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[ 本格/新本格 ]
少女には向かない完全犯罪
方丈貴恵 出版月: 2024年08月 平均: 7.33点 書評数: 6件

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講談社
2024年08月

No.6 7点 レッドキング 2025/01/31 17:52
小六少女と幽霊青年の探偵コンビってな、とんでも設定にして、少女の両親殺しと幽霊自身の殺害事件を解明して行く、地道ロジックのミステリ・・かと思いきや、多重ドンデン返し「チョコレート殺人事件」(文字通りなんだなぁ、これが)の展開、そして、くどいまでのドンデンどんでんエンド。
最初から「うゆうさん」「からす」「まほろ市」出て来て、ん?麻耶雄嵩ネタ?おもったら「母が新本格ミステリ大好き人間」て、やっぱり(^O^)そうか。作者、早坂吝同様、麻耶の京大後輩だったなぁ・・おもったら、単なるくすぐりネタどころか、主人公青年、「夏と冬の奏鳴曲」から「木製の王子」に至る「如月烏有物語」のオマージュの如きヤツであった(なんと、嬉しや 1点オマケ)。

No.5 7点 メルカトル 2024/12/13 22:15
黒羽烏由宇は、ビルから墜落し死につつあった。
臨死体験のさなか、あと七日で消滅する幽霊となった彼は、
両親を殺された少女・音葉に出会う。
彼女は、出会い頭に彼に斧を叩き込んで、言う。

「確かに、幽霊も子供も一人じゃ何もできないよ。
でも、私たちが力を合わせれば、大人の誰にもできないことがやれると思わない?」
Amazon内容紹介より。

間違いなく力作だと思います。特に第四章とエピローグは圧巻でした。しかし二転三転する多重推理がくどくて途中でちょっと、それはやり過ぎじゃないのかと思いました。せっかく驚きの犯人にまで到達したと思ったら・・・だし。最後までこのテンションが保ち切れなかった印象で、もう誰が犯人でもいいじゃん、みたいな感じになっていまいました。どの推理にも絶対的な必然性が感じられず、その意味では説得力に欠けるのがやや残念でした。

それでも怒涛の、畳み掛けるような展開はそれまでのスローテンポを凌駕しこの趣向が好きな読者には、堪らない魅力を与えるものと思われます。最終章の中盤あたりで、これは8点でもというのがチラッと脳裏を過ぎりましたが、解決編をやや引っ張り過ぎて、逆効果になってしまったのが惜しまれます。
ところで、この人は麻耶雄嵩のファンでしょうか。大学の後輩ではありますが。

No.4 5点 虫暮部 2024/11/24 11:12
 多重解決の最後の最後は “意外な真相” と言うよりも “話を逸らした” 感じ。真犯人の属性&動機がアレなら、主人公みたいな立場の者がもう一人存在したってことであって、それは割と誰でも良くない? “あの儀式を受け継げるのは、あの人の○○であるその人だけ” と限定するのは論理的ではないと思う。
 
 そしてそれ以上に、音葉の言動が色々と鼻に付いて読みづらかった。作品全体の評価を下げるレヴェルで。少年時代の御手洗潔や真門浩平『バイバイ、サンタクロース』は普通に読めたから、“分不相応な子供” と言う点ではなく個のキャラクターの問題なのだろう。

 “柄” とか “赫子” とか、ネタの為みたいなネーミングは(わざと目立つようにやってるにしても)如何なものか。
 否、これは “姓名が人生を支配している” と言う或る種の運命論の反映で、作品世界を一つの箱庭として鎖す手段なのかも知れない。

No.3 7点 人並由真 2024/11/05 12:39
(ネタバレなし)
 2014年3月14日の伏木県。「私」こと当年30歳の黒羽烏由宇(くろば うゆう)は「完全犯罪請負人」として、法律の網の目を逃れる多くの悪党をひそかに破滅させてきた。だが黒羽はその夜、何者かにビルの屋上から突き落とされる。やがて7月、黒羽は重傷で意識のないまま病院で昏睡する己の肉体から幽体離脱して「幽霊」となっている自分を認識した。4カ月前に請け負った依頼の件を思い出した黒羽の幽霊は、とりあえず、同夜に依頼人と落ちあうはずだった約束の場所に向かうが、そこで彼は思わぬ人物と出会う。

 方丈作品は今回が初読み。
(「竜泉家の一族」シリーズに乗り遅れたモンで・汗。)
 でもって本作は単発作品、もしくは新シリーズらしい? しかも本サイトでは先に読まれた方お二人が9点の高得点。さらにSRの会のメーリングでは「今年のベスト1候補」という声も聞こえてくる。
 ……じゃあ、と思ってかなりの期待値を込めて読んでみた。

 約460ページの大部の紙幅(本文は一段組だが)をスラスラ読ませるリーダビリティ、話の転がし方、登場人物の描き分け(&読者への印象の刻み方)、さらにミステリとしての手数の多さなど、確かに出来のいい作品だとは思うし、総体的には十分、面白かった。

 ただ一方で作品の構造上、一種の息継ぎ的な転調の箇所があり、そこでそのあとの大雑把な流れが見えてしまう。この辺は作りこんだ作品ゆえに生じる構造矛盾的な弱点を感じた(まだこれくらいの紙幅が残ってるなら、たぶん、このキャラにはこういう役割があって……と察してしまうようなアレだ。なるべくネタバレにならないように書きたいので、あんまりくどくは言わないが)。
 あと、真犯人の(中略)計画は微細に練ったものだが、その分、そこでそんなに構想した側の思い通りに相手が動くものだろうか……という違和感を感じた。
 この辺も、細部まで工芸的に組み立てた作品に感じる、アクチュアリティの有無の問題である。こんなことを考える自分は、もしかしたら本作のあまりよくない読み手なのかもしれないが。

 力作で秀作なのは存分に認めるし、すでに定評の作者の力量はたっぷり実感させてもらったが、優秀作、傑作とまでいくとちょっと、自分の感触とはズレてしまう、というのが現時点の正直なところ。
 メインキャラの面々の動機に(中略)という基本的な大きな軸の文芸があるところなんかはとても好みなんだけど。
 
 結論:前評判が高く、自然と期待値が高くなってしまったのが、自分の場合、災いしたようです。
 これから本作を読む人が、当方の(部分的に)ケチめいた感想を先に読んでその反動で「なんだやっぱり傑作じゃんん」と思われるなら、正にソレはソレで大いに喜ばしい。

No.2 9点 sophia 2024/09/16 16:28
ネタバレあり

あらすじを読むと特殊設定ミステリーのように思われるのですが、それは調査手法や展開のために用いられるだけであり、対象となる事件そのものは現実的なものです。本作は本格でありサスペンスでありクライムノベルでもあるという実に贅沢な構図。慎重で臆病だった烏由宇が行動的に、短絡的で向こう見ずだった音葉が思慮深く、互いに成長していくバディものとしても優れています。読んでいてオーバーラップしたのは「レオン」「ゴースト/ニューヨークの幻」「シックス・センス」「デスノート」あたり。そして個人的に納得のいく多重解決ものを初めて読んだ気がします。強いて言うと、ある人物に罪を着せるプランが偶然に助けられている点がマイナスポイントですかね。しかしこの作家さんは本当に傑作しか書きませんね。

No.1 9点 みりん 2024/08/24 10:14
私は本サイトのレビュアーの方々を大まかに4種類に分類してます。
思ったことを率直に書く「感想型」と作品の位置付けや優劣を客観的に書く「評論型」で2通り。お気に入りの作家の評点を甘く付ける「贔屓型」、好きな作家でも作品に対しては一歩引いて吟味する「平等型」で2通り。まあ「感想型」のなかにもパッション系とか評論入り混じり系とか色々いらっしゃるわけで、十人十色なこのサイトを眺めるのは楽しいですよね。
で、私はというと完全なる「感想/贔屓」型。よって評点はバリバリ贔屓してます。下記の感想もポジティブ部分ばかりに着目してしまっています(笑) なのであまり参考にしない&期待値上げないでください。

【ここから感想】
「少女×幽霊」最弱にして最強の異色コンビによる復讐譚です。
幽霊と聞くと方丈先生お得意の特殊設定か?と思いきや、今作は鳴りを潜めています。その代わりに中盤の不気味な犯人とのチェイスには心臓が縮み上がり、圧巻の多重解決が読者に襲いかかってきます。雪密室や天井の足跡などの不可解な謎を起点として扱われる膨大な伏線の量とクレイジーな謎解きにはもはや唖然というほかありません。そしていつも通り優秀なパズラーとしてだけでなく、小説としても進化を遂げている方丈貴恵の新境地!この飛ぶ鳥を落とす勢いのまま、本格の道を突っ走って欲しいです。多重解決が好きな方にオススメですね。


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