海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

レッドキングさん
平均点: 5.28点 書評数: 944件

プロフィール高評価と近い人 | 書評 | おすすめ

No.944 4点 ブラディ・リバー・ブルース- ジェフリー・ディーヴァー 2025/05/16 23:21
ジョン・ペラムシリーズ第二作。映画ロケ地を探す”ロケーションスカウト”の男が偶然に巻き込まれた射殺事件。ウクライナ系イタリア系の二人の半マフィアボスと、それぞれの相棒や殺し屋たち、イスラムシーア派(!)信望者の連邦検察官、主役同様事件に巻き込まれ下半身付随となった警官、謎の美女、警官の主治医の女医、映画関係者たち。射殺事件の真相は、極めて「個人的」な復讐劇で、後のライムシリーズ十八番のビッグツイストは、ほとんど(全然ではないが)出て来ない。が、「え! そのキャラピンチ! 」緊迫を、カットバックにてのホッと胸撫でさせるテクは、この頃からの得意技であった。ディーヴァーは読者をウツにさせない「健全作家」なのよん、良くも悪くも。

No.943 5点 死体のC- スー・グラフトン 2025/05/12 23:09
女探偵キンジー・ミルホーンシリーズ第三弾。今回の依頼人は、故意の事故で記憶の一部を喪失した美青年。失われた自分捜しの探偵仕事が、依頼人の殺害へと反転し、WhoWhyミステリから、死体置き場舞台のホラー風味サスペンスへ。ユニークなシリーズタイトル、第一弾「アリバイ」第二弾「泥棒」は、それほど内容と連結感なかったが、この「死体」は、見事にクリーンヒット(「シ」たいの「シ」ーだし・・(^O^)) 引き続き点数オマケ。

No.942 5点 泥棒のB- スー・グラフトン 2025/05/10 22:26
キンジー・ミルホーンシリーズ第二弾。うらぶれ私立探偵、行方不明捜し、死体出くわし、WhoWhyミステリからWhatダニット解明へ・・うーん、直球ハードボイルドぉ、1点オマケ。
探偵ヒロイン・・4、5m四方の狭い居住空間を好み、元婦警でバツ2、射撃マニアでジョギングが趣味で、犬が嫌い、てな設定・・が良い。脇役の高齢女性達のキャラ造形もよく、ナカナカな「グルメ」描写等、叙述の細やかさが、またよい。部屋中に己の大便(˶⊙⊙՞)まき散らす犯人の女てのが、またザンシンで。

No.941 4点 アリバイのA- スー・グラフトン 2025/05/09 21:12
女探偵キンジー・ミルホーンシリーズ第一弾。サラ・パレツキー 「ハード・重層」 vs スー・グラフトン 「ライト・平板」てな個人的ヘンケンは粉砕された。「F○c○er !」てな卑罵語を毒づき、F○○k相手の男を生ゴミにまみれて射殺する女が、「ライト」なヒロインのわけなく、お手本の様にタイトなハードボイルドであった。ヴィク・ウォーショースキーに比べると、性格シンプル、「いでおろぎっしゅ」背景ほぼ皆無(あと犬が嫌い)ってあたりが異なるかな、キンジー・ミルホーン。その他、口汚く、凶暴にして好色なところ、ヴィクと変わんないねぇ。
(また、愉しみなシリーズが一つできちゃった。もう、困っちゃうナ(^O^))

No.940 7点 雷龍楼の殺人- 新名智 2025/05/06 21:20
「孤島」に「屋敷」に「一族」に「密室」・・・おお ! 絵に描いた様な王道本格
アナザーサイド展開との絡みがツイストして・・・オオ ! べりィ新本格
ほんで、最後まで来て・・・Oh ! Bitter Delicious !
こういう若き書き手の出現が続く限り、我が国ミステリ文化の将来は明るい (^^♪  
たーだ、メタミステリ密室ウンチクはさあ・・・「それを言っちゃぁ、おしめェよ」(*^^)

No.939 7点 死んだら永遠に休めます- 遠坂八重 2025/05/05 22:08
作者第三作。国立大を出て、一流企業在籍だけに己の存在意義を見い出し、人生の全て・・死ぬ事さえもが「オックウで面倒」な、不器用アラサーOLの第一人称叙述。絵に描いた様なパワハラ上司の元で、過激なブラック仕事に心身を削られる鬱叙述が、上司の行方不明事件で一転、サイコ風味を帯びたグロコミカルなサスペンス&ミステリへと転調。前二作同様、今回も、サイコ風味キャラを陽動にしたWhoダニットかと、二人の人物に見当つけていたら、ラストで予想を超えたツイストが待っていた。ホームズ役の天然陽キャラ派遣女子が実に愉しく、点数オマケ。

No.938 5点 怪物のゆりかご- 遠坂八重 2025/05/03 22:15
作者第二作。前回同様、美形ホームズ風と秀才ワトソン風の高二コンビが主役。今回は、女子高生の依頼で、他校放送室から奇怪な「イジメ告発」配信を行った後、公開自殺(未遂)を実行した、「彼氏」高校生の謎を廻る冒険譚。少年の配信行為の謎が、過去の連続残虐殺人と絡み始め、最後にシリアル殺人鬼が現れてエンド。今回も、サイコ風味漂わすダミーキャラを陽動にした、「見当」(ロジックでなく)がつきやすいWhoダニット設定で。

No.937 6点 バースデイ・ブルー- サラ・パレツキー 2025/04/28 23:01
ヴィクシリーズ第八弾。齢四十を目前にして、かつての女性解放運動・・後に言うフェミニズム(当時は「ウーマンリブ」)・・の仲間たちも、それぞれに社会的地位・役割を持ち、当初の「イデオロギー・理念」と、その後の「利害・転向」の狭間で、反動と偽善を生きざるを得なくなる・・かつて左翼だった男たち同様、後ろめたさと居直りを払拭できぬままに・・。「どうせ職業を持った女のあなた達は主婦の事なんかクズだと思ってるんでしょ」:悲痛の有力者妻の殺害を廻るWhoWhyダニットミステリ、かつ、二組の痛ましき母子・姉弟の行方不明を追うフェミニンハードボイルド。地下魔道サスペンスや爆発炎上アクションのオマケも付いて、面白かったんで、点数にもオマケ付けちゃう。

ミステリ根幹は、「裏金疑惑」(我が国でも話題の)を嗅ぎ付けた女の殺害と冤罪工作スリップネタ・・ま、クロフツレベル・・なんだが、面白いのは、もう一つのテーマ、「父親による幼娘への性的虐待論難」 vs 「でっちあげ架空物語批判」の応酬、終わりそうで終わらないフロイト主義の相互転倒、フェミニズム援護と糾弾に絡んだ決着できそうでできないテーマ。それにつけても、米国に屹立している(んだろう)おぞましいまでに堅牢な、父権男根主義・・「レディファースト」幻想や弱者保護仮象、ハードボイルド文化にも貫かれている・・マッチョ男支配体制の、どうしようもなさ。現大統領見ててもよーく分かる。(我が国にも我が国特有のドウショウモナサがあんだけどねぇ)

No.936 3点 シャロウ・グレイブズ- ジェフリー・ディーヴァー 2025/04/25 23:06
ジョン・ペラムシリーズ第一弾。映画ロケ地を探して契約を取るロケーションスカウト(そんな仕事もあんのね)の男。訪れた小さな田舎町で起こる、謎の殺人・放火・麻薬事件。不動産営業の女、その夫の化学工場主と息子、ジャンク品売りの双子(アリス「トゥイードルダム&ディー」の様な)兄弟、町の実力者や保安官達、如何にもなバクチ好きダメ白人達に半汚れ少年・・・彼らと絡み合った諸事件の謎が徐々に解きほぐされて、最後にチョビッと手に汗握るバイオレンス・アクションが付いて、ENDあんど fin。ライムシリーズで花開く、目を眩まされる程のツイスト&ツイストは、まだまだ先の話だが、そのバックボーン「What done it?」は既に開花(て、んなこと言えば、すべからくハードボイルドはツイストホワットミステリの「萌芽」なんだけどね)。

No.935 7点 ドールハウスの惨劇- 遠坂八重 2025/04/19 22:16
絵に描いた様な毒母親と双子姉妹の密室殺人事件。殺人のWhyかつWhat構図とタイトル連結が見事。密室レベルとWho(露骨すぎ)設定は・・まあ、置いといて。
※この作家も、またもまたもや、このサイトで紹介された。面白すぎて、喫茶店ハシゴして、ほぼ一気(言い過ぎ、ニ三気?)読了。おかげで、今日と言う貴重なOFF日が、あっと言う間に瞬間消滅・・セキニンとってチョ(^^♪。

No.934 4点 シャーリー・ホームズとジョー・ワトソンの醜聞- 高殿円 2025/04/18 23:00
ホームズパティッシュ第三弾は、「四つの署名」と「ボヘミアの醜聞」が元ネタ。そこへ「ボスコム谷」だの「マズグレイヴ家」だの仄めかして、でーも内容は、一弾二弾より、さらに本格を離れて、生物SFに社会派SF、政治サスペンスに冒険アクションとテンコ盛り、が、なんと言ってもフェミニンハードボイルドで、ヒロインはレディ・ホームズではなく、すっかりミズ・ワトソンとなってしまった。※次は、「恐怖の谷」か「まだらの紐か」・・・

No.933 4点 シャーリー・ホームズとバスカヴィル家の狗- 高殿円 2025/04/15 20:28
前作「緋色の憂鬱」よりも、もっとパスティッシュしてて、犯人まであれで・・それ以前に題名からして、まんま「犬」「狗」違いだけだし・・。ここまで原作擬えて、どこでツイストすんだ?思っていたら、「本格物」飛び越えて、「歴史奇譚」からプチ「冒険SF」にスライドして行っちゃって・・その展開もまたドイルらしくて悪くない。
※これ、コロナ・ウクライナ前に書いてるんだよな、偶然とは言え、すげぇ先見の明。

No.932 5点 シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱- 高殿円 2025/04/13 22:07
これまた、このサイトで教えてもらい意外な拾いモンだった。ホームズ・ワトソン・モリアーティ・レストレード・・おなじみ諸キャラを女に入換え、現代に移植して、「緋色の研究」パスティッシュして、メインの四連続殺人事件は結構ホンカクしてて。「毒入り○○○○ (⊙∀⊙)」ネタは・・女流らしからぬと言うか女流らしいと言うか・・グッドよ(モチっとエゲつないネタでもザッツOK ^m^) 。犯人のWhyダニットはタイトル意味と共々に、さすが女視点と唸らせられる。(男には、こんな事・・「○○○○使うのは○○〇」(?_?)・・は、書けないなぁ) 点数オマケ。

No.931 7点 恐ろしく奇妙な夜- ジョエル・タウンズリー・ロジャーズ 2025/04/11 22:30
あの素晴しき怪作「赤い右手」作者の中短編集。原作文体に魅力あるのか、夏来健次って訳者の文体力が巧みなのかは・・多分両方なんだろ・・分らん

「人形は死を告げる」 魔人人形の不気味な示唆とジゴロ殺人構図の一転から二重三重ツイストおまけに四転 7点
「つなわたりの密室」 密室で殺された資産家男と隣室女。猫神父ノッポ弁護士はじめキャラフリークぶり良く 8点
          ( 「赤い右手」同様、「本格伏線あんふぇあ」イチャモンもっともだが、まあイイじゃん(^-^; )
「殺人者」 ん、倒叙サスペンス?ミスリード煙幕?・・この作家の十八番なんやね・・で、ツイストエンド。4点
「殺しの時間」 作家志望男の、上階「爆弾娘」ネタ投稿原稿が、ヒッチコック「裏窓」風サスペンス呼び寄せて。6点
「わたしはふたつの死に憑かれ」 叙述者が未成年時代に出会った、男と異国人妻とベビーシッター娘の悲劇。
               数年後、長じてラジオ脚本家となった彼に再現する、事件の驚愕真相。8点。
               (こういう「直球文体」のも書くのね)
「恐ろしく奇妙な夜」 タイトル作だが、ミステリではなく、まんま「ウルトラQ」怪獣小説。(採点対象外)

※本の作者紹介に「アメリカの大衆小説家」とあるが、かくも「日常」「常識」「穏健」・・すなわち「大衆」・・から外れた文体世界が「大衆の文学」のわけがなく、これは「非常」「異常」「異端」・・すなわち「純粋なる文学」・・の世界、「純文学」としか呼び様が在るまいて ^m^

No.930 6点 風ヶ丘五十円玉祭りの謎- 青崎有吾 2025/04/09 21:43
作者の第一短編集とな。 
  「もう一色選べる丼」 学食の食べ残し状況から該当者を選別するロジック(なんか説得力あるんだなぁ) 7点
  「風ヶ丘五十円玉祭りの謎」 夏祭り屋台の釣銭が悉く五十円玉であるWhy (もうちょい外連味ほしく) 5点
  「針宮理恵子のサードインパクト」 ヤンキー女高生と年下ブラバン少年の胸キュン純情譚かつミステリ 6点
  「天使たちの残暑見舞い」 卒業生のノートに記された教室から消えた二人の少女。その幻の影像の解明 7点
  「その花瓶にご注意を」 破壊された花瓶の謎の解明よりも、二人の少女の「過去の謎」の方が面白く 3点
( 探偵兄妹、お父ちゃんからして「ミスターロジック」だったのね)※オマケ話に点数おまけ。

No.929 5点 明智恭介の奔走- 今村昌弘 2025/04/06 21:11
作者の第一短編集とな。
  「最初でも最後でもない事件」 コスプレサークルの部室侵入泥棒に傷害を負わせた謎の人物Who・Why 8点
  「とある日常の謎について」 女房内緒の週一回千円飲みとボロビル破格購入のチョイとイイ話 3点
  「泥酔肌着引き裂き事件」 真相は「あほらし」の一言だが、「密室トリック物」でないこともなく 3点
  「宗教学試験問題漏洩事件」 研究室から消失した試験問題USBメモリ。そのトリック仕掛け顛末 7点
  「手紙ばら撒きハイツ事件」 ハイツの諸部屋に撒かれた怪手紙とストーカーのWho・Why・What錯綜 6点
(ひーる子ちゃん出て来んと、なーんか拍子抜け)

No.928 6点 ぶち猫 コックリル警部の事件簿- クリスチアナ・ブランド 2025/04/01 20:02
ショートショート・短編・戯曲取り混ぜた作品集。作者の死後出版とな。
 「最後の短編」 従兄に冤罪を着せての相続殺人が策士策に溺れ・・今は昔の電話ネタ倒叙ショートショート。
 「遠い親戚」 これも相続殺人を廻る人物トリックサスペンス。
 「ロッキングチェア」 初老姉妹と三十路女、三人の怪死の真相・深層に沈む痛ましき浪漫の残酷な顛末。
 「屋根の上の男」 雪の古館で死亡した嫌われ者の公爵。館内に凶器はなく状況は密室殺人だった・・・
 「アレバイ」 アリバイでなく「あればい」のショートショート、みぎょと!
 「ぶち猫」 ” 二度目の夫殺しを企む女と愛人" の倒叙三幕劇が十八番の多重ツイスト(し過ぎ)した挙句・・・

No.927 8点 図書館の殺人- 青崎有吾 2025/03/29 07:03
体育館の「密室」、水族館の「何故?」に続く、「館物」ロジックシリーズ第三弾は、図書館「ダイイングメッセージ」。残された物証と状況から、容疑者を絞り込んで行く手際の超絶ぶり。その上、ロジックの説得力と「意外な犯人」の驚きを両立させる見事さ。・・心底感嘆せざるを得ない。!(^^)!

(ここまで褒めといて、こんな事は言いたくはないのだが、犯人(この設定は見事)と探偵を除くと、登場人物たち・特に・少女たちのキャラが、みんな同じ様にしか記憶に残らんのよね。あれほど、様々な諸属性くっ付けられてんのに・・つまり、本格物にむかーしから言い古されたステレオタイプの悪口通り「人間が描けてない」のよねぇ。読んでる間は実に面白いんだが・・(-"-))

No.926 3点 アヒルと鴨のコインロッカー- 伊坂幸太郎 2025/03/29 06:52
♪ Yes, ’n’ how many years can some people exist
  Before they’re allowed to be FREE?
  Yes, ’n’ how many deaths will it take till he knows
  That too many people have DIED?
  The answer, my friend, is blowin’ in the wind
  The answer is blowin’ in the wind ♪    (Bob Dylan)

No.925 7点 ドグラ・マグラ- 夢野久作 2025/03/23 22:17
「三奇書」を「本格ミステリ」としてクールに評価してみよう、その一。

第一人称の「意識者」と、明示された殺人者が、「=」である事を仄めかされながらも、「脳髄所有者≠主体者」と言う珍リロンが、Whoダニットロジック成立要件の近代合理主義をハグラカして・・・・と、やっぱりヤメた、これ、本格ミステリとして評価するの・・・
「精神現象学」や「存在と時間」、「吾輩は猫である」や「家畜人ヤプー」・・こういうのをミステリとみなすのと同様にムリだ。これらを本格ミステリとして括る「のは勿体ない」あるいは「価値がない」。
「アクロイド殺し」や「Yの悲劇」、「黒死館殺人事件」や「虚無への供物」、これらをミステリと呼ぶならば、これ、「ミステリではないもの」である。作者自身、「絶対科学探偵の事実小説」あるいは「胎児の夢」と嘯くところの、「アンチ・ミステリ」なのだ・・・ん? アンチミステリ(何を今さら)? ・・・ブウウ・・・ンンン・・・(;^ω^)< 点数、名誉7点!

キーワードから探す
レッドキングさん
ひとこと
ミステリは戦前の乱歩の様に 子供が親に隠れてコッソリ読むような、恥ずかしい存在でありたい。 ミステリ書きという驚異的な作業に神経を減らし 結果報われることの無いミステリ作家たちに心から崇敬を捧げます。 ...
好きな作家
ジョン・ディクスン・カー  PD・ジェイムズ  トマスH・クック  沼田まほかる
採点傾向
平均点: 5.28点   採点数: 944件
採点の多い作家(TOP10)
アガサ・クリスティー(88)
ジョン・ディクスン・カー(55)
エラリイ・クイーン(51)
F・W・クロフツ(34)
二階堂黎人(30)
アーサー・コナン・ドイル(26)
カーター・ディクスン(25)
ジェフリー・ディーヴァー(24)
トマス・H・クック(23)
麻耶雄嵩(21)