皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
|
zusoさん |
|
|---|---|
| 平均点: 6.16点 | 書評数: 286件 |
| No.286 | 6点 | すみせごの贄- 澤村伊智 | 2025/11/02 21:07 |
|---|---|---|---|
| 恐怖と謎とスリルが交差する比嘉姉妹シリーズの第三短編集。
古典的な怪談である子育て幽霊を現代的かつ尖鋭的な形で描いた「火曜夕方の客」や、失踪した料理教室の講師を巡る不穏な出来事を綴る表題作など、時にミステリの技法を用いながら、読者の仄暗い感情をかき立てる。 |
|||
| No.285 | 6点 | お梅は呪いたい- 藤崎翔 | 2025/11/02 21:02 |
|---|---|---|---|
| 解体中の古民家から謎の日本人形が見つかった。その名は「お梅」。かつて戦国大名を滅ぼした恐ろしい呪いの人形だった。
500年ぶりに復活したお梅は早速、人を呪い殺そうとするが、現代は勝手が違う事ばかり。呪えば呪うほど、なぜか相手が幸せになってしまうという少し変わったオカルトハートフルコメディ。作者は元お笑い芸人だけに、人を笑わせるツボが分かっている。 |
|||
| No.284 | 6点 | パンドラ’Sボックス- 北森鴻 | 2025/10/14 21:07 |
|---|---|---|---|
| 小学生向けのジュブナイルから久生十蘭野パスティーシュまで、芸の多彩なことこのうえない。
まだ作家に至る経緯やペンネームの由来が綴られたエッセイが収録されており、作者の内面が垣間見えて面白い。 |
|||
| No.283 | 6点 | 木製の王子- 麻耶雄嵩 | 2025/10/14 21:03 |
|---|---|---|---|
| 閉鎖的な一族の間で起こる奇怪な殺人を描いた本作は、巧みなアリバイ崩しを経て、とてつもないカタストロフィへとなだれ込んでいく。
「夏と冬の奏鳴曲」で主役を務め途方もない経験をした如月烏月が、どのような役割を演じるのかも読みどころ。 |
|||
| No.282 | 6点 | スイス時計の謎- 有栖川有栖 | 2025/09/26 21:24 |
|---|---|---|---|
| 表題作は、撲殺された被害者の高級時計が盗まれていた点に着目した火村が消去法で犯人を暴く。この精緻な論理展開は美しく傑作と言えるのではないか。
その他の三編は、ダイイングメッセージ、首のない死体、密室とバラエティに富んでいるが、表題作に比べるとかなり落ちる。 |
|||
| No.281 | 6点 | 猫は知っていた- 仁木悦子 | 2025/09/26 21:20 |
|---|---|---|---|
| ありふれた日常の舞台を用いながら、あちこちに伏線を張り奇抜なトリックと意外な犯行動機を上手く絡ませている。
作者と同名の主人公と、兄・雄太郎のコンビが謎を解きほぐしていくやり方も見事。 |
|||
| No.280 | 6点 | 日曜の夜は出たくない- 倉知淳 | 2025/09/09 21:30 |
|---|---|---|---|
| 鳥人、河童、幽霊などのオカルト趣味な題材を扱った7つの短編がそれぞれに全く別の個性を備えている。
それは個々の作品の内容だけにとどまらず、文体においてもそれぞれに違いがみられる。そして物語のラストにおいて、こういった個性がまとまりを見ることになる。 |
|||
| No.279 | 6点 | メイン・ディッシュ- 北森鴻 | 2025/09/09 21:28 |
|---|---|---|---|
| 物語は劇団「紅神楽」の団員が遭遇する様々な謎を主演女優の家に居候しているミケさんが解き明かしていくパートと、ある男の人生の足跡が語られるパートで構成される。
一見全く関係ないかのように見える二つの話が一本の線に繋がる様相は圧巻。調理師免許を持つ作者ならではの料理描写も目を引く。 |
|||
| No.278 | 5点 | ビルマに見た夢- 古処誠二 | 2025/08/30 21:13 |
|---|---|---|---|
| 太平洋戦争の最中、ビルマに駐在する日本軍軍人、西隈と現地の人との交流を描いている。文明の論理を振りかざす先進国と、文明と異なる世界観の中で生きる人々の軋轢と妥協を描く連作短編集。
ミステリ的な物語構成や道具立てを用いて物語を展開させつつ、異文化との間にある溝、付き合い方、尊重の仕方という現代にも通じるテーマを読者に投げかけている。 |
|||
| No.277 | 5点 | 本の背骨が最後に残る- 斜線堂有紀 | 2025/08/30 21:07 |
|---|---|---|---|
| 痛みや喪失をモチーフとした怪奇幻想よりの作品が多い。
物語の展開は、怪しく不思議な状況を成立させるための理由のこね方ひとつにも、痛切な哀しみがまとわりついている。 |
|||
| No.276 | 4点 | とらすの子- 芦花公園 | 2025/08/20 21:41 |
|---|---|---|---|
| 超常的な連続大量殺人の背景に、心に傷を負った者たちが集う宗教的コミューンがあったというカルトもの。
グロテスクだが冷たい殺戮劇や歪んだ登場人物たちを、宗教と家族由来で描くのがいかにも作者らしいバッドテイストだが、伝奇仕掛けやディテールは練り込み不足の感もある。 |
|||
| No.275 | 5点 | 龍の墓- 貫井徳郎 | 2025/08/20 21:37 |
|---|---|---|---|
| VRゲーム内での殺人事件と現実世界の殺人事件が並行して進む謎解きミステリ。
ゲームの内容に魅力を感じないのが残念だが、訳ありの元警察官をゲーマーに設定し、謎解きだけでなく警察小説的な要素を盛り込んでいるのが目を引く。 |
|||
| No.274 | 6点 | 追想五断章- 米澤穂信 | 2025/08/09 21:15 |
|---|---|---|---|
| 同人誌に掲載されたらしいリドル・ストーリーを探すうち、二十数年前に起きた未解決の殺人事件が次第に浮かび上がってくる。
作中には5編のリドル・ストーリーの実作が挟み込まれており、いずれもが異国趣味に彩られており、作品全体の雰囲気づくりにも大きな役割を果たしている。これらリドル・ストーリーの内容が本編とどう絡むのかが読みどころ。この巧妙な仕掛けが施された凝りに凝った意欲作。 |
|||
| No.273 | 6点 | 世界の終わり、あるいは始まり- 歌野晶午 | 2025/08/09 21:09 |
|---|---|---|---|
| 連続小学生誘拐殺人事件の犯人は、もしかしたら自分の息子ではないのかと疑念に駆られた父親が次から次へと連想し、その推論が悪い方向に進んでいく物語で、多重推理の変種のような作品。
結末には賛否両論あるようだが、ミステリの定型を打ち破った作品として評価したい。 |
|||
| No.272 | 5点 | 嘘- 北國浩二 | 2025/07/29 22:36 |
|---|---|---|---|
| 誰かが嘘をついているのかという謎、そして最後に深い感動が沸く作品となっている。
嘘はついてはいけないのが一般的だが、この作品では親子は嘘をつくからこそ、絆を築けるのかもしれないと思えてくる。「かくしごと」というタイトルで映画化もされている。 |
|||
| No.271 | 7点 | 乱反射- 貫井徳郎 | 2025/07/29 22:33 |
|---|---|---|---|
| 新聞記者の加山の子供が事故で亡くなった。加山がその事故の背景を調べていくと、そこに無関係な何人もの人が意図もなく介在していることを知る。
誰でも身に覚えのある、些細な身勝手が幾重にもなって悲劇を引き起こしてしまうという図式に恐ろしさを感じる。不運と不条理に直面した加山夫妻の絶望感が胸に迫るが、単なる悲劇的な作品に終わっていない。ラストシーンの美しさは特筆ものである。 |
|||
| No.270 | 5点 | 密閉教室- 法月綸太郎 | 2025/07/19 21:53 |
|---|---|---|---|
| 机と椅子が全て消失し、密室と化した高校の教室で、登校してきた主人公・工藤順也が級友の死体を発見する。
大学受験を控えた友人間の軋みや教師との対立、生徒たちの孤独な姿は暗いメッセージ性を帯びながら、そのアクロバティックな謎の解明と相まって青春ミステリとして読ませる。 |
|||
| No.269 | 5点 | メビウス・レター- 北森鴻 | 2025/07/19 21:50 |
|---|---|---|---|
| 作家の阿坂が巻き込まれた不可解な事件とそのもとへ届く過去の犯罪を告発する手紙。
現代の事件と過去の事件が交差した時、真相は二転三転する。重層的な構造と目まぐるしい真相の反転が眩暈感をもたらす。 |
|||
| No.268 | 6点 | 夜の道標- 芦沢央 | 2025/07/09 21:42 |
|---|---|---|---|
| 1996年、横浜市で塾経営者が殺害された。犯人は逮捕されないまま2年が経過。刑事、パート女性、小学生のエピソードが絡まり合い、像を結んでいく、壮絶な闇を照らし出すミステリ。
息を呑む感情表現、小説の神髄に感動。最後は2人の小学生男子の前に素晴らしい未来があると信じられると思った。 |
|||
| No.267 | 7点 | 777 トリプルセブン- 伊坂幸太郎 | 2025/07/09 21:38 |
|---|---|---|---|
| ホテルからなかなか出られない主人公の設定や、ある目的のためにホテルに集まった六人の殺し屋たちそれぞれのキャラクターも魅力に溢れている。
言葉選びや会話のテンポも良く、しかもストーリーの中には政治や資本主義といったテーマも巧みに織り交ぜられている。スリリングなサスペンスが楽しめる一冊。 |
|||