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アントニイ・バークリー 出版月: 2014年03月 平均: 6.14点 書評数: 7件

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原書房
2014年03月

No.7 6点 E-BANKER 2024/01/06 15:46
“迷”探偵シェリンガムもチタウィック氏も登場しない、ノンシリーズ作品。
英国伝統の田園ミステリーの体裁をとっているけど、この作者だからねぇ・・・一筋縄ではいかないはず
1938年の発表。原題は“A puzzle in poizon”

~わたしの仲間たちの中心的存在ともいえた友人が死んだ。病死なのか、それとも事故か殺人か。やがて、検死とともに審問が行なわれ、被害者の意外な素顔が明らかになり、同時に関係者たちも複雑な仮面をかぶっていたことを知るにおよび、わたしはとびきり苦い真相に至るのだが・・・。読者への挑戦状を付したひねりの利いた本格ミステリ~

いつものバークリーとはかなり肌触りの異なる作品で、他の方が書いているように、アイルズ名義の作品に近い感じを受けた。
真犯人候補たる主要登場人物は限られているので、読者にとっても犯人当てに挑戦することも可能ではある。
事実、終章前にはなんと「読者への挑戦状」までもが挿入される念の入れようだし・・・

ただなあー、純粋な意味でフーダニットが楽しめるかというとなかなか微妙。
確かにこの真犯人は「いかにも」真犯人っぽくはあるんだけど、伏線だっていかようにも取れる伏線だし、作者の匙加減ひとつの感が強い。

本作の「カギ」はタイトルどおり、「毒薬」=「砒素」。とにかく、どのように、どこで、だれが、砒素を飲ませたのか、あらゆる考察が行われる。このやり取りがなかなか冗長なのがしんどいところ。
もう一つは、登場人物たちの意外な素顔。仲の良い夫婦に思えても、一皮むけばすれ違いが浮かび上がる・・・というのがほぼすべての主要登場人物たちにあてがわれていく。この辺は作者の嫌らしい部分。

総合的にはどうかなあ?個人的にはシェリンガム登場作品の雰囲気の方が好きだが、決して本作が駄作というわけでもない。
一定の評価は十分可能だろう。

No.6 7点 YMY 2021/10/18 23:18
カントリーハウスで起きた毒殺事件をめぐる謎解きの試行錯誤をシリアスなタッチで描いている。
とはいえ、そこはけれん味に長けた作者のこと、ミステリ的な面白さを演出することに怠りはなく、読者への挑戦も用意する念の入れよう。本格ファンも満足できると思うが。

No.5 7点 弾十六 2018/11/03 07:57
1938年出版 翻訳2014年。
元は雑誌John O'London Weeklyに連載したもの。わざとらしい名/迷探偵などの登場は無く、一人称で隣人の死にまつわる騒ぎが日常の延長のように物語られます。静かな雰囲気ですが起伏に富んでおり、結末もバークリーらしい傑作だと思いました。

No.4 6点 ボナンザ 2018/04/03 20:51
バークリーらしい佳作。ただ、ほかの代表作に比べるとややおとなしいか。

No.3 5点 青い車 2016/09/27 00:16
 nukkamさんのご講評にもあるとおり、解決篇の前にわざわざ読者への挑戦が挿入されているわりには、確たる証拠がない推理が若干の肩透かしです。砒素を摂取した経路がカギになっていてなかなか凝った造りではあるのですが、題材からして派手な論理展開にはなりにくく、どうしてもアピールが弱いのは否めません。そして何より、終盤に至るまでの過程が退屈なのが大きなマイナス要素です。初めてバークリーを読むという人には別の作品をおすすめします。

No.2 6点 nukkam 2014/05/14 13:18
(ネタバレなしです) 1938年発表の本書は意外にも「読者への挑戦状」付きの本格派推理小説でした(シリーズ探偵は登場しません)。ただ最終章の謎解きはそれほど証拠に基づく推理が披露されているわけではなく(犯人からも「推理と証拠は違う」と反論されています)、しかも最後は罪と罰の議論に話がすり替わって微妙に不条理な締め括りとなります。このあたりがバークリーらしいといえばらしいのですが、そうなると何のための「読者への挑戦状」だったのだろうというという疑問が残ります。

No.1 6点 kanamori 2014/04/11 20:37
ドーセット州の村で隠棲する元電気技師ジョン・ウォーターハウスが突然死する。当初は病死とみられたが、体内から砒素が検出されたことにより、容疑は病弱な妻に向けられる。村の仲間グループの一人で隣家で果樹園を営む「わたし」は、図らずも事件に巻き込まれることに-------。

アントニイ・バークリー後期のノンシリーズ作品。ユーモアを封印し、「わたし」の心理描写を織り交ぜたシリアスな作風は、バークリーというよりアイルズ名義の諸作品に近い味わいがあります。
とはいっても、本書はハウダニット(砒素の混入媒体・経路の謎)とフーダニットを主眼にし、最終章の前には”読者への挑戦”を挿入した本格ミステリで、毒殺?を巡り自殺や事故説を含め、いくつもの仮説が検討されるところは、「毒チョコ」の変奏曲といえるかもしれません。(ロンドンの「犯罪研究会」の動向がチラリと出てくる場面がありますw)。
事件発生から検死審問へとつづく序盤から中盤の物語は、重苦しくテンポも悪いのですが、最終章の”一人多重解決”場面はスリリング。ただ、推理が明確な証拠に基づかないのは残念な点で、結末の付け方も(バークリーらしいとはいえ)賛否が分かれるかと思います。


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アントニイ・バークリー
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