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[ 本格/新本格 ]
時空旅行者の砂時計
〈竜泉家の一族〉シリーズ
方丈貴恵 出版月: 2019年10月 平均: 7.33点 書評数: 3件

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東京創元社
2019年10月

No.3 9点 sophia 2021/02/10 18:23
中盤にマリスやらカシオペイアやらが出てきたときには、ここまで細かく積み重ねてきた伏線が無視されてほぼSFになってしまうのではないかと危惧しましたが、最後まできちんと本格ミステリーをしていました。世界観はスケールが大きく難解で、事件に関する情報量も多くて整理していくのが大変にも関わらず、一気に読ませる力があります。この作品の全てを理解できたわけでもありませんし、こじつけのような見立てが必要なのかなどと考えると点数を付けるのは非常に難しいのですが、SFマニアであろう著者の意欲を買ってこの点数とします。

No.2 6点 虫暮部 2020/06/02 12:09
 SF設定を組み込んだミステリと言うのはもはや珍しくもないので、その点だけ取り上げて変に騒ぐことはないし、普通のミステリと同列に並べて正当に評価することが出来る。本作は本格ミステリとしては結構王道で、手を抜かずに色々組み立てていると思うが、優等生的であるがゆえの物足りなさ、パターンをこなしている感じ、も否めなかった。内容ではなく書き方の問題が大きいかと。
 あのSF系トリックには、そんな手があったかと感心した。一方、Tさんの死因が日記と異なるのにはどういう意味があるのか。タイム・パラドックスは苦手だ。
 第四章の筆談はもっと筆談っぽい文体にしたほうが演出上良いと思う。

No.1 7点 名探偵ジャパン 2020/01/29 13:51
鮎川哲也賞受賞作品だというのに、発売から三ヶ月一件も書評がないというのはどういうことでしょう?
やっぱり皆さん、このタイトルを見て「あ、これヤベーやつだわ」と嗅覚を発揮したのでしょうか?
本作の概要は、「主人公が過去にタイムトラベルして、妻の命を救うため、その遠縁となっている過去の連続殺人事件の謎を解く」というものです。これを読んで「俺の嗅覚は正しかった」と安心した方もいると思います。さらにこの「タイムトラベル」という要素は舞台設定だけで終わりません。トリックにもがっつり絡んできます。正真正銘「特殊設定ミステリ」なわけですね。ですので「この手のミステリが苦手」という方は回避してもいいのではないかと思います。私は、それでもよく出来ていた(「特殊設定」のトリックへの使い方も含めて)と感じたので、この点数を付けていますが。

ここからは余談です。
本作(及び今回の第29回鮎川哲也賞への全ての応募作品)は、時期的に、近年まれに見る大怪物作品へと成長した第27回の受賞作品を踏まえたうえで応募されたものであるためか、巻末に掲載されている講評にあった最終選考作品にオーソドックスなミステリは一本もなく、全てが何かしらの「色物系」属性を持った作品だったようでした。
そもそも「新人賞」には「これまで誰も読んだことのないような斬新な作品」が求められがちですが、それを考慮するとしても、もはや現代ミステリにおいては「オーソドックスなミステリ」は必要とされていないのかな?と少し寂しい思いをしました。「江戸川乱歩賞」や「横溝正史ミステリ大賞」などの受賞作を見ても、「色物系」「社会派」「医療系」のどれかが受賞している印象がありますし。


方丈貴恵
2020年11月
孤島の来訪者
平均:8.67 / 書評数:3
2019年10月
時空旅行者の砂時計
平均:7.33 / 書評数:3