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[ 本格/新本格 ]
星詠師の記憶
阿津川辰海 出版月: 2018年10月 平均: 6.50点 書評数: 6件

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光文社
2018年10月

光文社
2021年10月

No.6 8点 よん 2024/05/07 16:14
二〇一八年、星詠師たちの研究施設で発生した射殺事件は、組織の都合で隠蔽された。現場に遺されていた水晶の映像から、星詠師の石神赤司を射殺したのは息子と判断し、内部で彼を幽閉したのだ。
犯行の一部始終を記録した映像がある状況をひっくり返す難題に加え、そこに連なる昭和の事件も探る濃密な一冊。真相の意外性も抜群だし、謎解きの果てに浮かぶミステリとしての構図も意外で、かつ美しい。

No.5 5点 E-BANKER 2023/11/18 14:06
「名探偵は嘘をつかない」につづく作者の第二長編作品がコレ。
作者お得意の「特殊設定」下の事件を扱う本格ミステリー。でも、こんな設定、よく考えつくよなぁ・・・
単行本は2018年の発表。

~被疑者射殺の責任を問われ、限りなく謹慎に近い長期休暇をとっている警視庁刑事の獅堂。気分転換に訪れた山間の寒村・入山村で、香島と名乗る少年に出会う。香島は紫水晶を使った未来予知の研究をしている「星詠会」の一員で、会の内部で起こった殺人事件の真相を探って欲しいという。不信感を隠さず、それでも調査を始める獅堂だったが、その推理は予め記録されていたという「未来の映像」に阻まれる。いったい何が記録されていたのか?~

最初に書いたとおり、本作もかなりの「特殊設定」「特殊な条件下」での推理を探偵も読者も強いられる。
くだんの「星詠会」の「星詠師たち」は紫水晶のなかに未来を映し出すことができる・・・というのが今回のメイン特殊設定となる。
殺人事件は容疑者が明白な形でその映像に残っていたのだが、その欺瞞を解き明かすのが探偵役の獅堂。

ストーリーは現在進行形の事件と、会の創始者でもある男が自身の特殊能力を知った過去の事件がクロスオーバーしながら進んでいく形をとる。当然、ふたつの事件は大きな関わりがあるはずと読者は意識することになる。
ただなぁー。他の方も書かれているけど、この条件がかなり“ややこしい”。
普通の頭ではどうにもこうにも「矛盾」が生じてしまうような設定なのだが、そこはそう日本の最高学府出身の作者だけあって、凡人たちが矛盾だらけに苦しむなかでスイスイと真相に行き着いてしまう。

なので、どうにも凡人の私にとってもスッキリしない感覚に陥ってしまう。
正直、事件関係者の人数は少ないので、役割を与えていけば真相に到達するということがないわけではない。なんだけど、そのためにずいぶんややこしいことしたなあという印象を持ってしまう。
動機もねぇ。ここまで精緻なミステリーを組んできた作品としては、えらく陳腐な動機だなぁという感想。

話の性質上、ジミになるのはやむを得ないのかもしれないけど、「特殊設定」というと比較的派手な展開というイメージがある中で、玄人好みの作品といえそう。
純粋なパズラー好きの方なら、もう少し高評価になってもよいだろう。
凡人の私はこの程度の評価で・・・

No.4 7点 猫サーカス 2023/10/15 18:11
星詠師と呼ばれる特殊能力者が紫水晶を持って寝ると、そこに未来の映像が記録されるという超自然現象を前提としている。最も強い能力を持つ星詠師の石神赤司が怪死し、紫水晶には赤司が息子の真維那に殺害される一部始終の映像が残されていた。真維那の無実を信じる弟子の依頼により、休職中の警視庁刑事・獅堂が調査に乗り出した。予知映像という形ではっきり証拠が残されている事件で、容疑者の無実をいかに証明するかという難題を軸に展開される物語。数多い特殊ルール本格の中で本書が際立っているのは、超自然的な要素を現実社会と接続させて見せる手続きの部分だ。紫水晶に映った未来予測をデジタルデータとして読み取る技術が開発されたり、映像の特定に顔認証や虹彩認証が用いられるなど、戦国時代の伝説にまで遡る超自然現象が現代のテクノロジーによって検証される記述には不思議なリアリティが感じられる。またそうした手続き自体が、事件の手掛かりが本物か偽物かを検討する上で重要なプロセスとなっている。

No.3 5点 makomako 2022/07/02 20:48
これは読者を選ぶ小説だと思います。
現実はともかく、精緻な推理と複雑なトリックを楽しむ方ならとても楽しめるでしょう。このサイトに評価も多くが本格物が好みの方が多いと思うので、評価は高くなるものと思います。
私も本格物が好きなのですが、これはあまりにもこみいりすぎで、一度読んだだけでは鈍い私の頭では、真相を解明されてもなかなかついていけませんでした。
さすが東大出の作者が考えた小説といったところでしょうか。登場人物もみんな東大へ行っています。このあたりエリート感が漂っていてちょっと嫌味な感じがしないでもない。
なんといってもお話の地盤がありえないものなので、そのうえに立った砂上の楼閣のようなお話とも言えます。
まあ本格推理の多くが多かれ少なかれあり得ないお話ではありますが。

No.2 7点 ぷちレコード 2022/03/09 22:44
予知夢を記録する紫水晶というファンタジー風の設定を導入した特殊ルール本格ミステリ。
といっても、その幻想的な設定を、あくまで現実と地続きの世界に接続するため、作者は類例が珍しいほどに細心の注意を払っている。予知映像に、はっきり犯行の瞬間が映っている容疑者の無実をいかにして証明するかというメインの興味は「逆転裁判」風。
綿密に考え抜かれた犯人の計画と、一見些細な手掛かりからそれを暴いてゆく獅堂の推理は圧巻。

No.1 7点 虫暮部 2021/12/07 10:55
 一つおかしなロジックが混ざっていて、しかも登場人物の行動に大きな影響を与えちゃっている。
 “星詠師が自分の死期を悟ってしまうキッカケの一つ……ある時点以降の予知を見なくなったとき”
 →それは“ある時点までその人は生きている”ことしか意味しない。“予知はアトランダム”とされているのだから、“ある時点”と“死期”の間のブランクの長さは判定出来ない。
 (→そもそも、時期推定不能な予知が一つでもあれば、“ある時点以降の予知を見なくなった”との判断自体が出来ない。)

 緻密なミステリ部分とは別に、〈星詠会〉設立の物語が面白かった。


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