皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 本格 ] オクトーバー・リスト |
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ジェフリー・ディーヴァー | 出版月: 2021年03月 | 平均: 6.50点 | 書評数: 2件 |
![]() 文藝春秋 2021年03月 |
No.2 | 7点 | E-BANKER | 2023/03/03 19:08 |
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この物語は第36章から始まる。しかも「逆回し」に!
作者らしい仕掛けに満ちたサスペンス作品。技巧の限りを尽くした作者だからこそ産み出せる作品。 2013年の発表。 ~本書は最終章から始まる。ひとり娘を誘拐され、秘密のリストの引き渡しを要求されたガブリエラ。隠れ家で仲間を待つ彼女がドアを開けたとき、そこにいたのは銃を手にした誘拐犯だった。だがご安心、すべては見かけ通りではない。章ごとに時間は逆行し、真相が明かされるのはラスト2章! 前人未到の超絶技巧サスペンス!~ さすがである。 「騙しのプロ」という称号がこれほど似合う作品もそうそうないかもしれない。 本作は紹介文のとおりで、本当に逆回しで展開される。始まりが金曜日で終わりが日曜日。しかし、物語は日曜日から始まって金曜日へ徐々に遡っていく。 そして、本当にラスト2章でカラクリが明らかになる仕掛け! 今まで信じていた現実がガラガラと音を立てて崩れていき、真の姿が目の前に現れる! これはまぁちょっと誇張しすぎかもしれないけど、「ああ、そうきたか!」って思わず膝を打つような場面が後になってフラッシュバックしてくる仕掛け。これが本作の真骨頂だろう。 ディーヴァーは実際、作品を創作する際に、場面ごとの塊をつくり、それをどういう順序で見せるのが効果的かを熟考するというのを聞いたことがあるが、本作などはまさにその最たるもの。 ただ、やはり分かりにくさはある。逆回しなので、特に中盤は「いったい何を意味しているのか?よく分からん」という場面が頻繁に出てくる。もちろん最終的には理解するのだが、霧の中をさまよいながらの読書になるので、ここで挫ける読者もいそうだ。そういう意味では再読すれば、本作のスゴさも再認識できるのかもしれない(もちろんサプライズ感は全くないけど・・・) いつものリンカーン・ライムシリーズもいいけど、たまに出るノン・シリーズもやはり良い。最近ネタ枯れ気味なのを心配していたが、「やりようならいくらでもあるよ」と反論されたかのようだ。 ということで、個人的には評価したい。 |
No.1 | 6点 | HORNET | 2021/07/31 22:15 |
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ガブリエラは、秘密のリスト「オクトーバー・リスト」と多額のお金を引き換えにと、娘を誘拐された。警察には真相を通報はできない中、協力してくれる仲間と誘拐犯との交渉に。しかし物語は最終章から第1章へ逆をたどっていくという前代未聞の構成で、本事件の真相が時間軸を遡って次々に明らかにされていく。そして最後の(?)第1章―「そういうことだったのか!」
試みとしては面白いが、通常のミステリにおける推理もいわば「起こったことを逆に辿って真相にたどり着く」過程を描いているわけで、それを「推理」ではなく純粋な「種明かし」にしているだけとも言える。細かい展開においていつも結果が先に来て、そこまでの過程がそのあとに描かれるので、単純に読みにくさもあった。 とはいえラストでは、冒頭から見えていたものが全く違った意味をもつように覆され、巧みな仕掛けは作者らしさを感じた。 |