海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト

文生さん
平均点: 5.82点 書評数: 245件

プロフィール高評価と近い人 | 書評 | おすすめ

No.245 7点 自由研究には向かない殺人- ホリー・ジャクソン 2021/11/08 12:51
過去の事件を洗い直していくという警察小説によくあるパターンのプロットですが、それを女子高生の主人公が自由研究として行っていくという形式に新鮮味があります。
関係者へのインタビューと粘り強い調査によって意外な事実が少しずつ明らかになっていく物語は捜査小説として一級の面白さですし、二転三転する終盤の展開も読み応えありです。
主人公の ピップと相棒のラヴィの好感度も高く、青春ミステリとしては申し分ない出来だといえるでしょう。

No.244 6点 居酒屋「一服亭」の四季- 東川篤哉 2021/11/06 13:06
初代に代わって2代目安楽椅子(あんらく・よりこ)が探偵役を務める『純喫茶「一服堂」の四季』の続編連作ミステリーです。代替わりしてもやってることは相変わらずで、接客業をしているのが不思議なレベルの人見知りからの毒舌推理は安定の面白さです。また、恒例の猟奇殺人トリックも現実性には乏しいものの、あの手この手で楽しませてくれます。そのなかにあって、個人的には地味な仕掛けながらも盲点を突いたロジックが光る「鯨岩の片脚死体」がベスト。

No.243 1点 月の落とし子- 穂波了 2021/11/06 12:27
月面に降り立った宇宙飛行士が謎の死を遂げ、それが未知のウィルスによるものだと判明するまでは緊迫感に満ち、読み応えがあります。
しかし、面白いのはそこまで。
宇宙船のクルーたちが死体を回収して地球に持ち帰りたいと言い出したのには唖然としてしまいました。しかも、その理由が仲間を故郷の土で眠らせてやりたいからという超センチメンタルなもの。とても科学者の態度とは思えません。そのうえ、ハンディミックスの危険性があることを承知しながら、結局、死体の回収を許可してしまうNASAの判断の甘さも信じがたいものがあります。日本に舞台を移してからも、ヒューマニズムを取り違えた独善的な判断のオンパレードなので読んでいるあいだ常にイライラしていました。根本的に自分とは相容れない作品です。

No.242 5点 倒産続きの彼女- 新川帆立 2021/10/29 12:01
ベストセラーを記録した『元彼の遺言状』の続編ですが、主人公は剣持麗子の後輩弁護士である美馬玉子にチェンジし、麗子自身は脇に回っています。とはいえ、玉子は麗子と比べると地味ではあるものの、ぶりっ子気質など十分個性的でキャラ立ちという点では申し分ありません。また、ある女が転職するたびに転職先の会社が倒産するという謎も魅力的ですし、作者が弁護士だけあって真相を究明していくプロセスにも説得力があります。
ただ、終盤に謎の組織の存在が明らかになり、しかも、その組織が今後宿敵となっていくような雰囲気になっていったのが個人的には残念でした。途中までは面白かったのですが、ジャンルが本格からスリラーへとシフトした点が好みではないので評価は低めです。

No.241 5点 元彼の遺言状- 新川帆立 2021/10/27 21:06
語り手である女弁護士・剣持麗子の強烈な個性と「自分を殺した者に全財産を譲る」という奇妙な遺言状の謎で読者の興味を引きつける手管はかなりのものです。ただ、肝心の遺言状に関する真相は素晴らしいとは言い難いものがあります。「あれだけ強烈な謎を提示しておいて真相がそれ?」って感じで、例えるならクイーンの『チャイナ橙の謎』における逆さ殺人の真相を知った時に似たがっかり感です。

No.240 6点 野球が好きすぎて- 東川篤哉 2021/10/06 12:15
本格ミステリとしては小粒ですが、野球ネタが満載で野球好きな人には堪らない作品です。また、登場人物も探偵・犯人・証人・被害者と、ヒロインの女刑事を除く登場人物のほとんどが野球狂なのでしゃべるたびにいちいち野球を引き合いに出してくるのが楽しい。特に、捜査そっちのけですぐに野球でマウントとろうとするヒロインの父親&上司のキャラが秀逸です。

No.239 7点 密室は御手の中- 犬飼ねこそぎ 2021/10/06 11:25
いまどき珍しく、特殊設定や叙述トリックに頼ることなく密室殺人に真正面から挑んだ作品です。2件の密室殺人と100年前の人間消失がありますが、白眉なのは第1の密室殺人でかなりユニークな密室トリックが用いられています。また、第2の密室殺人はトリックこそ小粒なものの、真相が暴かれるまでに二転三転して手に汗握ります。それ以外にも、全編を通していくつもの仮説が飛び交ってまるで推理合戦の様相を示しており、パズラー好きの人にとってはたまらない作りです。

なお、動機に説得力がないというか、ほとんど意味不明だという問題がありますが、その辺は推理には関係ないのでスルーすることをおすすめします。

No.238 5点 愛国殺人- アガサ・クリスティー 2021/10/06 09:50
歯科医院を舞台にした殺人はなかなかユニークですし、複数の小粒なトリックを上手く活用した仕掛けもクリスティらしくて悪くないのだけど、なぜかのれない作品でした。やはり、クリスティのミステリーに政治的なテーマはそぐわないということでしょうか?機会があれば再読に挑戦してみたい作品です。

No.237 6点 運命の証人- D・M・ディヴァイン 2021/09/29 08:21
若手弁護士が2件の殺人容疑で逮捕された事件についての裁判の行方が描かれる一方で、過去に何があったのかをカットバック方式で挿入していく構成が秀逸です。読者にとっては2件の殺人があったことは理解できるものの、誰が殺されたかは不明なので緊迫感のある展開を楽しむことができます。また、さりげなく伏線を張り巡らせて最後に回収する手管も見事です。

ただ、これといったトリックや仕掛け、あるいはびっくりするようなどんでん返しといったものは皆無なので、本格としてはいささか小粒に感じます。それから、奥手のくせに間の悪いタイミングで女性に手を出しては窮地に追い込まれる主人公には若干イライラ。

No.236 4点 魔の山- ジェフリー・ディーヴァー 2021/09/28 06:21
懸賞金ハンターであるコルター・ショウの活躍を描いたシリーズ第2弾。
今回の話は、追いつめた犯人に目の前で投身自殺を図られ、しかも、彼にかけられていた容疑が冤罪だったことから責任を感じたショウが事件の背後にあるカルト教団に潜入し、その実態を暴いていくというもの。

大御所の筆力でそれなりに読ませるものの、中身はどこかで聞いたことのあるようなカルト教団暴露エピソードの寄せ集めといった感じで新鮮味はなし。
ミステリーとしても特にヒネリはなく、いささか期待外れ。


No.235 8点 読者よ欺かるるなかれ- カーター・ディクスン 2021/09/27 21:34
従来の不可能犯罪とは異なり、死因不明の殺人という設定が当時としては斬新。
そのうえ、挑戦的なタイトルも本格好きにとってはぐっとくるものがあります。
メインとなるトリックは単純なものですが、ミスディレクションの技巧によって読者をミスリードしていく手管が見事です。
おまけに、予言や念力といったガジェットが話を盛り上げてくれます。
同時期の有名作に隠れがちですが、個人的にはかなり好きな作品です。

No.234 3点 盲目の理髪師- ジョン・ディクスン・カー 2021/09/27 21:17
ドタバタ劇にまったく面白味を感じられず、読むのが苦痛に感じました。
そのうえ、真相もパッとしなくてがっかり。
個人的には30年代カーのワースト作品です。

No.233 5点 白と黒- 横溝正史 2021/09/27 20:58
社会派ミステリ全盛の時代に発表された作品で、その影響か舞台は古い因習が残る農村でも大富豪の屋敷でもなく、集合団地という金田一シリーズとしてはかなり珍しい作品になっています。

そうした現代的な舞台でコールタール漬けの死体が発見されたり、どんぐりころころの歌詞になぞらえた童謡殺人が起きたりするのはそれはそれで目新しい感じがして悪くありません。

ただ、話が長い割に著者の代表作と比べると盛り上がりに欠け、ミステリーとしても特筆すべき点がないので満足度は低め。

No.232 7点 心理試験- 江戸川乱歩 2021/09/24 19:18
いまとなっては少々単純すぎるきらいはあるものの、切れ味鋭い明智小五郎の分析にはやはり引き込まれます。同じ心理分析でもヴァン・ダインが2年後に発表する『カナリア殺人事件』とは説得力が段違いです。この手のジャンルの最高峰の一つだといえます。

No.231 8点 楽園とは探偵の不在なり- 斜線堂有紀 2021/09/23 18:00
何をもって人を殺したと判断するかという定義が曖昧など、本格ミステリとしては粗いところはありますが、2人殺すと天使によって地獄に引きずり込まれるという終末感あふれる世界観には大いに引き込まれていきました。また、そうした特殊設定を利用したトリックもなかなかにユニークです。個人的には元ネタのSF小説『地獄とは神の不在なり』よりも面白かったです。ただ、癖が強い作品なので人によって好みが大きく分かれそうではあります。

No.230 6点 化身- 宮ノ川顕 2021/09/22 12:24
全3話収録の中編集。

都会の喧騒の逃れて南の島を訪れた男が、密林で四方を崖に囲まれた池に落ちる表題作は抜群の面白さです。奇想に次ぐ奇想でぐいぐいと引き込まれていきました。さすがは日本ホラー小説大賞で大賞を受賞作しただけのことはあります。ただ、プロセスの面白さに対して、オチが少々凡庸なのが残念です。

他の2篇は表題作に比べると凡作に思えます。表題作8点、他2篇が5点で平均6点の評価です。

No.229 6点 見知らぬ人- エリー・グリフィス 2021/09/18 19:21
本作は本格というより、サスペンスに近い作品です。
したがって、「この犯人は絶対に見抜けない!」という帯の煽り文に釣られて読むと失望することなります。
犯人は意外といえば意外ですが、真相を隠蔽するような仕掛けやあっと驚くどんでん返しの要素は皆無です。
その代わり、古いゴシックホラー小説と現代の事件がリンクし、ヒロインの日記に犯人のものらしき書き込みが次々と見つかっていくといったサスペンス展開はよくできています。
MWA賞最優秀長編賞受賞もその辺が評価されてのことでしょう。
ただ、物語のスケール感に対していささか話が長いのが難といえば難。

No.228 7点 Butterfly World 最後の六日間- 岡崎琢磨 2021/09/12 09:09
ハッカーからの攻撃を受けた結果、仮想空間内に存在する館及びその周辺エリアが封鎖(現実世界との行き来は可能)されたうえに連続殺人が起きるというクローズドサークル&特殊設定ミステリー。

まず、アバターが殺されるというとびきりの不可能状況が魅力的でぐいぐい引き込まれまれていきますし、そのトリックも盲点を突くもので秀逸。また、サブの仕掛けや犯人特定のロジックなども良く考えられています。

ただ、一連の事件がなぜ起きたのかというホワイダニットの部分に関しては、偶然に偶然が重なった結果であり、少々ご都合主義に感じました。

No.227 5点 透明な螺旋- 東野圭吾 2021/09/09 14:09
今回は湯川自身が事件の関係者として警察にマークされ、その点も含めて事件の裏の人間関係が結構複雑なのが読みどころ。それが徐々に明らかになっていく展開には一応の面白さはあります。
しかし、警察の捜査が話の大半を占め、トリックや華麗な推理といった要素は皆無なので本格というより、警察小説を読んでいるような感じです。いつもの湯川シリーズを期待していた人は間違いなくガッカリするでしょう。

No.226 8点 花束は毒- 織守きょうや 2021/09/09 13:38
「結婚をやめろ」と書かれた脅迫状に怯える元医学生の真壁。
後輩の木瀬は警察か興信所に相談することをすすめるが、なぜか彼は逡巡する。
見かねた木瀬は中学時代に従兄の窮地を救ってもらったことのある女探偵に独断で調査の依頼をする。
すると、思いがけない事実が明らかになり......。

脅迫者は誰なのかという謎で話をずっと引っ張っていき、犯人の目星がついたところで予想外の落とし穴に付き落とされます。
いやー、これは恐ろしい。
伏線がほとんどないので本格としては評価できませんが、どんでん返しが好きな人にはおすすめです。

文生さん
ひとこと
本格脳なので本格度が高いほど評価も高くなります。ただし、本格好きと言ってもフェアプレーなどはどうでもよい派なのでロジックだけの作品は評価が低めです。トリックやプロットを重視した採点となっています。
好きな作家
ジョン・ディクスン・カー、土屋隆夫、竹本健治、麻耶雄嵩
採点傾向
平均点: 5.82点   採点数: 245件
採点の多い作家(TOP10)
ジョン・ディクスン・カー(12)
アガサ・クリスティー(12)
横溝正史(11)
法月綸太郎(8)
カーター・ディクスン(8)
森村誠一(7)
竹本健治(7)
エラリイ・クイーン(6)
北村薫(6)
東野圭吾(6)