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[ ホラー ]
奇譚を売る店
芦辺拓 出版月: 2013年07月 平均: 6.00点 書評数: 4件

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光文社
2013年07月

光文社
2015年12月

No.4 5点 E-BANKER 2020/03/28 21:22
~「また買ってしまった」。何かに導かれたように古書店に入り、毎回本を手にして店を出てしまう「私」。その古書との出会いによって「私」は目くるめく悪夢へと引きずり込まれ、現実と虚構を行き来しながら、背筋を寒からしめる奇妙な体験をしていく・・・~ということでビブリオミステリーかな?
「小説宝石」誌に2011年から2013年にかけて連載された連作短編集。単行本化は2013年。

①「帝都脳病院入院案内」=いきなり不穏なタイトルから始まる冒頭の一編。明治時代の精神病院という設定からして怪しい匂いが・・・。やがて書物の中と現実がクロスしていき・・・
②「這い寄る影」=戦中戦後に活躍(?)した探偵小説作家が残した「這い寄る影」。それを手に入れた「私」は作品の中に奇妙な影を発見する・・・。いかにもこの時代の作品っぽい雰囲気がうすら寒い。
③「こちらX探偵局/怪人幽鬼博士の巻」=これはもろに乱歩の「少年探偵団シリーズ」を意識しているのだが、主役は明智的名探偵ではなく、小林少年的少年探偵。なのだが、この「少年探偵」には大きな謎があった。
④「青髯城殺人事件 映画化関係綴」=何十年も前に公開されるはずだった映画が「青髯城殺人事件」。何十年も前なのに、キャストのひとり、若く美しき女優が目の前に姿を現す! ラストには別の角度からサプライズが!
⑤「時の劇場 前後編」=古書オークション会場で巡り合った「時の劇場 前編」。後編を捜し歩く「私」の前にはいくつもの障害が現れる。やっとのことで手に入れた「後編」なのだが、めくっていくと・・・あれ!?
⑥「奇譚を売る店」=連作の仕掛けが判明する最終編。なのだが、何となくスッキリしない幕切れ。

以上6編。
ファンタジーのような軽いホラーのような、ジャンル分けが難しい作品。
すべての作品が主人公の「私」が引き込まれるように古書店で買ってしまった一冊の本から始まり、やがて奇妙な体験に導かれる・・・まさに「奇譚」。
最近こういう風味の作品も結構増えてきたような気もするけど、作品世界に浸れるかどうかで本作の評価は変わってくるだろう。
私はって? う~ん。それほどでもない・・・って感じかな。
⑥で判明する仕掛けも今ひとつだったしな。

No.3 6点 まさむね 2019/11/10 22:22
 奇妙な読み味の連作短編集。全短編が「また買ってしまった」で始まるのも印象的です。確かに、古書や古書店そのものが幻想的な空気感を持っていますし、その辺りを巧く活かした作品集と言えましょう。雰囲気もあって好きなのですが、最終話だけは、ちょっと蛇足感が残ったかな。

No.2 7点 メルカトル 2018/10/29 22:23
「また買ってしまった」。何かに導かれたかのように古書店に入り、毎回、本を手にして店を出てしまう「私」。その古書との出会いによって「私」は目眩く悪夢へと引きずり込まれ、現実と虚構を行き来しながら、背筋を寒からしめる奇妙な体験をしていく…。古書蒐集に憑かれた人間の淫靡な愉悦と悲哀と業に迫り、幻想怪奇の魅力を横溢させた、全六編の悪魔的連作短編集!
『BOOK』データベースより。

正直、以前からこの作家の文体は私には合わないと感じていましたが、本作はそういったことを抜きにして率直に面白かったです。キワモノと勘違いされそうな雰囲気ですが、決してそうではありません。
レトロ感を漂わせながら、古書を巡って現実と虚構が交錯する、眩暈のしそうなホラー要素を多分に含んだ幻想小説となっています。ミステリの要素も幾分内包していますので、なかなかにジャンル分けの難しい作品だと思います。

ジオラマの中で起こる殺人事件、何十年も歳を取らない少女、小説の中に取り込まれる作家、古書の入札大会にて起こる奇妙な偶然など、何とも言えない不思議な現象が虚々実々のうちに次々と現れます。
が、不可解さを残しつつもミステリ作家らしく、着地すべきところにちゃんと落ちますので、単なる幻想小説とも言えない部分があります。
まさに奇譚、古本屋を愛する方々にはより共感できる内容となっているのは当然ながら、一般読者にもこの隠れた名作(迷作?)を存分に味わっていただきたいものです。

No.1 6点 2017/09/03 18:28
6編からなる連作短編集です。すべて「―また買ってしまった。」の1文から始まる一人称形式作品で、古本屋で買った本や資料綴をめぐって異常な出来事が起こるという内容です。ミステリ的な謎解き要素もありますが、どの作も幻想ないしホラーな結末となります。また最初の『帝都脳病院入院案内』からして、メタっぽいところがありますが、最後の表題作は、それまでの収録作について「妙に既視感があった」とか「とりとめがない」とか作中の「私」を通して自己批評までしてくれて、このあたりはさすがに苦笑もの。
 既視感と言うより懐かしいレトロ感のある文章や全体的雰囲気は、けっこう気に入りましたが、後半はちょっと無理筋も目立ちます。
 なお、『青髭城殺人事件 映画化関係綴』では、この作中ミステリ、『堂廻目眩』と並ぶ戦前二大奇書の片割れと説明されているのですから、『黒死館殺人事件』を念頭に置いたものでしょう。


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