皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ] 異常【アノマリー】 |
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エルベ・ル=テリエ | 出版月: 2022年02月 | 平均: 7.25点 | 書評数: 4件 |
早川書房 2022年02月 |
早川書房 2024年12月 |
No.4 | 4点 | HORNET | 2023/05/14 19:01 |
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うーん…
非常に特異な作品であり、特に前半は読者をひきつける展開なのはわかる。ただ、それを受けての後半、そして物語の落とし方が正直退屈であり、消化不良だった。 前半は、起きた出来事の概要を知るにつけがぜん面白さが増してくる。こちらとしては、それを後半どのような「返し」で着地してくれるのかを期待していた。だが、結果としてこの出来事に遭遇したそれぞれ人々のパターン(いわゆる「マーチ」の方の自分が死んでしまった人、恋人との間が進展していた人、逆に恋人と別れていた人、など)ごとに、「その後」を淡々と描いて終わってしまっていた。 読解力が高い方や見識の深い方は、そこに「深遠さ」をいたく感じて面白いのかもしれないが、単純に「ミステリ」を期待している小生にとっては消化不良の感が強かった。 ここまでお三方の評価平均が非常に高く、低評価をすることに抵抗感もあったが、本サイトの趣旨(様々な見方や嗜好のミステリ読みが集う)を踏まえ、忖度なしで率直な思いで評価した。 |
No.3 | 8点 | YMY | 2023/03/08 22:40 |
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奇妙な状況に遭遇した人々を多彩な文体で描き出す、風変わりな群像劇だ。
殺し屋に小説家、弁護士に女優に建築家。様々な客を乗せて、旅客機はパリから飛び立った。だが、目的地ニューヨークの近くで、異常な乱気流に巻き込まれる。 第一部では年齢も職業も多様な人々のそれぞれの事情が、おのおの個性に合わせた文体でつづられ、その人々を乗せた旅客機がどんな事態に遭遇したのかが語られる。第二部以降では、人々が事態に対処し、それぞれの決断をくだす様子が描かれる。語りの順序にも工夫を凝らし、所々に遊び心のある仕掛けを配し、多様な人々のドラマを描き出す。 予備知識を仕入れずに読みたい、企みと仕掛けに富んだ小説だ。 |
No.2 | 8点 | 人並由真 | 2022/09/19 15:21 |
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(ネタバレなし)
2021年3月。ニューヨークに向かうエールフランスの旅客機006便。長距離航行歴およそ20年のベテラン機長が操縦するその機体ボーイング787には、200人以上の乗員乗客が乗っていたが、同機は目的地に近づいたとき、乱気流に巻き込まれる。やがて機体はニューヨークの空港に着陸したが。 2020年のフランス作品。 本サイトのtake5さんがご投稿されたレビューの高評と、Amazonのレビュー数の多さなどから感じられる話題性、さらには海外での受賞の実績、日本の書評家の推薦文などから興味が湧き、自分も読んでみた。つまりは全くのフリの読書。 級数も大き目な活字、平明な訳文でリーダビリティは高いものの、紙幅400ページ以上はちょっとカロリーを使うな、と思いながら読みすすめる。すると前半のヤマ場で、息を呑んだ。ああ、こういう作品か。 (多少なりとも関心がある方は、とにかくネタバレにならないうちに、さっさと読んでしまうことをお勧めする。) で、一晩で貪るように全編を読み終えて思うのは、まぎれもなくスゴイ作品であることを認めるのにやぶさかでない一方、そのショッキングな大ネタそのものは使い古されたものだろうということ。たとえば評者などは、すでに物故した日本の某・大人気少年マンガ家(世代を超えて今でも著作は読み続けられている)の某短編なども想起した。 要は主題そのもののインパクトや革新性ではなく、その食い込み方、扱いにおいて勝利した一冊だが、それにしても21世紀らしい新奇な作法論は特に感じられず、80年代からのニューエンターテインメントなども含む文芸観のその延長性の累積の末に生まれた作品という感触だ。 言い換えるなら古い革袋に新しい酒を盛ってそれがとても美味しかった作品だが、一方で評者のようなわがままな読者の不満をあえて語ると、この味、実においしいんだけど、なんか良くも悪くも見知った触感の集大成みたいな舌ざわりだなあ、というか。 いや、そこに行くだけでも十分以上に凄いことだとも理解はしているつもりだが。少なくとも後半の、take5さんがおっしゃるその群像劇的な構成の逸話のなかで、こちらをハっとさせたものは、確実にいくつかあったし。 評価はさすがにこの点数の下はつけられないだろう、ということで。 ただし自分の前述の好き勝手な物言いをあまり前に出すと、7点になるかもしれない。今後、評点を変える……かも。 |
No.1 | 9点 | take5 | 2022/08/09 22:56 |
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フランスゴンクール賞受賞作
群像劇 読み手である私達の存在をも 疑わせるミステリー。 個々の(いやここは複数形だった) 人生がクロスして、 また分かれていく様は圧巻です。 ちりばめられる言葉遊びがまた秀一。 設定をとんでもないとは思えない 胡蝶の夢物語。 ニューヨーク・タイムズと一緒で 自分の年度一番でよいかなと、 いやまだ早いか。 |