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[ 本格 ]
元年春之祭
陸秋槎 出版月: 2018年09月 平均: 7.00点 書評数: 6件

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早川書房
2018年09月

No.6 7点 レッドキング 2025/06/15 01:12
ついに現る中国のエラリー・クイーン(logic)!、いや、クリスチアナ・ブランド(波状改釈)、いやいや、作者アトガキ*読んだところ、中国の麻耶雄嵩(ちょびっと京極も入ってる)であった。儒教「五経」に屈原「離騒」そして「荘子」・・中国形而上学と、漢美文詩と新本格ミステリの華麗なる織物。堪能せざること能わざる哉。断固、点数オマケしちゃう。

* ” 麻耶雄嵩先生(!)の「隻眼の少女」、三津田信三先生(*_*;)の「厭魅の如き憑くもの」・・この二冊の傑作と出会わなければ、この作品は書けなかった・・・"
うーん、大学で古典文献学を学んだ中華人民共和国の学士って真面目なのねぇ、麻耶を「先生」って。

No.5 8点 雨兎耳須 2025/05/29 15:18
デビュー作とは思えないほど構成力が高いです。ここまで読後の余韻に浸らせてくれる作家は珍しい。
こちらの方が百合の三角関係を上手く描けていると思うのですが、ミステリーとしては次作が上だと思います。犯人の動機も歴史ミステリーとして素晴らしく、味わい深いです。変な読みですが、犯人は探偵役にだけ真実に辿り着けるように行動していたのかなと思います(動機の面からすれば探偵役へのメッセージである事は明らかなのですが…)

No.4 8点 八二一 2022/02/04 20:22
長安の都を離れ渓谷で暮らす祭祀を司る一族をめぐって起きる殺人事件の顛末が、中国の古典を紐解くように語られていく。不可能犯罪を扱い、読者への挑戦状を二度も挟むなど、堂々たる歴史ミステリに仕上げている。

No.3 7点 ボナンザ 2020/09/27 22:21
推理ゲームとしてよくできている。キャラクターは結構癖があるが、そうでないと話成立しないので仕方ない。

No.2 6点 猫サーカス 2019/01/24 18:06
紀元前の中国を舞台に、古い名家を訪れた豪族の娘が、一族に起こる連続殺人事件に挑む物語。読者への挑戦状を挿入する演出、丁寧な謎の構築と、ミステリーというジャンルへの強い愛着を感じさせる。日本のミステリーに影響を受けたという作者ですが、少女の人物描写には日本のアニメの影響も色濃く見られ、古代中国を舞台とした外国の小説ながらも、現代の日本人読者にも馴染みやすいでしょう。

No.1 6点 nukkam 2018/10/05 22:18
(ネタバレなしです) 中国の陸秋槎(1988年生まれ、男性作家です)が2016年に発表した長編デビュー作の本格派推理小説で非常に力作です。作中時代は紀元前100年の前漢時代です。4年前に観家で起きた四重殺人事件の謎が早い段階で語られ、不可能犯罪要素もあります。しかし漢詩や人生哲学に関する議論がとても難解で、謎解きに集中しにくいプロットはどこかヴァン・ダインを連想しました。探偵役に若い女性を配し、他の登場人物も女性の描写に多くのページを費やしていますが、美しさや華やかさや抒情性はほとんど感じられません。激しい人間ドラマが息苦しいほどで、探偵役の於陵葵は使用人に容赦なく暴力を振るうし、友人の観露申はどんどん憎悪に染まっていくしと読んでてはらはらします(それも作者の計算の内でしょうけど)。中盤からは新たな事件が起きて2度も「読者への挑戦状」が挿入されるなどミステリーらしさが加速、しかし真相が明らかになってめでたしめでたしではなく、事件の悲劇性と動機の重苦しさが余韻となって残る作品です。余談ですが巻末の著者あとがきを読むと日本のミステリー(特に新本格派)の影響を受けているようで、同じ日本人してちょっぴり誇らしく感じました。


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陸秋槎
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元年春之祭
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