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ミステリ初心者さん
平均点: 6.23点 書評数: 324件

プロフィール高評価と近い人 | 書評 | おすすめ

No.324 5点 狂骨の夢- 京極夏彦 2022/11/15 09:01
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 分冊版を買いました。3冊に及ぶ超大作でした…。正直、少し疲れましたね(笑)。
 読み進めるたびに謎がどんどん増えてき、明らかに現実ではありえないような状況ばかりになります。すさまじく散らばっている謎たちが、はたしてうまく収束するのか不安でしたが、最後には一つにまとまっていくのが見事でした。

 このシリーズは本格推理小説として捉えないほうが楽しめるとはおもいます。しかし、推理小説的要素が無いわけではありません。小説上朱美が一人のように見えて、実は二人という、よくみるオーソドックスな叙述トリックが使われておりました。思えば、大量のヒントがありました。私はこれに気づかずに悔しい思いをしました。登場人物たちは皆、宇多川と朱美の二人をにみていませんし、隣家の親切な夫人などは非常に怪しんでおりました。なのに、この叙述トリックがわかりませんでした(涙)。

 1000年や500年に渡る悲願を果たそうとする人たち、父親の病を治そうとする人、勘違いで復讐をする人…。すさまじく多いイベントが絡み合って力作であると感じます。しかし、これらにはいまいち興味がそそられず、途中で読むのが苦痛に感じてしまった部分もありました。
 また、前作や前々作と比べ、小説的な厚みは今作が一番ですが、やや質が異なってしまい、それが自分の好みと違ってしまいました。推理小説的な試みは前々作、圧倒的なインパクトとホラー感は前作にそれぞれにあり、それと比べると大分魅力が落ちてしまったように思えます。これは私の好みであり、今作のほうが好きという方も多いと思いますが。

 あとは、私の好きな榎木津と関口の登場が少なかったのもやや不満でした。京極堂の関口に対する偉そうで辛辣な態度にもイライラします。

No.323 6点 Zの悲劇- エラリイ・クイーン 2022/10/05 22:50
ネタバレをしております。

 XとYの悲劇を読んでからすさまじく長い時間が経ってしまいました(笑)。X、Yとそれぞれ趣の異なった名作ですが、ZはややXよりの、もっというと国名シリーズ初期のような細かい論理の積み重ねによる消去法で犯人を指摘するタイプの推理小説でした。本格度は極めて高く、早川版あとがきいあるおうに、国名シリーズに使うはずだったものを流用したのではないかと疑惑がもたれるぐらいです。

 珍しい?ことに、神の視点でもなく、レーンの視点でもなく、ペイシェンスという女性が主観の文章でした。それにより、若干のサスペンスや冒険、恋愛の要素も加わり、なんだかみずみずしい小説になっていました(笑)。

 殺人が早くに起こるものの、すこし社会派なストーリーが続いたため、社会派が苦手な私にとってはやや読みづらさを感じました。
 レーンの推理は見事だったものの、あまりの細かさにピンとこないことも多々ありました(笑)。
 また、私の苦手な右手左手問題もありました。これは小説によってまったく異なった話や論理になってしまい、あまり好きではありません。
 さらに、医者ならば生死の確認をミスするはずがない…というのは何となくわかりますが、あれって素人でも判断を誤るものなのですかね…? ほとんどの人がそうだと思いますが、そういった経験が皆無なので、なんとも想像に難しかったです。

 電気椅子での処刑のシーンは、クイーンがわざわざ書くのなら推理に必要なシーンなのだ…と予感しつつも、1から10までまるでわかりませんでした。私の推理は、推理と呼べるものすら形成できない完敗でした(笑)。

No.322 7点 求婚の密室- 笹沢左保 2022/09/25 11:35
ネタバレをしております。

 非常に読みやすい文章とプロットですいすい読み進められ、あまり時間をかけずに読了できました。
 金も権力もある人物が曰く付き(?)な関係の者を多く招待したパーティーで、場所を移さず割とすぐに殺人事件が起こります。余計な部分が少なく、テンポもよかったです。
 途中、法廷ではないですが、2人の婿候補による推理バトルが楽しめます(笑)。ページ数や展開からそれが真相ではないことは予想がつきますが、こういうものが取り入れられていると事件の概要がスッと頭に入ってくるのでうれしいですね。

 推理小説部分も優れていました。
 密室というだけあって、どうやって殺したか?がメインの謎になってきます。共犯であり、子供を使っているので、ややアンフェアなのかもしれませんが、真相を読んだときは思わず膝を打ちました(笑)。ミネラルウォーターのボトルがプラスチックであったことはもっともっと考えなければなりませんでした(笑)。60歳の被害者が人2人分(しかも若子はやや肥満)を壁づたいとはいえ肩車できたは疑問ですが、これは私の思考の盲点をつかれました!
 私は富士子の特殊な生い立ちやキャラクター、絵になるとかそういうことで犯人だと決めつけておりました(笑)。しかし、アリバイや密室の謎がまったく解けず、白旗でした(笑)。私もロープで脱出したかと考えましたが、途中の推理バトルでその説が登場してがっかりと安心を味わいました(笑)。

 総じて、本格度の強い推理小説で満足しました! 読みやすく、密室らしい密室、意外な(?)犯人と意外な殺害方法。少々ロマンチックな要素もありましたね…私にとってはベッドシーンがしつこくてもう少し軽いほうがよかったですが(笑)

No.321 5点 火天風神- 若竹七海 2022/09/18 19:21
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 台風によりリゾートホテルが閉鎖空間になり、死体や暴漢や火事などスリリングな要素が多数登場するオーソドックス(?)なパニックものでした。
 登場人物がかなりおおく、主要キャラクターに関してはその背景も書かれるため、かなりのページ数があります。しかし、あまり読みづらさを感じなかったです。

 よく映画に出てくるような要素が多数あり、ツボを押さえている作品だと思いましたが、ページは進むもののなぜだかあまり面白さを感じませんでした…。映画でパニックものというと、無条件で面白いような感じなのですが(笑)。それとも、この本が映画化されれば印象が違ってくるのでしょうか? ミステリが映画よりも小説の媒体のほうが向いているのに対し、パニック物は小説より映画のほうが向いているのでしょうかね?

 ラストは大団円とはいかないまでも、多くのキャラクターに希望のあるエンディングなのはよかったです。ただ、丁寧に背景を書かれているキャラクターに関しては、意外なほどあっさりと終わってしまったのが気になりました(笑)。

No.320 7点 危険な童話- 土屋隆夫 2022/09/06 18:52
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 個人的には警察が主観の文章の小説が苦手で、読見進めるペースが遅くなってしまうことが多いのですが、この本はそれほど苦もなく読み進められました。登場人物が適度に絞られていて、小説的には犯人が分かり切っており、余計なアリバイの捜査などがカットされているところが良かったです。
 作風は極めて本格度がつよい推理小説でした。細かくて数が多いアリバイトリックが主で、それほど大がかりな大トリックではないのですが、考えてもなかなかわからない工夫を凝らしたもので、大変満足しました。
 凶器や警察への手紙など、逮捕されることをトリックに組み込んだ犯人はあっぱれでした。

 危険な童話というタイトルにもある通り、童話を用いて子供を操り、遠隔操作のようなトリックが印象的でした。警察は子供にも注目していたので、犯人にとっては危ない橋ではありますが、虹の色などで出す順番を指定していたりするところもアイディアを感じました。また、小説内で少しずつ童話が書かれており、それがヒントになっている構成もセンスを感じました(笑)

 総じて、細かくて緻密なトリックを味わえる、本格推理小説でした。大トリックやドンデン返しがないものの、それが逆にシブく感じます。より読みやすく、よりドラマティックな感じがある鮎川作品のような(笑)。唯一、好みで無い点を挙げるとすると、犯人に同情してしまう事件の背景や、ラストがやりきれません。執念で犯人を追いつめた木曾刑事も無念でしょうね(涙)。

No.319 6点 殺意の集う夜- 西澤保彦 2022/08/30 19:28
ネタバレをしております。

 西澤保彦さんの作品は、読みやすいものが多いです。本作もかなり読みやすく、かつクローズドサークルなのもあり、読了までにさほど時間がかかりませんでした。
 本格推理小説というよりかは、テンポが良すぎるサスペンスの色が濃いです。登場人物全員がいわくあり気であり、なにかしらの嘘があります。そのため、あまり犯人当てを楽しむことはできません。まさに、殺意の集う夜といったところ。ただ、ラストに大きなドンデン返しがありました。

 ドンデン返しについて。
 私は、登場人物の名前(特に主人公格のマリ)がはっきり表記されてないので、露骨に怪しんでいました。しかし、なぜか性別の錯覚トリックに行きつきませんでした(涙)。これだけ多くの性別の錯覚トリックを用いた本を読んでいるのに…。どうやら私は、男性→女性より、女性→男性のパターンのほうが苦手で当てられないようです。
 警察・三諸の視点の智恵殺しの犯人である男が出てこないのも疑うべきでしたね。あとは、登場人物の名前に漢数字が使われていますが、六が出てこないのもヒントなのでしょうね。

 総じて、読みやすくテンポが良く、衝撃の展開でサスペンスチックな良い作品でした。ただ、推理小説としては、性別の錯覚からのドンデン返しは非常によく見るトリックであり、既視感がつよいです。もうすこし、個性が欲しかったところです。

No.318 5点 死者はよみがえる- ジョン・ディクスン・カー 2022/08/22 22:47
ネタバレをしております。

 新訳版を買いました。新訳にもかかわらず、やや読みづらさを感じてしまいました(笑)。訳が悪いというよりかは、場面の移り変わりが急だったり、本の始まりの時点ですでに2つの殺人が終わっているためかもしれません。

 推理小説部分について。
 かなり意外な犯人でした(笑)。これは当てようがないと思います(笑)。フェアかアンフェアか言われれば…まあアンフェアなのかもしれませんね(笑)。
 被害者の首にタオルが巻かれていたり、ジェニーが特殊な方法で絞殺(?)されているのを見て、逆に両手が使えない人間が犯人ではないかと一瞬だけおもいました…。が、すぐに犯人候補から外してしまいました。ロドニー殺しの際に使ったベッドのくぼみは、ヒントがありましたかね…?
 また、非常階段からリネン室の窓へ行けるなど、思いもよりませんでした。かなり大きなミスリードであり、私もまた7階に居た人々の中に犯人がいると錯覚しました。たしかに、リネン室には誰も入られませんから、犯人が入ったとするならば外から…なのでしょうが、あの図から外から入られるなどとても想像できませんでした(笑)。これもなにかヒントがあったらよいのですが、ありましたかね?
 極めつけは、留置所に隠し抜け道がある点(笑)。ここの部分はカーも困ったでしょうね(笑)。強引さを感じました。

 既読の方に少しヒントをもらいつつ読みなおしましたが、ロドニー殺しにおけるベロウズの犯人の証言から、「証言の犯人の容姿が警察に似ているな?」と思い、警察官と勘違いしたのではというところまで考えました。画像検索すると、なるほどベロウズの証言と警察の容姿が似ております。ただ、登場人物に載っている警察はハドリー警視だけですし、到底犯人とは思えない…。私の思考はそこで止まりました(笑)。

 総じて、読者が犯人を当てるにはかなり難しい…アンフェアに近い小説でした。しかし、カーらしいドンデン返しや意外な犯人が存分に楽しめる作品でもあります。私の好みは本格推理小説ですので、5点としておきましたが、もっと高い点でも納得できる本です。

No.317 6点 図書館の死体- ジェフ・アボット 2022/07/29 18:41
ネタバレをしています。

 裏表紙アガサ賞受賞作品と書いてありましたが、なんとなくプロットが似ている気がしなくもなかったです。事件を追うごとに、登場人物たちに隠された秘密が暴かれていって…最後に意外な動機と犯人があきらかになる系です。
 緻密なロジックによる犯人当てや、アリバイトリック的なものはありませんでしたが、2時間ドラマのようなテンポの良さを感じました。非常に読みやすかったです。
 自身の指紋しかついていない凶器など、不利な状況に追い込まれる主人公が素人探偵になって事件を推理することや、恋愛要素、姉や甥や本当の父との家族愛など、どこかD・M・ディヴァインを思わせるような要素もありました(他の方も書かれていることですが(笑))

 推理小説的要素というと、本格推理小説としてみた場合、やや薄味でした。先にも書いた通り、ヒントが少ないため犯人当てができないことや、アリバイトリックを解く楽しさはありませんでした。あくまで、動機当てや意外な犯人を楽しむ作品でした。

 総じて、さまざまな人間模様、感動的なラストなど、物語的な厚みを感じる作品でした。ただ、本格好きの私からすると、もう少し、読者に解ける問題を提示するような作品がみたかったです(笑)。

No.316 5点 「ナイルの甲虫」殺人事件- 吉村達也 2022/07/20 00:36
ネタバレをしております。

 タイトルにワンナイトミステリーとある通り、中編ぐらいのページ数です。すぐに本題に入るし、エジプトの旅行記もしつこくなく、大変読みやすく仕上がっております。

 推理小説的な「どうやって殺したか?」についての問題は、ちょっと推理が難しいです。デパートで売っているマジックグッツ的でした。
 それよりも、伏線が張ってあるドンデン返しのほうが楽しめました。

 中編程度のボリュームなので、そこまで凝ったトリックや犯人当てはさすがに無理ですが、読みやすくドンデン返しが楽しめる本格としては良い作品でした。

No.315 6点 偽のデュー警部- ピーター・ラヴゼイ 2022/07/14 19:30
ネタバレをしております。

 非常に特殊な状況のミステリでした。自分の妻を殺そうとした犯人が警部と間違えられ、別事件での名探偵役になってしまうのは面白いですね。
 ただ、船に乗る前までがやや退屈な展開でした。船に乗ってからはそれほど苦も無く読了できました。

 本格推理小説としてはやや薄味というか、犯人当てやアリバイトリックなどはありません。ドンデン返しのある、広義でのミステリーといった感じです。
 ラストがそこそこ大団円で終わるのは爽やかでいいですね(?)。

 私はリディア殺害シーンがない、ぼやかされて書かれているので、絶対生きていると思っていました。なにかの叙述トリックになっていると思ったのですが、どちらかというとドンデン返しのための要素だったようですね(笑)。なるほど、船に乗っていなかった(すぐに降りてしまった)とは思いつきませんでした。

 総じて、海外翻訳特有の読みづらさは前半以外ではありませんし、明るくて読みやすい本だと思いました。本格度がもう少し高ければもっと好みなのですが、楽しめたので6点としました。

No.314 6点 あした天気にしておくれ- 岡嶋二人 2022/07/01 19:49
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 私は競馬については無知だったのですが、それでも大丈夫でした(笑)。非常に読みやすい文でテンポもよく、一気に読み終えられました。

 始めは倒叙形式のような感じで、主人公達が狂言誘拐を企てますが、別の犯人が誘拐の乗っ取りをして…といった流れです。競馬という特殊な設定を活かした意外な方法での身代金奪取と、意外な犯人が楽しめます。
 私は、セシアが怪我をする前にもう入れ替わっているかもしれない…とうっすら頭によぎったぐらいで、後のことはわかりませんでした。いろいろな偶然も絡みますし、推理小説としては読者が全て推理できないとは思います。

No.313 7点 ジャンピング・ジェニイ- アントニイ・バークリー 2022/06/24 19:19
ネタバレをしています。

 アントニイ・バークリーの本はまだ3冊目なのですが、明るい作風にユニークな設定が面白いですね。本作も非常に面白い設定でした。
 探偵が犯人を庇って証拠を隠蔽したり、ミスが発覚して自分の首を絞めたり、たの推理小説では見られないような設定でした。もちろん、それとは別に、犯人がだれであるか?という検討も楽しむことができます。
 また、海外翻訳物にしては非常に読みやすかったです! 最初のパーティーのシーンでは、多い登場人物に扮装もあり、読みづらさを感じました。しかし、ロジャーが椅子についての発見をしてからはかなり読みやすくなり、そこからは一気に読み終えることができました。

 推理小説的要素について。
推理小説的には、やや薄味というか、犯人当てにはなってはいなかったです。私は、イーナが梁に登れるシーンから、自殺だと決め込んでいました(笑)。結末はあまり予想できるものではないですね。
 ただ、ガチガチの本格推理小説としてではなく、広義のミステリーとして読んだ場合、大変楽しむことができました。

 総じて、単純に読みやすく面白い本でした(笑)。イーナは自己顕示欲が強くて面倒な女性だったにしても、ややかわいそうな気がしますが(涙)。

No.312 6点 卍の殺人- 今邑彩 2022/06/14 20:57
ネタバレをしています。

 同作者の他作品も読んだことがありますが、それと同様に非常に読みやすかったです。全くストレスなく読み終えることができました。
 さらに、ギスギスしている(?)旧家の館ものであり、連続殺人があり、クローズドサークルではないものの一つの館で話が完結します。これらの要素により、ほぼ一瞬とも思えるほど早く読み終えられました。

 推理小説的要素について。
 大きな事件は2度。殺人事件は3度起こります。
 私は館の地図を見た途端、嫌な予感がしました。そして、亮子が付き合って3カ月であること、宵子が亮子を連れて醸造所を解説して回ったシーンなどを見て、ある程度は真相と同じものを予想しました(笑)。最初の事件が起こったのを見てからはもう確信しました(笑)。やや、予想されやすいというのは欠点かもしれません。ただ、それはフェアさの現われでもあると思います。

 不満点はあまりないのですが、亮子が良い人過ぎましたね。ラストがちょっと淡泊に終わります。亮子と宵子の対決、匠の葛藤を描いても面白かったかもしれません(笑)。

 総じて、読みやすい文と、館ものらしいダイナミックなトリックが持ち味の作品です。作者あとがきにかかれたような「酷評された」のは信じられません。本格推理小説への愛も感じられる一冊でした。
 佳作と呼ぶにはトリックがパンチ不足感が否めませんが、楽しめました。

No.311 6点 扼殺のロンド- 小島正樹 2022/06/09 19:47
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 文章が非常に読みやすく、あまり話が脱線しないため、すいすい読むことができました。また、キャラクターがややコピペ感が否めないものの、あまり癖もなく、読書をじゃましないいい塩梅でした。

 推理小説的要素といえば、サービス精神旺盛な密室3連発です。また、随所にミスリードがちりばめられており、全力で読者を欺いてきます。プロローグからしてそうですね。ある程度推理小説を読んだ読者なら、推理小説のプロローグが全く信用のならない紛らわしいものというのは周知のことでしょうが(笑)。
 密室はというと、これはやや偶然の要素や、共犯による工作、犯人の失敗などでできたものであり、読者が論理的に真相へたどり着くのは難しいものでした。しかし、腹が割かれた死体と高山病の死体の二重密室はインパクトが強く惹きつけられます。
 手を切る→手を縫合するといった、狂気的なアリバイ作りもよかったですね。

 総じて、叙述トリックなどがあまり用いていない、正道?のドンデン返しが楽しめる作品です。
 文庫版あとがきに島田荘司の名前が挙がっていましたが、読者が論理的に当てられない作品というのが共通しておりますね。島田作品のほうがもっとインパクト重視なのに対し、本作のほうがやや本格チックな分、インパクトの面では劣っているかもしれません。しかし、馬鹿ミス度は島田作品のほうが上でしょうかね(笑)

No.310 6点 時間島- 椙本孝思 2022/05/31 18:44
 ネタバレをしています。

 読みやすそうなクローズドサークル系をチョイスして買いました(笑)。
 表紙がスーツ姿の志々雄真実のような漫画っぽい絵なので、ライトノベルのような雰囲気です。しかし、特にライトノベルというわけでもなく、標準的なよくあるクローズドサークル系のミステリとして読むことができます。
 それでいて文は読みやすく、またSF要素が入っておりますがそれほどしつこくなく、説明なども必要最低限であり、キャラクターの書き分けもうまくて、読了まで時間がかかりませんでした。

 クローズドサークル系のミステリだけあって、ラストはドンデン返しが用意されています。ミステリとしても満足な出来だと思いました。
 私は、ミイラ男が記憶喪失なのをみて、犯人はまゆ=ミイラ男か?と思いましたが(しかしアリバイはある(笑))、なんと犯人らしい犯人はクローズドサークル内にいないという、ミステリ好きの特性を逆手に取ったようなアンチミステリ的トラップにまんまと引っかかりました(笑)
 ミイラ男のメールでの指示が100%成功するとは限りませんが、このアイディアは面白く感じました。

 初めて5年後皆にメールを送ったまゆは、何を考えて送ったのでしょうね? 本作の物語上では、アイドルとして成功した現在をの状態を保つために5年前へメールを送ったことになっております。それは、事件の際に佐倉からメールの存在を明らかにされたから出た行動です。佐倉が死ぬシーンでは、すでの本作の物語上ですべての登場人物にメールを出していた(たぶん)ことがわかります。本作の物語ではすでに何周かした世界だと思いますが、最初に送ったのはどういった状況だったのでしょうか? 本当に怪我をして、奇跡的に助かって、事件を止めたいとしたら、全員を殺害させるようにコントロールするようなメールは出さないと思いますし…。

No.309 6点 黒龍荘の惨劇- 岡田秀文 2022/05/25 19:01
ネタバレをしております。

 明治時代が舞台の推理小説です。伊藤博文など、実在の人物も多少出てきて、すこし壮大な話もありますが、基本的には横溝正史の金田一シリーズのような楽しみ方のできる作品でした。
 黒龍荘という、かなり大きな館が舞台であり、クローズドサークルかは微妙ですが、ほぼ館で話が完結するので読みやすくテンポもよかったです。
 また、キャラクターに癖がなく、最近の推理小説に登場しがちな漫画やライトノベルのようなキャラクターは出てきません。ただ、逆に言うとあまりキャラ立ちしていない人物が多く、特徴的な名前の探偵である月輪も凡人のように見えます。しいて言えば、偉そうな態度をとってもいざとなるとポンコツ気味な谷越警視、たおやかな女性かと思ったら緊急時には江戸っ子の啖呵をきって棒を使う蘭子がよいキャラクターでした。

 推理小説部分について。
 非常に大がかりな大トリックが楽しめます。ただ、2014年発売にしてはすこし既視感があり、個人的に大きな驚きは感じませんでした。
 また、大トリックをするとやはり無理がでてきます。不可能犯罪も、ここまで多くの共犯者がいてしまっては、謎でも何でもありませんね(笑)。

 総じて、佳作にはあと一歩足りない作品ですが、文は読みやすく雰囲気はよかったです。本格度も高く、読んで損はありませんでした。

No.308 5点 九尾の猫- エラリイ・クイーン 2022/05/13 19:12
ネタバレをしております。

 正直に言うと、かなり相性の悪い本でした。
 まず、非常に退屈で読みづらい文章でした。興味がそそられず、ページが進むのも遅かったです。500ページ近くありますが、250ページぐらいに収めてほしいぐらいです(笑)。
 主人公エラリー・クイーンがあることで自嘲的というか、自己卑下がしつこくて、煩わしかったです(涙)。

 推理小説的要素は、もっとガッカリなものでした。
 読みづらい文章を我慢して読んでいて、ラストのどんでん返しがコレ…? 国名シリーズのようなロジカルな要素もなく、不可能犯罪もなく、意外な犯人がいるかと思えばミステリ好き100人中98人が予想するような犯人…。この作品の良いところがわかりません。アガサ・クリスティーならミスリードに使うような犯人で、さらにどんでん返しがあるでしょうね(笑)。

 エラリー・クイーンの作品ということで期待値が上がりすぎてしまったようです。ただ、最後のエラリーを激励?する博士のセリフは良かったです。

No.307 6点 密室の鎮魂歌- 岸田るり子 2022/04/29 19:26
ネタバレをしております。

 タイトルにある通り、密室ものです。3つの密室が登場し、豪華(?)です。
 物語は、基本的には麻美が主人公の文章で進みます。ちょっと自己肯定感の少なめなキャラクターで、いろいろな苦悩が書かれており、すこし読みづらさも感じました。麻美の心情が良く書かれているかと思いきや、高木のや一条の死体に対するリアクションは淡泊な印象をもちました(私だけかもしれませんが)。
 また、真相が明かされると、殺人者たちの汚い部分が細かく書かれております(笑)。

 推理小説的な要素について。
 密室が3つ。あとは、意外な犯人とその真相。5年前の事件と、現在の2つの事件では全員犯人が違うという複雑な物語でした。

 密室について。
 3つの密室がありましたが、最初の1つは拍子抜けするというか、あまりにも古典的というか、古典的過ぎてわからなかったぐらいです(笑)。
 2つ目の密室が最も凝っていて、私もわからなかったですし、面白くも感じました。密室の外から死体を動かすのは前例がありますが、キャスター付きの椅子を利用するのは盲点でした。ただ、小説のように成功するかはちょっと疑問ですね。
 3つ目の密室は、頭パープリンな私には理解できませんでした(笑)。どうやったんですかコレ? 解説が無いようなのですが?

 総じて、ストーリーや殺人者が殺人を犯すに至るまでを細かく書かれていて、かつその伏線もよく張られていたと思います。タイトルに密室とつけるにはやや力不足な密室という感じは否めませんが、邪道ではない密室なので好感が持てました。

No.306 7点 魍魎の匣- 京極夏彦 2022/04/23 00:38
ネタバレをしております。

 純粋な本格推理小説というよりかは、広義でのミステリーです。ホラーとして読んだ方が楽しめると思います。
 戦後の雰囲気、妖怪や宗教や占い霊能力の話、カナコ殺人未遂事件にバラバラ殺人事件、カナコ消失、木場の恋(?)、久保の狂気…長さに見合った、濃厚な作品でした。京極堂のいう通り、推理小説的には一本の事件でもなく一人の犯人でもありません。しかし、それぞれの要素がうまく物語に絡んでおり、よくまとまった印象なのは素晴らしいです。
 また、個人的には、姑獲鳥の夏にくらべて読み易さが向上した印象があります。これは原因がよくわかりませんが、姑獲鳥の夏は鬱ぎみの関口による主観文章が大半であり、すこし暗かったように思えましたが、それに対し今作は鳥口や榎木津など明るくて面白いキャラクターの出番も多かったせいかもしれません。

 推理小説的要素について。
 大きなトリックや論理的犯人当てはありません。カナコの消失トリックも、さんざん伏線があったので、発想自体は気づきました。ただ、あそこまで大幅に取り除かれていたとはまったく予想できませんでしたが…(涙)。
 消失トリック自体よりも、美馬坂のしていたこと自体がおぞましく感じられ(そう感じること自体が間違っているかもしれませんが)、ホラーの感じが強いです。久保の狂気や、手術をして箱に入ったときの主観文章は、どこか乱歩の有名作品と同じような気持ち悪さを感じてしまいました。カナコのこともあり、後味が悪い作品ではありますね(涙)。

 そういえば、雨宮はどうなったのでしょうね…?

 総じて、推理小説的要素に関しては薄いですが、ホラーとしてみた場合は厚みがある作品でした。トリック自体よりも、それを利用した物語の組み立てが素晴らしく、姑獲鳥の夏よりもさらにオリジナリティも感じました。
 ホラー作品は推理小説的技術の評価がしづらいので、話の面白さや個性で点を上下させようと思いますが、なかなか良かったので7点としました。

No.305 6点 あなたは嘘を見抜けない - 菅原和也 2022/04/02 18:42
ネタバレをしております。

 二人の視点を交互に繰り返して物語が進みます。孤島の廃墟に出かけた恋人を失って、恋人は本当に事故で亡くなったのか、殺されたのかを調べる青年高辻。一方、映画を製作するために孤島の廃墟に出かけたグループの一人の青年亮太です。
 恋人を失った青年は、突発的に殺人してしまう描写があります。ちょっと衝撃的ですが、それ以降はクローズドサークルも相まって、非常に読みやすい本です。読了まですぐでした。

 推理小説的部分について。
 孤島に出かけたメンバーがハンドルネームで呼び合います。こうなると、やはり、高辻が追う孤島の事件と亮太が体験している事件は別物と考えますよね(笑)。ただ、あまり深く考えずに読んだせいで、私は本のトリックである"高辻から見て過去の事件と思いきや、未来の事件"という時間の認識をずらす叙述トリック的仕掛けを見破れませんでした。わたしは嘘を見抜くべきだった(笑)。よくよく考えれば、ヒントも結構あったかと思います。
 また、それとは別に、亮太が体験する密室殺人事件が起こります。少なくとも、私は前例を見たことがない密室だったため、この点では満足しました! ただ、死体に痕跡は残らないものですかね…? そうでなくても、やや知識がいる謎となっているのはマイナスですね。ミキが○っさくと呟いたのは、吉作落としですね! 蔦かなにかをロープにして崖を降りるのですが、蔦の収縮がおこってロープが短くなり、崖に取り残れる恐怖の話ですね…(涙)。

 総じて、テンポがよく読みやすい本であり、最近よくある叙述トリック1本の小説とは違って密室殺人も用意してある良い本でした。ただ、叙述トリックも密室の謎も、佳作にはもうひと踏ん張り欲しかったところでした(笑)。

ミステリ初心者さん
ひとこと
 有名な作品をちょこちょこ読んだ程度のミステリ初心者です。ほとんど、犯人やどう殺したかを当てることができません。


 高評価・低評価の基準が、前とは少し変わってきました。
 犯人を一人に断定で...
好きな作家
三津田信三 我孫子武丸 綾辻行人 有栖川有栖 鮎川哲也
採点傾向
平均点: 6.23点   採点数: 324件
採点の多い作家(TOP10)
アガサ・クリスティー(15)
三津田信三(14)
歌野晶午(12)
綾辻行人(11)
東川篤哉(10)
鮎川哲也(10)
エラリイ・クイーン(10)
東野圭吾(9)
折原一(8)
西澤保彦(8)