とのことですが、この設定だと首つりというより首絞めとなりそうなので、それなら首の跡が異なるといった無粋な指摘はやめるとしても、不思議な殺人が物理化学的知識によるものだとあまりトリックという感じはしませんでした。 また人の入れ替わりについてもきちんと説明されておらず、ちょっと戸惑ってしまいます。 まあ悪くはないが、さほど感心するものでもなかったというのが偽らざる印象です。 |
No.883 | 5点 | バスカヴィル館の殺人- 高野結史 | 2025/06/04 19:58 |
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今度は海外ミステリーの代表作をひねった殺人ゲーム。
前回はひどく拒否反応が出ましたが、ちょっとなれたのか今回はかなりましでした。 でもこんなお話を読んで楽しみたくはないなあ。 |
No.882 | 4点 | パラダイス・ガーデンの喪失- 若竹七海 | 2025/05/28 16:50 |
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意欲作です。
作者らしくコージーミステリーとしてしっかりと書かれていると思います。 なのに低い評価なのはお話が広げすぎていて、主人公がいるにはいるがそれ以外の準主人公のような登場人物がやたら多い。 作者の狙いはこの架空の町(今までもよく出てきたところではあります)の人達全体が主人公で一人ひとりにそれぞれの物語がありそれを総合してのお話としたかったものと思いますが、出てくる人物が多くもともと人の名前を覚えるのが苦手な上にそろそろ頭が悪くなってきた私にとって、お話がごちゃごちゃになって何が何だかわからないといったようになってしまいました。 私は外国の小説では登場人物が多く名前もなじみがない(下手すると男か女か不明となる)ためお話の筋がわかりにくくなってしまうことがあります。 このお話は外国ミステリーに詳しい作者の作品だけあって、まるで外国ミステリ-を読んでいるようになってしまったのです。 登場人物の名前を覚えるのが得意の方はきっと楽しめるのでしょう。 |
No.881 | 7点 | 砂男- 有栖川有栖 | 2025/05/18 20:51 |
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砂男は中編で、それ以外は短編です。
作者が書いておられるようにかなり以前に作り上げたが、何らかの理由で発表を控えていたものを集めた短編集です。 したがってこの本全体のまとまりはありません。 最初の2編は名探偵が江神さんで、後ろのほうは火村です。 これを読んでいると作者の発表作品をリアルタイムに読んできたものとして懐かしいと気持ちとともに、作者がいかに真摯に作品を作っているかがよくわかります。 そろそろ学生アリスシリーズの長編を読みたいところでしたので、ちょっとだけ渇きが癒された感じです。 でももうそろそろ学生アリスシリーズの最終編を書いてほしいなあ。作者も書けなくなるかもしれないし、なんといっても私が読めなくなってしまわないうちにお願いしますよ。 |
No.880 | 8点 | ファラオの密室- 白川尚史 | 2025/05/16 21:25 |
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ミステリーも古代エジプトも大好きな私にとってはとても楽しめる内容でした。これを読んでいるとアクエンアテンの都(現在はアマルナと言われています)へ行ったことを思い出します。ほとんど何も残っていない砂漠と化していました。当時は治安が悪くて数百メートルおきに自動小銃を持った警備員が立っており、観光客はほんのわずか。それでも有名なネフェルティティの像が発見された跡はわずかに残っており感慨にふけったものです。
まさかここを舞台としたミステリー小説が読めるとは。 ファラオや高官の名前はもともと知っていたので私にとっては名前がわかりにくいといったことはありませんでした。 トリックはちょっととんでもですが、でもまあ面白く読めました。 私のエジプトの趣味が入っているのでちょっと点数は甘めです。 |
No.879 | 8点 | 一次元の挿し木- 松下龍之介 | 2025/05/03 08:51 |
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私はこの作品、好きです。
こういった遺伝子操作のお話を読むと、学生時代にワトソンの書いた教科書を使った講義を思い出します。たった4つのたんぱくの組み合わせで生命が伝わっているのだ。これを解明して(今はかなり解明されました)操作することができれば、いままで全く治療できなかった多くの病気が治癒できる。君たちもこういった分野の研究をしてみないかと誘われたものでした。ワトソンが二重らせん構造を思い立ったのが24歳の時。若い発想が必要なのだと。 この作品はまさにこういった研究により派生した物語です。 もちろん現実からはかなり離れていますが、こういったこともありうると納得できる範囲です。 私は登場人物の描写がむしろ好みです。ことに七瀬紫陽が素敵でした。 お話としてははじめはとんでもない謎が出てきて、これをどうやって帰結させるのか皆目見当もつきませんでしたが、見事に帰結していると思います。 ただし、最後の神話のような解決は良いのですがこれだと主人公と離れた後の紫陽の状況からはちょっと無理なのではないでしょすか。 |
No.878 | 6点 | コドクな彼女- 北田龍一 | 2025/04/27 17:16 |
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「ラノベ読みたちがどよめいた異色作」と帯にありますが、どよめいたかどうかはともかく、変わった作品ではあります。
主人公の少女は本当はとんでもない存在ですが、ちょっとかわいく魅力的です。 まあそこにひかれて読むといた小説ではあります。 時間待ちなどでちょっと読むにはよさそう。 |
No.877 | 6点 | まぐさ桶の犬- 若竹七海 | 2025/04/27 17:02 |
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久しぶりの葉村晶シリーズです。
彼女も50代となり男っ気はなくさらに不運も増しているようです。 このシリーズはきちんとプロットが組みあがっており、一見何でもないようなところが実は真相の手がかりであることが多いので、だまされないように(実はたいてい騙されるのだが)慎重に読んでいきました。 海外ミステリーが好きな作者らしく登場人物が多く、途中で親子関係などが入り乱れてくるので、名前を覚えるのが苦手な私には大変でした。 お話の性格上初めから家系図を出すことができにくいとは思いますが、話が進んだらその時点で系図を挙げて頂けると分かりやすいのではないでしょうか。 私は関係者の血縁が変化するたびに前に戻って確認するといった面倒な作業を何度も繰り返しました。そうしないとお話の意味が解らなくなる。 でもちゃんとした推理小説ですので読みごたえは十分あります。 |
No.876 | 6点 | 古事記異聞、鬼統べる国大和出雲- 高田崇史 | 2025/04/06 20:11 |
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このシリーズは独特の解釈での歴史観を旅をしつつ従来定着していた歴史をひっくり返すような発見するといったお話です。
主人公たちは蘊蓄と屁理屈、言葉遊びと言ってしまえばそれまでのような新説?を次々に見つけます。 こういったお話は好きなので作者の作品はたくさん読んでいますが、今回はちょっと無理なこじつけが多いように感じました。 一度旅すればこれほどの成果があがり、これが正鵠を得ていたとしたら、今までの歴史家や民俗学者はいったい何していたのでしょうかねえ。 QEDシリーズではこれが事件に結びついており、これはこれでちょっと無理があったのですが、このシリーズでは必ずしも事件が発生することもないため、そういった無理はない代わりに歴史推理の無理が表に出てしまった感じがしました。 |
No.875 | 5点 | 檜垣澤家の炎上- 永嶋恵美 | 2025/04/01 21:26 |
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重厚な作品ではあります。
細雪を思わせる時代と状況設定。まさに関東版細雪とでも言いたいところなのですが、いかんせん谷崎のような色っぽさと妖艶さがないのです。 その代わりといっては何ですが、殺人事件が起こり推理小説の要素がありますが、これがあんまりよろしくない。論理的な推理の要素が少なく、感覚的な推理で犯人を見つけ出してしまう。登場人物があまり好みのタイプではなく、ことに主人公が表向きには上品だが実は嘘つきで性悪の傾向。さらに殺人を犯した犯人はとんでもない性格が、突然明らかになる。 これが本格ものではじめから変な人間ばかり出てくるのならまだ納得できるのだが、上品を装ったお話の中に突然サイコパスみたいな人が出てくるとさすがに違和感があります。 良いところがたくさんあるのですが、私にはあまり心に響かず、長い小説を頑張って読んだといった感じでした。 |
No.874 | 6点 | QED 源氏の神霊- 高田崇史 | 2025/03/22 20:36 |
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この小説でのメインテーマは源頼政がなぜ超高齢なのに起ちあがったのかといったところなのでしょう。頼政は平家物語などでは源氏が立ちあがっても源氏にくみせず世渡りしていくのに、最後は無謀と思われる戦いをして一族を滅ぼしてしまうような感じに描かれており、一般にあまり評判がよろしくないように思いますが、この本を読みなかなかに素晴らしい人物であったと再認識しました。
もちろんQEDシリーズですから殺人事件が発生して、それに対してこの歴史推理が絡んでくるのですが、それがいかにもとってつけた感じは否めません。 QEDシリーズは作者の歴史観が桑原崇を通じて示されるところに興味を持つか否かによって好き嫌いが分かれると思います。 実際に起きた事件とこの特有な歴史観が結びつけることにどうしても相当に無理が生じてしまうことは否めません。 この作品ではそういった無理がちょっと目立つところが気になりますが、このシリーズが好きな方には悪くはないと思います。 |
No.873 | 6点 | 呪殺島の殺人- 萩原麻里 | 2025/03/04 21:39 |
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もし私がもっと推理小説を読んでいない頃にこれを読んだら、大いに関心していたものと思います。
残念ながらずいぶん多くの本格推理を読んでしまったので、このお話があちこちのミステリーをつぎはぎしたようなお話となってしまっていることにすぐに気づいてしまいました。 密室殺人、記憶消失、呪われた家族、いかにもといった登場人物などどれをとってもそんなのがあったなあというものなのです。 さらにシチュエーションが孤島で大雨、橋が流され、携帯は圏外。やってくれますねえ。 サービス精神旺盛。 でもオリジナリティ-はほとんどない。 作者が女性のためか、美人でセクシーであるはずの登場人物がたくさん出てくる割にもう一つ性的魅力がうかがわれないのも残念です。 作者の意欲はうかがわれますので、ほかの作品も読んでみましょう。 |
No.872 | 6点 | 古事記異聞 陽昇る国、伊勢- 高田崇史 | 2025/02/28 19:52 |
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このシリーズははじめは殺人事件などが起きましたが、今回は殺人などの事件は全く起こりません。
主人公たちの民俗学的な実地研究のような内容のみです。 したがって従来のような無理に事件に話を結びつけるといったことがないので、かえってすっきりと読めます。 ただしほとんどが伊勢の神様に対する今までと違って見方の検証のような内容ですので、こういった内容に興味がない方には退屈かもしれません。 私はこんなお話が好きなので関心をもって読みました。 |