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zusoさん
平均点: 6.17点 書評数: 280件

プロフィール高評価と近い人 | 書評 | おすすめ

No.280 6点 日曜の夜は出たくない- 倉知淳 2025/09/09 21:30
鳥人、河童、幽霊などのオカルト趣味な題材を扱った7つの短編がそれぞれに全く別の個性を備えている。
それは個々の作品の内容だけにとどまらず、文体においてもそれぞれに違いがみられる。そして物語のラストにおいて、こういった個性がまとまりを見ることになる。

No.279 6点 メイン・ディッシュ- 北森鴻 2025/09/09 21:28
物語は劇団「紅神楽」の団員が遭遇する様々な謎を主演女優の家に居候しているミケさんが解き明かしていくパートと、ある男の人生の足跡が語られるパートで構成される。
一見全く関係ないかのように見える二つの話が一本の線に繋がる様相は圧巻。調理師免許を持つ作者ならではの料理描写も目を引く。

No.278 5点 ビルマに見た夢- 古処誠二 2025/08/30 21:13
太平洋戦争の最中、ビルマに駐在する日本軍軍人、西隈と現地の人との交流を描いている。文明の論理を振りかざす先進国と、文明と異なる世界観の中で生きる人々の軋轢と妥協を描く連作短編集。
ミステリ的な物語構成や道具立てを用いて物語を展開させつつ、異文化との間にある溝、付き合い方、尊重の仕方という現代にも通じるテーマを読者に投げかけている。

No.277 5点 本の背骨が最後に残る- 斜線堂有紀 2025/08/30 21:07
痛みや喪失をモチーフとした怪奇幻想よりの作品が多い。
物語の展開は、怪しく不思議な状況を成立させるための理由のこね方ひとつにも、痛切な哀しみがまとわりついている。

No.276 4点 とらすの子- 芦花公園 2025/08/20 21:41
超常的な連続大量殺人の背景に、心に傷を負った者たちが集う宗教的コミューンがあったというカルトもの。
グロテスクだが冷たい殺戮劇や歪んだ登場人物たちを、宗教と家族由来で描くのがいかにも作者らしいバッドテイストだが、伝奇仕掛けやディテールは練り込み不足の感もある。

No.275 5点 龍の墓- 貫井徳郎 2025/08/20 21:37
VRゲーム内での殺人事件と現実世界の殺人事件が並行して進む謎解きミステリ。
ゲームの内容に魅力を感じないのが残念だが、訳ありの元警察官をゲーマーに設定し、謎解きだけでなく警察小説的な要素を盛り込んでいるのが目を引く。

No.274 6点 追想五断章- 米澤穂信 2025/08/09 21:15
同人誌に掲載されたらしいリドル・ストーリーを探すうち、二十数年前に起きた未解決の殺人事件が次第に浮かび上がってくる。
作中には5編のリドル・ストーリーの実作が挟み込まれており、いずれもが異国趣味に彩られており、作品全体の雰囲気づくりにも大きな役割を果たしている。これらリドル・ストーリーの内容が本編とどう絡むのかが読みどころ。この巧妙な仕掛けが施された凝りに凝った意欲作。

No.273 6点 世界の終わり、あるいは始まり- 歌野晶午 2025/08/09 21:09
連続小学生誘拐殺人事件の犯人は、もしかしたら自分の息子ではないのかと疑念に駆られた父親が次から次へと連想し、その推論が悪い方向に進んでいく物語で、多重推理の変種のような作品。
結末には賛否両論あるようだが、ミステリの定型を打ち破った作品として評価したい。

No.272 5点 - 北國浩二 2025/07/29 22:36
誰かが嘘をついているのかという謎、そして最後に深い感動が沸く作品となっている。
嘘はついてはいけないのが一般的だが、この作品では親子は嘘をつくからこそ、絆を築けるのかもしれないと思えてくる。「かくしごと」というタイトルで映画化もされている。

No.271 7点 乱反射- 貫井徳郎 2025/07/29 22:33
新聞記者の加山の子供が事故で亡くなった。加山がその事故の背景を調べていくと、そこに無関係な何人もの人が意図もなく介在していることを知る。
誰でも身に覚えのある、些細な身勝手が幾重にもなって悲劇を引き起こしてしまうという図式に恐ろしさを感じる。不運と不条理に直面した加山夫妻の絶望感が胸に迫るが、単なる悲劇的な作品に終わっていない。ラストシーンの美しさは特筆ものである。

No.270 5点 密閉教室- 法月綸太郎 2025/07/19 21:53
机と椅子が全て消失し、密室と化した高校の教室で、登校してきた主人公・工藤順也が級友の死体を発見する。
大学受験を控えた友人間の軋みや教師との対立、生徒たちの孤独な姿は暗いメッセージ性を帯びながら、そのアクロバティックな謎の解明と相まって青春ミステリとして読ませる。

No.269 5点 メビウス・レター- 北森鴻 2025/07/19 21:50
作家の阿坂が巻き込まれた不可解な事件とそのもとへ届く過去の犯罪を告発する手紙。
現代の事件と過去の事件が交差した時、真相は二転三転する。重層的な構造と目まぐるしい真相の反転が眩暈感をもたらす。

No.268 6点 夜の道標- 芦沢央 2025/07/09 21:42
1996年、横浜市で塾経営者が殺害された。犯人は逮捕されないまま2年が経過。刑事、パート女性、小学生のエピソードが絡まり合い、像を結んでいく、壮絶な闇を照らし出すミステリ。
息を呑む感情表現、小説の神髄に感動。最後は2人の小学生男子の前に素晴らしい未来があると信じられると思った。

No.267 7点 777 トリプルセブン- 伊坂幸太郎 2025/07/09 21:38
ホテルからなかなか出られない主人公の設定や、ある目的のためにホテルに集まった六人の殺し屋たちそれぞれのキャラクターも魅力に溢れている。
言葉選びや会話のテンポも良く、しかもストーリーの中には政治や資本主義といったテーマも巧みに織り交ぜられている。スリリングなサスペンスが楽しめる一冊。

No.266 5点 QED 百人一首の呪- 高田崇史 2025/06/30 21:34
会社社長が自宅で撲殺された。手に握りしめていた百人一首の札はダイイング・メッセージなのか。博覧強記の薬剤師・桑原崇は、友人のジャーナリスト・小松崎良平の相談を受け、事件の解明に乗り出す。
百人一首は単なる季歌集ではなく、編者の藤原定家によって何らかの意図が込められているという説は、複数の先例があるが本書における解読の鮮やかさと華麗さは別格。現代の事件と結び付け方もユニーク。

No.265 5点 雫の街 家裁調査官・庵原かのん- 乃南アサ 2025/06/30 21:29
離婚や相続など家庭に関する多種多様な事件を扱った7編からなる短編集。
いずれも予想と違うところに着地して思わず涙することも。家族の様々な諸相を捉えていて厚みがあり、大いに胸に迫るものがある。

No.264 7点 柔らかな頬- 桐野夏生 2025/06/21 21:26
不倫相手との密会を目的に訪れた別荘地で、幼い娘を神隠しのように失ってしまう主人公・カスミ。カスミの切実な心情と心を苛み続ける罪悪感が丹念に積み重ねられ、夫、不倫相手、事件の再捜査をする元警察官ら、カスミが関係する男たちが変わっていくさまが描かれている。
人の想像の中では失踪した娘は生きていたり、無残に殺されていたりする。そのどれもがリアルに描かれ、真実とは何かということも考えさせられる。

No.263 6点 クドリャフカの順番- 米澤穂信 2025/06/21 21:20
全編に渡り文化祭の楽しさが活写されている一方、終盤ではその祭りが終わる際の一抹の寂しさも描き出している。その雰囲気とトーンを合わせた謎解きの中身も絶妙。

No.262 4点 歪んだ創世記- 積木鏡介 2025/06/12 22:14
気が付くと一切の記憶をなくした状態で、見知らぬ部屋にいる男と女、そして惨殺された三人の死体。
序盤から濃厚なメタミステリの匂いを漂わせつつ、物語は時間が不連続に過去へと遡るだけでなく、ページを前後し予断を許さない。
読み手を翻弄しながら、突入するクライマックスが、これまたやりたい放題で凄まじいのだが、真相は筋が通っている。

No.261 5点 デジタルリセット- 秋津朗 2025/06/12 22:10
まず連続殺人鬼が描かれる。身近な人々の言動をチェックし、×印の数が閾値を超えると関係をリセットできる。
鉈で首を飛ばしたりして最終的には、跡形もなく関係を消す。続いて主人公の男性が登場し、失踪した姉一家の行方を探り始める。更にヒロインも参戦し、物語はどんどん弾けていく。そして衝撃的で予想外な幕切れ。殺しの閾値というデジタルな感情を主人公たちのアナログな感情と両立させたエンタメ小説。

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