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[ 本格/新本格 ]
蒼海館の殺人
館四重奏
阿津川辰海 出版月: 2021年02月 平均: 7.53点 書評数: 17件

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講談社
2021年02月

No.17 9点 八二一 2023/10/19 20:34
前作同様、今回も名探偵の在り方を問うと同時に、災害に襲われた閉鎖環境でのカウントダウンサスペンスと殺人事件の謎解きを両立させた。
推理の緻密さ、終盤のサプライズの連続、そして名探偵性の熟考、いずれも抜群に素晴らしい。

No.16 7点 mozart 2023/07/28 08:08
前作に続けて少し前に読みました。結構楽しめました。登場人物たちの人間関係がちょっとややこしかったけど、館モノならではの設定ではないかと。洪水による水没というタイムリミットやクローズドサークルの設定にリアリティが足らなかったような記憶がありますが、ある意味「特殊設定」だとして受け入れれば探偵によるロジカルな謎解きも十分楽しめるのではないでしょうか。

No.15 9点 梨央香 2022/09/04 12:45
前作を未読で読みましたが、この作品は非常に楽しめました!!!
最初手にした時は文庫の厚みに慄きましたが、読み進めるうちにどんどん引き込まれ、夜間のみの時間で2日で完読したほどです。
現代の日本の舞台設定ですし、登場人物達もスマホで天気などの情報も得られる状況なので、読者が若い方だとしても難しく考えることなく、すんなりこの作品の世界観に入れると思います。
館に水が迫ってくる描写と、殺人犯が誰なのか?という部分と家族の不協和音の原因・和解、など、問題がてんこ盛りですが、途中でダレることなく、終始ハラハラドキドキさせられ、お話しの終結まで一気に読まされた感じです。続編も強く望みます。
作者さんもとてもお若い方ですので、今後の作品にも大いに期待したいところです。

No.14 8点 ボナンザ 2022/08/09 12:54
一作目同様かなり凝った内容。キャラクターの青さも含めていい味を出している。

No.13 7点 メルカトル 2022/07/27 22:45
学校に来なくなった「名探偵」の葛城に会うため、僕はY村の青海館を訪れた。
政治家の父と学者の母、弁護士にモデル。
名士ばかりの葛城の家族に明るく歓待され夜を迎えるが、
激しい雨が降り続くなか、連続殺人の幕が上がる。
刻々とせまる洪水、増える死体、過去に囚われたままの名探偵、それでも――夜は明ける。
新鋭の最高到達地点はここに、精美にして極上の本格ミステリ。
Amazon内容紹介より。

長いがそれに見合っただけの中身であると思います。無駄な描写は微塵もなく、起こった事象に関してはまるで精密機械の様に組み立てられています。まあ良くもこれだけの物語を考え付くものだと感心しました。しかし、それは飽くまで話の中で語られた事柄に対してのものであり、果たして犯人の思惑通りこれ程に都合よく事が運ぶものかとの懸念は感じました。やや偶然が過ぎるのではないかと思わずにはいられません。

ですから本来8点を付けても問題なかったのですが、若干の瑕疵がマイナス点となりました。
それでも、自然現象まで計算に入れての用意周到な犯罪には頭が下がる思いです。これまでのクローズドサークルとは一味違います。途中、探偵助手の私が地の文で突然何を言い出すのかと驚きもしました、それも犯人の掌で踊らされたいたとは、何という事でしょう。意外性もあります。概して玄人好みの逸品だと思います。

No.12 8点 ぷちレコード 2022/04/22 23:18
学校に来なくなった葛城に会うため、田所と三谷が彼の実家の蒼海館を訪ねる。折からの暴風雨で館に留まらざるを得なくなったところに、さらに殺人事件が。葛城は、自分の家族に関わる事件の謎に挑む。
災害と事件が押し寄せる前半から中盤、そして二重三重の複雑な企みを解き明かす後半と、密度の高い展開で読ませる。
真相の解明と、失意の探偵が復活する過程が重なり合い、最後まで飽きさせない。

No.11 8点 人並由真 2022/02/15 07:23
(ネタバレなし)
 これだけの密度の内容で、大部の600ページ以上。それを一日でいっきに読ませたのだから、とんでもない求心力であった。
 なにより<レギュラー名探偵自身の実家で起きる連続殺人>、この趣向が楽しくってたまらない(前例があるかもしれないが、評者は知りません・笑)。
 
 とはいえデティルが細かくて複雑すぎて、数ヶ月経ったら細部の大半は、頭の中で整理できなくなっていると思う。
(さすがにこの犯人像だけは、忘れることは、たぶん今後もないであろうが。)

 なお、先行のレビューの方々の、真犯人があまりに都合のよい状況に頼りすぎるという不満はもっともだと思う。 
 が、個人的にはそれ以上に、もしも自分が犯人の立場だったら、ここまでデリケートな犯行計画を作中のリアルで実行なんか、とても怖くてできない、と思った。すぐに綻びかけるポイントが、ざっと見ても3つ4つあるように思える。

 ワトスン役の田所と名探偵・葛城の繊細な関係は、前回以上にとても良い。嫌味や悪口でなく、今風のBL要素を、ちゃんと名探偵ミステリの枠内でのキャラクタードラマに転化させている。
  
 文句なしに昨年の収穫のひとつ。

No.10 7点 名探偵ジャパン 2021/12/27 19:56
 これはかなりの力作です。これだけのものをよくぞ書き切ったと、作者の苦労をねぎらいたくなる逸品ですね。
 ただ「騙しとどんでん返し」に特化した最新鋭ミステリの暴走とでも言いましょうか、ある意味「トリックのためのトリック」に一周回って帰ってきている気がします。本作に限らず、ここ数年の新作ミステリ全般に言えることですが。

No.9 7点 まさむね 2021/11/14 22:56
 力作です。最後まで感心しながら読ませていただきました。
 一方で、同様の感想を持たれた方もいらっしゃるようですが、ソコまでは操れないと思いますがねぇ。特に、大前提となる最後の一手までは…。その点は結構気になりましたね。あと、前半のとある表記はフェアと言えるのかな?
 とは言え、繰り返しになりますが、熱のこもった力作です。心意気を評価し、次回作にも期待。

No.8 6点 蟷螂の斧 2021/08/20 17:03
(**ネタバレあり**)


「紅蓮館の殺人」では犯人像がイマイチと感じていたところ、本作は「意外な犯人」がメインとなり好感。ただし、sophiaさんのご指摘通り瑕疵がありますね。○○○による本人確認がいい線いっていたのに、なぜこんな単純なミスをしたのか?不思議です。また、物語を複雑化し過ぎています。その結果、もしマインドコントロールの一角が崩れたら物語が成立しなくなる危うさがあります。特に○○(人物)による殺人。逆に言えばそんなにうまくいくのかねと思われかねない。あと、好きでない○○、○○があり高評価は付けづらい。まあ、全体的には面白ったので今後に期待するということで・・・次回(3部作目)は地震?4部作となるらしい???

No.7 7点 文生 2021/08/14 11:49
精緻に構築された犯人の犯行計画とそれを暴いていく名探偵のロジックは圧巻の一言。質量ともに文句なしの読み応えです。館ものとして新たな金字塔を打ち立てた作品だといっても過言ではないでしょう。
ただ、計画が失敗したときに備えて代案も複数用意していたというフォロはあるものの、そこまで思い通りに他人を誘導できるのか?と思ってしまう部分はあります。
それから、これは犯行計画とは直接関係ない部分ですが、
(以下ネタバレ)








変装した犯人が間近で話しかけられたのちも、他人のふりをしようとし続けたのに無理を感じてしまいました。あまり会ったことのない人ならともかく、身内に対してはちょっと変装したくらいではバレバレでしょう。

No.6 7点 虫暮部 2021/04/30 10:53
 語り手の揺れ動く心情の描写が四角張った感じで煩わしい。ユウトの家での一幕は良かった。あなたが蜘蛛だったのですね。
 幾らかの齟齬と言うか記述の不備が含まれる気はするが、これだけ長々と読まされた後ではなんかもう検証する気力も失せた。この分厚さの狙いはそれか? とりあえず一点:文中とタイトルとで館名の表記が違うのは何故?

No.5 6点 HORNET 2021/04/25 19:56
 高校生の田所信哉は、「紅蓮館」の事件以来学校に来なくなってしまった名探偵・葛城に会うため、葛城家の別荘「蒼海館」を友達の三谷と共に訪れる。そこには葛城の両親・兄姉を始め、叔父・叔母夫婦など一同が揃っていた。折しも強大な台風により帰れなくなった田所と三谷は、蒼海館に泊まることに。しかしその晩、大雨により出入りのできない館で、葛城の兄・正が殺され、閉ざされた空間での連続殺人の幕が上がる―

 複雑であるが精緻に織り込まれたロジックには感心するが、ちょっとやり過ぎではないか?とも思う。しかも要所要所で、「ある人物に何かをするように仕向ける」という要素があるが、そんなに思惑通りに人が動くとはとても思えない。真犯人を特定していく過程はロジカルなのだが、犯行手段にちょくちょく織り込まれているそうした要素が腑に落ちず、手放しで賞嘆する気にはなれなかった。
 とはいえ、令和の時代に館もの、クローズドサークルものに真っ向から挑む作風には非常に好感がもてる。是非、今後も書き続けて欲しい。

No.4 6点 sophia 2021/03/21 18:48
災害を犯行計画に取り入れてきたところなどは「紅蓮館」より優れた点なのですが、事件の全容があまりにも複雑すぎましたね。そう犯人の思惑通りに事が運ぶとは思えませんし、状況設定や推理も穴だらけ、更には攪乱戦術を用いすぎたことで結局何が真実であったのか読者の頭に残りにくくなってしまったと思います。そして犯人の意外性を出そうとし過ぎたあまり、問題編と回答編で完全に別の人格になってしまっています。中盤あたりでは9点、10点の予感を感じていただけに残念です。なお今作で葛城は前作の痛手から立ち直ったという体ですが、むしろ逆にもっと深い傷を負ったのではないですか?

以下ネタバレでこの作品の大きな傷(?)

196ページの中ほどの文章で、あの人物の身代わりの線は完全に否定してあるように思えるのですが。

No.3 9点 makomako 2021/03/13 07:59
 前作ではちょっと長すぎて、終わりの方がくどい印象を受けました。でも作風は気にいていましたので次回に期待などど書評に書いていたのですが、次作は期待にそぐわぬ素晴らしい作品でした。本当に久しぶりに本格物の傑作長編を読めました。
 前半三分の一ぐらいまでは登場人物の紹介や関係が精緻に記されているのです。本格好きのものにとってはいかにも何かありそうな雰囲気です。
 読み進むと定番シチュエーションの嵐の密室となってきます。本の扉には館のシチュエーションや内部構造などがついており、これを使ったトリックも考えることになるのかとワクワクしてくる。さらに人間関係が思ったよりさらに複雑で、事件の解決方法もいくつか提示されます。話は非常に精緻で込み合っており、完全に作者に翻弄され他ところで、とんでもない一言が出てきて唖然としてしまう。
 結果はまた全く異なるところへ到達するのですが、最後まできちんと話ができ上っており、感服しました。
 多少の減点は作者の才能がありすぎるためか、色々と頭が回りすぎて、話が迂遠で区止めに感じられるところです。
 本格好きならぜひ読んでみてください。きっと満足しますよ。

No.2 8点 nukkam 2021/02/25 21:27
(ネタバレなしです) 2021年発表の館四重奏第2作となる本格派推理小説です。「紅蓮館の殺人」(2019年)の続編というべき作品で、葛城輝義は心に傷を負った状態で登場します。名探偵どころか一般人としても無気力になっており、事件が起きてもやる気を見せず一体いつになったらどうすれば復活するのか読者をやきもきさせます。「紅蓮館の殺人」では迫りくる山火事がサスペンスを盛り上げましたが本書では台風が引き起こした濁流が迫ります。それ以上に緊張感を演出するのが容疑者の大半が曲者揃いの葛城一族であることで、異様な家族ドラマが待ち受けます。古今のミステリーを意識した仕掛けは前作以上で、第一部の4章では「アガサ・クリスティーかよっ!」、第五部の3章では「レックス・スタウトかよっ!」、第六部の2章では「エラリー・クイーンかよっ!」と何度内心で突っ込んだことか。私よりもミステリー通である多くの読者ならもっと突っ込みネタを見つけられたでしょう。怒涛の推理に柄刀一の「密室キングダム」(2007年)に匹敵するような犯人の深遠謀慮が凄い。講談社タイガ版で600ページを超す大作ですがこの厚さは必然だったと思います。

No.1 9点 葉月 2021/02/20 00:01
阿津川辰海の最高傑作というだけでなく、間違いなく新•新本格を代表するであろう傑作。真相はあまり時精緻に作られていて、感嘆するより他にない。死体の顔を潰す理由もまさに前代未聞。


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