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ミステリ初心者さん
平均点: 6.26点 書評数: 277件

プロフィール高評価と近い人 | 書評 | おすすめ

No.277 5点 涙香迷宮- 竹本健治 2021/07/23 20:24
ネタバレをしています。

 暗号ミステリは今までに読んだことがなく、新しいジャンルに挑戦するつもりで読んだのですが…合いませんでした(笑)。

 涙香に対する情報や、囲碁やいろは歌などの情報の多さがすごいし、作者が作った(?)いろは歌49首とそれにまつわる暗号は作るのが大変だしすばらしい…とは思うのですが、読んでいて面白いものではありませんでした。

 推理小説的殺人事件も起きます。それも、クローズドサークルで…。しかし、これも論理的に犯人を当てるものでもなく、不可能犯罪でもなく、あっと驚く動機があるでもない。暗号ミステリのおまけという感じでした。

 私はコテコテの本格しかダメなのかもしれません(涙)。

No.276 6点 悪霊の館- 二階堂黎人 2021/07/16 19:45
ネタバレをしています。

 ページ数が800を超える、超大作長編です(笑)。
 非常に本格度の強い作品でした。名家骨肉の遺産争い、奇妙な館、魔女狩りや黒魔術めいたオカルト、密室による不可能犯罪、連続大量殺人、意外な犯人とドンデン返し。すべてつまっていました。本格好き垂涎の内容であり、本格以外の部分があまりなく、800ページであっても長いとは感じさせないのがすごいとおもいました。横溝作品とカー作品を合わせて欲張りセットしたみたいに感じました(笑)。

 推理小説部分のメインの謎はというと、大きく分けて2つ。密室と、首無し殺人による2重の入れ替わりがありました。
 まずは密室について。犯人の狙い通りであり、偶然の余地のない、密室らしい密室でした。物理的トリックと、心理的トリックが合わさった、内容の濃い密室でした。ただ、私の頭が悪く理解力に乏しいため、蘭子による密室の解説を聞いてもいまいちピンときませんでした(笑)。
 次に、首無し殺人による犯人入れ替わりトリックです。こちらのほうが私の好みなのですが、双子・首無し死体・首と胴体が離れた死体・硫酸によって顔を焼かれた美幸?・顔をめちゃくちゃに殴られて殺された好子?…とこれだけ要素がそろうと、結末を予想できないほうがおかしいレベルです(笑)。わかりやすすぎて、ミスリードを疑ってしまいました…。

 総じて、本全体の雰囲気と読みやすさ、驚きの展開のプロットは非常に満足しましたが、本格推理小説としてのトリックは軽め…という印象です。

No.275 6点 本格推理⑤犯罪の奇術師たち- アンソロジー(国内編集者) 2021/07/10 01:48
ネタバレをしています。

 ちょっとずつ読んでいったので、最初の方は大分忘れてしまってます。軽く再読して思い出しつつ書評します。

・犬哭島の悲劇
 犬がいる島ということで、嫌な予感がしました(笑)。

・アリバイのゆくえ
 非常に細かい論理で犯人に迫る推理が良かったです。

・クロノスの罠
 犯人の犯行が成功するかどうかわかりませんが、なかなか面白いトリックです。ヒゲに関しての話も面白くて、すこしだけ叙述トリックのようなものを入れているのもいいですね。

・鬼神たちの夜
 半分ぐらいは予想しましたが、半分ぐらいは外しました(笑)。ページ数に対して、かなり濃厚な話でした。

・夜間飛行
 いまいち印象に残らなかったです。

・黒い白鳥
 トリック+動機面の予想も楽しい作品でした。

・鬼が躍る夜
 まず、不思議な事象があり、それに対して合理的な解決を予想する系。短編向きだと思います。

・天に昇る足跡
 ちょくちょく見る、足跡の問題ですが、単純ながら全く分かりせんでした。面白かったです。

・鳶と鷹
 推理するには少しだけ知識のいるような気がします。しかし、ネタばらしされた直後は、なるほどと感じます。私はこのタイプの時計を見たことがなかったので、ちょっとだけイメージがしづらかったです。

・シャチの住む密室
 これはいまいち(笑)。

・疾走する殺意
 非常に面白い殺され方をしていて興味がわきました。しかし、トリックはというと、まあこれしかないだろうというものでした。どんでん返しが面白く、一人芝居の台本のような小説が活かされている気がします。

・極魔術師ドクター・フランケン
 私はさっぱりわからなかったのですが、犯人の手際が良すぎてアサシンズ・クリード(笑)。読者からは2重の罠を仕掛けられているように見えて、凝っています。

・妻は何でも知っている
 安楽椅子探偵。ABCDの記号がつかわれていて、読みやすい(笑)。共犯者がいるとはいえ、偶然の余地があまりない密室で楽しめました。

 総じて、これまでと同じように、本格色の強い短編集で、満足しました。クロノスの罠と天に昇る足跡が心に残りました。

No.274 7点 ブルーローズは眠らない- 市川憂人 2021/07/01 20:28
ネタバレをしています。

 前作に引き続き、魅力的で読みやすい本です。
 マリアと漣の掛け合いやキャラクター、サイエンスフィクション(ノンフィクション?花万博でみた薔薇は、白っぽい青紫のカーネーションのようでしたが、結構昔なんで今はどうなっているのか)、密室殺人事件、サスペンス性のある過去の事件。非常に多くの要素を含んでいる本ですが、テンポもよく読者の理解もスムーズになるように書かれています。
 前作、ジェリーフィッシュより格段に読みやすさを感じました。私が苦手な科学的な話も、面白く読むことができました。

 密室殺人事件についてですが、これもポイントが高いです。
 犯人(ここではエリックとアイリス)が自分を有利にするために、自分の狙いを持って、偶然や幸運の要素が一切ない状態で作られた密室です。この密室を成立させるためには、共犯でないといけないし、殺人事件と思われたものが他人の手を借りた自殺なければならず、それは私の好みではありませんでした。とはいえ、真っ向から密室に挑んでいる作者には好感が持てましたし、トリックも渋めで好みでした(笑)。
 共犯とはいえ、非常に作りこまれたトリックであり、おどろきと感動(?)を味わえました。
 槇野茜殺しと、クリーブランド襲撃が、警察の犯行なのも好みではありませんでしたが、そこまでルールがガチガチなフーダニットではないので、まあいいでしょう(笑)。

 次に、いくつかの叙述トリックとドンデン返しがありました。
 過去の事件と現在の事件が大きく異なっていて、おそらくは日記に書かれている日にちよりもずっと昔だろうことは私にも気づけましたが、他のことはさっぱりでした。またもや、性別詐称トリックに引っかかってしまいました(笑)。女性にフランキーって名前つけるんですかね(笑)。
 
 密室事件、叙述トリック、過去の事件と現在の事件、そのすべてが、ラストのドンデン返しと、物語全体の悲しい復讐劇につながっております。こういった本はなかなか希少だと思います。
 密室やアリバイトリックを楽しむ本は、プロットに無理がある本が多いように思えるし、プロット重視の作品は小粒な叙述トリックのみで終わってしまって本格推理小説として物足りなかったり…。本作品は、そのどちらもおろそかになってないと思います。
 救いのあるラストもいいですね。

No.273 6点 クール・キャンデー- 若竹七海 2021/06/23 18:53
ネタバレをしています

 非常に読みやすい文、かつ160ページで終わるため、2日ぐらいで読み終えました。
 タイトルと、表紙から感じるさわやかさとは裏腹に、結構おもたくて本格的な推理小説での話でした。しかし、主人公・渚のキャラクターと、行動力によって、物語が徐々に明るくなっていき、閃きによって兄が救われ、大団円で終わり!…かと思いきや、ラストの1行で急転直下のイヤミスと化しました(笑)。

 推理小説的には、2つの点が興味深かったです。
 まず、渚の行動の"柚子に変装し田所浩司を脅かす"が意図的に書かれておらず、また渚自身の聞き込み調査のシーンもあって、事件当日に田所を起こした人物=渚とは全く思えませんでした。これって叙述トリックでしょうかね?
 また、最後の一言で、"田所浩司殺人事件"ではなく、"柚子殺人事件"だったのでしょうね。読者に被害者を錯覚させていたのですね。

 ちょっと削れば短編にもなりそうなぐらい短い作品ですが、ミステリ本来の楽しみが味わえる作品だと思います。
 全く関係がありませんが、私は過去にニコ〇コ動画にはまっていたことがあり、ある人物の名前に反応してしまいました(笑)。1字違いですね。

No.272 6点 魔偶の如き齎すもの- 三津田信三 2021/06/20 18:55
ネタバレをしています。

 全て刀城言耶シリーズの中短編です。これまでのシリーズ同様、妖怪や宗教や民俗的(?)なホラーと、多重解決が楽しめる本格推理小説です。シリーズのファンなら楽しめると思います。

・妖服の~
 どうやって凶器を運んだか?ということが焦点になっています。
 電話線を使ったり、花火を使ったりする推理は楽しめました。郵便局員のコスプレをした推理が一番現実的に感じました。
 私は、回覧板を使ったのではないかと一瞬だけ考えましたが、まさかあの時点ですでに殺し終えてるとは思いませんでした(笑)。

・巫死の~
 いかにして不二生は消えたか?が問題です。
 設定が面白く、話に引き込まれました。しかし、最終的な推理は私の好みではありませんでした…。

・獣家の~
 2人の獣家についての不思議な証言と、インチキ宗教に騙された男の証言から合理的な解決をする話です。
 大学生の証言が坂を下っていることはわかりましたが、歩荷の証言を照らし合わせるのが面倒で、真相には気づけませんでした(笑)。ドラマのトリック的な、大がかりな真相でしたが、面白さは普通ていど…。

・魔偶の~
 密室に近い事件です。不可能犯罪というわけではなく、4人の中から誰が犯人であるかとうのが問題です。卍堂の見取り図を見ると、思わずワクワクしてしまいますね(笑)。
 実は私は、祖父江偲が登場したとき、露骨に怪しんでしまいました(笑)。シリーズを読んでいる人にとっては、みんなそうだと思います。関西弁やうちなどの特徴がみられませんし、微妙にキャラクターが異なっていますもんね。
 祖父江偲犯人説は置いておき、他に考えたのは、お里犯人説に近いものでした(笑)。
 小間井犯人説は、連作短編特有の、それまでの話にヒントが隠されている感じで面白かったです。
 魔偶の~全体として、動機や印象で犯人を決めつけている感じがあり、本格推理小説としては叙述トリックありきな印象でした。

 もうすぐ、シリーズ長編新刊がでるようですね。たのしみです。

No.271 6点 第二の銃声- アントニイ・バークリー 2021/06/15 00:27
ネタバレをしています。

 個人的には毒チョコ以来のバークリー作品です。
 読み初めは、なかなか読みづらかったです。一気に登場する登場人物、様々な場所設定、エリックのキャラクター、いけ好かないピンカートン(笑)。しかし、シェリンガムが登場したあたりからピンカートンが変わっていき、物語も明るくなっていき、そこからは時間をかけずに読み終えることができました。

 推理小説的要素は、事件が1件だけにもかかわらず、二転三転する展開が濃厚で満足感が強いです。多重解決的なのりもあり、さらに最後にはどんでん返しが2回ほどあります(笑)。
 私は、この小説が作中作になっていることを知って、嫌な予感がしました(笑)。まあ、こういう展開では、まず記述者犯人を思い浮かべますよね。私の知っている、超有名作品の記述者犯人ものは、この作品よりもわずかに早く出版されているようですね。
 私の嫌な予感は最後には当たっていたのですが、まあとりあえず記述者の記述を100%信じるとして作品を読み進めました(笑)。メタ的な読みで、なんとなくエリザが犯人だと思いました。理由は犯人ぽく無いからです(笑)。
 どんでん返しが楽しめる作品ですが、真相を当てるのは不可能かと思われます。あえて隠している記述がありますし、そもそも偶然の要素が強すぎますよね。

 不満を書きましたが、ピンカートンの恋愛小説としてもなかなか楽しめました(笑)。被害者がくずなので、後味が悪くならないのもいいですね。シェリンガムが無能っぽくなってしまって残念なのですが…。

No.270 6点 第四の扉- ポール・アルテ 2021/06/01 19:57
ネタバレをしています。

 本当に海外翻訳ものかと疑いたくなるほど、素晴らしく読みやすい本です。人・場所・時間の情報が徐々に出てきて、混乱がしづらいです。それでいてテンポが良く、割と早い段階で事件が起きます。ページ数の割に第二の事件が起こるし、さらに不可能犯罪なので、どんどんページが進みます。

 推理小説的要素について。
 2つの大きな不可能犯罪と、最後に大きなドンデン返しがありました。また、本全体的に複雑な事件でした。
 1つ目の不可能犯罪について。かなり強固な密室であり、ドルー警部による推理も楽しめます。私は全く分からず、解決編には驚きました。この系統のトリックは似た趣向の物を2~3作品見たような気がしますが、バレる可能性が高いように思えます(笑)。人間の目ってなかなか騙せませんよね。マジック的で好みですが。
 2つ目の雪の密室について。これは犯人に有利な偶然が重なりすぎていて、ほぼウミガメのスープ系ミステリになってしまっていますね(笑)。雪の密室自体が偶然の要素が強いため仕方がありませんが、ちょっと肩透かしを食らいました。
 最後のドンデン返しですが、私は予想がつかなかったし、驚きではありました。しかし、最後にとってつけたようですね。このラストを活かしたいなら、序盤から作中作であることを明かし、ロナルドと作中作登場人物の共通点を伏線として入れたりしたほうが面白いと思うのですが。

 ページ数の割になかなか内容が濃い、本格度の強い作品でした。初めて読んだ作家なのですが、何作品か買って読みたくなりました。

No.269 5点 九人と死で十人だ- カーター・ディクスン 2021/05/28 18:03
ネタバレをしています。

 新訳のほうを買いました。そのためか、文章が読みやすかったです。しかし、船内の図などがないため、そういう意味では読みづらかったです。

 指紋のトリックは全く分かりませんでした。私は、指紋をあれこれいじることはできない→死体のほうをどうかしたのかと思い、いろいろと考えてみましたが、どうも整合性ない考えばかりでした。あんなに単純なことで指紋の専門家をだませるものなのですかね(笑)。しかも同じ指紋が2つあるのに気づかない(笑)。現実的とは関係なく、単純に知識がいる問題なので、どちらにせよあまり好みではありません。

 ブノワ大佐(大佐だっけ?)に変装し、一人二役を演じたトリックは、過去に同様のトリックを見たことがあるにもかかわらず騙されてしまいました(笑)。解決編を見ると、いろいろなところにヒントがあり、読者に解かせようとしている作者のフェアさに好感が持てます。ただ、変装系トリックを見るたびに、「これって本当に成立するかな?」と思ってしまいますね(笑)。私が大好きな名作もこのトリックをつかったものがありますが。

No.268 6点 鏡の中は日曜日- 殊能将之 2021/05/22 18:52
ネタバレをしています。新書版を読みました。

 一度書評を書いたのですが、ミスで消えてしまいました(涙)。なので、簡単に書きます。
 
 非常に多くの叙述トリックが盛り込まれており、厚みを感じる作品でした。14年前の事件を、作中作で追っていく内容なのですが、その作中作の疑問点が、水城の性別の認識をずらしたり、第一章の人物の認識をずらす叙述トリックの伏線やヒントになっているところが良かったです。
 彼女と男が接近するたびに嫉妬と警戒をする田嶋が、なぜか水城には無警戒な点は私も訝しく思っていたのですが、水城が女性というところまでは気づけませんでした。これだけ性別詐称トリックを読んでいて、また騙されて悔しいです(笑)。

 以下不満点。
 多くの叙述トリックが盛り込まれていて良いのですが、ひとつひとつは既視感があります。この本ならではの要素があるともっと高得点でした。特に性別詐称トリックは、もう10冊は読んだ気がします(笑)。

No.267 6点 カーテン- アガサ・クリスティー 2021/05/16 20:10
ネタバレをしています。

 たまに読んでいるアガサ・クリスティーを買いました。ポワロ最後の事件だから買ったというわけではなく、単純に高評価だから買いました(笑)。だだ、ポワロ最後の事件だということは知っていました。
 舞台はスタイルズ荘。スタイルズ荘の怪事件をみたのはもう中学生のころなので、大分昔であり(涙)、あまり記憶に残っておりませんでした…。ポワロシリーズものの大半はその時期に読んでおり、もしこのカーテンにそのネタがちりばめられていても、自分にはわからないです…。これはちょっと残念です。

 さて、カーテンですが、個人的にはなかなか読みづらかったです。アガサ・クリスティーなので、文章や構成がうまく、登場人物もすぐに覚えられ、その辺りは苦労しませんでした。しかし、なかなか事件らしい事件が起こらず、ポアロは病が篤く、ヘイスディングズは娘の心配をして、いろいろなことを思ってしまい、ページが進みませんでした。ただ最後まで読むと、一見意味のなさそうな話にもちゃんと伏線が張ってあるところはさすがでした。

 推理小説的には、いろいろな仕掛けや、アガサ・クリスティーらしいドンデン返しも用意してありました。しかし、私にはどれも好みの類ではなかったです。
 ノートンによる殺人教唆? というのですかね? あれはイマイチぐっと来なかったです。もちろん、本全体にちりばめられていた伏線には感心しました。私は、ノートンがただの鈍くて気が利かないやつかと思ってました(笑)。
 次に、ワトソン役犯人についてです。これは大きな驚きであはありましたが、私にはただの事故に思えます(笑)。やはり推理小説は、犯人が殺意を持って殺人を犯してほしいですね。珍しいパターンなのでそこは評価してます。
 最後に探偵犯人ですが、これもそれほど好みではありません。ポワロ最後の事件ということで、メタ読みして、探偵犯人の可能性は頭にありました。しかし、全く論理的にポワロを犯人と指摘することができませんでした(笑)。ポワロ本人の行動もあって、とてもフェアだとは思います。

 最後のページでのポワロの文、"友よ、もうふたりで狩りに出ることはありません。初めての狩りがここでした―そして、最後の狩りもまた…"は非常に感慨深いですね。

No.266 7点 見えない精霊- 林泰広 2021/05/08 19:22
ネタバレをしています。

 かなり特殊で強固な厳しい条件の密室殺人事件です。
 文は読みやすく、かなり早い段階で本題に入っていくため、すらすら読めます。かなり不可解な状況が続いていて、テンポも非常に良いです。

 推理小説的要素に関しても、非常に満足でした!
 最近では、偶然できてしまった密室や、犯人の意図しない密室など、私の好みではない密室が多くあります。この作品は真っ向から密室に挑んでおり、非常に好感が持てます。
 密室状況がかなり特殊であり、このトリックのためにつくった状況…といった感じで、そこが好みを分けるかもしれません。カー作品や島田作品のような感じです。しかし、このトリックを、非常にうまく小説に落とし込んでいると思います。非現実的な感じも少しはしますが、私は気になりませんでした。
 ヒントや伏線の張り方もよく、小説の序盤からあります。そこそこページ数のある作品ですが、無駄が一切なく、作者との勝負を純粋に楽しめる、本格好き垂涎の本であると感じます。
 私は、挑戦状1回目を2~3ページ過ぎたあたりで、ふと"戦闘力の高いズオウはなぜ殺されたのか?"と疑問を感じ、"油断する相手ではないのか?→ウィザードか?"と考えた瞬間、すべての謎が解けました(笑)。序盤のヒントや疑問が一気に氷解します。本格推理小説の神髄を見させられました(笑)。


 以下、難癖ポイント
 飛行船の図やドアなどの特徴、人の輪での儀式の図(ウィザードの脳内の図でもいいから)などが欲しかったです。読み終わった後は案外単純な構造だとわかるのですが、読んでいる最中は複雑なように思え、話についていくのに必死でした(笑)。
 精霊の行動は結構バレる危険があると思います(笑)。非常にうまく行動していますが、ウィザードと仲間たちがずっと一緒に行動していると、犯行がかなり難しくなってしまう気がします。

No.265 7点 丸太町ルヴォワール- 円居挽 2021/05/03 18:26
ネタバレをしています。

 非常に読みやすく、エンターテイメント性(?)が高い小説です。文章が軽く、テンポが良く、500弱の多いページ数のわりにすぐに読み終えることができました。ただ、やや癖が強く、人を選ぶかもしれません。
 始めは論語の語りによる、ルージュとの出会いです。それ自体が叙述トリックのある短編小説としてみても面白い出来です。論語のキャラクターが、言葉遣いが丁寧なひ○ゆきみたいで鼻につきますが(笑)。私は前に読んだ本が盲目の主人公だったため、簡単に論語が目が見えないことに気づいてしまいました(笑)。ここの章でルージュが出ますが、そのキャラクター感が絶妙で、若いような年増のような、どう解釈しても成り立つような感じです。
 次の章からは流と達也が主観となる法廷ミステリのノリになります。逆転につぐ逆転は読みごたえたっぷりです。ただ、流が女性であることは察しがついてしまいました(笑)。この性別詐称トリックは、本当に多いですね(笑)。性別が明記されていないと、警戒するようになってしまいました(笑)。
 本全体として、"誰が殺したか"や"なぜ殺したか"や"どうやったか"ではなく、"誰がルージュであるか"が最も大きな謎であり、それまで章で張られまくった大量の伏線とミスリードが回収されていきます。睡眠薬はポットに入っていたことと、紅茶に入れ替えられていたことから、あおさんがルージュであるという論語の推理は見事でした。さらにその後、もう一つどんでん返しがあり、非常に読後感のよいラストとなりました。

 以下、難癖点。
 この本では、大量の伏線やミスリードや叙述トリックが入っています。正直、5冊分はあるんではないかと(笑)。しかし、一つ一つを見てみれば、2番煎じであり既視感があります。ただ。こんなにも盛り込んでいて、本として破綻しないプロットが見事でした。

 本格推理小説に偏見があり、1冊も読んだことのない人におすすめかもしれません。

No.264 7点 闇に香る嘘- 下村敦史 2021/04/27 19:47
ネタバレをしています。
 
 中国残留孤児、盲目の人の苦労、腎臓移植など、社会派の色が濃いミステリです。それぞれが丁寧に書かれており、難しいテーマなのですが、全くの無知な私でも物語を理解することができました、
 また、途中、盲目の主人公が襲われるシーンはホラーやサスペンス感があり、ダレることがなく読むことができます。主人公による「誰が嘘つきなのか?」と疑う展開もよかったです。
 そして、驚きのどんでん返し。一つの要素が明らかになることで、これまでのすべての疑いや疑問が一気に氷解し、本格推理小説本来の快感を味わえます。
 大団円で終わるラストもいいですね。

No.263 7点 ウォリス家の殺人- D・M・ディヴァイン 2021/04/20 19:45
ネタバレをしています。

 解決編前の、モーリスが電話が警察へ電話をかけるところで読むのを止め、事件の再検証をしようかと思いましたが、それまでに同様に2冊の"解決編前止め小説"が重なってしまったため、面倒になり読みました(笑)。まあ読み返してもわからなかったでしょう(笑)。
 事件が起こるまで少々時間がかかり、やや読みづらかったです。しかし、ウォリス家のドロドロとした展開や、スレイター家のモーリスとクリスの物語、ジョフリーの隠し子と遺産問題など、ツボを突いた物語に厚みがあります。伏線とミスリードも多く、巧妙に犯人が隠されていて、それでいて解決編には読者に納得させられる論理的な犯人断定もあり、本格推理小説として満足度が高いです。フェア度が高いアガサ・クリスティー作品のようでした。

 難癖点を挙げるとすれば、物語の厚さに対しての、アイデンティティが薄いです。この小説ならではの大仕掛けはありませんでした。論理的な解決を目指すと、どうしてもそうなりがちなのですが、ロジックな要素はほぼ1点であり、あとは伏線回収で終わっています。クイーンのようなパズラーと比べても、クリスティーのどんでん返しと比べても、どちらにも劣るかもしれません。
 また、犯人のアリバイが主観の主人公による勘違いだったのは、私にとっては想像しづらかったです(笑)。私の知能が低いからなのかもしれませんが。

 いろいろ文句を言いましたが、完成度が高い本格推理小説だとおもいました。

No.262 6点 クララ殺し- 小林泰三 2021/04/20 18:54
ネタバレをしています。また、前作アリス殺しのネタバレもしています。

 前作の世界観を踏襲した続編(?)ですが、共通の登場人物は井森/ビルのみであり、前作を読んでいることは必須ではありません。しかし、前作を読んていたほうが、基本的なルールが頭に入りやすいので、やはり読んだほうがいいと思います。

 非常に読みやすいです。ファンタジー要素はもちろんのこと、文の相性が私をよかったのか、誰がどこで何について発言しているのかというのが理解しやすいです。
 また、前作にあったようなグロ表現も少なくなっており、苦手な人にとっては読みやすいと思います。私は不思議の国の狂った世界が好きですが、グロは得意ではありません(笑)。

 以下、難癖部分。
 推理小説的要素である、誰が犯人なのか?という謎と、それに対するヒントや伏線は、アリス殺しのほうが洗練されていた印象があります。また、前作を読んでいると、マリー=くららであることと、オリンピアがクララであることは(頭パープリンの私でさえ)予想できてしまうと思います。その他のことは予想できませんでしたが、うそつきや協力者が多すぎるため、真相の完全な推理は難しいかと思います。個人的には前作よりパワーダウンしたしまったように感じました。

No.261 6点 紅蓮館の殺人- 阿津川辰海 2021/04/15 19:39
ネタバレをしています。

 クローズドサークルであり、探偵vs元探偵の対決がみられ、元探偵の過去~現在の事件の決着など、本格推理小説的ようそがてんこ盛りです(笑)。
 物語主観の主人公はワトソン役で、友達が名探偵。それだけでも話は成立しますが、主人公の幼少の頃のあこがれであった元探偵の物語が濃く、もう半分以上主人公です。探偵という言葉が飛び交い、やや現実離れしていますが、本格ファンからしたらなんの違和感もないでしょう(笑)。
 登場人物もカタギじゃない人たちばかりで癖が強いです。詐欺師、盗賊、殺人犯。すべての登場人物に物語があり、狙いがあります。この役割配分は、ラストの探偵vs元探偵の決着にもかかわってくる要素でした。

 推理小説的要素もなかなか細かい論理で犯人断定をしています。
 はじめは推理小説的要素が薄く、読者に考えさせてくれることを与えてもらえない感じがしましたが、あらためて読み返すとところどころにヒントがあり、いい感じです。
 最も大きい要素は、やはり美登里の絵を飾る際の煤のロジックです。かなり難易度が高いとは思うのですが、しっかりと消去法できているのが素晴らしいです。もちろん私はわかりませんでした。

 以下、難癖部分。
 クローズドサークル特有のサスペンス感とテンポはありませんでした。これは探偵vs元探偵の物語を描きたいがために、元探偵の物語をしっかりと書いた結果だと思います。されに、それにページを割くあまり、連続殺人も起こりませんでしたし、"真実を暴くことで危険が起こる"要素を入れると登場人物も絞らざるをえません。少々中途半端だったかもしれません。
 吊り天井を下げたのが犯人ではなく、共犯者でもない元探偵だということは、読者にとって真相を見抜くのにかなり難しくなってしまったと思います。私の知能が低いだけかもしれませんが。解決編での元探偵の行動の心理と、それを論理的に暴く匂い袋と消臭剤のロジックは見事なのですが、消臭剤がまかれていたことを完全に失念していました(笑)。もうちょっと大々的に書いてほしいです。再読はしていませんが(笑)。

 全体的に、推理小説好き作者が書く漫画のような作品でした。本格への愛を強く感じるため、このままこの路線を続けてほしいと思います。

No.260 6点 凍える島- 近藤史恵 2021/04/07 19:26
ネタバレをしています。

 島に閉じ込められ、連続殺人が起こる、典型的クローズドサークルです。私の大好物な嵐の孤島系ですが、少々読みづらさを感じました。文の癖がつよいというか、主観や登場人物の癖が強いというか…静香が一番まともに思えました(笑)。
 登場人物紹介や地図がないこと、本名とは違うあだ名がある人物など、読み初めにはいろいろと叙述トリックを疑いましたが、たぶんなかったと思います。なので、普通に登場人物紹介や地図をつけてほしかったですね(笑)。

 殺人事件は3つ起こります。
 奈奈子殺しは密室殺人事件。単純なトリックでしたが、盲点でした。そういえばそうだ…と思える、なかなか良いトリックでした。
 椋殺しは、ちょっとアリバイ面で曖昧で、推理小説的には地味でした。
 うさぎ殺しもすこしあいまいな部分が多いです。守田氏はなぜあやめ以外には殺人が無理だと決めつけたのでしょうか?

 私は、日本刀関連のことと、最後に階段を落ちたことで、鳥呼を疑っていました。しかし、確証は持てませんでした(涙)。

 クローズドサークルものは叙述トリック一本でどんでん返しする作品が多い印象ですが、この作品は全体的に端正な本格推理小説で好感が持てます! しかし、個々の謎がちょっと小さめで地味な感が否めませんでした。

No.259 7点 十字屋敷のピエロ- 東野圭吾 2021/04/01 19:36
ネタバレをしています。

 非常に読みやすく、読了までさほど時間はかかりませんでした。
 本格推理小説のツボを押さえた館ものです。クローズドサークルではありませんが、過去の事件と合わせ3つもの事件が起きます。変に説明っぽくなっていないのに、読み進めると、登場人物とその関係や館のことなど必要な情報が自然に読者の頭に入っていくようで文章がうまいです(単に相性がいいだけかもしれませんが)。

 推理小説的要素も満載で満足できました。主に3つの事件がおきます。
 時系列的には最初の頼子自殺事件。本書では最後あたりに解決します。十字屋敷であることを生かした、館ものらしい仕掛けです。私はまったくこの可能性に気づきませんでした…。好みが分かれそうですが、私は割と気に入りました。(難癖ポイントもあるが(笑))
 次に、宗彦・三田殺人事件。神の視点ではなく、ピエロの視点であることを生かしたトリックも見事でした。難癖点もあるので下記に書きます(笑)。
 青江殺しについてはあまり推理小説的良さはありません。しかし、ラストのどんでん返しは見事でした。


 難癖点。
 事件全体として、共犯者や犯人を庇う行動をしている者が多いです。論理的に全て推理するのは難しいと思います。
 宗彦・三田殺しは犯人の計画通りに行くかどうかはちょっと運が必要かもしれません。

 全体的には、本のページ数にたいして濃い内容でした。どんでん返しにつながる要素が随所にあるのもよかったです。個人的に、東野圭吾さんは初期の作品のほうが面白いと感じます。

No.258 6点 名探偵に薔薇を- 城平京 2021/03/27 22:19
ネタバレをしています。

 中編ぐらい長い二部構成の小説です。

 第一部は三橋を主観とした、連続殺人です。メルヘン小人地獄の童話みたいな話の見立て殺人と、完全犯罪が容易にできる毒薬の話が出ます。この毒薬の製法がやたらグロい(笑)。私は全く真相に気づきませんでしたが、鶴田が国見と手を組むのは相当信頼関係がないといけないから考えられないとなっているのに、国見が鶴田と手を組む(脅迫まがいですが)のはありなのか(そして裏切られる(笑))という展開はちょっと気になりました。

 第二部は、前半に登場した毒薬が使用された毒殺事件。しかし、楽に完全犯罪を起こせるはずが、なぜかわざと不要なぐらい多量の毒が使われていて不可解です。そして、被害者はあまり恨まれない人物…。状況が不思議で引き込まれます。実は私は、論理的なことは一切わからなかったですが、真相は察してしまいました。というのも、これに近い発想の小説を事前に見てしまったからです。おもに動機面が似ていました。

 名探偵の瀬川は、何者も寄せ付けないクールな人物ですが、その実過去の自分の推理によってつらい経験をしており、それによってずっと苦悩をしています。なかなか魅力的でした。しかし、警察にため口をきくのだけは気になりました(笑)。

 個人的には、犯人が協力者もなく、殺意を持って、何のミスもなく殺しを完遂し、それを読者が看破できる作品が好みです。しかし、そういう枠にとらわれず、広義のミステリとして読んだ場合、本作品は満足度が高かったです。途中、カイジ(?)のような文章が挟まれたり、気になる点もありますが、楽しめました。

ミステリ初心者さん
ひとこと
 有名な作品をちょこちょこ読んだ程度のミステリ初心者です。ほとんど、犯人やどう殺したかを当てることができません。


 高評価・低評価の基準が、前とは少し変わってきました。
 犯人を一人に断定で...
好きな作家
三津田信三 我孫子武丸 綾辻行人 有栖川有栖 鮎川哲也
採点傾向
平均点: 6.26点   採点数: 277件
採点の多い作家(TOP10)
アガサ・クリスティー(15)
三津田信三(13)
綾辻行人(11)
歌野晶午(11)
東川篤哉(10)
鮎川哲也(10)
東野圭吾(9)
折原一(8)
エラリイ・クイーン(8)
有栖川有栖(8)