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[ 本格/新本格 ]
硝子の塔の殺人
知念実希人 出版月: 2021年07月 平均: 7.85点 書評数: 13件

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実業之日本社
2021年07月

No.13 9点 パメル 2022/05/13 08:22
ミステリを愛する大富豪・神津島太郎は、円錐形のガラスで出来た「硝子館」に六人を招いた。それは、ある重大なことを発表するためだという。パーティーは開かれ、後は神津島太郎を待つばかりとなった。しかし、そのパーティーはある殺人事件により幕を閉じる。反対に血みどろの惨劇の始まりだった。刑事、料理人、医師、名探偵、メイド、霊能力者、小説家、編集者、執事。典型的な登場人物たちが全く新しいミステリを紡ぐ。
プロローグから倒叙形式で語られ、犯人は分かっている。犯人や動機が分かっている中で、どうなるのだろうと思っていたが倒叙から本格っぽい展開に変わり、本格ミステリの要素を贅沢に詰め込んだ作品に仕上がっている。
ミステリ好きの登場人物たちが、ミステリ談義を楽しむ事により古典ミステリから現代ミステリまで多数のミステリが登場し、ミステリ好きにはたまらない描写も多い。作者の本格ミステリ愛を感じることができ、ミステリの歴史や本格ミステリの軌跡を学ぶことができると同時にニヤニヤが止まらない。
魅力的な登場人物、奇妙な形の館、クローズド・サークル、密室殺人、読者への挑戦状など、本格ミステリ好きには嬉しい要素が詰め込まれている。硝子館の立体図と断面図を見ながら推理するのも楽しい。
事件の真相が、ほぼ分かったのかという時点で残り数十ページあり、ラスト数十ページどうなるのかと思っていたが、ここからが熱い。これぞ驚愕のラスト。まさに、帯に書いてある綾辻行人氏の「ああびっくりした」である。謎解きに頭を使う人にも、振り回されることに快感を覚える人にもお薦め出来る。

No.12 7点 まさむね 2022/04/17 14:56
 昨年は「~の殺人」をタイトルとする好作品が目白押し。「硝子の塔」も読み逃がせまいと手にした次第です。
 塔の見取り図だけでも興味津々。ガチガチ本格設定の使い方が巧みです。なるほど、なるほど、そう来たか。面白かったし、唸らせられましたね。作家さんが寄せた帯コメントも楽しく、特に綾辻氏の「ああびっくりした」は味わい深い。
 一方で、同時期であれば「兇人邸」や「蒼海館」を推したくなる自分がいたりします。評価というものは、難しいものですねぇ。

No.11 5点 フェノーメノ 2022/01/22 22:34
以前ネットの片隅でこの作品をボロクソに扱き下ろす怪文書が話題になりましたが、気になる方はググって読んでみてください。むしろ好きなんじゃないか?と思うくらい熱量に溢れています。
ちなみにランキング結果については私的には妥当というか、むしろ意外と高いな、と思いました。私はとあるミステリ系団体に所属していて本ミス等のランキングにも関わっているのですが、あまり絶賛している人はいなかったと思います。

ここからネタバレです。



この作品をミステリ愛に溢れた作品と見る向きもあるかもしれませんが、変則的な作中作という形式を取り、「そういう仕掛けを行った理由は特にありません。何故なら作者がバカだから」というような不調法を行った時点で、私はミステリ愛を全く感じませんでした。他のミステリ作家はみんな神経を行き渡らせて理由作りに四苦八苦しているのに、随分ガサツな作品もあったものです。ハッキリ言って全く美しくありません。
とはいえそういうミステリ愛の無さ、薄っぺらさが作品の本質と関わっている点は巧いと思います。まあ、ただ適当に書くことを正当化しているだけのようにも思えるのですが。

No.10 8点 名探偵ジャパン 2021/12/27 19:51
 年末のミステリランキングを席巻するかと思っていましたが、それほどでもなかったですね。審査員を務めるような人たちは、こういうのはあまり好きじゃないのかな?
「ベタベタな本格」にカテゴライズされるミステリを書いてこなかった作者ですから、各事件のトリックは正直、素人が考えたレベルのもの。ですが、それを逆手にとってこういう作品を書いてくるしたたかさが、プロのプロたるゆえんなのでしょうね。作中の、主に綾辻の「館シリーズ」をベタ褒めしているのも、トリックメーカーになれない作者自身のコンプレックスを表しているのかもしれません。

No.9 9点 メルカトル 2021/11/23 22:56
雪深き森で、燦然と輝く、硝子の塔。
地上11階、地下1階、唯一無二の美しく巨大な尖塔だ。
ミステリを愛する大富豪の呼びかけで、
刑事、霊能力者、小説家、料理人など、
一癖も二癖もあるゲストたちが招かれた。
この館で次々と惨劇が起こる。
館の主人が毒殺され、
ダイニングでは火事が起き血塗れの遺体が。
さらに、血文字で記された十三年前の事件……。
謎を追うのは名探偵・碧月夜と医師・一条遊馬。
散りばめられた伏線、読者への挑戦状、
圧倒的リーダビリティ、そして、驚愕のラスト。
著者初の本格ミステリ長編、大本命!
Amazon内容紹介より。

帯の言葉。島田は褒め過ぎ、かと思いきやあながちそうでもなかった。綾辻の気持ちはよーく理解できる。私の感想に最も近いのは竹本健治です。
そもそもこの人はガチガチの本格ミステリを書かない、書けない?人だと思っていましたが、とんでもない、恐れ入りました。兎に角本格愛に満ち溢れた、知念渾身の一冊。個人的にはもっともっとマニアックにしても良かったと思えるくらいです。しかしそうすると、一般読者に受け入れられない可能性もあるので、これくらいで良かったのかも知れませんが。まあ、欠点らしき欠点はまず見当たりませんね。

それにしても大トリックもないのに、これ程の傑作を生みだすとは・・・。伏線は勿論、ほんの些細な出来事や過去の事件全てが解決に繋がっていて、最初から最後まで目を離せません。僅かな予断も許さず、少しの妥協もない究極まで拘り抜いた、新本格の総括と言っても過言ではないこの作品。
本年の『このミス』『本ミス』『文春ミス』の上位に食い込むのは間違いないと思います。でなければ嘘ですよ。
今こそこの言葉を声を大にして言いたい。「日本のミステリは世界一だ、日本人なら日本のミステリを読め!でも世界に目を向けるのも必要だと思います」。

No.8 9点 mediocrity 2021/10/19 04:19
<少しネタバレあり>

塔の見取り図を見て驚く。なんだ、この楽しそうな建物は。本文に入る前に色々想像して楽しむ。
まずは地下の空きスペースが気になる。ここは絶対何かあるな。上から入るのか、横から入るのか?地上部の空白部分が多い。床に穴があればどの部屋からもロープを階段室周りに巻き付けば下に降りられそう。建物動く系もありだな。空きスペースが多いから、建物を上から押さえつければ(下から引っ張れば)階段室以外の建物が4階くらいに収納できそうetc.

プロローグに進む。まさかの倒叙系?『硝子館の殺人』と微妙に本のタイトルと違うのは何か意味があるのだろうか?
さて本編。非常に読みやすい。習作ぽい文章なのはわざとなのか、こういう文章を書く人なのか。過去作品へのオマージュはちょっとくどいが、有栖川先生もよくやってるし、個人的にはそれほど気にはならない。
なんだか推理が甘いと思う所が散見されるが、その理由が後々わかる過程がいい。真犯人が○○は、筆者自身が文中によほどうまくやらない駄目だと書いていたが、今作はうまくいっていると思う。おそらくそう来るだろうとは思っていたが、そうである必然性があるので納得できた。

各所の低評価評を見ると、過去作の組み合わせじゃないかと言うものが多かったが、これだけ見事に組み合わせていたらそれは褒められるべきだと思う。色々な古典から気に入った所を拾ってきて、アレンジして組み合わせるというのは他の分野でも普通にあるでしょう。むしろそれで整合性を確保していることが高得点の最大の理由。
綾辻先生は帯で「ああびっくりした」と書いているが、作中に出てきた作品の半分が未読の自分のミステリ読書歴でも、それほどびっくりすることはなかった。「びっくり」というよりは「なるほどそう来たか」というのが多かった。

No.7 9点 sophia 2021/10/10 22:14
若干ネタバレ気味です

外界から孤立したガラス張りの奇妙な塔で起こる連続密室殺人。知念実希人氏が満を持して贈る本格ファン待望の館ミステリー。と思いきや、まさかの倒叙もの?えっ、どういうこと?とプロローグの時点で術中に嵌ってしまいました。最初から最後まで意表を突く展開でずっと面白く、舞台設定ともリンクしている二段構えの構成は実に美しいです。
この作品は「問題作」や「賛否両論」という触れ込みですが、真相は私が思っていたほど滅茶苦茶なものではなく、普通に傑作だと思いました。動機部分が問題ということなのかもしれませんが、私は割とすんなり受け入れられました。これはコテコテの舞台設定や人物設定、本格ミステリーへの愛が止まらない探偵など序盤からメタミステリーのオーラがこれでもかと充満していたことが大きいと思います。これは本格ミステリーの新たなマイルストーンと呼んでも良い作品なのではないでしょうか。しかし「硝子館の殺人」より出来の悪い館シリーズありますよね(禁句?)。

No.6 8点 HORNET 2021/09/26 16:55
 遺伝子工学の分野で大きな功績と富を為した学者・神津島太郎。重度のミステリマニアとしても知られる神津島は、自身が建てた山奥の円錐形のガラスの塔に、名探偵、刑事、霊能力者、小説家などの面々を招待した。「今夜、重大な催しをする」―ところがその晩に、神津島は何者かに毒殺される。事件の真相解明に、招待客の一人、名探偵・蒼月夜が立ち上がった。

 異形の館、集められた客人、閉ざされた空間で起きる連続殺人、真相解明に乗り出す「名探偵」。この令和の時代にコッテコテの本格ミステリ、好きな人には諸手を挙げて歓迎されるだろう。
 内容も、密室、ダイイングメッセージ、さらには名探偵・月夜により披露される本格ミステリ薀蓄と、多少やり過ぎかと思うくらいの徹底度。ただ、それぞれの殺人のトリックは特に目を見張るものはなく、良くも悪くも「今さら…」と思えるような代物だったのだが……そのこと自体がラストの仕掛けの伏線となっていたという仕掛けには、素直に舌を巻いた。
 一旦解決を見たようにしておいて、その実さらにその裏側がある…という展開になるのは十分に予想できた(これ自体が最近ちょっとパターン化してないか?)し、真犯人自体もほぼ見当がついていたが、そこにもっていく全体の構成は非常に秀逸だった。
 ただ一つ、真犯人がこういうパターンのある意味「王道」だったので、逆に意外ではなくなってしまった。そこを外すと最高だったのに…という気もした。

No.5 7点 makomako 2021/09/12 13:15
 久しぶりに読んだ新本格推理小説でした。こんなお話はなかなかできそうもない。ある意味凄いです。
 これが面白いと感じる人はかなりの推理小説マニア(というよりおたく)でしょう。
 本格物は人間性が欠けるとか真実味がないといった批評をいつも受けるものですが、これはその筆頭に挙げられそうです。
 とんでもないシチュエーション。そして推理小説おたくとしか思えない名探偵を自称するとんでもない女。こいつは人間の心が全くない。ちょっとしゃべるとすぐ脱線して推理小説の世界にはまり込んでしまう。
 こういた会話が理解できるには登場人物があげる推理小説を読んでいないといけません。
 推理小説マニア以外はバカらしくてやってられないと思うに違いありません。
 本サイトは多くが推理小説が好きな方が投稿しておられると思いますので、評価が高いのは当然でしょう。
 私も相当好きな方ですが、それでもちょっとやりすぎだなあと思うところは多々ありました。  
 それにしたも忙しい医師の仕事をこなしながらこんなすごいことをやってのけるとは。同業のものとして尊敬いたします。


 
 
 

No.4 9点 じきる 2021/08/12 13:14
いやあ、楽しかった。探せば色々粗が見つかりそうだし、決して万人に好かれるタイプの作品ではないと思いますが、私には本格ミステリの楽しみを存分に味わえる読書でした。

No.3 10点 蟷螂の斧 2021/08/07 06:54
内容紹介より~『雪深き森で、燦然と輝く、硝子の塔。地上11階、地下1階、唯一無二の美しく巨大な尖塔だ。ミステリを愛する大富豪の呼びかけで、刑事、霊能力者、小説家、料理人など、一癖も二癖もあるゲストたちが招かれた。この館で次々と惨劇が起こる。館の主人が毒殺され、ダイニングでは火事が起き血塗れの遺体が。さらに、血文字で記された十三年前の事件……。謎を追うのは名探偵・碧月夜と医師・一条遊馬。散りばめられた伏線、読者への挑戦状、圧倒的リーダビリティ、そして、驚愕のラスト。』~
帯より(太字部分のみ転記)~『これを超える作が現れることはないだろう・・・島田荘司(以下敬称略) ああびっくりした、・・・綾辻行人 まるで本格ミステリのテーマパーク・・・有栖川有栖 綱渡りのどんでん返し・・・法月綸太郎 二度読み必至の傑作です。・・・大山誠一郎 100%濃縮還元・・・我孫子武丸 ありったけのミステリ愛を詰めこんだ花束・・・竹本健治 (負けました)!芦沢央』~
これでは10点を付けざるを得ない?!(笑)。目新しいトリックはありません(と言っても解けたのは一つもありません)が、ミステリー愛と数多くのプロット、ガジェットを詰め込んだエンターテイメントと言えると思います。好きな作家の一人なので甘目かもしれませんが、十分楽しめました。特に気に入っている点は、倒叙形式でのスタートというプロットとハウダニットからホワイダニットへの移行ですね。

No.2 4点 はっすー 2021/08/07 01:18
賛否両論分かれる作品かと思います。

そもそもSNS上で賛否分かれており、気になり読んでみました。
作者はいつもは医療ミステリを書き、他作品では最後のツイストで驚かすタイプの作家と認識していたので、元々トリックには期待していない中、本格ミステリ(しかも密室)を扱っていて、期待と不安が半々の中読み進めました。

読了後の正直な感想としては、本格初作品としては色々とやり過ぎたと思いました。。
また途中途中に入るミステリの知識が薄いわりに、マニアと自称するキャラがやたらと語り出すので、薄寒く感じる場面が多々あり、そこも読み手を選ぶかと思います。
一応その知識が伏線として効いているところもあり、必要性は感じ取れます。
しかしながら作品自体が本格ミステリとしての出来が低く、新本格としてもツイストが弱く、なんとも言えなくなります。
また最後のツイストもある種の言い訳のように見え、本格好きを語る作品としては物足りなさを感じます。

ただ事件の構図は面白く、作者なりのミステリ愛は感じることができました。
そのこともあり、全体的にかなり勿体ない作品だと思います。もっとコンパクトにスマートに本格愛溢れる作品だったら、8点は入れていたかとしれません…。

追記  
皆様の評価が高く驚きました…。
皆様の評は個々人がミステリに対する色々な意味での愛がある結果だと感じました。
初読につけた点数なので、点数を変える事はないですが、この作品自体が万人受けしないかもしれない本格ミステリ愛を一般読者に広げ、本格ミステリ愛が広がっていく、一つの機会になるかもしれないという可能性のある作品という意味では、個人的に再度評価すべきであると感じました。

やはり自分一人で読み、評価したところで限界がある、とこの度再認識させていただきました。
今後とも皆様よろしくお願いいたします。

No.1 8点 文生 2021/08/02 09:16
8点つけておいてなんですが、この点数を信じて安易に手を出すのはやめてください。多くの人は一読後、「ふざけるな!」と怒りだすと思うので。

なんといっても最大の問題点はメイントリック及びそれに付随する硝子の塔の秘密で、これを許せないと感じる人は少なくないでしょう。しかし、個人的には、物理トリックで構築したメタミステリーみたいな趣向が非常にユニークに感じました。叙述トリックによる世界が反転するような感覚を物理トリックの力技で実現させてみせたのが最大の評価ポイントです。硝子の塔の秘密に関してもバカミスとして楽しませてもらいました。その代わり、リアリティは皆無ですし、同人のようなネタをプロがやるなという意見があったとしてもそれはそれでもっともなことだと思います。

次に、密室やダイイング・メッセージなどのサブトリックについてですが、数だけは多いものの、どれも使いふるされたトリックの安易なアレンジだったり、トリックのためのトリックだったりして正直パッとしません。その点に失望する人も多いでしょう。ただ、これらのトリックがパッとしないこと自体に事件の本質にかかわる大きな意味合いがあり、その事実に思わず感心してしまいました。

さらに、犯人をミスリードする手口にも唸らされましたし、主人公が終盤突如××から×××にジョブチェンジするところなどは感動ものです。唯一、真相が解明されてからの展開がもやもやしてすっきりしないのが不満点でしょうか。

というわけで、賛否両論(というか否の方が多いかな?)が予想される本作ですが、個人的には大いに気に入りました。


知念実希人
2021年12月
真夜中のマリオネット
平均:6.50 / 書評数:2
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