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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ]
スキン・コレクター
リンカーン・ライムシリーズ
ジェフリー・ディーヴァー 出版月: 2015年10月 平均: 6.57点 書評数: 7件

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文藝春秋
2015年10月

文藝春秋
2018年12月

文藝春秋
2018年12月

No.7 6点 レッドキング 2021/03/13 20:04
ライムシリーズ第11弾。今回の敵は、骨執着「ボーン・コレクター」ならぬ、皮への執着「スキン・コレクター」。
被害者に猛毒タトゥー施して惨殺する連続殺人鬼。猟奇行為それ自体のホワイ展開が、他の目的のハウへとツイストするのはいつものパターンたが、そのハウが別のハウへと横ずれし、最後は鮮やかにフーダニットへと収束する。
たーだ、「あいつ」による操りってオマケは、さすがにもうクドくて・・・
※ところでディーヴァー、親「リベラル」ての分かるが、こんな露骨に「宗教右翼」おちょくって、身辺大丈夫か?

No.6 6点 あびびび 2019/12/26 02:23
さすがジェフリー・ディーヴァーと言える面白さだが、過去の作品とほぼ同じ流れ、同感覚のどんでん返し。これを求めて読んでいるのだけど、どこか物足りないのも事実。

しかし、犯人のXがあの人間だと、誰も気づかなかっのだろうか?それが不思議。少し飛ばし気味に読んだ部分もあったので、自分がどこか見落としているのかも?精緻を極める作者だけに、多分そうだろう。

No.5 8点 Tetchy 2019/04/23 23:42
10作目という節目を終え、新たなシリーズの幕開けを意識したのか、本書は題名からも解るように1作目の『ボーン・コレクター』を意識しており、内容も同じくボーン・コレクター事件の影響を受けた犯人との戦いを描いている。まさに原点回帰の1作だ。
ボーン・コレクターは骨への執着が強い犯罪者だった。かつて楳図かずおのマンガでも嫌らしいのは骨の上についている肉で骨こそ美しいと述べていたが、本書のスキン・コレクターはその皮膚に執着する犯罪者だ。

さて今回の敵スキン・コレクターはなんと犯罪実話集でリンカーン・ライムについて語られたボーン・コレクター事件の項目を読み、ライムのことを熟知した敵だ。従って彼はライムが行うであろうことを想定して常にそれを出し抜く。自らの痕跡を完全に消し去るのは無論の事ながら、アメリアがするであろう証拠品の検めを想定して毒入りの針を仕込むという罠を仕掛けたりもする。更に大胆にもライムのアパートメントに忍び込み、毒入りのウィスキーを置いて、ライムに意図的に飲ませようとする。またロン・セリットーは消防士に成りすました犯人によって配られたヒ素入りコーヒーを飲んで意識不明の重体に陥ってしまう。そう、今回ライムチーム自身もまたこのスキン・コレクターの標的になっているのだ。

更に本書のテーマは毒殺である。とにかくこのスキン・コレクター、色んな毒を駆使して被害者に襲い掛かる。
毒殺はジョン・ディクスン・カーなどが良く好んで使っていた殺害方法でつまり黄金時代のミステリの主要な殺人方法だったが。現代では廃れてしまっている。犯人がわざわざ毒殺に固執することにライム自身疑問を呈すが、私は逆にこの古典的な殺害方法を本書で用いたことで改めてディーヴァーが現代のシャーロック・ホームズシリーズと呼ばれているリンカーン・ライムシリーズの原点に回帰したことを示しているメッセージだと受け取った。

またスキン・コレクターが遺体に施す、もしくは施そうとしたメッセージもまた意味深だ。“the second”から始まり、その後“forty”、“17th”、“the six hundredth”と続く。それらは全て数を意味しているが、全くその関連性が見えない。ダイイングメッセージならぬ犯行声明であるが、これに加えて今回は各犯行現場の平面図が本書にはきちんと挿入されており、これらの趣向が本格ミステリ志向ど真ん中なのである。

相変わらず怒濤のようにサプライズを仕掛けるディーヴァー。それはあまりに突飛すぎて、その場面に直面した瞬間は頭に「?」が飛び交い、理解に少々時間を要してしまう。そしてそれが本当に成り立っているのか、どうしても後でその場面を振り返る必要に駆られる。

さて今回も非常に複雑に入り組んだストーリー展開を我々読者にディーヴァーは提供してくれた。しかも2015年発表の本書では上に書いたようにかつての黄金時代のミステリを彷彿とさせる、暗号を思わせる犯罪者からのメッセージ、各種取り揃えた毒による毒殺という古典的な殺害方法といった本格ミステリ風味が前面に押し出されている。
更に昔から都市伝説のように云われていたNYの地下に網の目のように張り巡らされた地下通路を犯罪者スキン・コレクターが暗躍し、マスコミからアンダーグラウンド・マンと名付けられ、原題に甦ったオペラ座の怪人のような様相を呈している。
そしてこの“アンダーグラウンド”が民間武装組織といった米国内に数多あるテロ組織を暗示しており、彼らが掲げる白人原理主義は現在のトランプ大統領が掲げているメキシコとの国境の壁建設やイスラム教徒の入国制限といったような選民主義的主張を象徴しているようで現代に通じるものを感じる。

とまあ、本書もまたいつもの、いやそれ以上に様々な仕掛けを施し、読者の頭をそれこそ作者ディーヴァーが両手で掴んで前後左右へぐるぐる回しているかのような目まぐるしい展開を見せるのだが、エンタテインメントに徹しすぎて深みに欠けるように感じてしまう。
特に今私が連続して読んでいるコナリー作品に比べると、各登場人物が抱く心情に深みを感じないのだ。ボッシュの異常なまでの悪に対する執着、ハラーの何が何でも裁判に勝つためのがむしゃらさといったような灰汁の強さや登場人物たちがその選択をした、せざるを得なくなった性や背負った業というものを感じないのだ。
確かにディーヴァーの描くプロットは最後見事なまでに整然としたロジックの美しさを感じさせる。特に本書は全てが繋がり、最後の一滴まで飲み干せる美酒のようなそつのなさを感じさせるが、そこにコクを感じないのだ。

これは全く以て私のディーヴァー作品を読む姿勢が間違っていると云えよう。ディーヴァー作品を読むには彼の作風を想定してそれに自分の頭を切り替えて読むべきなのだろう。だからディーヴァーにはディーヴァー作品の、コナリーにはコナリー作品の読み方をしないとこのような読後感に陥ってしまうのだ。

しかし『このミス』1位の作品は危険だ。どうしても期待値が高くなってしまい、感想も辛めになってしまう。もっと純粋に物語を愉しめるよう初心に戻った読み方をしなければと反省した次第だ。いや、面白かったんですよ、ホントに。

No.4 6点 猫サーカス 2017/06/28 19:36
過去に倒した敵の影がちらつく、シリーズ物の利点を生かした物語。第1作に登場する犯罪者ボーン・コレクターの手口とライムの捜査法を研究したと思われる連続殺人犯との心理戦が描かれる。二重三重の逆転劇をはじめ、「いつもの面白さ」を堪能できる。なお、本書を読む前に「ボーン・コレクター」「ウォッチメイカー」の2作は読んでおいた方がより楽しめると思います。

No.3 7点 take5 2017/03/30 08:00
これまでのライムシリーズを楽しんできた身として、
終盤のライムと●●のやりとりは、
次への期待を含めて良かったです。
が、お酒やミステリーは刺激に慣れてしまうものですね。
二十年近く経ち、ドンデン返しのインパクトが薄く感じられるようになりました…
パムとアメリアの葛藤も、やがてこうなるかもと見えてしまうし…
『イリュージョニスト』『ウォッチメイカー』辺りまでが新鮮でした。

No.2 7点 初老人 2017/02/18 19:00
本シリーズも数えてみれば11作目。今回はスキンアートと称して殺人行為を繰り広げていく犯人との間で、死闘が展開される。
(以下、少々ネタバレ)



展開の幾つかには唸らされもしたし、感心したのだが、ある程度読めてしまったのも事実(特にモグラ男が作中どのような処理をされるのか分かってからは、物語への関心が急速に冷めてしまった)。
7点という数字にはこれまでに紡がれてきた物語への敬意と思い入れが多分に含まれているものと考えて頂きたい。

No.1 6点 HORNET 2016/05/08 11:06
地下道で腹部に意味ありげな言葉の刺青を入れられて殺害される事件が次々に発生。殺害方法は、刺青の墨(?)に毒を仕込み、それによって死に至らしめるという特異かつ残酷な方法。また、被害者のそばにあった遺留品には、ボーン・コレクター事件でのライムチームの捜査について書かれた書籍の断片が。
 "the second""fourty""17th"…それぞれの入れ墨に込められた意味は何なのか?ボーン・コレクター事件、ライムチームへの犯人の思惑は?並行して描かれるウォッチメイカー死亡の報の顛末は、物語にどう結びついてくるのか?―すべてがつながり、明らかになるラストへと、お得意のどんでん返しが畳みかけられている。

<以下ネタバレ要素あり>

 散りばめられた伏線が見事に回収されながら、予想外の結末へと結んでいく手腕はさすが。ただ、とはいえ実行犯についてはそれほど予想外でもなかったが…。(この作品を読むちょっと前に、アイラ・レヴィンの「死の接吻」を読んでいたから、何となくダブってしまった)。
 しかしこれを読むと、本シリーズの中でも「ウォッチメイカー」は特別な存在なんだとつくづく思う。まだまだライムとの闘いは続くようだ。それを「楽しみだ」と好ましく思う読者が多いのだろうか。私個人としては、各作品は単品で楽しめるほうが手を出しやすいので、切り上げてくれてもいいのだが…


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