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メルカトルさん
平均点: 6.04点 書評数: 2025件

プロフィール高評価と近い人 | 書評 | おすすめ

No.2025 6点 それはそれはよく燃えた- アンソロジー(出版社編) 2026/06/13 22:17
『黒猫を飼い始めた』『嘘をついたのは、初めてだった』『これが最後の仕事になる』『だから捨ててと言ったのに』『新しい法律ができた』に続く、会員制読書倶楽部:Mephisto Readers Club(MRC)で配信(公開)された大人気ショートショート集第六弾!
Amazon内容紹介より。

海外が舞台の作品は面白くない法則は一体どいう訳でしょう。短編集としては普通の出来だと思います。混交玉石というか、これだけ多くの作家が書けば出来不出来の差が出るのは仕方ない事ですね。

個人的に良かったのは歌野晶午、米澤穂信、島田荘司、市塔承、黒澤いずみ、秋吉理香子、矢樹純、三津田信三です(登場順)。女性陣頑張ってますね。こうして見ると一人を除いてやはり著名な作家が並んでます。私は解り易い作品が好きなんだと改めて思いました。優勝は秋吉理香子の『ファンの鑑』でしょう。短い中にも起承転結がはっきりしていて、オチが素晴らしいです。みなさんこういうのを求めているのだと思いますよ。

No.2024 7点 文藝モンスター- 二宮敦人 2026/06/12 22:22
文学賞の打ち上げのために集まった、強烈な個性をもつ売れっ子作家たち。そこで発生した猟奇殺人事件を、彼らは解決できるのか?
Amazon内容紹介より。

予備知識なしで読みました。タイトルから想像するに、文壇の確執や編集者との関係等を絡めた文学作品だと思っていましたが、意外にも本格ミステリでした。バカミスですけどね。しかし、ミステリ以外の部分が面白いんですよ。特に増田長春文学賞各受賞者のインタビューが奮っています。ジャンルの違う作家達の、小説を書くという事に対する姿勢の違いが浮き彫りになり、それぞれの個性が際立ちます。

ミステリとしては死体を何故損壊したのかを軸に、一人の奇矯な作家が真相に迫ります。アイディアは面白いですが、リアリティはありません。かなり突っ込みどころがあり、そこが評価が割れた原因となっている気がします。こういうのを許容出来るかどうか、これについては個人的にはあまり気にならない方なので評価は高めになっています。作風は真面目に書いているのにどこかユーモアが感じられ、事件に比して陰惨な雰囲気はありません。読み易いのも良いです。

No.2023 5点 飛ぶ教室- エーリヒ・ケストナー 2026/06/10 22:15
子どもだって、ときにはずいぶん悲しく、不幸なことだってあるのだ……。20世紀初頭。孤独なジョーニー、頭の切れるマルチン、腕っぷしの強いマチアス、弱虫なウリー、風変わりなゼバスチャン……個性溢れる5人の生徒たちが、寮生活の中で心の成長を遂げる。
Amazon内容紹介より。

講談社文庫で読みましたが、児童書の為平仮名ばかりで頭の中で漢字に変換する必要がある為、非常に読み難かったです。これが世界的な名作か、というのが率直な感想。色々な出来事が次々と起こりますが、今一つその世界観に入り込めません。第7章でやっと面白くなってきます。勿論感性の鋭い人は最初から楽しめる作品なのでしょう。ですが私は擦り切れた読者なので、ちょっとやそっとでは心が動きませんからね。

この物語には悪い人は出て来ません。五人の子供達はそれぞれ個性的で、境遇も違います。それは当然の事でリアリティがないとは言えません。彼らの友情と先生との絆の強さが心温まるストーリーを生み出している、のでしょう。私にはあまり響きませんでしたけど。まあしかし、子供も大人もそれなりに楽しめるのは確かで、私の様にピンと来なくても永く記憶に残りそうな気はしますね。特に幾つかのエピソードは・・・。

No.2022 6点 僕たちの青春はちょっとだけ特別- 雨井湖音 2026/06/08 22:23
中学時代、クラスのお客様扱いでぼんやりと過ごしてきた青崎架月。15歳の春、この明星高等支援学校に進学したことで、そんな日常にちょっとした変化が。先輩が巻き込まれたゴミ散乱事件、ロッカーの中身移動事件、生徒失踪事件を同級生や先輩の手を借りながら解決していく。高等支援学校を舞台に、初めてできた友人たちとの対等な付き合いに戸惑う架月の青春と、彼が出合った謎を描く連作集。
Amazon内容紹介より。

知的障害を抱えた高校生達の、それぞれの青春。色々考えさせられる小説でした。健常者と障碍者との共生は昔からの課題ですが、これを読むとやはりそれはそんなに単純な問題ではないと思わされます。本作では支援学校の生徒達が個性的に描き分けられており、それだけでも好感が持てます。そんな中三つの事件を解決に結び付けていく主人公の架月の成長物語として、そして仲間達の友情を描く青春小説として優れたミステリです。

事件そのものは驚く様なものではありません。が、障害者ならではの動機や事件を事件として捉えない優しさを感じます。そうした事を含めて温かい目で読んで頂きたいですね。彼らの言動を好奇の視線を浴びせるのではなく、同じ青春を送った経験のある一人の人間として、同じ土俵に立って見守りたいと心から思います。

No.2021 6点 5分後に意外な結末 ベスト・セレクション 白の巻- アンソロジー(国内編集者) 2026/06/06 22:23
書き下ろしを含む20編とさらに短く切れ味鋭い19編のスケッチで構成。
恐怖、感動、笑い、涙……そして最後にやってくるだまされる快感!
たった5分の中で起こるドラマが、日常をリフレッシュさせる。
ティーンから大人まで、どこから読んでも楽しめるショート・ショート集。
朝読にも最適。親子で楽しめるアンソロジー。
Amazon内容紹介より。

うーん、確かに意外性がある短編も多いですが、アッと驚く様な作品は少ないです。何となく、ああそうなのか程度に思っておいた方が楽しめるかもしれません。とは言え、結末が読めるのかと問われると否と答えざるを得ません。恐怖とか涙とかはあまり感じませんが、皮肉な結末が多い様な。一話一話に付随するように配されたショートショートは、本題と関係があったりなかったりの、これと言って特徴のない話が殆どです。

編集と著作を兼ねた桃戸ハルよりも、よく知らない作家橘つばさの書いた作品の方が気が利いていて面白かったです。オチがナイスです。『名探偵の復活』『サイレント・ナイト』『愛妻弁当』『鏡よ鏡』『見えない男』辺りが良かったですね。全体的に好編が目立ち、これはどうもイマイチというのはありません。全て平均点以上だと思います。

No.2020 4点 トワイライトシンドローム- 福谷修 2026/06/05 22:51
元ネタはプレイステーション用ゲームソフトであり、登場人物もゲーム内容も全く違います。本作はシリーズの独立した映画のノベライズであり、本来のゲームとは関係ありません。『デッドクルーズ』の主人公は春香で、仲間と共にクルーズ中に少女から渡されたゲームを始める所から恐怖が始まるというもの。ゲームなのかリアルなのか判然としない中、乗組員に襲われ死を賭けた戦いが繰り広げられます。
しかしこれが又平坦な文章で面白みがなく、誰にも感情移入が出来ない詰まらない代物。漫然と読み進みましたが全然心が動くシーンがなく、正にB級ホラー或いはそれ以下の読み応えの無さに辟易しました。一応オチはあるものの、後味は良くありません。全く何を読まされているのか、何やってるんだって気持ちにしかなりませんでしたね。

『デッドゴーランド』は春香の妹芽衣が主人公で、ゲームの得点上位者の男女がミッションをクリアしていくもの。こちらも『クルーズ』同様、見所が殆どありません。起こった事象を淡々と描かれていくだけ、心理描写も背後関係もほぼなし。両者とも出来はイマイチで暇潰しにすらなりませんでした。

No.2019 7点 官能的 四つの狂気- 鳥飼否宇 2026/06/03 22:23
「ついにやってしまった……」
変態する数学者、暴走する助手──
最凶のバカミスコンビ、降臨!
不可解な事件に数学的思考から
「至高の解答」を導き出した──はずだったのだが、「真相」は──言えない。
Amazon内容紹介より。

のっけからパンテ○ラインだとかクロッチだとか、延々と女性のヒップに関する男目線からの考察が続きます。おいおい、大丈夫かこの小説。まるで私の為に書かれた様な作品じゃないか、とか思いましたが、やはりミステリはミステリ。名付けるなら変態理数系本格ミステリですかね。しかし意外にも図解入りで、親切設計です。まあ推理としては粗が目立ったり、密室トリックなどは他愛ないものであったりとあまり誉められたものではありません。勿論前篇エロ路線まっしぐらであります。

でも面白いからいいじゃん、まあ6点だけどねと思いました。ところが・・・。何と、何と、これ以上は書けません。私の愛の籠った7点という採点でそこの処を察して頂きたいと思います。いずれにしても、本書は禁忌とも言える危険な領域に踏み込んだ、作者渾身の問題作ではないでしょうか。
尚作者はドラゴンズファンの様で、往年のドラゴンズ選手の名字や名前が続々と出て来ます。木俣、孝政、正岡、三沢、安志、堂上、銅烈、近藤、今中、都、薫、徹ら多数出演。

No.2018 7点 そして物語のおわりに- 小松立人 2026/06/01 22:14
医学生・張田雅之は、アルバイト先の店長の招きで、友人の久郷一と共にとある離島を訪れる。店長の父・柏谷高視は大手ゼネコンの会長でもあり、自身が所有するこの島で、親類や知人を招いて年末を過ごすのを習慣にしていた。集まった人々の前で高視が病気で余命幾ばくもないと明かされた翌朝、彼は四肢を切断され、池に浮かべられた死体となって発見される。高視の部下の男も同様に惨殺されていた。屋敷内のすべての通信設備は壊され、船も二日後まではやって来ない。出入り不能の孤島と化した中、猟奇的な事件を調べるために、張田は医学生としての知識を活かしたある提案をする──。『そして誰もいなくなるのか』でセンセーショナルなデビューを飾った著者による、第二長編。
Amazon内容紹介より。

特殊設定ではない、どこまでも真っ直ぐな孤島ミステリ。探偵と助手が目立ちすぎて、他の登場人物に個性が感じられません。奇矯な探偵というのはありがちな存在ですが、久郷一の場合特殊能力を持っていてそれを遺憾なく発揮しています。そこが他の本格ミステリと一線を画すところでしょうか。医学生の張田雅之は結構な観察力があり、これまた普通の探偵助手とは一味違います。彼のダミーとなる推理はなかなかのもので、こちらの方が真相よりも面白かったりします。

また四肢の無い死体の切断の理由は、私の知る限りでは初めてかも知れません。クローズドサークルだからか首なし死体という訳ではありません、登場人物が限られていますからね。一方密室トリックは前例があり、驚きはありませんでした。しかし王道の本格ミステリであるのは間違いなく、個人的に好感が持てました。探偵の相当の変人ぶりにも免疫があるせいか、それほど違和感を覚えることなく読めました。嫌いなタイプではないですし。

No.2017 5点 短歌探偵タツヤキノシタ- 舞城王太郎 2026/05/30 22:09
小学3年生になる春、福井に引っ越してきた「キノシタタツヤ」が、「短歌探偵」として事件を解決する全5話収録の連作短編集。事件のあるところ、必ず現れる「短歌一首」。この歌を読み解くことで真相に迫る、「短歌×謎解き」の前代未聞の探偵小説!!
Amazon内容紹介より。

舞台はまたまた福井県西暁町、架空の土地です。読む前に読書メーターで確認してみましたが、大方好意的な感想を抱いています。ほとんどが舞城フリーク達でしょうから、あまり当てにはならないと思いながら一応参考にして、一読後。こりゃ身銭を切って読むだけの価値はないなあと思いました。舞城王太郎特有のクセのある文章で、相変わらずだなとかちょっと懐かしんですけどそれだけ。

第一首と第五首は短歌と小事件が有機的に繋がりを持って来ますが、他は何が何だか分からないうちに終わってしまい、えっ、一体何が起きてどこが解決しているんだってなりました。私の読み落としであれば良いんですが、そうで無ければやはりこれは駄目な作品って事になりませんかね。まあ余程のファンだけ読んでいればいい代物であると断言しては叱られますか?ミステリで短歌を取り上げるのは悪くないですが、それを暗号的な扱いでもっと確りと活用しなきゃいけないと感じます。あ、五首だけは成程とは思いましたが。短歌が一番ミステリっぽいものだっただけに上手く行ったんでしょうね。

No.2016 5点 桜葬- 斎堂琴湖 2026/05/28 22:15
駅のホームからバラバラ死体を線路に投げ、札束をばらまき、微笑を浮かべて自ら電車に飛び込んだ謎の男。
この不可解な事件を解明するため、県警捜査一課の刑事・氷室は、上司の滝坂と共に捜査を開始する。
男の足跡を追ううちに見えてきたのは、三年前の爆破予告事件との奇妙な繋がりと、複雑に絡み合う人々の祈りと罪。
すべての謎が解けるとき、あまりに哀しく切ない真実が明らかになる。
Amazon内容紹介より。

冒頭の強烈で、実に不可解な事件は何故起きたのかという圧倒的な謎を追う二人の刑事。しかしそれだけではありません。浦和界隈駅爆破予告事件がそこに絡んできて、背景にはコロナ禍が・・・。
手堅い文章で読ませはするのですが、あまり面白味はありません。実直過ぎて遊び心が足りないのではないかと思います。事件は徐々に明らかになっていきます、その度に登場人物が増えて複雑化して行き様々な要素が絡んで、裏に隠された事案が浮かんできます。

しかし、ですよ。肝心の何故死体をバラバラにした上、線路に放り投げたのか。500万の札束をばら撒いた意味は何か、どうして自身がクリスチャンであるにも拘らず電車に身を投げて死んだのか。死顔が幸せそうだったのは何故か。これらの謎が死者に訊く訳にもいかないとばかりに、ハッキリとさせなかったのは致命的な欠点となり得ると思いました。典型的な竜頭蛇尾と言わざるを得ないのです。多くの読者の興味は其処に尽きるのは間違いないのに、それを裏切った作者の罪は大きいですね。

No.2015 6点 ネタバレあり 双紋島の殺人- 下村敦史 2026/05/25 22:16
「島での最初の犠牲者は名探偵」「登場人物の一人は偽名」「島では四人が殺される」「共犯者がいる」など、巻頭に書かれた7つのネタバレ。嵐に閉ざされた孤島で起こる連続殺人を描いた作中作「双紋島の殺人」は、現実に起きた事件をもとにしたノンフィクションノベルだった。事件に巻き込まれたミステリー作家は、真相解明を読者に求めるため小説として刊行するが……。
仕掛け満載でアクロバティック!『同姓同名』『全員犯人、だけど被害者、しかも探偵』の著者が贈る禁断のネタバレミステリー。
Amazon内容紹介より。

ネタバレに注意しなければならないし、その裏に何が仕掛けられているか分からないので、正直かなり疲弊しました。その結果は確かに騙されたとは言えますが、個人的にはもっとストレートにひっくり返してほしかったですね。この騙し方はカタルシスを齎しません。それと私だけではないと思いますが、内容がややこしく難しいと感じました。

殺人事件に関しては猟奇的でもなければ、装飾等の凝り方はしていません。またトリックとしては通常のミステリには見られないもので、ネタバレありと堂々とタイトルに謳っているだけに、その効果は読者の想像を超えたものとなっています。しかしそれが読者にどれだけ受け入れられるか疑問です。動機には非常に納得感がありました。

No.2014 6点 吉祥寺の朝日奈くん- 中田永一 2026/05/23 22:02
収録作品
交換日記始めました! 恋人同士の圭太と遥が内緒で交わしていた交換日記。二人だけの秘密だったはずが…。
ラクガキをめぐる冒険 高校二年のときにクラスメイトだった遠山真之介。五年後の今、不思議なことに同級生の誰も彼のことを憶えていないのだ。
三角形はこわさないでおく ツトムと小山内さんと、俺。ツトムは小山内さんが気になり、小山内さんは…? 微妙なバランスの三角関係の物語。
うるさいおなか 私のおなかは、とてもひんぱんに、鳴る。そのせいでどうしても積極的になれなかった私の前に、春日井君があらわれて…。
吉祥寺の朝日奈くん 山田真野。上から読んでも下から読んでも、ヤマダマヤ。吉祥寺に住んでいる僕と、山田さんの、永遠の愛を巡る物語。
Amazon内容紹介より。

表題作を除いて、終始ぬるま湯に浸かったような感覚が抜けませんでした。叙述トリックや意外な真相など、ミステリ的趣向が盛り込まれており、あまり恋愛小説集と言う感じがしません。乙一の別名義だと安心していたら、ちょっと拍子抜けでした。敢えて作風を変えているのかなとも思いましたが。
どれもこれも毒気が抜けた、悪く言えば読者に迎合した様な作品で、まあまあの印象です。

しかし『吉祥寺の朝比奈くん』だけは秀作或いは傑作だと思います。山田真野と僕朝比奈の恋愛はちょっといけない、秘められた愛。登場人物が少ないだけに、それだけ濃密な二人の揺れ動く恋心が繊細に描かれます。付かず離れずの関係性の先に待っているのは・・・。これですよ、これ。私が待っていたのは。やはり油断なりませんね、この作家は。

No.2013 6点 TRICK新作スペシャル- 林誠人 2026/05/21 22:35
初のスペシャル版のノべライズ! 奈緒子と上田のコンビが占い師と対決!
金なし乳なしのマジシャン・山田奈緒子(仲間由紀恵)と、身長・プライドはめちゃ高い物理学者・上田(阿部寛)のコンビが、宇宙の力を受けたという占い師・祥子(名取裕子)と対決。2人は祥子の殺人をどう見破る?
Amazon内容紹介より。

テレビのスペシャルドラマのノベライズ。かなり昔観たような気がしていたのですが、記憶が曖昧で正直どうなのか読みながらも疑問でした。途中仲間由紀恵の体当たりの演技が思い起こされ、ああやっぱり観ていたんだと判りました。ほとんどストーリー等は忘れていたんですけどね。
本作では上田は完全に脇役というか助手みたいな存在で、見せ場はカンフー対決のシーンくらいです。マジックの仕掛けを見破るのも、事件の真相を看破するのも奈緒子でした。

ジャンルとしてはユーモアミステリですが、骨格が本格ミステリなのでそちらに一票投じました。占い師の予言通り死んでいく被害者達。これは果たしてどういった現象なのか?殺人とすればどんなトリックが仕掛けられているのか。何と言っても最初に心臓麻痺で、これまた予言通り死んでいく者の背景にある暗い真実に共感させられました。物語としてはここが一番の見どころだと思います。
小ネタですが、赤ちゃんの男女の産み分けトリックには感心しました。こんな事を思い付く奈緒子の母里見の鋭さと貪欲さ、翻って脚本家の林氏の発想の豊かさに感じ入りました。

No.2012 6点 わたくしだから改- 評論・エッセイ 2026/05/20 22:37
ご存じ文科系パンクス・オーケンが、ロックとモノ書きのボンクラな日々をのほほんと明かす爆笑エッセイ。文庫化に際し極私的映画鑑賞術「パイパニック!」ほかを追加し、さらにパワーアップ!!
Amazon内容紹介より。

大槻ケンヂはミュージシャンだけに、そっち方面の話題も勿論ありますが、それはイマイチ面白くありません。それよりも例えばシャーロック・ホームズをライヘンバッハの滝への落下から救ったのはバリツだったという話。そのバリツというのは日本の柔術だったとの仮説から、数々の謎を巡りああでもないこうでもないと調査した挙句辿り着いた結末は全く想像外のものだったという面白プチ蘊蓄。実はシャーロキアンだったオーケン、なかなかやりますな。

と言うかそれよりももっと凄いのは、パイパニックの章である。『沈黙の戦艦』に出ていたエリカ・エレ二アックの○ッパイの真ん丸さに驚くオーケンが面白おかしく書いてあります。そして澤井健の描く彼女のイラストが、若い頃の画像と比べてもとても良く似ているし絵が上手いのが印象的。顔は四角いのにパイは丸いと。
一方和製パイでは『忠臣蔵外伝 四谷怪談』に出ていた高岡早紀の上半身裸の堂々とした演技とパイ。これは私もビデオで観ましたが、あまりの迫力にセリフが頭に入って来ませんでした。又南野陽子が『寒椿』でパイを出していたという、○ッパイガチ勢の頓知気さきなも真っ青(知らんけど)な事実。知らなかった、まさかあの南野陽子が微乳を晒してしまっていたとは知りませんでした。教えてくれてありがとうオーケン。

No.2011 5点 しにがみのバラッド。(2)- ハセガワケイスケ 2026/05/18 22:22
ある日、ひとりの少女が目を覚ましました。その少女は、ふつうの人間ではありませんでした。手には、鈍色に光る大きな鎌を持っていました。傍らには、奇妙な黒猫を従わせていました。少女は、「死神」でした。そして、死を司る少女には、他の仲間(しにがみ)と違うところがありました。その姿が、冬の雪のように真っ白であること。その心が、春風のようにやさしいこと――。これは、白い死神の、哀しくてやさしい物語です。
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哀しくて優しい、は良いけれど、圧倒的にインパクトが足りません。読んだ先から忘れてしまう様な感覚で、どうにも心に刺さるものがありません。前作でも同じような事を書いた気がします、つまり前作同様って事ですかね。
モモは死神のくせに、人に死を齎すと言うより死んだ人間の願い事を叶え、残された大切な人に残りの生を託すみたいな話ばかりです。

まあ仕掛けはあるんですけどね。だからと言って驚くほどのものではないです。純粋な心の持ち主には響く何かがあるのかも知れませんが、擦れた読者にはあまり感じないでしょうね。サラッと読めるのは良いです、正にラノベの見本の様な作品ではあります。

No.2010 6点 死小説- 福澤徹三 2026/05/17 22:10
あとがきにはほとんどの場合、文庫化に際し大幅に加筆修正を加えるが、本書に関してはほぼそのまま訂正せず出版されたとあります。私にしてみれば、なかなか味わい深い文章で全く手を加える所が見当たらないと感じました。その意味では完成度の高い作品集と言えます。五篇の短編はいずれも『死小説』その名の通り何らかの形で死に迫っています。「死」とは一体どういうものなのか、永遠の謎である命題に対して作者なりの解釈を施していると言っても良いと思います。

特に印象深いのは最初の『憎悪の転生』で、主人公に大いに感化されました。他も凡百のホラーとは一線を画す中身の濃い短編が並びます。怖いと言うより人間の業や罪深さ等を描いた佳作ばかりです。最後には確りとオチが付いていて、成程と納得させられます。ホラーの枠に嵌り切らない異色の短編集でしょうか。

No.2009 6点 あの日、君は何をした- まさきとしか 2026/05/15 22:30
北関東の前林市で平凡な主婦として幸せに暮らしていた水野いづみの生活は、息子の大樹が連続殺人事件の容疑者に間違われて事故死したことによって、一変する。深夜に家を抜け出し、自転車に乗っていた大樹は、何をしようとしていたのか――。
15年後、新宿区で若い女性が殺害され、重要参考人である不倫相手の百井辰彦が行方不明に。無関心に見える妻の野々子に苛立ちながら、母親の智恵は、必死で辰彦を探し出そうとする。
刑事の三ッ矢と田所が捜査を進めるうちに、無関係に見える二つの事件をつなぐ鍵が明らかになる。
『完璧な母親』で最注目の著者が放つ、慟哭のミステリー。
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105頁までの一部は大樹の母親であるいづみの視点で、執拗に描かれくどい位の内容になっています。なぜ息子が死ななければならなかったのかが繰り返し違う表現で書かれ、いづみの心痛が胸に刺さります。が、あまりの変容ぶりに心が付いて行けない、そんな心境になることも事実です。そして二部はガラリと変わって、二人の刑事が行方不明の男を探っていく姿を多視点で描いています。

この両者の間に必ず何らかの関係性がある筈だとは分かっているのですが、なかなかそれらを繋ぐ鍵が見つからず、ヤキモキさせられました。しかしいづみが二部で人間の生まれ変わりを信じるに至るまでの心理描写はとても印象に残りました。
結局意外な形でタイトルの様な少年はあの日何をしようとしていたのかが明かされ、その真相にはちょっと意表を突かれました。
本作は人間がよく書けているし、なかなかのリーダビリティでぐいぐいと引っ張っていく文章はお見事です。特に三ツ矢の人間性は掴み所がないのが又魅力的で、この事件の探偵役としてはうってつけと言えるでしょう。佳作であり力作だとは思いますが、どことなく消化不良な点が気になるところであると思いました。

No.2008 5点 みんなの少年探偵団2- アンソロジー(出版社編) 2026/05/12 22:33
江戸川乱歩生誕120年を記念して刊行され、テレビや新聞など様々な媒体にも紹介されて話題にもなったアンソロジー『みんなの少年探偵団』。
2015年は江戸川乱歩没後50年ということで、市場も盛り上がりを見せているが、その最後の締めくくりとしての『みんなの少年探偵団』第2弾企画。
第2弾も、子供時代に少年探偵団と怪人二十面相の息詰まる対決に胸を躍らせた過去を持つ作家陣が集結。
今作では、有栖川有栖、歌野晶午、大崎梢、坂木司、平山夢明という豪華5人が「少年探偵団」オマージュに挑む!
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5作品の中では有栖川有栖の『未来人F』が頭抜けて面白かった。流石としか言いようがありません。オマージュとしては勿論、やはりミステリですからそこに最も比重を置いているのが有栖川でした。又メタミステリにもなっている辺りが凄いです。その点歌野晶午は記憶に残りませんでした。他の三人はそれぞれが自身の色を出していて、比べてみるとなかなか興味深いものがありますね。

平山夢明なんかを読むと、「少年探偵団」って何でもアリなんだなと思います。グロさを抑えきれず思わず書いてしまった感が半端ないです。物語として破綻はしてませんけど。坂木司はそう来たかって感じで、ちょっとだけ意外性を楽しめました。全体的に目立つのは、怪人二十面相がどんだけ変装するんだよって事でした。そんなに変装してたかなあって。

No.2007 7点 χの悲劇- 森博嗣 2026/05/11 22:16
香港で仕事をする島田文子のもとに男が現れた。島田が真賀田研究所にいた頃に起きた飛行機事故について質問があるという。その日、走るトラムの中で殺人が起き、死者の手に「χ」の文字が遺される。乗客として警察の捜査に応じた島田だったが、そこである交換条件を持ちかけられ……。Gシリーズ後期三部作開幕!
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本作は妃真加島の事件に一枚噛んでいる島田文子の物語であり、ミステリ部分は全体の10%未満です。その背後には少なからず真賀田四季の存在が確かにあり、その意味ではファンには嬉しい作品だと思います。ただ、物語が一向に進展せず、特に第二章、第三章はいささか退屈な想いをしました。おまけに殺人事件の真相はかなり拍子抜けするものであり、それは島田によって呆気なく解かれるので、うっかりすると読み落としてしまいそうな危険性すらあります。

それでも第四章だけは格別好印象を受けました。かなり切ない話になり久しぶりにセンチメンタルな気分にさせられました。ゴリゴリの理系作家でもこの様な抒情的な描写が出来るんだと、新鮮な衝撃を受けました。そしてラストの二段オチには拍手を送りたいです、マジで。この終盤で評点をグッと押し上げましたね。

No.2006 5点 新「超」怖い話6- 樋口明雄 2026/05/08 22:22
怪談話と云うのは、基本的に本人に聞いたか又聞きした怪談を作家が書くというスタイルを取っています。よってそれが事実なのか作り話なのかは判然としない場合が多いと思います。だからなのか、似たような話が結構多い気がしますね。枝葉は違っても根本的に同じとか。まあそんなものを含めて本書は「とにかく怖かった怪談」「どうにも奇妙な怪談」「かなりヤバい怪談」に分かれていて、私的にはそれほど怖くなかった感じです。繊細な心を持った方には結構グサッと来るものがあるかも知れませんが。

その中でも印象深かったのは風変わりなドッペルゲンガーを描いた、どこか牧歌的な雰囲気の『ドッペルゲンガー』。遭難した凍った死体を解剖するととんでもない異変が起こる『人氷』。人の足が転がっていてそれが・・・という『むかしむかし』辺りですかね。
怪談としてはこれだけシリーズ化されている訳ですから、その筋の人にとっては歓迎されるべき著書なのかも知れません。個人的に思うのは、よくこれだけ集まったものだなあという事。それ以外特にこれと言った感想はありません。

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メルカトルさん
ひとこと
「ミステリの祭典」の異端児、メルカトルです。変人でもあります。色んな意味で嫌われ者です(笑)。
最近では、自分好みの本格ミステリが見当たらず、過去の名作も読み尽した感があり、誰も読まないような作品ばか...
好きな作家
島田荘司 京極夏彦 綾辻行人 麻耶雄嵩 浦賀和宏 白井智之 他多数
採点傾向
平均点: 6.04点   採点数: 2025件
採点の多い作家(TOP10)
浦賀和宏(33)
アンソロジー(出版社編)(31)
島田荘司(25)
西尾維新(25)
綾辻行人(22)
京極夏彦(22)
折原一(20)
日日日(20)
中山七里(19)
森博嗣(19)