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[ 本格/新本格 ]
蒼海館の殺人
葛城輝義シリーズ
阿津川辰海 出版月: 2021年02月 平均: 7.50点 書評数: 6件

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講談社
2021年02月

No.6 7点 虫暮部 2021/04/30 10:53
 語り手の揺れ動く心情の描写が四角張った感じで煩わしい。ユウトの家での一幕は良かった。あなたが蜘蛛だったのですね。
 幾らかの齟齬と言うか記述の不備が含まれる気はするが、これだけ長々と読まされた後ではなんかもう検証する気力も失せた。この分厚さの狙いはそれか? とりあえず一点:文中とタイトルとで館名の表記が違うのは何故?

No.5 6点 HORNET 2021/04/25 19:56
 高校生の田所信哉は、「紅蓮館」の事件以来学校に来なくなってしまった名探偵・葛城に会うため、葛城家の別荘「蒼海館」を友達の三谷と共に訪れる。そこには葛城の両親・兄姉を始め、叔父・叔母夫婦など一同が揃っていた。折しも強大な台風により帰れなくなった田所と三谷は、蒼海館に泊まることに。しかしその晩、大雨により出入りのできない館で、葛城の兄・正が殺され、閉ざされた空間での連続殺人の幕が上がる―

 複雑であるが精緻に織り込まれたロジックには感心するが、ちょっとやり過ぎではないか?とも思う。しかも要所要所で、「ある人物に何かをするように仕向ける」という要素があるが、そんなに思惑通りに人が動くとはとても思えない。真犯人を特定していく過程はロジカルなのだが、犯行手段にちょくちょく織り込まれているそうした要素が腑に落ちず、手放しで賞嘆する気にはなれなかった。
 とはいえ、令和の時代に館もの、クローズドサークルものに真っ向から挑む作風には非常に好感がもてる。是非、今後も書き続けて欲しい。

No.4 6点 sophia 2021/03/21 18:48
災害を犯行計画に取り入れてきたところなどは「紅蓮館」より優れた点なのですが、事件の全容があまりにも複雑すぎましたね。そう犯人の思惑通りに事が運ぶとは思えませんし、状況設定や推理も穴だらけ、更には攪乱戦術を用いすぎたことで結局何が真実であったのか読者の頭に残りにくくなってしまったと思います。中盤あたりでは9点、10点の予感を感じていただけに残念です。なお今作で葛城は前作の痛手から立ち直ったという体ですが、むしろ逆にもっと深い傷を負ったのではないですか?

以下ネタバレでこの作品の大きな傷(?)

196ページの中ほどの文章で、あの人物の身代わりの線は完全に否定してあるように思えるのですが。

No.3 9点 makomako 2021/03/13 07:59
 前作ではちょっと長すぎて、終わりの方がくどい印象を受けました。でも作風は気にいていましたので次回に期待などど書評に書いていたのですが、次作は期待にそぐわぬ素晴らしい作品でした。本当に久しぶりに本格物の傑作長編を読めました。
 前半三分の一ぐらいまでは登場人物の紹介や関係が精緻に記されているのです。本格好きのものにとってはいかにも何かありそうな雰囲気です。
 読み進むと定番シチュエーションの嵐の密室となってきます。本の扉には館のシチュエーションや内部構造などがついており、これを使ったトリックも考えることになるのかとワクワクしてくる。さらに人間関係が思ったよりさらに複雑で、事件の解決方法もいくつか提示されます。話は非常に精緻で込み合っており、完全に作者に翻弄され他ところで、とんでもない一言が出てきて唖然としてしまう。
 結果はまた全く異なるところへ到達するのですが、最後まできちんと話ができ上っており、感服しました。
 多少の減点は作者の才能がありすぎるためか、色々と頭が回りすぎて、話が迂遠で区止めに感じられるところです。
 本格好きならぜひ読んでみてください。きっと満足しますよ。

No.2 8点 nukkam 2021/02/25 21:27
(ネタバレなしです) 2021年発表の葛城輝義シリーズ第2作となる本格派推理小説です。「紅蓮館の殺人」(2019年)の続編というべき作品で、葛城は心に傷を負った状態で登場します。名探偵どころか一般人としても無気力で、事件が起きてもやる気を見せず一体いつになったらどうすれば復活するのか読者をやきもきさせます。「紅蓮館の殺人」では迫りくる山火事がサスペンスを盛り上げましたが本書では台風が引き起こした濁流が迫ります。それ以上に緊張感を演出するのが容疑者の大半が(曲者揃いの)葛城一族であることで、異様な家族ドラマが待ち受けます。古今のミステリーを意識した仕掛けは前作以上で、第一部の4章では「アガサ・クリスティーかよっ!」、第五部の3章では「レックス・スタウトかよっ!」、第六部の2章では「エラリー・クイーンかよっ!」と何度内心で突っ込んだことか。私よりもミステリー通である多くの読者ならもっと突っ込みネタを見つけられたでしょう。怒涛の推理に柄刀一の「密室キングダム」(2007年)に匹敵するような犯人の深遠謀慮が凄い。講談社タイガ版で600ページを超す大作ですがこの厚さは必然だったと思います。

No.1 9点 葉月 2021/02/20 00:01
阿津川辰海の最高傑作というだけでなく、間違いなく新•新本格を代表するであろう傑作。真相はあまり時精緻に作られていて、感嘆するより他にない。死体の顔を潰す理由もまさに前代未聞。


阿津川辰海
2021年02月
蒼海館の殺人
平均:7.50 / 書評数:6
2020年04月
透明人間は密室に潜む
平均:6.17 / 書評数:6
2019年09月
紅蓮館の殺人
平均:6.86 / 書評数:7
2017年06月
名探偵は嘘をつかない
平均:6.40 / 書評数:5