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YMYさん
平均点: 5.97点 書評数: 414件

プロフィール高評価と近い人 | 書評 | おすすめ

No.414 5点 修道女の薔薇- キャロル・オコンネル 2026/05/11 20:31
他人と心を通わせることを拒む孤高の天才、キャシー・マロリーが活躍するシリーズ。
行方不明の修道女を捜すマロリーは、四重殺人事件に引き寄せられる。同じ頃、修道女の甥である盲目の少年・ジョーナは、何者かに監禁されていた。無関係に見える二つの出来事を結び付ける作者の手際は見事。多少無理は感じるものの、必死に生きようとする少年が魅力的だし、ラストは感動的。

No.413 7点 明日訪ねてくるがいい- マーガレット・ミラー 2026/05/11 20:27
トムは老婦人から元夫を探してほしいと依頼を受ける。トムは殺人事件に巻き込まれながらメキシコで捜索を続けるが、なかなか本人のもとへ行き着かない。しかもその探索行自体がある成果をもたらしていた。
捻りの効いたプロットと、ウィットとユーモアに富む筋運びが小気味いい。

No.412 7点 死はあまりにも早く- ヘンリー・ウエイド 2026/04/29 20:41
ブラックトン屋敷の当主のジョン・ジュロッド大佐は、巨額の相続税を回避するため既に財産の大半を息子のグラントに移管していたが、課税を免れるためには贈与から五年が経過する一九五〇年九月二十五日までは生存していなければならなかった。ところが大佐は主治医から肝臓癌で余命六カ月との宣告を受けた。一族の財産を守るため、大佐が亡くなっても弟のフィリップが大佐に変装して必要な生存期間を経過したと見せかける計画を立てる。
倒叙形式で語られる作品で、犯人側、捜査側双方の動静が逐一詳細に記述される。サプライズを呼ぶミステリ的な仕掛けは特にないが、悲劇的な犯罪小説として十分に読ませる。社会性も色濃く、社会的諸条件の変化が相続税という形をとって世襲財産を解体し、特権階級を没落させる。その時代のうねりの中に発生した一つの悲劇が哀惜をこめて描かれている。

No.411 6点 巡洋艦アルテミス- セシル・スコット・フォレスター 2026/04/29 20:31
枢軸国軍の攻撃により物資不足となっていたマルタ。補給品を運ぶ輸送船団を護送するために英国海軍が派遣できたのは軽巡洋艦と駆逐艦のみ。一方イタリアは超弩級戦艦を含む虎の子の艦隊で襲い来る。
迫力ある戦闘シーンの中に、過酷な戦争の実態と男たちの矜持を、冷徹されど情感豊かに描き出す精緻な筆遣いに胸が熱くなる。

No.410 7点 夜の闇の中へ- コーネル・ウールリッチ 2026/04/14 21:19
ウールリッチの遺作を、欠落していた冒頭と結末部分をローレンス・ブロックが補筆し完成させた。
人生に絶望した孤独な女・マデリンは自殺を企てるが、暴発した拳銃の弾丸は歩道を歩いていた見ず知らずの女に当たってしまう。良心の呵責を感じた彼女は死んだ女の身元を探るのだが、女が愛憎トラブルに巻き込まれていたことを知る。死んだ女の代わりにマデリンは、女が果たせなかった復讐を引き継ごうとするのだが。
ヒロインを駆り立てる動機付けの中に、喪の悲しみが薄く、前半は感情移入がしづらい。しかし後半はウールリッチ節が随所にあふれ、衝撃の結末まで一気に読ませる。

No.409 7点 狂った宴- ロス・トーマス 2026/04/14 21:10
広告代理店に勤めるアップショーは、あるプロジェクトに勧誘するため、腕利きの選挙コンサルタント・シャルテルを訪れる。英国支配から独立することになったアフリカの国アルバーティア。その首相を選ぶ選挙にシャルテルの腕を活かして、ある候補者を当選させようというのだ。
主人公たちの肖像を描き出す序盤こそスローペースに感じられるものの、選挙戦が動き出す中盤以降は、様々な策謀も動き始めてテンポよく読ませる。その中で思惑を抱えた者たちが動き始め、策略同士が絡み合う。入念な人物描写に支えられた企みに満ちた作品。

No.408 9点 ビロードの悪魔- ジョン・ディクスン・カー 2026/03/30 21:17
全編に渡り謎と陰謀、恋と冒険、騎士道と義侠、そして華麗なまでの剣戟の乱舞など伝奇小説に欠かせない要素が渾然一体となって波乱万丈のプロットを織り成し、巧みな語り口で酔わせる。特に剣戟場面は迫力満点。
本書中で意外なトリックが仕掛けられているが、それが伝奇小説のプロットや主人公の過去転送というSF的趣向と有機的に結びついているのは見事というほかない。

No.407 6点 心憑かれて- マーガレット・ミラー 2026/03/30 21:12
主人公のチャーリーは、少女相手の性犯罪の前科があり保護観察中の身だが、小学校の校庭で見かけた少女ジェシーが気になって仕方がない。だが本書は彼の異常心理というよりは、彼と少女を巡る人々の人間関係が主なテーマとなっている。
人間の孤独、それゆえ愛を求めずにいられないが満たされることの少ない人間のありようが描かれ、やりきれないほど重苦しい。

No.406 9点 ナイン・テイラーズ- ドロシー・L・セイヤーズ 2026/03/15 21:36
全編にわたって厳粛な響きを渡らせる八つの鐘は、主人公ピーター・ウィムジイ卿を凌ぐほどに圧倒的で、不気味な存在感を帯びている。
前半は鳴鐘術に関する難解な記述が多く、多少のとっつきにくさはある。それでも物語が進むにつれ、いつの間にか英国の寒村に広がる古色蒼然とした世界へ引き込まれていく。謎解きばかりでなく、重厚な雰囲気や美しい描写もあわせて楽しめる。

No.405 6点 愚か者の祈り- ヒラリー・ウォー 2026/03/15 21:31
ニューイングランドの地方都市で、若い女性が顔を潰され、胴体を切り裂かれて公園に打ち捨てられる事件が発生。被害者の身元を探るために、刑事マロイは上司ダナハーを説き伏せ、頭蓋骨に蠟を盛り付けることで復顔を試みる。
まるで捉えどころのなかった事件を仮説、推論、検証を繰り返して、徐々にその輪郭を明らかにしていく過程が読みどころ。抑制の利いたテンポとは裏腹にサスペンスフルに展開するストーリーに目が離せなくなった。

No.404 8点 罪なき血- P・D・ジェイムズ 2026/02/23 21:14
前半においての謎は、他家の養女となった主人公が実の両親を探し、自分の出世の秘密を探るという形で描かれる。そしてその謎がいったん解決した後、後半は形を変えたもう一つの謎、前半の即物的な謎と違って汎人間的な謎が自然に呈出され、犯行者側の視点からこれを描くクライム・ストーリーもの形式の手法も交えたストーリーがサスペンスたっぷりに展開される。その骨子となる復讐譚はハードボイルドものなら往々に見受けられる類の性質のものである。

No.403 7点 殺人者は21番地に住む- S=A・ステーマン 2026/02/23 21:08
一九三×年の晩秋から冬にかけてロンドンで頻発する強盗殺人事件。被害者は大部分が男性で手口も撲殺、射殺、刺殺とさまざま。そして犯人はスミスなる名刺を必ず現場に残していく。
短い場面転換の歯切れの良さ、洒落た文章、簡潔でセンスのいい会話などに彩られた極めて上質の推理がサスペンスたっぷりに展開され満足。ラストで思いがけない犯人を明快に指摘するが、その指摘の根拠もユニークかつ納得性に富んでいる。

No.402 7点 推定相続人- ヘンリー・ウエイド 2026/02/08 21:12
ユースタス・ヘンデルの遠縁にあたるバラディアス男爵家の相続人ハワード・ヘンデルとその息子が水難事故で死亡し、相続権はハワードの弟の退役大尉デヴィッドと病弱な息子デスモンドに移った。彼等も死ねば爵位と莫大な財産が手に入ると認識したユースタスは、殺害計画を練り始める。
犯行動機の形成と実行の過程、その後の状況への対処の模様が全編を通じてユースタスの視点からじっくりと語られる。事態が推移する中で次第に追い詰められていく彼の焦燥不安が強いサスペンスを生み、最後まで緊張の糸を途切れさせない。

No.401 9点 レベッカ- ダフネ・デュ・モーリア 2026/02/08 21:06
この作品は典型的なミステリではない。物語の大半はロマンスで、ゴシック小説のあらゆる要素が詰まっている。美しい若妻、陰気な年老いた夫、卑しい使用人。そして秘密を閉じ込めた館マンダレイは、荒れ狂う海辺にその姿を見せている。
謎は小説の3/4ほどのところで解明されるが、作者の力はもともとの犯罪の因果関係が明らかになるところで発揮される。殺人が正当化されることはあるのか、という問いや疑問が、この作品の魅力のひとつだろう。

No.400 7点 砂の渦- ジェフリイ・ジェンキンズ 2026/01/19 21:41
第二次大戦期に優秀な潜水艦艦長だったジェフリーが軍を追放されるに至った顛末が現代の活劇行の間に挿入され、全体の四割とかなりの部分を占めるために、興奮が一度トーンダウンするという瑕疵はあるが、異様な迫力と熱気に満ちた冒険譚は、今読んでも充分面白い。特に砂の渦という大自然の猛威に船と人が立ち向かうシーンは圧巻。

No.399 7点 見知らぬ者の墓- マーガレット・ミラー 2026/01/19 21:37
若い人妻が見た不思議な夢の話から始まる。海辺の断崖の突端に立つ墓標に、彼女の名前が四年前の日付とともに刻み込まれていたのだ。
人種差別問題に繋がる家庭の悲劇が謎を構成しており、展開の妙と的確な描写力が優れている。謎めいた各章のエピグラフの意味が、最後に判明する仕掛けも巧妙である。

No.398 6点 人類の知らない言葉- エディ・ロブソン 2026/01/04 21:12
犯人捜しの古典的なプロットを用いた作品である。主人公はテレパシーを用いる異星生命体・ロジ族と地球語の通訳をしている女性。
テレパシーを受けていると、地球人は酩酊に近い状態になる。それで意識を失っている間にくだんの通訳相手が殺されてしまい、主人公に嫌疑かけられてしまう。異種族の接触を描いた作品で、謎を解く鍵が両者の差異の中にあるという展開など、ミステリとSF両ジャンルに目配りした感があって巧い。

No.397 7点 夢果つる街- トレヴェニアン 2026/01/04 21:07
カナダのモントリオール市の下町ザ・メイン。英系と仏系の移民居住区で、まともな住民は出て行ってしまい、老人や貧民、犯罪者ばかり残る街である。
ここをパトロールする中年のラポワント警部補の物語が淡々と綴られていく。動脈瘤を抱えながら、妻に死なれ子供もない寂しい刑事の犯罪者に厳しく、庶民に優しい日常生活が冬の北国の情景と相まってしみじみとした哀感を誘う。

No.396 7点 予告された殺人の記録- ガブリエル・ガルシア=マルケス 2025/12/17 21:19
ある田舎町で一人の男が殺される。犯行は町中で予告されていた上、衆人環境の下で実行された。
非日常を日常的に描く、特徴的なマジックリアリズムの要素もありつつ、物語は実際の事件を基にしており、ルポ的に語られる。真相に迫る中で浮かび上がるのは、古い価値観に縛られた共同体の閉鎖性や民衆の複雑な感情。郷愁を帯びた描写は、確かなリアリティーが感じられる。

No.395 6点 緑の家- マリオ・バルガス=リョサ 2025/12/17 21:15
ペルーの密林地帯と海岸地方の町ピウラを舞台に、砂漠に建てられた伝説的な娼館を巡って、五つのストーリーが交差する。
台詞を起点に時代も場所も全く違うシーンへと切り替えてしまう映像的な手法が非常に効果的に使われている。緻密に計算された構成力もさることながら、現代を生きる都市の住民と石器時代の密林の先住民との物語を語りつつ、ペルーという土地の神秘性や文化の多様さ、そしてそこから生まれいづる社会問題などを描き出す筆力が素晴らしい。

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