皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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レッドキングさん |
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平均点: 5.28点 | 書評数: 957件 |
No.957 | 6点 | 割れたひづめ- ヘレン・マクロイ | 2025/07/02 05:28 |
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吹雪の古館、妖し気な男女、幽霊伝説、オカルト儀式、密室殺人・・・おお、カー直球。ちとズッコケな密室トリックまで、ありがちカー。が、男女の「妖しさ」が、カー風どたばたゴシック浪漫に彩られず、変に生真面目にドンヨリとフロイトしちゃうあたり、べりぃマクロイ。あの少年少女の、小鬼風キャラはなかなかヨく。 |
No.956 | 5点 | 本所深川ふしぎ草紙- 宮部みゆき | 2025/06/29 21:31 |
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「本所七不思議」(てのあるらしい)を元ネタにした、江戸末期ミステリアス短編集。
「方葉の芦」 殺された守銭奴の大店主と、健気な被疑者娘のキャラ変化譚。 「送り提燈」 驕慢な大店娘の奔放な命令に翻弄される、手代と女中の儚き想念。 「置いてけ堀」 殺された亭主未練を断てない女と、カッパ化物譚の真相や如何。 「落葉なしの椎」 丑の刻に取り付かれた様に店前の落葉を掃き清める娘の謎。 「馬鹿囃子」 人殺し告白虚言癖の娘と顔斬り魔の男の哀しき由来顛末。 「足洗い屋敷」 天女の如き継母に憧れた娘の識る真実。(「火車」「白夜行」の香り) 「消えずの行灯」 亡き娘の身代り謀話が二重三重に転倒して行く苦い譚(ハナシ)。 ※「血みどろ砂絵」みたくは本格してないが、オマケして全体で、5点。 |
No.955 | 3点 | 魔術はささやく- 宮部みゆき | 2025/06/28 17:46 |
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若い美女達の連続自殺事故死。「死者達のミッシングリンクや如何に」が、サブリミナル(むかーし「コロンボ」で教わったなぁ、なつかしや)ネタから、肩透かしな催眠術Howオチへとうねる、プチサスペンスミステリ。竜頭蛇尾だが面白くない事はなかった。※「恋人商法」・・結婚詐欺ならぬ恋人詐欺、要するにソフト美人局・・なんて言葉も懐かしや。 |
No.954 | 6点 | ハード・タイム- サラ・パレツキー | 2025/06/25 22:24 |
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ヴィクシリーズ第九弾。ヴィクも、もう、齢四十うん歳。終盤の1/3は、獄中記・・と言うより、地獄めぐり冒険譚。「ハード・タイム(珍しく原題のママ)」と言うより、ヘヴィ・タイムな、ヘヴィボイルドで、あんまりミステリとは言えないが、点数、大オマケ・・なーんか、この作家には、点数、甘くなっちゃう(~_~;)・・。 |
No.953 | 4点 | 天久鷹央の推理カルテⅢ 密室のパラノイア- 知念実希人 | 2025/06/17 21:48 |
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ツンデレ(あってる?)引きこもり女医ホームズと、長身オドオド研修医ワトソンコンビの「医療」ミステリ中短編集。
「閃光の中へ」観た者を自殺に導く呪いのスマホ映像のWhy 「拒絶する肌」男性アレルギー重篤ジンマシンのWhy 「密室で溺れる男」水回り皆無の密室で「溺死」したクズ息子のWhy ミステリを、不可思議(できれば犯罪)現象の「科学」的謎解き、と定義するならば、超常以外の何物でもない現象を、医学によって解明することは、紛れもなくミステリに間違いない。が、解説されて、「へえー」「ふーん」「ほおー」てな納得の医学的因果説明ミステリって、「液体窒素」トリック並みに興ざめやねぇ。ミステリとしては2点だが、ラノベとして実におもろかったんで、点数、2点もオマケしちゃう。 ※今気づいた、これ、シリーズもので、第三弾なのね。 |
No.952 | 7点 | 元年春之祭- 陸秋槎 | 2025/06/15 01:12 |
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ついに現る中国のエラリー・クイーン(logic)!、いや、クリスチアナ・ブランド(波状改釈)、いやいや、作者アトガキ*読んだところ、中国の麻耶雄嵩(ちょびっと京極も入ってる)であった。儒教「五経」に屈原「離騒」そして「荘子」・・中国形而上学と、漢美文詩と新本格ミステリの華麗なる織物。堪能せざること能わざる哉。断固、点数オマケしちゃう。
* ” 麻耶雄嵩先生(!)の「隻眼の少女」、三津田信三先生(*_*;)の「厭魅の如き憑くもの」・・この二冊の傑作と出会わなければ、この作品は書けなかった・・・" うーん、大学で古典文献学を学んだ中華人民共和国の学士って真面目なのねぇ、麻耶を「先生」って。 |
No.951 | 4点 | シティ・オブ・ボーンズ- マイクル・コナリー | 2025/06/10 23:01 |
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ヒエロニムス・ボッシュシリーズ第八弾。犬が咥えていた物は、二十年前の虐待痕跡のある少年の骨だった。二昔前の少年虐待殺人の、一転二転三転反転Whoダニット。シリーズここまでで、一番、地味で渋い味わいかな、と。ミステリとしては・・・うーーん |
No.950 | 5点 | 作家の秘められた人生- ギヨーム・ミュッソ | 2025/06/02 21:33 |
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三作で断筆して、瀟洒な島の館に隠遁するカリスマ作家。自作小説を持参して、島の本屋の住込み店員となる作家志望の青年。陰影深げな本屋の老オーナー。作家に接近を図る謎の女記者。突然、島に出現した奇怪な女の惨殺屍体を廻り、クリスチアナ・ブランドばり怒涛重層解釈どころか、多重解決モノの如く旋回するWhat転回ミステリ。それでも、最後に至り、真相解明に収束するか・・に見えた、その瞬間に、え?っと、メタ飛躍してしまった。SFファンタジー飛翔ともかく、「エクリチュール論」ブンガク的逃避・・これ、やりたがる人、多いんだよなぁ・・は、ミステリの天敵だなぁ。※点数は、非「メタ」部分のみに・・・ |
No.949 | 6点 | 卒業タイムリミット- 辻堂ゆめ | 2025/05/31 22:52 |
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監禁され、「終末まで72時間」の予告付きスマホ影像に晒された美人教師。犯人から、「事件解明の挑戦状」が送られた4人・・不良あがり少年、サッカー少年、超美少女、学年一の秀才少女・・の男女高校生。4人(と教師1人)雁首揃えての手探り探偵ゴッコと、途中に挟まれる4人(と思われる)の過去手記・・これがまた叙述トリック臭芬々・・で話は進む。が、タイムリミット付きWhoダニット緊迫展開にも、少年少女4人のキャラ描写にも、あまり魅力が感じられず、「なんだかなぁ」とアクビ嚙み殺して読んでいたら、終盤に至り、叙述トリック(+2点)に絡めたテクニカル(+2点)なミステリエンドと、清々しく穏かで感動的(+1点)な・・被同情者役から憎まれ役へ転回した人物さえ、ナカナカの妙味キャラへ再転回(+1点)の・・青春小説に急展開して収束。 |
No.948 | 7点 | ブルックリンの少女- ギヨーム・ミュッソ | 2025/05/27 21:58 |
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謎の過去を持つ女。その秘密に触れようとした婚約者の前から、突然に姿をくらませた女捜しのWho・What・・おお、仏版「火車」mystérieuse・・が、徐々に、シリアル殺人鬼譚と絡んだ真相の明るみへ。これが劇画チックに面白く・・あのラスボス女 bien!・・6点。そこに、副主人公と娘の素晴らしきエピソードに加点して7点。très émouvant !! |
No.947 | 6点 | 楽園とは探偵の不在なり- 斜線堂有紀 | 2025/05/25 19:06 |
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悪魔の如き風貌・・のっぺらぼうで黒く猫背のコウモリ猿・・の天使達が飛び回る世界。一人殺してお咎めなしだが、複数殺すと天使達に「業火地獄」へ引き擦り込まれる世界。SF風味どころか、まんまSFファンタジー設定・・ところが、中身は、ナカナカに本格。「一人殺して変化なし 二人殺すと犯人消える」てな原則の元で、「孤島屋敷クローズドサークル連続殺人」ミステリが展開。11人登場で、2人殺され1人が行方不明、さらに2人殺され1人が地獄に・・そして5人が残り・・・原則擬えたWhoロジックなかなかだが、あの「井戸絞殺トリック」、あれ、チト無理だよ。
※SFファンタジー以外の、探偵団過去エピソードに、1点オマケ。 |
No.946 | 7点 | 大樹館の幻想- 乙一 | 2025/05/23 23:54 |
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乙一の、「史上初となる本格ミステリ」(表紙煽り)とのことで、さっそく。「大樹を囲んで建てられた怪館」「密室」「一族」「連続殺人」・・おお、ド本格に新本格の香り付き設定。「パラレル未来から来た胎児(!)」・・ああ、SFミステリ風の新々本格を加味ね、てことで・・・
密室殺人の未遂顛末に、3点。 幾何学的な精密密室に、2点。 館構造秘密トリックに、1点。 魅惑的な大道具設定に、1点・・計:7点。 うーん、この試み、大いに買うよぉ。でも、やっぱり、乙一の本領読ませどころは、グロテスクにして淡泊、残酷にして透明な、胸キュン「メルヘン」・・この「本格ミステリ」においても・・であった。 ※ところで、この館、京極「絡新婦」の織作屋敷なみに魅惑的だが、本の表紙絵、「時計回り斜め昇り」とは逆でない? |
No.945 | 6点 | 幽霊の2/3- ヘレン・マクロイ | 2025/05/19 22:07 |
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ペンネームなんて単なる標章なんだから、実の作者が誰であろうと、作品の価値に変りはないだろ、とは言える。が、たとえば、町の旨い定食屋が、実はチェーン店レトルト使ってた、なんて事が判明した場合、旨さに変わりはないだろ、と言えても、以前同様には愉しめなくなるわな。
坂口安吾が、覆面作家として「作者当て挑戦状」付き小説(ミステリだったかな)を雑誌掲載したところ、大岡昇平だか平野謙だかにあっけなく当てられた、てな逸話を読んだことがある。 「画家サルバドール・ダリ」や「大統領クリントン」は妻ガラやヒラリーの「作品」だったて説があり、「大統領レーガン」は俳優レーガンが「演じていた」てな言い方も・・ここまで行くと実存(己は常に何らかの己自身に「関わって」存在する)レベルのハナシ・・て、作品に関係ない話になってきてしまった。 ところで、この毒殺トリックのオリジナルは、カーター・ディクスン(← ジツはねぇ、正体ジョン・ディクスン・カーなのよ、ここだけの話(*゚ノ3゚)ヒミツネ )の「五つの箱の死」でよいのだろか。 |
No.944 | 4点 | ブラディ・リバー・ブルース- ジェフリー・ディーヴァー | 2025/05/16 23:21 |
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ジョン・ペラムシリーズ第二作。映画ロケ地を探す”ロケーションスカウト”の男が偶然に巻き込まれた射殺事件。ウクライナ系イタリア系の二人の半マフィアボスと、それぞれの相棒や殺し屋たち、イスラムシーア派(!)信望者の連邦検察官、主役同様事件に巻き込まれ下半身付随となった警官、謎の美女、警官の主治医の女医、映画関係者たち。射殺事件の真相は、極めて「個人的」な復讐劇で、後のライムシリーズ十八番のビッグツイストは、ほとんど(全然ではないが)出て来ない。が、「え! そのキャラピンチ! 」緊迫を、カットバックにてのホッと胸撫でさせるテクは、この頃からの得意技であった。ディーヴァーは読者をウツにさせない「健全作家」なのよん、良くも悪くも。 |
No.943 | 5点 | 死体のC- スー・グラフトン | 2025/05/12 23:09 |
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女探偵キンジー・ミルホーンシリーズ第三弾。今回の依頼人は、故意の事故で記憶の一部を喪失した美青年。失われた自分捜しの探偵仕事が、依頼人の殺害へと反転し、WhoWhyミステリから、死体置き場舞台のホラー風味サスペンスへ。ユニークなシリーズタイトル、第一弾「アリバイ」第二弾「泥棒」は、それほど内容と連結感なかったが、この「死体」は、見事にクリーンヒット(「シ」たいの「シ」ーだし・・(^O^)) 引き続き点数オマケ。 |
No.942 | 5点 | 泥棒のB- スー・グラフトン | 2025/05/10 22:26 |
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キンジー・ミルホーンシリーズ第二弾。うらぶれ私立探偵、行方不明捜し、死体出くわし、WhoWhyミステリからWhatダニット解明へ・・うーん、直球ハードボイルドぉ、1点オマケ。
探偵ヒロイン・・4、5m四方の狭い居住空間を好み、元婦警でバツ2、射撃マニアでジョギングが趣味で、犬が嫌い、てな設定・・が良い。脇役の高齢女性達のキャラ造形もよく、ナカナカな「グルメ」描写等、叙述の細やかさが、またよい。部屋中に己の大便(˶⊙⊙՞)まき散らす犯人の女てのが、またザンシンで。 |
No.941 | 4点 | アリバイのA- スー・グラフトン | 2025/05/09 21:12 |
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女探偵キンジー・ミルホーンシリーズ第一弾。サラ・パレツキー 「ハード・重層」 vs スー・グラフトン 「ライト・平板」てな個人的ヘンケンは粉砕された。「F○c○er !」てな卑罵語を毒づき、F○○k相手の男を生ゴミにまみれて射殺する女が、「ライト」なヒロインのわけなく、お手本の様にタイトなハードボイルドであった。ヴィク・ウォーショースキーに比べると、性格シンプル、「いでおろぎっしゅ」背景ほぼ皆無(あと犬が嫌い)ってあたりが異なるかな、キンジー・ミルホーン。その他、口汚く、凶暴にして好色なところ、ヴィクと変わんないねぇ。
(また、愉しみなシリーズが一つできちゃった。もう、困っちゃうナ(^O^)) |
No.940 | 7点 | 雷龍楼の殺人- 新名智 | 2025/05/06 21:20 |
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「孤島」に「屋敷」に「一族」に「密室」・・・おお ! 絵に描いた様な王道本格
アナザーサイド展開との絡みがツイストして・・・オオ ! べりィ新本格 ほんで、最後まで来て・・・Oh ! Bitter Delicious ! こういう若き書き手の出現が続く限り、我が国ミステリ文化の将来は明るい (^^♪ たーだ、メタミステリ密室ウンチクはさあ・・・「それを言っちゃぁ、おしめェよ」(*^^) |
No.939 | 7点 | 死んだら永遠に休めます- 遠坂八重 | 2025/05/05 22:08 |
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作者第三作。国立大を出て、一流企業在籍だけに己の存在意義を見い出し、人生の全て・・死ぬ事さえもが「オックウで面倒」な、不器用アラサーOLの第一人称叙述。絵に描いた様なパワハラ上司の元で、過激なブラック仕事に心身を削られる鬱叙述が、上司の行方不明事件で一転、サイコ風味を帯びたグロコミカルなサスペンス&ミステリへと転調。前二作同様、今回も、サイコ風味キャラを陽動にしたWhoダニットかと、二人の人物に見当つけていたら、ラストで予想を超えたツイストが待っていた。ホームズ役の天然陽キャラ派遣女子が実に愉しく、点数オマケ。 |
No.938 | 5点 | 怪物のゆりかご- 遠坂八重 | 2025/05/03 22:15 |
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作者第二作。前回同様、美形ホームズ風と秀才ワトソン風の高二コンビが主役。今回は、女子高生の依頼で、他校放送室から奇怪な「イジメ告発」配信を行った後、公開自殺(未遂)を実行した、「彼氏」高校生の謎を廻る冒険譚。少年の配信行為の謎が、過去の連続残虐殺人と絡み始め、最後にシリアル殺人鬼が現れてエンド。今回も、サイコ風味漂わすダミーキャラを陽動にした、「見当」(ロジックでなく)がつきやすいWhoダニット設定で。 |