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[ サスペンス ]
シシリーは消えた
アントニイ・バークリー 出版月: 2005年02月 平均: 6.20点 書評数: 5件

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原書房
2005年02月

No.5 6点 人並由真 2022/01/16 08:40
(ネタバレなし)
 20世紀前半の英国。27歳まで一度もマトモに働いたことのない御曹司として生きてきた青年スティーヴン(スティーヴ)・マンローは、当てにしていた伯父の遺産を得られないと知った。食い詰めたスティーヴは、サセックスの金持ちレディー・スーザン・ケアリーの屋敷「ウィントリガム・ホール」の従僕となる。レディーはスティーヴの学友フレデリック(フレディー)・ヴェナプルズの伯母でもあり、さらにその屋敷でスティーヴは思わぬ人物に再会した。スティーヴが初めて仕事に就いたその夜、屋敷ではフレディーの発案で、その場の賓客たちを集めて降霊会(魔女集会)が開かれる。そして暗闇の室内から、忽然と一人の女性が消失した。

 1927年の英国作品。
 少し前にミステリ関連のサイトを散策していたら、クリスティーが本作を評価していた旨の情報を見聞きした。それで興味が湧いて読んでみる。

 中身は不可解な人間消失の興味をまず提示し、さらにそこから話が二転三転してゆく、それでもどこかのどかな、ラブコメ要素も若干まじった謎解きサスペンス(ユーモアミステリの趣もある)。こういうのもコージー・ミステリというのかもしれないが、いずれにしろ好テンポの筋運びはリーダビリティ最強で、一晩でいっきに読んでしまった。
 バークリーの作品の中でも、たぶんかなり敷居の低い方であろう。まだそんなに数は読んでないので明言はできないが(汗)。

 真相は、なるほど……クリスティーが好きそうな感じ。あえてケチをつければ、こういう犯人の設定なら途中で(中略)の描写も欲しかった、という気もするが、ソコはカメラを「ソッチ」に向けなかっただけだから、叙述にウソはないし、まあぎりぎりオッケーか。
 
 著作はそれぞれクセ者の印象があるバークリーだが、これはフツーに楽しめた。シェリンガムもので面白そうなのも、そのうち見つくろって読んでみよう。

No.4 6点 弾十六 2018/10/27 21:35
1927年出版 翻訳2005年
一捻りした執事もの。有閑主人公が金に詰まり従僕として勤める羽目に陥り、勤めた屋敷の夕食会には大学時代の友人や知り合いが来て、召使の立場で接しなければならない、という面白い設定で始まります。
その後の小ネタも上手く効いていて、まあ大ネタは地味目なのですが、明るさに溢れたバークリー世界が展開します。初出は新聞の連載(デイリーミラー1926年3月〜4月) 軽くて楽しい物語を読みたい人に最適です。

No.3 8点 Akeru 2018/08/11 14:49
バークリーの中でも白眉の出来はないだろうか?
無能ではないものの迷走する主人公、残虐ではないが用意周到な犯罪、適度なラブロマンス、そして最後5ページでのどんでん返し…。
これこそが「バークリー節」だ!と叫んでも全く罪がないように思われる。
世間的にバークリーと言えば「毒入りチョコレート」の趣があるが、バークリーをほぼ読んだ自分に言わせてもらえば、実のところ「毒チョコ」は全くバークリーらしくはない。

この作品こそがバークリーだ!

No.2 6点 nukkam 2016/05/16 16:58
(ネタバレなしです) 本書は1927年に別名義で出版されたため、バークリーの作品であることが一般に認知されたのは作者の死後だったといういわくつきの作品です。元々は「読者への挑戦付き」の作品だったそうですがガチガチの謎解き小説ではなく(トリックも大したことありません)、むしろ爽やかな冒険ロマン小説の香りを楽しむべき本格派推理小説です。ユーモアもロジャー・シェリンガムシリーズのような皮肉混じりのではなく、ストレートに微笑ましい雰囲気を演出していますので読みやすさは抜群です。

No.1 5点 danke 2011/03/01 01:19
諸々の事情により“幻の長編”であった作品。
本書の特徴はユーモアとロマンスであり、雰囲気的にはほのぼのとしたものでした。
あの毒々しい皮肉エッセンスが抑え気味だったのが、ちょっとガッカリ。
しかし、セイヤーズを思い起こさせる侍従関係など、キャラクターの魅力には溢れた、楽しい作品ではあります。
タイトルからも分かるとおり人間消失が導火線となっていますが、爆発力はだいぶ弱い。伏線の妙は悪くない分、ロジックの整合性や全体的なまとまりが惜しいです。
1927年の発表ということで、翌年には『絹靴下』、翌々年には『毒チョコ』と続く前段階ですから、バークリー史のひとつとして読んでおいて損はないと思います。


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アントニイ・バークリー
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