皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
|
メルカトルさん |
|
|---|---|
| 平均点: 6.04点 | 書評数: 2006件 |
| No.2006 | 5点 | 新「超」怖い話6- 樋口明雄 | 2026/05/08 22:22 |
|---|---|---|---|
| 怪談話と云うのは、基本的に本人に聞いたか又聞きした怪談を作家が書くというスタイルを取っています。よってそれが事実なのか作り話なのかは判然としない場合が多いと思います。だからなのか、似たような話が結構多い気がしますね。枝葉は違っても根本的に同じとか。まあそんなものを含めて本書は「とにかく怖かった怪談」「どうにも奇妙な怪談」「かなりヤバい怪談」に分かれていて、私的にはそれほど怖くなかった感じです。繊細な心を持った方には結構グサッと来るものがあるかも知れませんが。
その中でも印象深かったのは風変わりなドッペルゲンガーを描いた、どこか牧歌的な雰囲気の『ドッペルゲンガー』。遭難した凍った死体を解剖するととんでもない異変が起こる『人氷』。人の足が転がっていてそれが・・・という『むかしむかし』辺りですかね。 怪談としてはこれだけシリーズ化されている訳ですから、その筋の人にとっては歓迎されるべき著書なのかも知れません。個人的に思うのは、よくこれだけ集まったものだなあという事。それ以外特にこれと言った感想はありません。 |
|||
| No.2005 | 3点 | 妖怪変化殺人事件- 赤川次郎 | 2026/05/06 22:18 |
|---|---|---|---|
| 傍若無人・神出鬼没のあの大貫警部が殺人犯を追って勇猛果敢、遊園地の〈怪奇の館〉に突入。不気味な闇に待ちうけるのは吸血鬼・ミイラ男にゴーゴン、そして狼男――。けれどもこんな怪物たちよりもっと恐ろしい生きものが、この世にはいたのである。表題作を含め四編収録の大人気・大貫警部シリーズ・第八弾。
Amazon内容紹介より。 第三話まで、ゴチャゴチャして非常に解り難い内容だと思います。さしたる仕掛けもトリックもない、面白味の無いユーモアミステリの凡作と言えるでしょう。大貫シリーズも第八弾ともなるとネタ切れ感が半端なく、会話文が多くサクサク読めるだけが取り柄です。殺人事件そのものにも魅力がなく、外連味すら感じられないし、褒めるところが見当たりませんね。 第四話の『表裏一体殺人事件』だけは比較的真面な連続殺人事件であり、背後にストーリー性があってまずまずの出来かなとは思いました。 しかし、こんなに面白くないのによくここまで続いたなという感じですね。大貫警部もアクが強いだけで、たまにまぐれで推理が当たるケースもありますが、ただの人の悪い人物として描かれているのが残念です。時折人情味を見せるとか何にかしら人を惹き付ける物があればなあと思います。 |
|||
| No.2004 | 7点 | 野良犬の値段- 百田尚樹 | 2026/05/04 22:30 |
|---|---|---|---|
| 突如としてネット上に現れた、謎の「誘拐サイト」。
<私たちが誘拐したのは以下の人物です> という文言とともにサイトで公開されたのは、 6人のみすぼらしい男たちの名前と顔写真だった。 果たしてこれは事件なのかイタズラなのか。 そして写真の男たちは何者なのか。 半信半疑の警察、メディア、ネット住民たちを尻目に、 誘拐サイトは“驚くべき相手"に身代金を要求する――。 日本全体を巻き込む、かつてない「劇場型犯罪」が幕を開ける! Amazon内容紹介より。 誘拐サイトの第一発見者、フリーライター、新聞社、TV局、出版社、誘拐犯、警察等の多視点から描かれ、登場人物は夥しい数に上ります。しかし群像劇という訳ではなく、飽くまでエンターテインメントに徹しています。社会派の様相も呈しています。残念ながら文体としては会話文が多く、その分重厚さに欠けるのが気になるところではありますが。 誘拐物によくある警察と誘拐犯との駆け引きはあまり見られず、終始警察が誘拐犯の罠に翻弄されるという形が取られています。個人的には第一部より第二部の方が面白かったですね。特にホームレスへの拷問シーンとその背景にあるものは心に突き刺さりました。ここが私にとってはクライマックスであったのではないかと思っています。 世論を巻き込んでの劇場型犯罪、読み応えも十分で、特にエピローグは良かったです。多くの読者に受け入れられる納得の一冊だと思います。 |
|||
| No.2003 | 6点 | 累々- 松井玲奈 | 2026/04/30 22:20 |
|---|---|---|---|
| 23歳の小夜は、同棲中の恋人からのプロポーズを受けて戸惑っていた。私の年齢は、結婚をするのに適しているのだろうか――? 獣医師のセフレと奔放に夜を過ごす「パンちゃん」、恋愛ゲームのようにパパ活女子との逢瀬を楽しむ星野の前に現れた不思議な女子大生「ユイ」、才能あふれる美大の先輩に切ない恋をする「ちぃ」……現代を生きる女性のさまざまな顔を描く、たくらみに満ちた連作小説集。
Amazon内容紹介より。 男女の別なく人間が描けていると云うのはこういう事なんだろうなと思います。文体はクールで恋愛小説としてはどちらかと言えば感情を抑えた短編集となっています。しかしながら、エロ描写ではないものの、かなり性に対して踏み込んだ内容です。元アイドルで現女優という立ち位置としては大胆な作品と言って良いでしょう。 作品全体に仕掛けられた罠に嵌る事必至で、成程と唸らされました。男女の駆け引きもさることながら、男と女の本質的な違いが奔放とも言える描写によって浮き彫りにされる辺り、作者が只者ではない事を感じさせます。最早これは広義の恋愛ミステリと呼んでも差し支えないのではないかとさえ思わせます。まあミステリじゃないけど。それでも面白い、期待通りの出来栄えでした。特に『パンちゃん』が良かったなあ。 |
|||
| No.2002 | 7点 | 未館成の殺人- 信国遥 | 2026/04/28 22:19 |
|---|---|---|---|
| X大学ミス研の夏合宿の舞台は、建築家・黒澤泰洋が忽然と姿を消した無人島。島には建設を中断された、奇妙な館の基礎部分だけが残されていた。
ミステリさながらのこの状況を記事にするため、島に降り立ったミス研メンバー。しかし到着早々、本土との唯一の連絡手段だった船が炎上し、完全に孤立してしまう。飢えと渇きで衰弱していくなか、なんとか生き延びようと策を講じるメンバーだったが、ひとり、またひとりと不可解な死体となって発見されるーー。 Amazon内容紹介より。 前半は連絡不能な孤島に取り残されたX大学推理小説研究会のメンバーが、何とか生き残るために水を確保しようと火を熾すことに腐心するシーンが長すぎて、ちょっと飽きるし疲れました。やっと殺人事件が起こったと思ったら、これがまた地味で何だかなあって感じです。つまり本作は問題編はちょっと詰まらないけれど、解決編でグッと盛り返すタイプの典型的な例だと思います。 ただ動機をどう考えるかでこの作品の評価が割れる可能性は大いにあります。実は私も最後の畳み掛ける展開には心奪われましたが、ホワイに対しては完全に納得する事は出来ませんでした。従って採点はちょっと甘目にしてあります。文章に関しては可もなく不可もなく、読み進められます。過去の事件や怪しげな建築家など、見所は幾つかありますがどれも既視感がかなりありますね。 |
|||
| No.2001 | 5点 | マイナス・ゼロ- 広瀬正 | 2026/04/25 22:17 |
|---|---|---|---|
| 幻の名作が大きな活字で登場
戦時中に隣人と交わした約束。18年後にその約束を果たそうとして、主人公が見たものは? 日本語で書かれたタイムトラベル小説の最高峰といわれる名作が大きな活字で登場。(解説/星新一) Amazon内容紹介より。 昭和38年でも無理なのに、昭和7年の東京が舞台って全然ピンと来ませんね。なかなかの大作ですが、余計な描写が多い割に肝心の所で色々と説明不足なので、非常にアンバランスな印象を受けました。タイムカプセル物が好きな方には良いかも知れませんが、どうも私には合いませんでした。SFっていうのは元々肌に合わない所がありまして・・・まあ時間の無駄だったと言うか、何でこういうのを買ったのかなあと過去の自分に問い質したい気分です。 最後にどう収束させるのか、それだけが興味の的でした。しかし、結局モヤモヤ感しか残らず、自分をどう説得させたらよいのか分かりませんでした。昔の作品だからこれが精一杯なのかなとは思いますが、ストーリーとしては兎も角SFとしての本領を発揮して欲しかったですね。Amazonの評価が高いのはSF好きが多いせいなのか、昭和初期の雰囲気が好ましかったのか、その辺りを鑑みての事だと思います。あ、イマイチ面白くなかったという個人の意見を勝手に反映させてすみません。 |
|||
| No.2000 | 7点 | バラバの方を- 飛鳥部勝則 | 2026/04/20 22:34 |
|---|---|---|---|
| もっと野卑で暴力的な小説かと思っていたら、意外と真っ当な本格ミステリでした。ただ登場人物のほとんどがクセの強い人ばかりで、雰囲気は殺伐としています。相変わらずの絵画に関する薀蓄は健在で、特に宗教画を模した腸を引き摺り出された死体や、歯が抜かれた死体など見立て殺人をどう解釈するかが事件の鍵ともなっています。本作は異色作の多い飛鳥部作品の中でも特異点に位置する作品だと個人的には思いました。これが飛鳥部勝則を初めて読む読者にとっての入り口であっても悪くないでしょう。
なかなか破壊力のある本書ですが、グロやスプラッターとしては控えめで飽くまで本格寄りに軸足を置いている様な気がします。特に動機に関して比重を高めにしていると思います。だからと言って必ずしも納得感の得られる動機とは限りませんが。 個人的に印象に残ったシーンは、久仁子の父親の逸話や実質的な探偵役であり、独特の魅力を持っている佐井光次と持田との邂逅ですね。 |
|||
| No.1999 | 5点 | この素晴らしい世界に祝福を! あぁ、駄女神さま - 暁なつめ | 2026/04/16 22:20 |
|---|---|---|---|
| ゲームを愛する佐藤和真は女神を道連れに異世界転生。大冒険が始まる……と思いきや、衣食住を得るための労働が始まる。「安定」を手にしたい和真だが、女神が次々問題を起こし、ついには魔王軍に目をつけられ!?
Amazon内容紹介より。 コメディを多分に含んだファンタジー。魔法使い、冒険者、アンデッド、魔王討伐と一般的なラノベの定型を踏襲した極々ありきたりなファンタジーです。どこがどう受けたのか、Amazonでは完結編の17巻まで評価が800以上付いていて、いずれも高い評価が下されています。私にはありふれたラノベとしか思えませんが、その道の読み手には琴線に触れるものがあったのでしょう。全く理解不能な世界ですね。 主人公は引き籠りの佐藤和真。彼は少女を助けた代償に自身がトラクターに引かれて亡くなります。死後女神に天国を選ぶか、生き返りをを目指して魔王を討つ道を選ぶか選択を迫られます。後者を選んだ和真はその女神と共に二人の少女とパーティーを組み、冒険の道に足を踏み出すというお話です。 「ぱんつ返してください」のシーンは良かったですが、キャラもそれほど立っているとは思えませんし、ストーリーも物珍しいものではありません。和真の内面を抉っているとかもないです、どこを取っても平凡としか言いようがありません。世の中何が当たるか分からないですね。 |
|||
| No.1998 | 6点 | ハウスメイド- フリーダ・マクファデン | 2026/04/14 22:03 |
|---|---|---|---|
| 前科持ちのミリーが手に入れた、裕福な家庭でのハウスメイドの仕事。だが、この家は何かがおかしい。不可解な言動を繰り返す妻ニーナと、生意気な娘セシリア。夫のアンドリューはなぜ結婚生活を続けていられるのだろうか? ミリーは屋根裏部屋を与えられ、生活を始める。しかし、この部屋には……。そして、家族にまつわる真相が明かされるや、それまでに目にしたものすべてがひっくり返る。恐怖と衝撃のエンタメ小説。
Amazon内容紹介より。 内容はなかなかへヴィながら文体はライトで読み易い、一般受けしそうな作品ではあります。私としてはもっとじわじわ来る様なサスペンスを期待していたのですが、恋愛要素もあったりして飽くまで大衆を狙った作風なのがやや残念でした。訳者あとがきにある様に、中盤そう来たかとの感想は全く同感です。流石に予想外でしたが、成程ね、そういう事か程度で、驚くほどではありませんでした。 割と長尺ですが、サクサク読めます。あまり長さは感じさせない面白さがあります。でもこれが本屋大賞第2位だと言われると、そうなのか、これがねえってなります。確かに良作ではあると思います。しかし、やはり翻訳物はこれが限界なのかと私には感じられてなりません。国内作家の手練れが書いたらもっと傑作になっていたのではないかと。続編は多分読まないでしょう。 |
|||
| No.1997 | 7点 | 拝み屋怪談 壊れた母様の家<陽>- 郷内心瞳 | 2026/04/10 22:36 |
|---|---|---|---|
| 高鳥千草の元夫、謙二から娘に亡き妻が憑いたと相談を受けた拝み屋の著者は、さっそく原因の解明に動き出す。その過程で拝み屋の深町と桔梗、占い師の小夜歌、そして霊能師の美琴と浅からぬ縁で繋がり、行動を共にすることになった。一方で、こちらも著者と因縁深い老姉妹の一団が、ある“神さま”を目覚めさせようと暗躍していた……。過去と現在の点と点が線になり、膨れに膨れ上がった災禍の核心に迫る、シリーズ最終巻!
Amazon内容紹介より。 正直、色々起こり過ぎて何を書いてよいのやら分りません。大筋は内容紹介の様に、椚木家の生き残りの謙二の娘に妻の千草が憑依したのを祓うべく、画策する拝み屋郷内。行動するうちに仲間が増えチームを結成します。一方シロちゃんの成れの果てが神様だと主張し復活の儀式を行う、怪しげな霊能者の一味が暗躍します。そして運命の糸で結ばれた両者が激突します。 本書の激流の如き紆余曲折に翻弄されながら、何とか話に付いて行くのがやっとだったのが、最終盤の異能者と、命を落としながらもその霊力は衰えない老姉妹とある重要な人物との激闘に痺れました。 まさに拝み屋率いるアベンジャーズと言えるでしょう。ここにアノ人がいないのは非常に残念ですが、過去のエピソードが語られるシーンに登場しているので良しのしましょう。それと前作に書いた『来たるべき災禍』を世事前に読むべきかどうかについては、とても微妙なところで、気にしなければ気にならないと思いますが、読んでいた方がよりストーリーに入り込めるのは間違いないと思いますね。 |
|||
| No.1996 | 7点 | 拝み屋怪談 壊れた母様の家<陰>- 郷内心瞳 | 2026/04/06 22:25 |
|---|---|---|---|
| 昔、ある人が言った。呪いや祟りに期限など存在しないと。またある時、別の人がこう言った。人は自らの意思で、願いで、欲望で、神を造りあげることができるのだと――。10月半ば、拝み屋を営む著者の許に、電話で一件の相談依頼が舞い込んだ。依頼主は高鳥謙二。謙二は11年前、大きな災いにまつわる相談をしてきた女性で今は亡き、高鳥千草の元夫だった――。全てが終わったはずの忌まわしき災禍が、再び息を吹き返す……。
Amazon内容紹介より。 本作は『花嫁の家』に収められた『母様の家』の続編の様なものなので、そちらを先に読まないと人物相関図が十分に理解出来ない為、順序を踏んで読み進めるのは必須だと思います。『来たるべき災禍』の加奈枝は少しだけ出て来る程度なので、読まなくても支障はないでしょう。ただこれに続く<陽>の方はまだ分かりません。 この作品に対してこんな言い方は不謹慎かもしれませんが、エンターテインメントとして優れていると思います。怖さはそれ程でもありませんが、とにかく面白いです。特にシロちゃんの章は琴線に触れるものがありました。このエピソードがどう物語に影響して来るのか、最初はさっぱり理解出来ませんでしたが、後々効いてきます。前作と違って話が動くのがスピーディーで、各シーンの切り替えが早いので話がどう転ぶのかが読めません。まずはこれにて役者は揃い、プロローグはこれで打ち切りと云う訳でしょう。本書の真価は次巻で発揮されるものと思われます。それにしても途中意外過ぎる事実が明かされ、そんな筈はないと個人的に非常に驚かされました。 |
|||
| No.1995 | 6点 | 拝み屋怪談 来たるべき災禍- 郷内心瞳 | 2026/04/04 22:32 |
|---|---|---|---|
| 虚実の境が見えなくなってしまった時、人にとってあらゆるものが、怪異となり得る危険を孕んでしまう――。現役拝み屋が体験した現世のこととも悪夢とも知れない恐るべき怪異。すべてのはじまりは20年以上前、ある日曜日の昼下がりに出会った一人の少女だった。その少女、14歳の桐島加奈江は果たして天使か怪物か、それとも……!? 訪れた災禍を前に恐れおののく一方で、必死に解決を図ろうとする拝み屋の衝撃実話怪談!
Amazon内容紹介より。 『壊れた母様の家<陰>』『壊れた母様の家<陽>』を読むには本作を読んでおいた方が良いとの意見がSNSで幾つか見られましたので、『花嫁の家』の再読と共に漸く読了しました。正直、今のところ別に読まなくても良かったのではないかと思っています。まあ取り敢えず先に進んでからその結果も書きたいと考えているところです。 さて本作は拝み屋郷内心瞳自身が体験した怪談であり、彼自身の物語でもあります。著者の心の中に棲み付く桐島加奈枝は果たして幻想なのか、実像を持った何かなのかが最初から最後まで延々と描かれています。郷内が様々なシチュエーションで加奈枝に救われたり、危険な目に遭わされたりと敵か味方かも判然としません。その中で彼は模索し煩悶します。こんな辛い目に遭いながら拝み屋など出来ないとまで思い詰めます。読者もそんな彼の心の揺らぎを嫌と言う程追体験することになります。箸休め的に他のサイドストーリーも少しは味わいたいものですが、それは叶いません。拝み屋の心の内を赤裸々に描いている為、読み手側も心理状態が不安定になりそうです。なかなか冷静ではいられない陰隠滅滅たる心境になりたい方にはお薦めしますが、気軽に読書を楽しみたい方には決してお薦めしません。 |
|||
| No.1994 | 6点 | もののけ本所深川事件帖 オサキ つくもがみ、うじゃうじゃ- 高橋由太 | 2026/03/30 22:42 |
|---|---|---|---|
| 『このミステリーがすごい! 』大賞シリーズ。大人気の妖狐オサキ・シリーズ最新刊。今回は主人公・周吉が奉公する古道具屋の鵙屋に棲む“つくもがみ"たちが、オサキと本所深川を大暴れします。辻斬り事件が相次ぐなか、鵙屋から妖刀がなくなる。店に棲む付喪神たちは、身の潔白を証明すべく下手人捜しに乗り出した…「絵猫」。親方に勘当された簪職人の鶏太は、簪を刀と交換していった。しかし簪が包んであった木綿は、付喪神の一反木綿で……「一反木綿」。ほか、オサキが家出する「唐傘小僧」、番頭の初恋「小桜」の全4話を収録。
Amazon内容紹介より。 オサキシリーズ第五弾。今回は趣向を変え短篇集となっています。まあしかしこの作者の描く文章は一定のリズムがあって非常に読み易いですね。時代小説なのにそれを全く感じさせません。ただ、周吉とオサキ以外のシリーズの顔ぶれがほとんど出て来ないのがやや不満ではあります。お琴すら全然です。 さてこの作品、意外とミステリに近い内容でありそれぞれテーマが違っていて、付喪神、もののけが主役という訳ではなく、飽くまで人間の心の深奥を突いたものになっています。『猫絵』は江戸の本所深川で起こる連続首切り事件。大袈裟に言えばフーダニット、ホワイダニットもの。『唐傘小僧』は最も長く中編に近い人情話+ホワイダニット。『小桜』は最後の二段オチに意表を突かれます。『一反木綿』はあの鬼太郎が乗った空飛ぶ木綿が登場。叙述トリックが意外性を演出しています。 |
|||
| No.1993 | 6点 | 大好きな人、死んでくれてありがとう- まさきとしか | 2026/03/28 22:40 |
|---|---|---|---|
| 解散した男性アイドルグループの一員、南田蒼太が何者かに殺された。
北海道Y市の廃ホテルで、めった刺しの遺体で発見されたのだった。 メディアは騒ぎ立て、警察は地道な捜査を開始する。 事件当夜に南田と会った同じ職場のパート女性、グループの元メンバーたち、十代で孤児となった南田を引き取った伯母とその娘……。 誰もが昏い秘密を抱えるなか、驚愕のラストが待ち受ける傑作ミステリ。 Amazon内容紹介より。 本を選ぶって本当に難しいんだなあ。第一章を読み終えた段階では、何これ無茶苦茶面白いじゃんと思いました。第二章もそれなりの出来でこれは傑作かも?となりましたが、その後トーンダウンして行きあーあやっぱりこんなものかという感じに。章ごとに視点が変わり話は拡散していきます。頭を整理するのに若干時間がかかりました。殺された南田蒼太の関係者が絡み合い、イヤミスの様相を呈して、かなり異色なサスペンスと云った印象になり、どんどんミステリと離れて行ってしまいます。 帯の惹句「驚愕のラスト」とはどれを指しているのでしょうか。何かしらのどんでん返しがあると思ったら大間違いでした。そうした出版社の戦略に見事に嵌ってしまった私が悪かったのです。まあ面白かったとは言えますが、期待を超える事はありませんでした。もう少し構成を変えるなり見せ方を工夫すれば、もっと秀作になったかも知れませんね、残念でした。 |
|||
| No.1992 | 6点 | 死の絆 赤い博物館- 大山誠一郎 | 2026/03/25 22:54 |
|---|---|---|---|
| コミュ障でニコリともしない美貌の持ち主、犯罪資料館館長の緋色冴子警視。過去の事件の遺留品や証拠品、捜査資料の不審な点を鋭く見抜き、部下の寺田聡と共に再捜査に乗り出すが……。
著者渾身の力で紡がれた6篇をぜひ、ご堪能ください。 「普通の上司のようにあれこれ喋りかける必要がないので、気が楽」という聡と、訊き込みを強引に終わらせるクセが抜けない冴子の(息ぴったりの?)コンビは健在です! Amazon内容紹介より。 如何にも玄人受けしそうな、凝ったパズラーの好編がラインナップ。 どれがと云うのではなく、どれも一定の水準をクリアしていて、しかも趣向を変えた作品ばかりで読者を飽きさせません。寺田聡と共に聞き込みに参加するようになったコミュ症の緋色冴子は相変わらずのクールぶりを発揮し、いかなる場面においても沈着冷静でスタンスを変えることはありません。これは一つの大きな武器でしょう。たまには焦る緋色、驚く緋色を見てみたいと望むのは私だけではないと思います。 そんなシーンが少しだけ見られるのが若き日の緋色冴子を描いた『春は紺色』ですね。ちょっとだけ意表を突かれています。それだけ意外だったんですよ。 人並由真さんが触れられている様に、あとがきが又ふるっていて楽しいです。其々の短編のジャンル分けに於いて、国内外の作品を引き合いに出して、タイトルをもじった元ネタを明かしたりしています。採点は厳しめですが、佳作揃いでトリッキーな作品集です。 |
|||
| No.1991 | 7点 | スノウマンの葬列 真々部律香の推理断章- 麻根重次 | 2026/03/23 22:21 |
|---|---|---|---|
| 「令和の御手洗潔、推参」(ただし、ややメンヘラ)――中山七里(作家)
(島田荘司氏のシリーズ名探偵) 異様な死体、密室殺人、謎の暗号…… 女性探偵・真々部律香の〝推理無双〟! Amazon内容紹介より。 第一話を読み終えた時はときめきました。この表題作は点数で言えば8~9点。この分で行くと本作はとんでもない傑作になるだろう。そして最終話の『初めては毒殺』が又素晴らしく、こちらは7~8点。しかし他の二話が私のあまり好きではないジャンルのアリバイと暗号を扱ったもので、内容はイマイチ。第四話に至っては何これ?って感じで、全くもって凡作と言わざるを得ない出来であります。 私は悩みました。果たしてこれを6点にして良いのかどうか・・・考えた末7点にしました。余りにも一話目と五話目が突出しているので、これだけでも読む価値ありだとの思いからの結論でした。 探偵の律香は躁うつ病を抱えながら苦悩するタイプの天才型で、確かに御手洗潔に似ている面もない訳ではありませんが、個人的にはあまり好感が持てませんでした。それよりも助手の達希の苦労に同情を禁じ得ません。他のキャラも含めてそれぞれ個性的で面白いので、この四人のメンバーでのシリーズ化も十分あり得ると思います。 |
|||
| No.1990 | 7点 | 冷蔵庫婆の怪談- 大島清昭 | 2026/03/21 22:28 |
|---|---|---|---|
| 地方に住む小学生の間でかつて流行していた“冷蔵庫婆(れいぞうこばばあ)”の怪談。それを模倣したような、連続児童殺害事件が発生する。被害者たちの遺体は異様な状態で冷蔵庫の中に遺棄されていた。民俗学のフィールドワークの手法を用いて怪談を執筆する作家・呻木叫子(うめききようこ)は警察から捜査協力を要請されるが……表題作のほか、大足様(おおあしさま)と呼ばれる神の祟りで、娘が二十五歳になると必ず自殺してしまう蘆野(あしの)家のおぞましい秘密に迫る「蘆野家の怪談」など、四編の本格ミステリ×怪異譚を収録する。
Amazon内容紹介より。 全体的にホラーと本格ミステリを上手く融合させています。 第一話『ハザコ男の怪談』と第二話『蘆野家の怪談』はどちらも非常に謎めいた怪異譚は魅力的で惹き付けられるものがありますが、解決編となるとかなり拍子抜けです。『ハザコ男』の首の切断の理由はありふれたものであり、しかも何故そこまで推理できるのかが読み手としては解りません。一方『蘆野家』の密室殺人は私でも想像出来た単純なトリックであまり感心しませんでした。 更に第三話の表題作に至っては謎だけばら撒いて、何も解決していないじゃんと業腹ものです。しかし、最終話『満月館の怪談』ですとんと腑に落ちる見事な真相を呻木叫子が開示し評価は大幅にアップしました。私としては成程と大きく肯かざるを得ない結果に。なかなかやりますな、結局怪談もミステリも楽しめて、一粒で二度美味しい作品集なのでした。 |
|||
| No.1989 | 5点 | 大サービス- 評論・エッセイ | 2026/03/19 22:31 |
|---|---|---|---|
| ハラダ家はなぜビーチサンダルがふえるのか? ハラダはこだわる。ハラダはウンチクする。ささやかなこと、大事なこと、みんなまとめて大サービス。買って納得、読んで満足。気前のいいエッセイ。
Amazon内容紹介より。 CanCam始め様々な雑誌に掲載された、原田宗典のエッセイ集。 何が大サービスなのか判りませんが、イマイチ笑えません。こうした何かに特化したエッセイでない場合、読者に笑ってもらってなんぼだと私は考えますので、その意味では優れているとは言えません。例えば貰ったサボテンに名前まで付けて話しかけたりして可愛がっていたのに、結局腐らせてしまった話とか、4歳の娘がリップクリームを塗るまでの顛末など、心に残るものもありました。私の好きな映画監督、フランシス・コッポラの話もちょっとだけ出てきて嬉しかったのも事実。 だから、そうした当方の琴線に触れる話題がもっとあればなあと言うのが正直なところ。娘の話がもっと収録されていれば合格点だったと思いますが。しかし幼い子供の考える事は摩訶不思議で、美味しいのにカエルは食べないものはなあに?という娘の出したクイズにトイレで考え込む原田の姿は流石に笑えました。その答えは・・・まさに不条理の世界でした。 しかし、原田宗典と云う人は真面目なんだろうなと実感しました。一つひとつのエッセイに著者の実直さが透けて見えてしまってるんですよ。 |
|||
| No.1988 | 6点 | MM9 destruction- 山本弘 | 2026/03/17 22:55 |
|---|---|---|---|
| 地震、台風などと同じく自然災害の一種として“怪獣災害”が存在する現代。有数の怪獣大国である日本では、気象庁内に設置された怪獣対策のスペシャリスト集団“特異生物対策部”略して“気特対”が、日本を守るべく昼夜を問わず駆けまわっている。スカイツリーを襲った宇宙怪獣を辛くも撃破してから二日。一騎と亜紀子、そしてヒメは茨城県内のとある神社に護送された。そこで出会った美少女巫女・ひかるは、ヒメとの意外な関係を明かす。一方、日本近辺では透明怪獣が次々と出現。その裏には、地球侵略を企むチルゾギーニャ遊星人の恐るべき目論見があった。果たして一騎たちは、最強の宇宙怪獣を迎え撃てるのか? 本格SF+怪獣小説・『MM9』第3部!
Amazon内容紹介より。 うーん、しかしここのところの花粉で鼻がムズムズして集中できませんでした。 シリーズ三作目ですが、二作目を飛ばして読んだので、あちこちで疑問符が頭の中に浮かんでしまいました。序盤、宇宙論や量子力学、神話等どうでも良いから早く気特隊を出してくれと思いながら読んでいましたが、その肝心の気特隊は脇役で最後にちょっと活躍する程度です。主役は案野一騎(誰やねん)で、重要な役割を果たすヒメの事は一作目である程度知識があったので、何とかなりましたが。それにしても、間に何があったのかさっぱり分からず、全く違う話を読んでいる様な感覚が常に拭えずに終わってしまった感じでした。 SFとしてよりも怪獣小説として楽しめました。特に最後のクライマックスであある怪獣大決戦みたいな描写は迫力がありなかなかの読み応えでした。それにしても気特隊は仕方ないとしても自衛隊にはもう少し活躍して欲しかったですね。でもヒメを復活させるための作戦は成程と思いました。 いずれにしてもいつかはシリーズ第二弾を読まなければ気が収まらないと言うか、やはり飛ばして読んだのは失敗だったとかなり後悔しています。 |
|||
| No.1987 | 6点 | 水の迷宮- 石持浅海 | 2026/03/13 22:36 |
|---|---|---|---|
| 三年前、不慮の死を遂げた片山の命日に事件は起きた。
首都圏の人気スポット・羽田国際環境水族館に届いた一通のメール。 そして、展示生物を狙った攻撃が始まった。姿なき犯人の意図は何か? 自衛策を講じる職員たちの努力を嘲笑うかのように、殺人事件が起きた! ――すべての謎が解き明かされたとき、胸を打つ感動があなたを襲う。 Amazon内容紹介より。 手堅い文章で描かれる、水族館を舞台にしたある長い一日の出来事。決して派手ではありませんが、謎が多くて興味深く読み進められます。プロットもよく考えられていると思います。しかし気になる点もあります。現実ではあり得ない、不審死を警察に通報せず内部で解決しようとする姿勢がまず問題ですね。他にも○○と●●との繋がりが有機的でなく、偶然に過ぎるなども何故?と思います。 本作では探偵役が不在かと思わせて、徐々にその姿を現すと云うパターンを取っています。細かい伏線を回収して推理される真相は見事で、素人探偵とはとても思えません。全体的に飽きさせず、面白く読めるのは間違いありません。感動できるシーンもありますが、何か一つ突き抜けているものに欠けるので、どうしても地味な印象が拭えません。ただ事件後も未来に向かって歩もうとする水族館の職員たちの姿勢に心動かされ、余韻の残るエンディングは忘れがたいものがありました。 |
|||