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[ サスペンス ] ヘルズ・キッチン ジョン・ペラムシリーズ |
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ジェフリー・ディーヴァー | 出版月: 2002年12月 | 平均: 5.00点 | 書評数: 2件 |
![]() 早川書房 2002年12月 |
No.2 | 4点 | レッドキング | 2025/07/08 22:15 |
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ジョン・ペラムシリーズ第三作。映画ロケ地スカウトマン・・今回はもっぱらドキュメント映画作家役・・が出会う冒険譚も、前二作の郊外田舎町から、ニューヨーク、それも最も「ヤバイ」地区に舞台が移り、ハードボイルド具合もきつくなる。60年代中頃のボブ・ディラン・・プロテスト・フォークを捨て、熱狂的カトリック信者となる以前、猥雑でダーティなブルース・ロックを唱ってた頃のディラン*・・の詩の如く、シュールに歪んだ光景が気だるく語られる。保険金目当て放火殺人容疑の黒人老女を助くべく、探偵でも弁護士でもないのに、不器用に足掻く映画人ペラム。ライムシリーズのダミー敵キャラに相応しい「放火魔」、Who・Why真犯人キャラ、共和党親玉になる前のドナルド・トランプ**のパロディ(「ド悪役」 と「結構いい奴」配合が5: 5) のキャラなど、適役脇役が読ませてくれる。
*65年の「サブタレニアン・ホームシック・ブルース」は、間違いなく英国パンクの源流。 **まんま、トランプの実名も数か所出て来る。 |
No.1 | 6点 | Tetchy | 2011/08/03 22:14 |
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ジョン・ペラムシリーズ3作目。なんと前作『ブラッディ・リバー・ブルース』から9年ぶりの刊行だ。これほどブランクが空いたのはやはりリンカーン・ライムシリーズが受けたため、そちらにかかりっきりになっていたからだろう。
ディーヴァー初期のシリーズであるこの作品が今や彼の看板作品となったリンカーン・ライムシリーズを経て、どのように生まれかわったのかが興味を惹くところだったが、意外にもディーヴァーはライムシリーズやその他のノンシリーズで売り物にしている息を吐かせぬ危機また危機の連続やタイムリミットサスペンスといったような展開を取らず、このシリーズの前2作同様に主人公のジョン・ペラムがじっくりと訪れた町を彷徨し、町に隠された貌を知っていく作りになっている。登場人物一覧表に記載されてない人物のなんと多いことか。ディーヴァーはそれまでに培った上記の手法を敢えて取らずにシリーズ全体のバランスを優先したようだ。しかしこれはディーヴァー作品を読んできた者にすれば、逆行した形になって不満が残るかもしれない。 でも長らく中断していたこのシリーズが、ライムが異郷の地で捜査をした『エンプティー・チェア』の後にこの作品が書かれたことは興味深い。もしかしたら『エンプティー・チェア』を書いている最中にペラムシリーズとの類似性に気付いたのかもしれない。 これで恐らくこのシリーズは終わりだろう。彼の売れない作家時代を支えたこのシリーズの終焉を素直に祝福しよう。 |