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[ 本格/新本格 ]
アミュレット・ホテル
アミュレット・ホテル
方丈貴恵 出版月: 2023年07月 平均: 6.42点 書評数: 12件

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光文社
2023年07月

光文社
2025年06月

No.12 5点 E-BANKER 2025/09/15 13:22
今、現在進行形で作者の「竜泉家シリーズ三部作」を読んでいる”さなか”、なのだが、箸休め(?)として初の連作短編集となる本作を手に取ってしまった。
”犯罪者御用達のホテル”という、またまた特殊設定下の作品なのかな?
単行本は2023年の発表。

①「アミュレット・ホテル」=まさに「そのもの」のタイトルを冠した一作目。事件もアリバイ崩しがメインとなる正統派のミステリ。ただし、容疑者となる三人の男女は当然ながら「名うての」犯罪者。やはり、一筋縄ではいかない。探偵役となるのは、ホテル専属の探偵。名付けて「ホテル探偵」(・・・そのままだね)の桐生。核となるアリバイ崩しは、複数の仕掛けが絡まるややこしいアリバイ。
②「クライム・オブザ・イヤーの殺人」=”エピソード0”というサブタイトルのついた本編。そう、桐生がホテル探偵になる前、〇〇者だった頃のお話。”クライム・オブザ・イヤー”とは、まさにその年の一番の犯罪者に対する表彰式。なのだが、その華々しい(?)場で毒殺事件が起きてしまう。問題となるのが、毒をいかにして被害者に与えたのか、になるのだが、その解法はなかなか斬新。ただし、これを不信感なく実行するのは相当な技術が必要って、アッ!犯罪者だらけだもんな・・・
③「一見さんお断り」=犯罪者御用達のアミュレットホテル別館は、当然ながら「一見さんお断り」で、入館できるのは専用のVIPカードを持った人(犯罪者)だけ。ここが、今回の殺人事件において問題になってくる。真犯人は意外といえば意外だけど、うーん。影が薄すぎるしな・・・
④「タイタンの殺人」=「ザ・セブン」と呼ばれる特別な犯罪者だけが集まる5年に一度の会議が「タイタン会議」。そして、そこでも殺人事件が発生してしまう。今回のテーマは、金属探知機で徹底的に金属類も持ち込みが排除されていた会場に、どうやって金属製のナイフが持ち込まれ、凶器となったのか? ただ、まさか、お〇〇のナイフなんていうのが出てくるとは・・・。そして、5年前にも起こっていた殺人事件との関連が焦点になってくる展開のなか、ややクドさが目立つようになってしまった印象。詰め込みすぎたのが原因なのかな?

以上4編。
作者といえば、どうしても「特殊設定ミステリ」というイメージになる。本作も「犯罪者御用達ホテル」という飛びっきりの「特殊設定」が用意されているようには見えるのだが、その実、薄皮を一枚はいだら、中身はごくノーマルなミステリだと思えた。
登場人物の大多数が犯罪者なのだが、それがトリックとダイレクトに関連するかというと、そこはそれほどでもなくて、まあ本質というよりは「装飾」の部分での「特殊設定」である(この辺りは、法月綸太郎の巻末解説でも触れられている)。
で、「面白い」か「面白くない」かというと、うーん。今回は奇をてらいすぎたかという感じが強い。
気になるのは、「時空旅行者・・・」のときにも書いた「伏線の分かりやすさ」。特に④ではそれが顕著。それだけで、何となく察せられてしまうのはマイナスかなと思う。この辺は、徐々に改善したらいいなと感じる。
引き続き、期待感は当然「大」なのだから。

No.11 5点 makomako 2025/08/09 11:07
一定の制限をかけた世界での推理小説です。
制限そのものを受け入れればその世界での本格推理が楽しめる。
受け入れられない人にとっては触れ合うところがないお話となってしまうのでしょう。
このサイトの方は本格推理のファンの方が多いので評価が高いのでしょう。
確かに作者は頭がよく、私のような鈍重な読者が考えるよりいつも先を言った展開を見せてくれます。
これがたまらない方はきっと面白く読まれるものと思いますが、あまり深く考えずすらすら読んでしまおうとする人にとっては、ごちゃごちゃ言っていて複雑すぎてよくわからなくなってしまったといった感想となりそうです。
私も一部推理についていけないところがありましたので、ちょっと評価が低くなりました。

No.10 7点 ぴぃち 2025/06/04 19:36
職業的犯罪者に便宜と絶対の安全を保障する、会員制ホテルを舞台にした連作短編集。
このホテル内で事件を起こした人間は、ホテルに即座に処分される。逆に言えばホテルは事件を早期に解決しなければならない。
事件は毎回、不可能犯罪。第一話が密室、第二話が宴会場で人の視線が集中するなかでの毒殺、第三話は人間消失、第四話は再び密室。謎の魅力もさることながら、真相特定に至るロジック構成がシンプルながら堅牢で感心させられた。

No.9 7点 レッドキング 2024/10/21 23:01
ハイクラス犯罪者御用達ホテルの、「治安」管理をするホテル探偵が主役の短編集。
  「アミュレット・ホテル」 三人の男女犯罪者が容疑者の密室殺人。密室作成のWhyがユニーク。7点
  「クライム・オブ・ザ・イアー」 毒殺の不可能トリック・・伝統的模範的トリックの一つね・・6点
  「一見さんお断り」 脱出不可能ホテルよりの犯人消失。二重成りすましトリック見事。7点
  「タイタンの殺人」 密室での凶器発現・変容・消失トリック複雑系・・解明後の費用対効果感はイマイチ・・6点
で、全体で7点。 SFとは違ったユニーク設定においても、全編、「密室」付きサービス。何気に凄い作家 。

No.8 7点 sophia 2024/02/01 22:13
本作は物理的な意味ではなく、治外法権的な意味での変わり種のクローズドサークルものと言えるかもしれません。起こる事件も「密室殺人」「衆人環視の毒殺事件」「人間消失」「凶器消失」とバリエーションに富んでおり飽きさせません。特に第一話「アミュレット・ホテル」の密室を作った理由と、第四話「タイタンの殺人」の5年後にまた事件を起こした理由に目から鱗が落ちる思いでした。続編も期待できそうですね。

No.7 6点 まさむね 2024/01/17 21:47
 犯罪者御用達のホテル「アミュレット・ホテル(別館)」を舞台にした短編集。
 銃火器や毒物、偽造パスポートに至るまで、電話一本で部屋にお届けしてくれるという、犯罪者にとっては夢のようなホテル。一方で、利用者には「ホテルに損害を与えない」「ホテルの敷地内で傷害・殺人事件を起こさない」という、厳格なルールが課されています。仮にホテルで事件が起きた場合、警察の捜査は一切入れさせないのですが、代わりに登場するのが「ホテル探偵」で、事件の一切の「処理」を任されています。
 こうした設定は、ちょっとユーモラスな感じもあって、個人的には嫌いではないです。各短編に工夫が施されていて、ロジックも効いています。楽しめると思います。
 しかし何だろう。ちょっと入り込みにくい短編もありました。作り込みすぎているというか…。もしかして我儘な読者なのかな?

No.6 7点 HORNET 2023/12/31 16:04
 世を忍ぶ犯罪者たちが集う会員専用ホテル。守るべきルールは2つ…「ホテルに損害を与えない」「ホテルの敷地内で障害・殺人事件を起こさない」。そのルールが破られ、ホテル内で犯罪が起きたとき、ホテル探偵桐生VS.犯罪者の頭脳戦が始まり、濃密なロジックで犯人をあぶりだされる。連作短編集。

 1話ずつがなかなかよくできたパズラーで、サクサクと楽しく各編を読み進めることができた。パズラーたるためのトリックというような、複雑で凝りすぎなものもあるのは否めないが、謎解きが好きな読者には好まれそう。
 私も好きなので、かなり楽しめた。

No.5 5点 mozart 2023/10/06 11:46
竜泉家の一族シリーズに比べると短編集なので小粒なのは良いとしてもこの「特殊設定」にはちょっと拒否反応が出てしまいました。オーナーの価値観(ホテルの外で実行されるならば殺人も含めてあらゆる犯罪に便宜を図る一方で麻薬は御法度とか)にもいささか疑問符が付くし。
それでもそれぞれの謎解き部分はそれなりに楽しめました。

No.4 7点 虫暮部 2023/09/22 12:55
 ヴァリエーションを出そうと色々工夫しているのに感心した。

 「一見さんお断り」の遺産相続は設定が雑。記述を素直に解釈するなら、アリアから相続権が失われても、その分が “親戚連中” に回るわけではない。寧ろアリアに相続させた上で取り入る(結婚するとか)方が良い手だと思う。また、お人よしのアリアが、それに反して強欲にも見えてしまい違和感あり。
 「タイタンの殺人」。捨て駒の立場に殉じ黙して死ぬキャラクターが怖い。

No.3 7点 点と点 2023/08/29 18:21
面白い。
方丈の過去作のマニア受け極振りな設定に比べるとかなりキャッチ―な設定。いつもよりもの足りないけど初重版で喜んでいる作者を見るとあまり何も言えない…

No.2 6点 ALFA 2023/07/22 16:07
「上級」犯罪者御用達の高級ホテルを舞台にした4編からなる短編集。
まず舞台設定が魅力的。さらにキャラもプロットも変化に富んでいて楽しい。

残念なのは地の文も会話もあまりに説明的なこと。
真相開示でホテル探偵が長々と「解説」するのは興ざめ。
状況説明も真相開示ももっと自然な叙述が欲しかった。

No.1 8点 みりん 2023/07/21 01:14
敬愛する方丈先生の新シリーズ。『竜泉家の一族シリーズ』がどれも馬鹿みたいに面白かったので楽しみにしていました。楽しみにしていると言っても連作短編集なのでそこまで期待はせずに購入したけど、これまたエンタメの極地ですな。

〜あらすじ〜
そのホテルは犯罪者たちの楽園。
一、ホテルに損害を与えない
二、ホテルの敷地内で傷害・殺人事件を起こさない
2つの絶対規則を破ったらホテル探偵が必ず追い詰めます。

いや〜良いねこの犯罪者ばかりなのに殺伐としていない雰囲気のホテル。『竜泉家の一族シリーズ』はミステリとしては優れているものの探偵役の魅力がイマイチないな〜と思っていたのですが、本作の名探偵とアレを兼ね備えた主人公はかなり魅力的ですよ。主人公だけではなくホテルのオーナーや「一見さんお断り」に登場する語り手など愛らしいサブキャラも。

ここからネタバレ

「アミュレット・ホテル」ではお手本のような詐術。見事!

「クライム・オブ・ザ・イヤー」では主人公以外犯行不可能に思える状況で事件が起こり、主人公の過去や役職に就いた経緯などが明かされる。てかクライム・オブ・ザ・イヤーって…(笑)

「一見さんお断り」では愛らしい語り手がホテルに潜入すると人間消失事件が。二重リングのもたらす効果が素晴らしいです。これが1番お気に入りかな。

「タイタン」では金属探知機のある部屋にどうやって凶器を持ち込んだかが鍵となるド直球の本格ミステリ。しかし凶器のすり替えをどのタイミングで行ったのかがよくわからん。「タイタンの間」が1人になった時に凶器取り出したんだよね?その時はすでに被害者の周りに人がいっぱい集まってるはずだからいつすり替えられたんだ?再読の必要あり。

作者のことを鬼贔屓してるとは言え「孤島の来訪者」と同じ8点はさすがに甘すぎか… でも新作は1人の評価がそのまま作品の評点になるので甘めに(笑)


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