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[ 本格/新本格 ]
赤死病の館の殺人
森江春策シリーズ
芦辺拓 出版月: 2001年07月 平均: 6.29点 書評数: 7件

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光文社
2001年07月

光文社
2005年04月

No.7 7点 人並由真 2022/05/09 14:22
(ネタバレなし)
 外出したので、電車の中で読む。
 表題作は、「宝石」時代の新人パズラー作家の野心作を思わせる外連味とときめきがいっぱいで、実に魅力的な一編。トリックやギミックも正にそんな感じだった。(犯人の隠し方は、けっこうギリギリな気もするが、サプライズ効果としては真っ当ではあろう。)

「疾駆するジョーカー」はシンプルな組み立てながら、完成度の高い作品。読者(評者のような)のある種の盲点をついた狙いが効果を上げたといえる。

「深津警部の不吉な赴任」
 これもトリッキィな一編。ただしネタの一角は、これに先行する新本格の某有名作を想起させる。まあこういう形で再使用? するのもアリか。

「密室の鬼」
 いちばんオーソドックスな短編(中編?)パズラーで、手堅く? まとめた印象(フィクションのパズラーとしての強引さは感じないでもないが、そこはご愛嬌の範疇)。これはこれで楽しめた。

 以上4編、評者が作者の中短編集を読むのはこれが初だと思うが、予想以上に面白かった。
 カッパ・ノヴェルズ版のあとがきで、中編パズラーというミステリの形質について語る作者のご意見はいちいちごもっとも。このメイキング記事も含めて、この評点で。

No.6 6点 nukkam 2021/05/09 23:10
(ネタバレなしです) 2001年発表の森江春策シリーズ第2短編集です。趣向を凝らした本格派推理小説の中短編4作品が収められていますが、光文社文庫版で150ページ近い中編の「赤死病の館の殺人」はトリックが印象的ですけど目撃者が気づかなかったというのはどうも信じにくいですね。あと謎解き議論の中で森江が「いただけない」と却下した推理の説明が中途半端。先人トリックのネタバレに配慮したのかもしれませんが、「星影龍三」を引き合いに出しているだけでは置いてきぼりの読者も多いのではないでしょうか。(エラリー・クイーンの某作品を意識した?)締め括りの説明も読者に対してちょっと不親切な気がします。個人的なお気に入りはプロットの独自性が光る「深津警部の不吉な赴任」です。

No.5 5点 makomako 2019/09/14 07:54
 芦部氏の作品は古典的ミステリーのオマージュや続編のようなものなどが多く、本格物が好きな私にとって気になる作家さんです。
 作品そのものも意欲的なものが多い。本作品もお話の初めは実に興味深いものがそろっておます。
 奇妙なお話、不可能と思われる密室事件など興味が尽きません。
 そういった期待を大いに抱きつつ読んでみると、多くが拍子抜けだったりああこれはめちゃくちゃですといった感じになってしまいます。
 本格推理としてそれほどいけないわけではないのに(密室の鬼はいけないですが)もう一つと感じるのは、多分お話のプロットは良いのだが肉付けがダメなせいではないかと思っています。
 不可能犯罪のようなお話が提示され、森江探偵が快刀乱麻を断つように解決するといった構成は実に正当なのですが、その間の人間味のある機微が希薄なため算数の答え合わせのようなのです。
 本格推理のお話としては良さそうなのですから、もうちょっと何とかならないかなあ。
 なお本作品の最後に少女漫画のような森江探偵と新島ともかさんのイラストがのっています。森江探偵は背が低く足が短く髪がくちゃくちゃでだらしなくてさえないイメージで描かれていると思うのですが、こんな足が長くてスマートな少女漫画的イメージでよかったんですか?

No.4 7点 2010/11/01 10:15
「密室の鬼」を除く「赤死病の館の殺人」「疾駆するジョーカー」「深津警部の不吉な赴任」の3作品は標準以上、むしろ良質といえるでしょう。
表題作は、トリックはいくらなんでもそれはという感じもしますが、伏線はいいですね。長年ミステリを読んでいて、この伏線でピンとこないのが情けない気もしますが(笑)。
「疾駆するジョーカー」は、ストーリーもトリックも非常にシンプルで素晴らしい。
「深津警部の不吉な赴任」は話の流れがよく、ストーリーとトリックのバランスもよく、多くの人に喜ばれそうな作品だと思います。
「密室の鬼」はちょっと混乱しそうですね。自分にはあまり向いてなかったようです。

短篇好きには、この上ない作品集でした。

No.3 8点 シュウ 2008/11/04 00:43
実は表紙がちょっと不気味でずっと積んでたんですが、いざ読んでみたらかなり面白い短編集でした。

「赤死病の館の殺人」 まあ確かにトリックはあんまりですが、古き良き探偵小説好きな自分としてはポーの赤死病の仮面を彷彿させる世界観で新島ともかがメインな話というだけで満足です。ただ長編ならもっと隙のない面白い話になったのかなと思うと少し残念。
「疾走するジョーカー」 犯人がまるで我孫子武丸の作品に出てきそうな感じのサイコさんで怖いです。
「深津警部の不吉な赴任」 ちょっとアレな感じのオチはともかく全体的にユーモア溢れる話で本書で一番好きな作品です。
「密室の鬼」 なんか電波っぽい博士が登場したあたりからごちゃごちゃしてきて訳分からなくなってしまった。森江春策の出番も最後の方だけだしあまり好きな話ではなかったです。

No.2 4点 イッシー 2008/02/20 00:02
一番よかったのは「密室の鬼」
それ以外の作品はいろいろと疑問が残った。

No.1 7点 ギザじゅう 2004/09/12 16:23
表題作はポーを元にしながらも、現代に赤死病を復活させた手腕には驚き入る。この様に色彩的(映像的)に印象の強い話は大好きである。トリックには多少疑問が残るが、中編というサイズに上手くまとまっている。
「疾走するジョーカー」は、スマートで切れのいいトリックに、現代の青少年の犯罪をからめたパピッとまとまった好短編。ついにこの様な犯人像を描いたか、芦辺さん。
「深津警部の不吉な赴任」は意外な犯人。この様なトリックはあまり好きでないし、よい効果を挙げているかも疑問。
「密室の鬼」は「困難は分割せよ」のよい見本のような作品。あまり好きな話でもなかったが、ラストのくだりは密室ミステリの現状を捉えているようで面白い。
非常に良質の短編集。「探偵宣言」の様な、ごちゃごちゃした感じもなく、ストーリーテリングも上手くなったと思う。


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