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[ 本格/新本格 ]
一次元の挿し木
松下龍之介 出版月: 2025年02月 平均: 6.60点 書評数: 5件

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宝島社
2025年02月

宝島社
2025年02月

No.5 6点 みりん 2025/06/29 18:03
「このミス」はどうも合わないという自覚はあるのだが、本作の持つ謎の壮大さに惹かれて読んだ。冒頭の神秘性は島田荘司っぽい。しかし、この不可解さを説明するには(タイトル的にも)これしかあり得ないだろうと珍しく予想が的中してしまい、不完全燃焼になってしまった。本作は謎の解明よりも、終盤のスリラーに身慄いさせられた。アカデミックな雰囲気もいい感じ。島田荘司もこのくらいのコンパクトさだったらいいのかもしれない。

No.4 7点 虫暮部 2025/06/20 11:52
 DNA云々と来たら幾つか考え得る可能性があるけれど、最も使いにくそうなネタに挑んだか。SFなら既にありそうな話を現代ミステリの体裁で書いたアイデアの勝利。リアリティを問うよりはパラレル・ワールド設定だと割り切って読むが吉?
 しかし、かの湖と背後に潜む組織との関係がキチンと記述されていないので、事態の根底がやや不安定に見える。まぁ大勢に影響は無いんだけど、そこは上手く設定をでっち上げて欲しかった。

 他のタイトルでも何度か書いたけど “バカ” を含む名前ってどーなの?

No.3 8点 makomako 2025/05/03 08:51
私はこの作品、好きです。
こういった遺伝子操作のお話を読むと、学生時代にワトソンの書いた教科書を使った講義を思い出します。たった4つのたんぱくの組み合わせで生命が伝わっているのだ。これを解明して(今はかなり解明されました)操作することができれば、いままで全く治療できなかった多くの病気が治癒できる。君たちもこういった分野の研究をしてみないかと誘われたものでした。ワトソンが二重らせん構造を思い立ったのが24歳の時。若い発想が必要なのだと。
この作品はまさにこういった研究により派生した物語です。
もちろん現実からはかなり離れていますが、こういったこともありうると納得できる範囲です。
私は登場人物の描写がむしろ好みです。ことに七瀬紫陽が素敵でした。
お話としてははじめはとんでもない謎が出てきて、これをどうやって帰結させるのか皆目見当もつきませんでしたが、見事に帰結していると思います。
ただし、最後の神話のような解決は良いのですがこれだと主人公と離れた後の紫陽の状況からはちょっと無理なのではないでしょすか。

No.2 6点 メルカトル 2025/04/24 22:58
ヒマラヤ山中で発掘された二百年前の人骨。大学院で遺伝学を学ぶ悠がDNA鑑定にかけると、四年前に失踪した妹のものと一致した。不可解な鑑定結果から担当教授の石見崎に相談しようとするも、石見崎は何者かに殺害される。古人骨を発掘した調査員も襲われ、研究室からは古人骨が盗まれた。悠は妹の生死と、古人骨のDNAの真相を突き止めるべく動き出し、予測もつかない大きな企みに巻き込まれていく--。
Amazon内容紹介より。

なかなかの力作だとは思います。作者はこのミス大賞受賞の自信があったのに、文庫グランプリ受賞に留まって落ち込んだそうです。随分な大言壮語と言うべきでしょう。私自身は新人としてはまずよく書けていると感じましたが、そこまでとは思いませんでした。かなり入り組んだ話なので、焦点が定まらずどこで驚いてよいのやら、どう云った方向性で読み進めたらよいやら見当が付かず、少しばかり難渋しました。

それはそれとして、本作はまず人間が描けていないのが気になります。目まぐるしく視点が変わり、登場人物が多く各々が個性に乏しいです。そして色々起こり過ぎて纏まりに欠けるのもなんとなく気になります。
ジャンルとしては本格ミステリよりサスペンスに近いと私は思います。冒頭で語られる謎は強烈で果たしてどんな結末を迎えるのか・・・それは読まねば分かりません。ネタバレになりそうなので。しかし、驚愕の展開とかどんでん返しの連続とか、そういうものとは無縁であり、そこに期待すると裏切られます。へえーとは思いましたけどね。はい?とかえぇー!とかではありませんので。ただその分堅実ではあるでしょうね。

No.1 6点 いいちこ 2025/04/24 17:45
冒頭に提示される謎の不可解性、ストーリーテリングの巧みさ等、群を抜いて光るところがあり、強烈な求心力をもった作品。
ただ、登場するガジェットがことごとくチープで、明かされた真相にリアリティ・納得感がない。
デビュー作としては出色のデキであり、今後に期待したいところ


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松下龍之介
2025年02月
一次元の挿し木
平均:6.60 / 書評数:5