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文生さん
平均点: 5.86点 書評数: 301件

プロフィール高評価と近い人 | 書評 | おすすめ

No.301 8点 地球の長い午後- ブライアン・W・オールディス 2022/11/29 05:14
地球が自転を止め、永遠の昼が続く世界。地表は巨大な樹木で覆われ、滅亡した哺乳類に代わって巨大昆虫や肉食植物が跋扈する。
作品が内包するイマジネーションの豊かさに圧倒されました。ストーリーなどはあってなきがごとしですが、そんなことは気にならないくらいに世界観が魅力的です。1962年に発表された遠未来SFの名品。

No.300 7点 少女には向かない職業- 桜庭一樹 2022/11/28 02:08
ラノベ作家としてデビューした著者初の一般向け作品。
女子中学生を主人公にし、彼女たちの重い現実をラノベ時代に培ったライトな語り口で描いているのが印象的です。その軽さによって救いのない物語に屈折した爽快感を付与し、やがて訪れるやるせいないラストを引き立てることに成功しています。ミステリとしての魅力は乏しいながらも殺人を絡めた思春期小説として秀逸。

No.299 5点 変な絵- 雨穴 2022/11/27 14:38
さまざな絵に秘められたメッセージを解き明かしていくという趣向は興味深いものの、謎解きはどうとでも解釈できる恣意的なものが多い気がしていまひとつ魅力を感じられず。特に、山の絵はメッセージがひねくれすぎていますし、あの状況で悠長に絵など描けるだろうか?と思ってしまいます。個人的にはやはり、推理の対象を一枚の間取り図だけに絞り、畳みかける推理で否応なく納得させてしまうYouTube版『変な家』の方が好み。とはいえ、二転三転の末に歪な真相が明らかになる物語自体はそれなりにそれなりに面白かったです。

No.298 5点 栞と噓の季節- 米澤穂信 2022/11/25 05:39
図書委員シリーズ第2弾
ほろ苦い味の青春ミステリーとしてよくできているとは思うものの、古典部シリーズや小市民シリーズに比べると、キャラクター小説として突き抜けておらず、かといって『儚い羊たちの祝宴』などと肩を並べるほどのダークさもなくて中途半端な印象を受けました。
また、伏線回収などはさすがの上手さですが、ミステリー的にこれといった仕掛けもなく、青春ドラマとして琴線に触れるものもありませんでした。
良作の風格を感じさせる一方で、個人的には響かなかった作品です。

No.297 4点 一千億のif- 斉藤詠一 2022/11/24 13:29
歴史のifを研究する架空歴史学という学問には心躍るものがあります。しかし、ifの可能性をいかにして検証していくのか?といった方法論に目新しさが全くない点については物足りなさを覚えました。作中で現実には存在しない学問をでっちあげるのなら、そういった部分をもっと掘り下げてもらいたかったところ。
また、本筋である陰謀を巡っての攻防も、肝心の陰謀に説得力がないために今一つ盛り上がりません。少なくとも、個人的にはあの程度の計画で世界が牛耳れるとは思えませんでした。
その代わり、キャラは立っており、ライトなタッチで手軽に楽しむことができるのは美点かも。

No.296 6点 ファイナルガール・サポート・グループ- グレイディ・ヘンドリクス 2022/11/17 18:25
登場人物が次々と血祭りにあげられるなか、ただ一人生き残って殺人鬼を返り討ちにするホラー映画のヒロイン・”ファイナルガール”。そんな彼女たちがもし実在していたとしたら?という発想で書かれた一種のオマージュ作品です。
事件によるトラウマから数十年間PTSDに悩まされてきた彼女たちの前に再び殺人鬼が現れるという話なのですが、「13日の金曜日」「ハロウィン」「悪魔のいけにえ」「エルム街の悪夢」「スクリーム」といった具合に、ファイナルガールたちが過去に体験した事件はすべて有名ホラー映画がモデルであり、(タイトルは異なっているものの)現実と同じように映画化されているというメタ構造が楽しい。それらの作品の映画レビューが挿入されていたりと、小ネタも効いており、スラッシャー映画のファンなら大いに楽しめるのではないでしょうか。ただ、ミステリーとしては大きな驚きはなく、フェミニスト論と絡めて教義的なまとめ方をしている点もいま一つ。

No.295 5点 真夜中の密室- ジェフリー・ディーヴァー 2022/11/07 14:57
リンカーン・ライムシリーズ第15弾。
今回は、リンカーン・ライムが警察上層部の政治闘争の巻き込まれて窮地に陥るエピソードと、どんなに厳重に施錠された部屋でも侵入する怪人・ロックスミスの暗躍が並行して描かれています。しかし、前者はシリーズのパターンからなんとなくオチが読めてしまい、後者に関しては歴代の怪人と比べると小者すぎて物足りません。それなのに、ライムがロックスミスをウォッチメイカーと比較して妙に持ち上げているのが謎です。
リーダビリティの高さは相変わらずなのでそれなりに楽しめはしましたが、ミステリとしてはいま一つ魅力を感じることができませんでした。

No.294 7点 リバー- 奥田英朗 2022/11/07 12:40
渡良瀬川で起きた10年越しの連続殺人を巡るドラマは登場人物たちのキャラも立っており、群像劇として抜群の面白さです。特に、一筋縄ではいかない3人の容疑者が印象的で物語を大いに盛り上げてくれます。ただ、真相はある意味意外ではあるものの、つじつまの合わない点が多くてそこが残念。
読み応えは満点なので8点をあげたいところですが、本格ミステリでないとはいえ、真相の説得力のなさは看過できずマイナス1点の7点です。

No.293 7点 彼と彼女の衝撃の瞬間- アリス・フィーニー 2022/10/31 02:25
元夫婦のニュースキャスターと刑事が並行して殺人事件の謎を追う物語であり、サスペンス小説としてもそれなりに面白いのですが、本作がその真価を発揮するのは終盤です。どんでん返し・オブ・どんでん返しで話が二転三転し、ラストで意外な真相へと着地するさまはまるで新本格のよう。
本格好きな人にもおすすめの逸品です。

No.292 6点 赤ずきん、ピノキオ拾って死体と出会う。- 青柳碧人 2022/10/28 16:08
童話×特殊設定ミステリとしてはすでに大きな驚きはなくなってしまったシリーズですが、童話のイメージに対するアンチテーゼの物語としては皮肉が効いていてなかなか面白かったです。特に、白雪姫のエピソードがお気に入り。

No.291 5点 むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました。- 青柳碧人 2022/10/28 15:59
童話の設定を活用した特殊設定ミステリですが、前作の「むかしむかしあるところに、死体がありました。」に比べると切れ味はかなり落ちる印象。最初の竹取物語における多重解決の趣向は悪くないものの、ラスト2話の猿蟹合戦はごちゃごちゃしすぎでシンプルな驚きに欠けるのが難。

No.290 9点 方舟- 夕木春央 2022/10/24 09:44
個人的には、リーダビリティの高さと衝撃の結末という点から数あるクローズドサークルミステリのなかでも名作『そして誰もいなくなった』に最も近づいた作品だと思います。
まず、クローズドサークルを構築する舞台装置が秀逸でサスペンス感を否応なく盛り上げてくれます。それに、犯人探しのためのロジックも分かりやすくて魅力的。そしてなんといっても、ぞっとする衝撃のラストがたまりません。これに関しては完全に意表を突かれました。ただ、探偵役が超然としていて他とは一味違う感を出していたのに、終盤は十把一からげの扱いになっていた点だけが残念です。そこはもう少し詳しい描写がほしかったところ。

No.289 5点 競争の番人 内偵の王子- 新川帆立 2022/10/24 08:33
公正取引委員会の審査官・白熊楓が九州事務所に転勤しての九州編です。今回は殺人事件が発生して少しミステリらしくなりましたがやはりミステリとしては小粒巣。むしろそのために、お仕事小説としての面白さは少し後退した感すらあります。本庁に比べて九州事務所の人間関係がギスギスしているのも好みの分かれるところでしょう。それでも、テンポの良さで読ませ、また、内偵の王子こと常盤や後半から登場する旧キャラは魅力的なのでエンタメ小説としてそれなりのレベルをキープしています。

No.288 5点 競争の番人- 新川帆立 2022/10/24 08:12
公平取引委員会版『マルサの女』といった感じの作品であり、あまり知られていない公平取引委員会の実態について描かれている点は興味深く読むことができました。それに登場人物のキャラもよく立っています。ただ、ミステリとしては薄味で驚くような展開もなく、その辺りに関しては物足りなさを覚えました。

No.287 6点 老虎残夢- 桃野雑派 2022/10/13 12:32
武芸の達人たちが集う南宋時代を舞台にした密室殺人ミステリーという着想がユニーク。
ただ、乱歩賞受賞時の「館」×「孤島」×「特殊設定」×「百合」という喧伝文句のわりに百合を除く3つの要素はあまりにも小粒。したがって、本格ミステリとしてはさほど高い点はつけられません。
その代わり、主人公が同性愛者の女性という点も含め、ちょっと風変わりな武侠小説としては存外楽しむことができました。

No.286 7点 キュレーターの殺人- M・W・クレイヴン 2022/10/12 06:03
被害者の指を殺害前と殺害後の2回に分けて1本ずつ切断するという連続猟奇殺人から始まり、二転三転する展開に引き込まれまていき、その末に提示される思いもよらない真相にも驚かされました。長大なページを用いて壮大な犯罪計画の全貌を解き明かしていく物語は非常に読み応えがあります。ただ、果たしてこの動機でこんなにも回りくどくてリスクばかり高い犯行計画を実行に移すものだろうかという疑問はどうしても残ってしまいます(犯人の狂気がもっと描かれていれば説得力が増したのかもしれませんが)。その点が大きな減点材料です。

No.285 5点 ノースライト- 横山秀夫 2022/10/12 05:46
タウトの椅子だけを残して失踪した一家という魅力的な謎を掘り下げていくのかと思えば、主人公が所属する建築事務所の事業トラブルへと話がシフトしていったのが個人的に不満です。失踪の件は主人公が何もしないうちに解決してしまうのも物足りません。決して悪い作品ではないものの、『半落ち』と同じく自分の求めていた作品ではありませんでした。

No.284 6点 英仏海峡の謎- F・W・クロフツ 2022/09/24 14:29
クロフツ十八番のアリバイ崩しもの。
英仏海峡を巡るアリバイトリックは専門知識を有するものであり、本格ミステリとしては優れた仕掛けとはいえないかもしれません。しかし、クロフツ作品は本格ミステリとしてではなく、警察小説の萌芽がみられる捜査小説として読むべきではないかと個人的には考えています。
そういう観点から読めば、足を使った地道な捜査によって真相に近づいていくプロセスはなかなかの面白さですし、アリバイ工作を解明するくだりも素直に楽しむことができます。

No.283 7点 ヨルガオ殺人事件- アンソニー・ホロヴィッツ 2022/09/20 08:39
前作『カササギ殺人事件』にて死亡したミステリー作家の作品に殺人事件の犯人を指し示す証拠が残されていることが判明するという展開は非常にスリリング。おまけに、作中作として挿入されているその作品も抜群の面白さです。黄金期探偵小説の雰囲気に満ちており、誰もが怪しい中で意外な真相を提示してみせる手管には感心させられました。
ただ、現実の事件の謎解きはイマイチ。犯人にさほどの意外性がなかったのも不満ですが、なにより肝心の「犯人を指し示す証拠」というのが実はなんの証拠能力もない点がいただけません。これって要は、性格の悪い作家が「こいつが犯人だ」と(根拠も示さずに)勝手に言っているだけでわざわざその秘密を知った人間を殺さなくても言い逃れはいくらでも可能なのではないでしょうか?

No.282 6点 殺しへのライン- アンソニー・ホロヴィッツ 2022/09/18 11:33
全体としては十分に楽しめたものの、前半のテンポの悪さが少々気になりました。また、本格ファンの興味を引きそうな謎が「右手だけが縛られていない死体」ぐらいなのでちょっと地味です。それに、そのホワイの謎に対する解答も魅力的とは思えませんでした。
最大の読みどころといえるのが関係者の秘密が次々に暴かれて後半の展開で、一番興味深いのがホーソンの過去についてなのですが、それは次巻以降の持ち越しとなっています。そういうわけで、物語としてはそれなりに楽しめるものの、本格を期待しすぎると肩すかしを喰らう作品だといえます。

それと、本篇の3分の1程度読んでから目次を見返した時になんとなく犯人がわかってしまったのも真相の意外さを薄れさせてしまった原因となってしまった(目次に直接的なヒントが書かれていたわけではないのだけど、この目次ならあいつが犯人だと雰囲気ぴったりだなという流れで予想できてしまった)。したがって、目次はなるべく見ないことをおすすめします。

文生さん
ひとこと
本格脳なので本格度が高いほど評価も高くなります。ただし、本格好きと言ってもフェアプレーなどはどうでもよい派なのでロジックだけの作品は評価が低めです。トリックやプロットを重視した採点となっています。
好きな作家
ジョン・ディクスン・カー、土屋隆夫、竹本健治、麻耶雄嵩
採点傾向
平均点: 5.86点   採点数: 301件
採点の多い作家(TOP10)
ジョン・ディクスン・カー(12)
アガサ・クリスティー(12)
横溝正史(11)
森村誠一(9)
竹本健治(9)
法月綸太郎(8)
カーター・ディクスン(8)
エラリイ・クイーン(7)
東野圭吾(7)
山田正紀(6)