皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 本格/新本格 ] 密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック 密室黄金時代シリーズ |
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鴨崎暖炉 | 出版月: 2022年02月 | 平均: 6.15点 | 書評数: 13件 |
宝島社 2022年02月 |
No.13 | 8点 | レッドキング | 2024/09/16 22:59 |
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機械密室のHow(トリック解明)特化ミステリ・・・密室の密室による密室の為の密室・・・ Great !
第一の「鍵入り瓶密室」・・見事なる機械仕掛け、鮮やかなる伏線回収・・に、3点(満点)。 第二の「鉾槍密室」に 1点 、第三の「銃弾密室」に 0.5点、第四の 「ドミノ密室」には 1点。(「液体窒素」はいかん) 第五の「最後の密室」と「始まりの密室」にまとめて 3点。で、3+1+0.5+1+3・・計8.5点・・うーん、8点。 ※つい最近、このサイトでこの作家を「紹介」された。嗚呼 ! ここに自分向きのミステリ作家が、また一人・・と詠嘆。 |
No.12 | 5点 | mozart | 2024/03/17 17:58 |
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感心しました。
これだけの密室を作り出す様々な物理トリックを正面から打ち出してきた作品というだけで、登場人物のキャラに魅力がないとかそもそも各トリックのフィージビリティが低すぎるんじゃないかとか言った「真っ当な」感想を封じ込めるだけのパワーを感じました。 |
No.11 | 7点 | zuso | 2023/10/27 23:02 |
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「このミステリーがすごい!」大賞・文庫グランプリ受賞作。
曰くつきのホテルを舞台に、矢継ぎ早に密室殺人を繰り出す。施錠されたドアの唯一の鍵が瓶に封じられて密室内に置かれていたり、ドアの開閉を妨げるように遺体をドミノが囲んでいたりと、高い強度の密室が並ぶ点がまず嬉しい。しかも、その密室ミステリを支える大小さまざまなトリックは、質の面でも高水準。探偵役を務める高校二年生の男女ペアの造形も確かで、謎解きに次ぐ謎解きを素直に愉しめる。 |
No.10 | 7点 | E-BANKER | 2023/05/12 13:55 |
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第20回の「このミス」大賞文庫グランプリ受賞作。「館と密室」を改題し発表されたもの。
「密室殺人は罪に問われない」という特殊な環境下で発生する、密室づくしの本格ミステリー。 2022年の発表。 ~「密室の不解証明は、現場の不在証明と同等の価値がある」との判例により、現場が密室である限りは無罪であることが担保された日本では、密室殺人事件が激増していた。そんななか、著名なミステリー作家が遺したホテル「雪白館」で密室殺人が起きた。館に通じる唯一の橋が落とされ、孤立した状況で凶行は繰り返される。現場はいずれも密室、死体の傍らには奇妙なトランプが残されていて・・・~ 「好き」か「嫌い」かで問われるなら、間髪入れず「好き!」と答えてしまいそう。 特殊設定だからこその、どうしようもない「作り物感」やリアリティの圧倒的な欠如はあるけれど、それがどうした!、というある種開き直りすらも感じてしまう。 で、肝心の密室トリックなのだが、終盤にあの「三つの棺」でフェル博士が行った「密室講義」を彷彿させる場面までも登場。ミステリーファンの心をたっぷりとくすぐってくれる。 個人的には最初のトリックが一番ポピュラーだけど、一番腑に落ちたというか感心させられた。現場の物証を含め、一番きちんとした密室トリックだと思う。 「ドミノの密室」はどうかな? 確かにこんな機械的な密室トリックがまだできるという意味では感心させられたけれど、実現性は結構低いと思うのだが・・・ 最後の「真の意味で完全な密室」と称している密室。これも完全かどうかはともかく、発想は面白い。ただ、このトリックが何十年も破られないものとは思えないが・・・ でもよい。こんな遊び心のあるパズル的ミステリーに徹しきった作品、久しぶりに出会った気がする。 純粋にワクワクしたし、これでもう少しフーダニットが盛り上がれば更なる高評価も可能と思う。 なんか上から目線的な書評になってますが、すでに続編は出てるようなので、まずは楽しみ。 (ノックスの十戒と〇〇〇の十戒。まあ無理矢理感はあるけれど、こういうケレン味も好ましいとは思われる) |
No.9 | 8点 | まさむね | 2022/10/28 21:41 |
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これでもかと密室ハウをぶち込んできたド直球の本格作品。一方で語り口は軽快でコミカル。好き嫌いは分かれると思うのですが、私は支持したいですね。純粋に?トリックを味わう読書は、個人的には久しぶりのような気がします。ドミノ密室が特にお気に入り。密室愛に敬意を表して加点します。 |
No.8 | 7点 | パメル | 2022/08/11 08:27 |
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「僕」こと葛白香澄は、高校二年生のミステリマニア。幼なじみの女子大生、朝比奈夜月の雪男捜しに同行することになった「僕」らが、宿泊予定の雪白館は、密室ものを得意とする推理作家、雪城白夜のかつての邸宅だった。
誰も解けない密室での殺人なら無罪となる時代。10年前に館の主が密室の謎を遺した「雪白館」で、連続密室殺人が起こる。すべての密室を解き、犯人を有罪にできるのか。この設定、世界観がなんとも魅力的。 登場人物は、それぞれ名前や性格が記号的で分かりやすくなっている。例えば、探偵が探岡エイジ、マネージャーが真似井、支配人が詩葉井など。まるで、人物を把握する労力を減らしたので、密室トリックにだけに集中して欲しいと、作者が言っているかのようだ。 一見、典型的な雪の山荘ものと思われるが、とにかくあの手この手の密室殺人の仕掛けが凝っていて、推理する側も個性派ぞろい。一問一答式で密室の謎を解いていき、少しずつ密室の難易度が上がっていく。無罪になるために、わざわざ密室を作るので、リアリティは薄いが、論理的に解かれ納得できる。また、実際の情景を考えると、シュールで笑ってしまうトリックもあって楽しい。 クローズド・サークル、殺人現場にトランプ、怪しい宗教団体など、古典的要素は押さえつつもライトな雰囲気。殺人事件が起きていても、モノポリーをやるなど緊迫感が皆無なところは好みがわかれるでしょう。 |
No.7 | 7点 | HORNET | 2022/07/28 21:33 |
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「密室の不解証明は、アリバイ証明と同等の価値がある」と法廷で認められ、解けない密室である以上無罪が保証されることになった日本。そのことにより世は、密室殺人が乱発する事態となった。そんな世情の中、高校生の葛城香澄は密室推理作家として名をはせた故・雪城白夜の残した館「雪白館」に泊まりに行くことに。すると、絵に描いたようなクローズド・サークル内で、衛に描いたような密室殺人が次々に起こる―
タイトルが「密室黄金時代」とあるが、まさに「本格黄金時代」を懐かしく感じさせるような、物理的な密室トリックのオンパレード(もちろんトリックは現代並みだが)。昨今の多様化したミステリに慣れ、そうした新たな「仕掛け」で騙されることが好きな読者にはまぁ合わないかも。 私は好み。ここまで物理的な密室トリックで貫く感じは、最近では貴志祐介の「防犯探偵シリーズ」以来か。 ラストにはストーリー自体の仕掛けも用意されていて、ただただ愚直な昔ながらのモノで終わるわけでもない。ユーモラスな筆致も心地よく、十分に楽しんで読めた。 |
No.6 | 6点 | 名探偵ジャパン | 2022/07/06 16:59 |
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皆様の書評通り、これは好き嫌いが明確に分かれる作品だと思います。何だか最近の流行りとして「ミステリなんてトリックが面白ければそれでいいんだから、難しいこと考えないで素直に楽しもうぜ」というものが感じ取られるのですが、そうであれば本作はまさに時代にマッチしたミステリといえます。トリックのためのトリック。密室殺人のオンパレード。中には実現性に大いに「?」が付くものもありますが、その気概は凄いです。
最後の大オチの密室トリックは、作者が定義した「密室を構成する15のパターン」のどれにも当てはまらない全く新しい密室トリック、としていますが、それを成立させるためには特殊な条件が必要不可欠で、非常に限定された条件下でしか実行できません。 こういうハウダニットを前面に押し出した作品の場合、どうしても「早く答え合わせが読みたい」という意識に駆られてしまうので、解決編に至るまでの道中が余程面白いものでないと、さっさと流し読みされてしまいかねません。そういう「謎と答えの繋ぎも読ませる」意味で、人間ドラマや血の通った登場人物というのはやはりミステリにも必要なのでしょうね。 以下、ネタバレ的な感想を。 「液体窒素万能説(笑)」 |
No.5 | 5点 | makomako | 2022/07/05 20:44 |
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この作品は読者を選ぶものと思います。とことん合わない人からこれほどまでの密室を次々と堪能できるのは素晴らしいと思う人と。
ある意味で本格推理小説の結晶とも言えます。 出てくる人間はだでたらめ、探偵は中学時代に親殺ししたけど密室が破られなかったために無罪となったとんでもないやつ、もちろん爪の垢ほどの反省もない。密室請負人(こんなのもいるのだ)は、これまた全然反省なく次々と人を殺していく。 それを見ている閉じ込められた人々も恐怖はなく淡々と殺人を観察している。 あり得ないよね。こんな話が好きだと言ったらとんでもないやつだと思う人はいっぱいいるでしょう。 本格小説はある意味こういった危うさから成り立っているため、ある程度隆盛期があっても最後には感情のない人間が奏でる殺人ゲームとなり、多くの人から眉をしかめられてしまうことになるのでしょう。 そしてもっと人間味のある推理小説がでてくるが、こちらはトリックとしては当然限界があるのでこれまた行き詰まる。 私は本格推理が好きではあるが、ここまで登場人物がひどいとちょっとついていけない。ただこれだけ密室を作って結晶のような小説とした作者の努力と才能はすごいとは思います。 |
No.4 | 5点 | 虫暮部 | 2022/07/02 15:40 |
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“日本で初めて起きた密室殺人事件” について。“犯人は明らか” と “犯行の不可能性” は、やはり矛盾である。犯人を示すのは状況証拠しかなく、起訴するのに充分だとは全く思えないのだが……。
軽妙な文体は、しかし借り物っぽく、世界構築にあまり貢献出来ていない。 密室を “理由” から解き放つ設定は遊び心ってことでいいにしても、トリックをこんなに幾つも使うと相対的に価値が下がる。と言うか、どうしても作品内で比較してしまうわけで、戦略ミスでは。 ドミノのトリックは良かった。 ところで、某新人賞受賞作の選評で最終候補として紹介されていたものが、本作を髣髴とさせるのである(題名・作者名は別)。 落選作をブラッシュアップの上で別の賞に応募して受賞、であれば、良く頑張りましたと言ったところ。 可能性を言えば、他者が選評を読んで拝借したのかもしれない。それはあまり褒められたことではない。 しかし、同様のアイデアを偶然他者が思い付くことだってあるだろう。刊行の当ての無い作品について、選評に載ったのであのプロットは私のものだから使うな、と言うのも厚かましい気がする。 選評の公開は、誰のどういう権限に基づいて許容されているのだろうか。どうせ落とすならバラさないでよ、と思う投稿者もいそうだが。 |
No.3 | 7点 | 人並由真 | 2022/06/30 05:28 |
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(ネタバレなし)
殺人現場が「密室」であり、そしてその前提の上で殺人方法の説明や立証が困難な場合、容疑者は推定無罪とされるという法規が確立された、もう一つの日本。「僕」こと高校二年生の葛白香澄(くずしろかすみ)は、年上の幼馴染みの朝比奈夜月とともに、山中のホテル「雪白館」を訪れる。そこは7年前に他界したミステリ作家、雪城白夜が遺した施設であり、今なお解明されない密室の謎が残る場であった。そこで香澄は思いがけない人物と再会し、そして新たな連続密室殺人事件に遭遇する。 ……いや、得点評価だけで言えば、かなりの快作ではないでしょうか。 密室殺人なんて現実味がないという、それこそ何十年も前からの耳タコな物言いを一蹴する(ぶっとんだ/あるいはアホな)世界観の設定に始まり、怒涛のごとく放り込まれるネタとアイデアの数々。 その密室それぞれの解法はなんというか「トリック小説で何が悪い」と居直った、ある種の潔さのようなものまで感じます。 (最後というか、山場のトリックがそれまでのものに比して人を食ったように一転シンプルになる、お茶目な演出もヨロシイ。) 殺人の動機のこなれの悪さとか情報の後出しとか、最後まで放っておかれた細部の叙述とか、あちこち突いて引きずり下ろせそうな箇所は結構あるものの、いびつなほどに偏った方向に手間暇かけた、そんな執念を感じさせるパズラー。こういうものも、十分にアリだとは思う。 (トランプカードの含意の部分にエネルギーを使うあたりもかなり好み。) 合わない人がかなり合わないであろうことは理解しますが、自分は支持します。 (ただし良く出来た作品、だとは言いにくいけどね。) クセの強い玩具ばかりが詰め込まれた大きめのオモチャ箱みたいな作品、というのが、今のところいちばん合っている修辞のような気がする。 |
No.2 | 2点 | 文生 | 2022/03/15 10:40 |
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密室殺人が盛りだくさんなのはいいのですが、やたら複雑なものばかりで種明かしをされた時の驚きに欠けるのが難。しかも、事件が起きるやいなや探偵がトリックを解いてしまうのでだんだん密室殺人自体がどうでもよくなってしまいす。一番最後の密室トリックだけはシンプルで悪くないものの、そこに至るまでにすっかり食傷してしまいました。
何より冒頭で、 国内で初めての密室殺人が起こり、容疑者が逮捕されたものの、「どんなに怪しくても現場が密室である限り無罪」という判決が出て日本に衝撃が走り、以後密室殺人が大流行した。 という説明があるのですが、これには納得しがたいものがあります。 犯行が不可能なのに容疑者を有罪にすればそれこそ大問題ですし、容疑者を有罪にしたければ密室のトリックを解明すればいいだけです。その点はアリバイ工作となんの違いもないわけで、ようするに裁判官は極めて常識的な判決を下したにすぎません。それに対して国民が衝撃を感じたり、ましてや密室殺人が大流行したりはしないでしょう。また、作中では行うことに何の価値もない密室殺人と蔑まれてきたとの記述がありますが、密室トリックは事故や自殺に見せかける方法としては大いに有効なはずです(ちなみに、2012年9月の岐阜県各務原市における事件など、現実世界でも密室殺人は発生しており、岐阜県の事件の場合は一時自殺説に傾きつつも、結局捜査員がトリックを解明して犯人を逮捕しています)。 というわけで自分の密室観とはとことん合わず、読んでいてストレスが溜まる作品でした。 |
No.1 | 6点 | nukkam | 2022/02/08 22:04 |
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(ネタバレなしです) 鴨崎暖炉(1985年生まれ)のデビュー作の本格派推理小説で、2021年のミステリー賞に金平糖のペンネームと「館と密室」というタイトルで応募した作品を改訂して2022年に単行本出版されました。ジョン・ディクスン・カー(またはカーター・ディクスン)の某作品で密室を構築する理由の一つに密室の謎が解けないと犯行の証明ができないからという説得力の微妙な理由が挙げられていた記憶がありますが、本書では裁判でまさかの無罪判決が出た影響で殺人事件の三割が密室殺人になり、密室探偵や密室鑑定業者や密室代行業者までが存在するという無茶苦茶な社会設定です。「雪の館と六つのトリック」というサブタイトル通り密室殺人が次々に起き、ライトノベル風のユーモア混じりの軽い雰囲気ながら謎解きは非常にまともに構築されており、トリックはバラエティーに富んでいます。まだ学生の探偵役が父親殺し(未解決の密室殺人)の犯人らしいという重い過去があっても雰囲気が暗くならないのが違和感ありますが、リアリティーを度外視した作品と割り切れば十分楽しめます。逆に割り切れない読者はかなりの低評価になるでしょう。 |