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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ]
007 白紙委任状
ジェフリー・ディーヴァー 出版月: 2011年10月 平均: 6.67点 書評数: 3件

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文藝春秋
2011年10月

文藝春秋
2014年11月

文藝春秋
2014年11月

No.3 7点 E-BANKER 2023/09/16 13:50
稀代の人気作家であるJ.ディーヴァーと世界中で最も有名なスパイ=ジェームス・ボンド007がタッグを組むなんて、なんという素晴らしい試みか!と巻末解説者の吉野仁氏も書かれてます。
舞台は本国であるイギリス以外にもセルビア、そして主舞台となる南アフリカなど世界を股にかけるジェットコースターミステリー。
単行本は2011年の発表。

~金曜夜の計画を確認。当日の死傷者は数千人にのぼる見込み。イギリスへの大規模テロ計画の存在が察知された。金曜までの6日間で計画を阻止せよ・・・指令を受けた男の名はジェームス・ボンド。暗号名007。攻撃計画のカギを握る謎の男を追って彼はセルビアへ飛ぶ。世界最高のヒーローを世界最高のサスペンス作家が描く大作!~

個人的に、007については映画でさえまともに見通したことはない。なので断片的な知識しか持ち合わせていないというのが正直なところ。
なので、フレミングの007と比較してどうかなどと書く資格はない。ただ、こんな私からみても、本作のジェームス・ボンドは魅力的には思えた。なによりその「正義漢」ぶりだ。
出会う女性という女性が全員美女ばかり、そしてその殆どがボンドのことを好きになるという羨ましい限りの環境。そして本業のスパイ活動についても、ほぼノーミス。大ピンチ!と読者に思わせておいて、次章ではアッサリと逆転してみせる姿。
もう何でもアリである。
普通に考えると、こんな完璧無比な主人公に対しては逆に嫌気が差してしまいかねないのだが、そこはさすがの007。そんじょそこらの「にわか主人公」ではない。もう圧倒的な説得力とでも言えばいいのか。
女性だけでなく、最初は非協力的だった男性までもいつも間にか彼の協力者となってしまう。
つまり、「さすが」である。

プロットとしてはディーヴァーらしい「引っくり返し」の連続。「味方」「味方に見えて敵」「敵にみえて味方」「敵」などなど、ありとあらゆるところに「ワナ」が仕掛けらている。
リンカーン・ライムシリーズには毎回魅力的な敵キャラが出てくるが、本作では通称「アイリッシュマン」という強力な男が相手となる。さすがのボンドも手こずらされるのだが、最後には影の黒幕までもが登場して・・・

ということで、もう安心して楽しめる大作に仕上がっている。ちょっと予定調和すぎるところもあるので、そこは玉に瑕だが・・・
割と007の内面を描写した場面も多いので、人間ジェームス・ボンドという一面も垣間見える作品。
そして、廃棄物処理に関するテーマは21世紀の今という時代背景を表している。
総じて言うなら“スーパーヒーロー 007”大活躍の巻!
(やっぱり007シリーズの映画も一度は見てみるか・・・)

No.2 7点 Tetchy 2014/12/16 23:45
あのディーヴァーが世界的有名なスパイアクションシリーズである007シリーズを手掛けるニュースを聞いた時は正直期待半分不安半分だった。私自身007は映画は観ていたものの、小説は未読だったのもあったし、ライムシリーズやキャサリン・ダンスシリーズと云う2つの看板シリーズを持っているディーヴァーにそれらと差別化できる特色が出る作品が果たして可能なのかと疑問視していた。
しかしそれは杞憂だった。ここには007シリーズを想起させながらも新たなジェームズ・ボンドがいる。若々しく、スマートフォンとアプリを使いこなす現代のスパイとしてのボンド像をディーヴァーは創り出した。そうでありながらも彼のボスはMであり、スパイグッズの発明家Qも出てくるし、ボンドカーと彼を取り巻く美女がきちんと配され、ファンが期待するボンドの定番も忘れられていない。

さてディーヴァー版ジェームズ・ボンドの相手となる敵は巨大ゴミ収集企業グリーンウェイ・インターナショナルの代表取締役セヴェラン・ハイトとその相棒で冷酷な殺し屋ナイアル・ダン。
今なお創られる007シリーズ映画の敵はもはやソ連の秘密組織や戦争を企む武器商人などではなく、世界を牛耳る巨大企業による、その得意分野に特化した世界征服の野望を持つ狂える企業人であるが、本書もその流れを汲む物だ。
しかしただのゴミ回収業を営む一企業人がスーパー・エージェント、ジェームズ・ボンドの敵になり得るのかと疑問を持つだろうが、そこはやはりディーヴァー、この業界が実に世界を脅かす恐るべき存在になり得ることを見事に示した。
まず今回は死体愛好家であるセヴェラン・ハイトが相棒のナイアル・ダンと企む「ゲヘナ計画」が何であるかを突き止めるのが今回のボンドの使命。それは近いうちに行われるある大量虐殺計画を示唆しているが、場所も日時も不明。ボンドはアフリカ各地で行われている民族大量虐殺の跡地を“クリーン”にする事業を請け負っているダーバンの起業家ジーン・セロンに成りすましてハイトに近づき、計画の正体を探ろうとするのが物語のメインだ。
そして明らかになるのは我々の想像を超える恐るべき計画だった。これは実際に本書を当たって確認してほしい。
私はこの発想の妙には唸らされたし、実現可能性の高さから戦慄さえ覚えた。

そしてディーヴァーの持ち味であるどんでん返しもまた健在。ただ本書はそっちの真相の方がいささか迫力不足と感じた。それほど上の敵のインパクトが強すぎた。

ディーヴァー版007。その出来栄えはまずは及第点と云ったところか。アクション満載のスーパーエージェントの活躍が愉しめるものの、ディーヴァー特有のどんでん返しが今回はあまりストーリーの面白さに寄与しなかったように思えたのが痛かった。

No.1 6点 kanamori 2011/11/21 22:33
現代によみがえる007シリーズ、ということで、ジェームズ・ボンドがスマートフォンのアプリを駆使しながら、世界各国を駆け巡ってます。
車と拳銃、酒と美女(いわゆるボンド・ガール)というシリーズ定番のガシェットを織り込みながらも、ボンドの内面描写が多く入り、映画のイメージとはだいぶ違う感じも受けました。
終盤の展開はやはりディーヴァーで、たたみ掛けるどんでん返しは今作も健在です。”活動的なリンカーン・ライム”とは言い得て妙。


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