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[ 本格 ]
最上階の殺人
ロジャー・シェリンガム
アントニイ・バークリー 出版月: 2001年08月 平均: 6.62点 書評数: 8件

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新樹社
2001年08月

東京創元社
2024年02月

No.8 6点 E-BANKER 2023/01/28 14:54
バークリー中期の傑作との評価もある作品とのこと。
「最上階」といってもたかだか四階建てのアパートの「最上階」なのだが、シェリンガムは本作でも“迷”探偵ぶりを披露してくれるのか?
1931年の発表。

~最上階のフラットに住む老婦人が殺害され、室内も荒らされた。裏庭に面した窓からはロープがぶら下がっていた。スコットランドヤードの捜査に同行したロジャー・シェリンガムは、警察の断定に数々の疑問を持ち、独自の調査を開始する・・・~

うん。実に面白い(※湯川博士じゃないよ)読書となった。
いい意味で軽さがあり、とても1930年代の作品とは思えない。さすがはミステリー発祥の国・英国。
今回はひたすらシェリンガムが考え、行動し、ああでもないこうでもないという試行錯誤を繰り返していく。そして、たまに閃いて前進したかと思いきや、関係者の証言であっさり覆されたりする。読者としては、それを見守るしかないといった状況にある。

今回は秘書役となる美女ステラとのやり取りがもうひとつの特徴。
シェリンガムの推理をことごとく全否定し、ひたすらにクールに振る舞うステラと、口では否定しながらも明らかに彼女に気があるシェリンガムのやり取りは、結構な分量が割かれているところからして、ラストの勘違い(シェリンガムは真相と考えていたが・・・)に繋がっている。

本作でもシェリンガムはやはり「狂言回し」的な役どころになるので、中盤以降の彼の数々の試行錯誤(というか妄想?)は結局日の目を見ないことになる。そして、判明する真相は実にシニカルなもの・・・。この当りは作者らしいというか、この頃の本格ミステリーとは一線を画すプロット。
まぁこういうのが好きかどうかということになると、正直微妙なのだが「これはこれでアリだし、面白いじゃないか!」という評価になるのも十分納得。
「ミステリーってこういうふうにも書けるよ」っていうことで、いろいろと可能性を広げたという意味からは、作者と作者の作品群は後世にとっても結構大きな影響を与えたんだろう。

No.7 7点 弾十六 2018/11/01 22:37
1931年出版
秘書とのやりとりに可笑しみが溢れており婦人服店のくだりがとても楽しいです。数々の小ネタ、そして大ネタがみごとに決まって傑作だと思いました。

No.6 6点 青い車 2016/12/01 19:16
 バークリーの隠れた佳品という書評をいたる所で見ましたが、僕はあまりしっくりこなかったのでちょっと意外でした。作者のクセの強さが顕著に表れたオチですが、似たような逆転を同じ作家にこれだけ多用されると食傷気味になってしまいます。ドラマチックな推理に比較して真相の方が面白くないというのはミステリーに対するシニカルな問題提起とも取れますが、素直に面白かったとは言い難いです。ただ、クライマックスのインパクト大な描き方は見事でした。

No.5 7点 ボナンザ 2016/06/05 15:00
バークリーらしく斜め上の傑作。
シェリンガムの妄想もいつも通りで楽しい。

No.4 6点 nukkam 2011/05/06 13:56
(ネタバレなしです) 1931年発表のロジャー・シェリンガムシリーズ第7作です。「毒入りチョコレート事件」(1929年)や「第二の銃声」(1930年)と比べるとロジャー・シェリンガムのひたすら地道な捜査を描いた本書はバークリーにしては普通過ぎる本格派推理小説にしか感じられないかもしれません(第10章ではロジャーがちょっと暴走していますが)。しかし最終章での強烈極まりない結末はやはりバークリーにしか書けないものでしょう。新樹社版の翻訳はそのインパクトを見事に再現しており、これは名訳です。

No.3 7点 kanamori 2011/01/08 17:25
これは、バークリー中期の佳作でしょうね。
マンション最上階に住む老女殺害事件自体はシンプルで地味ですが、終始シェリンガム視点で語られているため、迷探偵の推理過程や心の動揺がまんべんなく描かれています。とくに、被害者の姪・ステラがシェリンガムの秘書になっての二人のやり取りと、いつもの多重解決が読みどころで面白かった。
以下ネタバレになりますが、
本書で作者が意図したのは、名探偵像の反転と同時に、ミステリ愛読者の頭に染み付いた「意外な犯人」像の反転でしょう。

No.2 7点 こう 2010/08/16 00:30
 シェリンガムシリーズ第7作目はシェリンガムの妄想ぶり暴走ぶりがすごい作品でその点は「ジャンピングジェニイ」に匹敵すると思います。
 事件そのものは単純なのですがこれで長編一本書けるのは大したものです。真相、構成はバークリーらしい仕上がりです。この作品でもモーズビーと共演していますが「毒入りチョコレート事件」以外に4作品で共演しており彼らの推理対決は興味深くいずれも読む価値があると思います。
 また作者のシェリンガムを据えた意図を踏むならば出来れば「レイトンコート」から刊行順に読んだ方がより楽しめるシリーズだと思います。(私は初訳の年の違いのためかなりばらばらに読んだのでその点は残念です)

No.1 7点 mini 2008/10/29 11:16
新樹社でしか読めないバークリーの名作の一つ
バークリーは他にも名作がいくつもあるので、「最上階」が最高作とは一概に言えないかもしれない
しかし曲者作家バークリーの特徴が最も露骨ストレートに出ているのは間違いなく「最上階」だろう
一番の出来という意味ではなく、一番バークリーという作家を理解するのに適した作品という意味だ
まだ「第二の銃声」とかが刊行されてなかった頃、今では信じられない話だが、「毒チョコ」で初めてバークリーを読んだ読者には作者の意図が分からなかったらしい
「毒チョコ」は傑作ではあるんだけど、名探偵のはずのシェリンガムが推理合戦の順番が最後じゃないというのが理解されなかったんだろうね
多分普通の本格のつもりで読んだら、なんじゃこりゃ?だったのだろう
「最上階」を「毒チョコ」より先に読んでいれば、この作家を理解出来ないという事はなかったろう

野球の投球に例えるなら、打者の直前まで直球と思わせておいてストンと落ちる魔球フォークボールといったところか
まぁ内容的にはスクリューボール・コメディの趣だが


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