皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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よんさん |
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平均点: 6.52点 | 書評数: 85件 |
No.85 | 6点 | フレームアウト- 生垣真太郎 | 2025/01/06 14:24 |
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フリーの映画編集者であるデイヴィッドは、作業スペースに紛れ込んでいた一本のフィルムを見つける。そこには女が実際に血を流して死んでいく姿が禍々しく、かつ完璧な美しさで撮られていた。フィルムに魅せられたデイヴィッドは出演女優のアンジェリカ・チェンバースを探し始めるが、その過程でもう一人、同じアンジェリカの名を持つ女性が失踪していることを知る。
実在する世界の映画人や作品に関する薀蓄や論考が飛び交う、映画好きには堪らない作品。人探しを主題にした一人称私立探偵小説のような展開の中、と思って読んでいると、とんでもない仕掛けが施されていたことが終盤で明かされ愕然とする。 |
No.84 | 7点 | 新世界より- 貴志祐介 | 2025/01/06 14:17 |
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豊かな自然に囲まれ、念動力のような「呪力」が生活を支える集落、神栖66町。主人公の渡辺早季のノスタルジックな回想は、牧歌的な少年少女時代に始まるが、やがて彼女たちは失われた先史文明の情報端末から世界の秘密を知ってしまう。それは人間が呪力を持つということの恐ろしさと、薄氷を踏むように作られた偽りの平和の姿だった。
呪力や真言といった伝奇要素、異形の進化を遂げた生物相の精緻な描写に加え、思春期の瑞々しさ、手に汗握る冒険活劇、ミステリ的な展開と、いわば全部入りの怒涛のエンターテインメント。 ジャンルを超えて評価される本作だが、通底するSF的問題意識は超能力を得た人類が作る社会の形、そして人間の業とでも言うべきものだ。 |
No.83 | 6点 | Jの神話- 乾くるみ | 2025/01/06 14:11 |
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全寮制の名門女子高を舞台に、次々と起こる怪事件。生徒間で囁かれるジャックという謎の人物の存在。
始まりはいかにも本格風だが、途中からはミステリからも逸脱した伝奇SFのごとき展開を見せる。加えて百合の香りが全編に漂う、ただならぬ雰囲気の闇。メフィスト賞の面目躍如たる衝撃作。 |
No.82 | 6点 | TOKYO BLACKOUT- 福田和代 | 2024/12/06 13:25 |
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首都圏が大停電するパニック小説だが、派手な物語とは対照的に人物の細かな描き分けが素晴らしい。
特に犯人たちの現実には、現代日本の問題が浮かび上がってくる。彼らを操る真犯人の真の動機を知った時、感動があふれだした。 |
No.81 | 7点 | カラスの親指- 道尾秀介 | 2024/12/06 13:21 |
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闇金融に人生を台無しにされた中年男が相棒を得て、さらに同じく闇金融に翻弄された若者たちを加え、やくざ相手に大芝居を打つ。逆転に次ぐ逆転で、コン・ゲームとして実にうまくできている。
ハラハラさせたり、泣かせたりと、単純に成功話にしないところが心憎い。弱者救済というか、社会から弾かれた人への温かい眼差しがある。 |
No.80 | 8点 | ゴールデンスランバー- 伊坂幸太郎 | 2024/12/06 13:16 |
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首相暗殺の濡れ衣を着せられた主人公が国家的陰謀から逃げ回る話。
いろいろな形で、この追われる男を支援する人物が現れ、捕まりそうで捕まらない。また支援者と主人公の関係にバラエティがあり、その差異が伏線にも見事に生かされている。 巧妙に時制をずらせる書き方が、緊張感を生み、経過を分かりやすく伝えている。後日談もあって、締めくくりも巧く読み終えて爽快な気分になる。 |
No.79 | 5点 | 黙秘- 深谷忠記 | 2024/10/23 11:33 |
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殺人容疑で逮捕された女は、被害者を刺した事実は認めたものの、それ以外に関しては黙秘を続ける。担当検事の森島宏之は、このままでは犯行動機が不明の状態で起訴せざるを得ないことに苦悩し、かつて恋した相手の母親である被告に公正な裁きを受けさせようとする。
罪を糾弾する側でありながら、心情としては被告に思い入れが深い森島のアンビバレントな立場が、検事もまた血も涙もある人間であることを印象付ける。 |
No.78 | 7点 | 録音された誘拐- 阿津川辰海 | 2024/10/23 11:28 |
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探偵事務所の所長が誘拐されるというのがまずユニーク。さらに依頼を受けた犯罪請負人が犯罪を美しく実行するというのもユニーク。そんな誘拐事件に、大野探偵事務所の他の二人の探偵、耳が良い探偵とカウンセリングを得意とする探偵が挑む。
という具合に、そもそもの事件の構図がユニークだし、そこからの展開もユニーク、そして真相は意外というものだが、それだけでは終わらない。終盤の終盤でこうだろうと思っていた光景が実はそうではなく、全く異なる綱渡りだったことが明かされる。二種類の衝撃を味わえる作品となっている。 |
No.77 | 7点 | 夏休みの空欄探し- 似鳥鶏 | 2024/10/23 11:20 |
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成田頼信は、会員2名のクイズ・パズル研究同好会所属の高校生。夏休みのある日、店で隣り合わせた姉妹の手元にあった暗号を見た彼は、つい解読してしまう。かくして彼は、七輝とその姉の雨音とともに、ある富豪が残したという数々の暗号に挑むことに。同級生の清春も加わって4人で過ごす夏休みは、七輝に惹かれていく頼信にとって忘れられない日々に。
姉妹との出会い、そして妹への想い、さらに自分とは別世界の住人と思っていた同級生の知らなかった一面を見て、頼信の世界は広がっていく。暗号を解読することが、頼信と七輝の関係の進展と重なり合う、そのプロセスを丁寧に描いているからこそ、全体の構図が明かされた瞬間の頼信の痛切な思いも、読む者の胸を打つ。 |
No.76 | 6点 | 七度狐- 大倉崇裕 | 2024/10/03 13:33 |
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落語雑誌の編集長と新人編集者の間宮緑がホームズとワトスン役を務める。名跡継承をめぐって開かれる落語一門会の取材のため、ある村を訪れた新人編集者の間宮緑。
豪雨により外界から隔絶された村で、落語家の後継者争いと思われる殺人が相次ぐこの作品、見立て殺人や安楽椅子探偵をはじめとして、本格ミステリの趣向が詰まっている。 |
No.75 | 8点 | GOTH リストカット事件- 乙一 | 2024/10/03 13:28 |
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同級生の森野が拾った一冊の手帳。それは世間を震撼させている連続殺人鬼の日記だった。警察に届けることなど考えもせず、「僕」と森野は手帳に記されている、まだ発見されていない死体を探しに山へ出掛けた。
人間の暗黒部分に惹かれ、残虐な異常犯罪に興味を抱かずにはいられない「僕」と森野の目に映った6つの事件を描いた連作短編集。明るく健康的なクラスメイトたちに馴染めない森野と、完璧に馴染んだふりの出来る「僕」というキャラクターの魅力もさることながら、ミステリとしての驚きも十分。切なく胸に小さな傷を残すような物語。 |
No.74 | 6点 | おさかな棺- 霞流一 | 2024/10/03 13:23 |
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迷走と妄想の迷探偵・紅門福助のもとに飛び込んできた、奇妙奇天烈な事件の数々。四季折々の旬の魚をモチーフに、笑いと伏線を見事に編み上げている。
表紙もさることながら、内容も実にバカバカしい。この「バカ」という魅力的な異世界ゆえに成立する奇妙な謎と美しいロジック、そして本格ミステリ魂が感じられる合理的な結末が味わえる4作品が収録されている。 |
No.73 | 6点 | 量刑- 夏樹静子 | 2024/08/08 14:30 |
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通りすがりの母娘を車で轢き、あまつさえ口封じのため殺害してしまったという事件をめぐる裁判劇。
被告の量刑が死刑になる事態を回避しようと考えた共犯者は、とんでもない手段で裁判官を脅迫する。 弁護士や検事ではなく、法廷ミステリではスポットライトが当たりにくい裁判官を物語の中心に据えて、その立場ならではの苦悩を描いている。 |
No.72 | 6点 | 囚われのスナイパー- スティーヴン・ハンター | 2024/08/08 14:15 |
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票目当ての議員が、老いた狙撃手のスワガーを公聴会に引きずり出し、勝手な法解釈や詭弁など、あらゆる手段で責め立てる。狙撃手にとって異質なその闘いに、麻薬をめぐる悪党たちの争いが飛び火する。
スワガーが二種の全く異なる闘いに巻き込まれる。それぞれの闘いも展開もスリリングで、悪党たちの造形も見事。なかには筋の通った考えを持つ者もおり、欲の溺れた政治家たちの対比も鮮やか。 |
No.71 | 6点 | インビジブル- 坂上泉 | 2024/08/08 14:10 |
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作者が近代日本史の研究者だけあって、時代の描写がリアル。大阪市警視庁というその時代にしかなかった組織が、現代の警察へと変わっていく転換期を背景にしたバディ型の警察小説で、罪の動機にも登場人物たちの心理や背負っているものにも、戦中戦後の時代に確かにあったのであろう心の傷や社会の歪みが活用されていて、登場人物各々が昭和の歪みに立ち向かっていく様が胸を打つ。 |
No.70 | 8点 | ラットマン- 道尾秀介 | 2024/07/17 14:36 |
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結成十四年になるアマチュアロックバンドが練習中のスタジオで、一人の女性が大型アンプの下敷きになって死んでしまう。
その死の謎をめぐって物語が展開する中、ギター担当の姫川の過去と、姫川の彼女である被害者のひかり、その妹でドラム担当の桂の三人の関係が浮かび上がってくる。 過去の事件と現在の事件を呼応させているばかりか、そこに絡む人間相関図まで重ね合わせたり、二パターンの見え方があるはずの絵が思い込みによって一方の見え方に誘導されてしまう心理を物語全体に有機的に絡めている手際が見事。 |
No.69 | 7点 | 孤宿の人- 宮部みゆき | 2024/07/17 14:30 |
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妻と部下を殺した罪で流刑、預かりの身として四国の丸海藩に幽閉された、元勘定奉行の加賀と、両親に捨てられた少女・ほうの物語。
加賀の世話をすることになったほうが、少しずつ加賀の真実に気付いていく様がいい。加賀がほうに書き残した一文字が何なのかを知ったとき、感動のあまり涙が出た。 |
No.68 | 7点 | 侵略少女 EXIL girls- 古野まほろ | 2024/06/17 15:35 |
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卒業を迎え、徹夜で伝統儀式を進めていた七人の女子高生たちが、「誤差領域」に迷い込んだ。天国の手前にあるというその謎めいた領域で、彼女たちは様々な経験を重ねる。
怪鳥に襲われ、天使と言葉を交わし、仲間が殺される。その後、作者が顔を出して〇〇を殺したのは誰かと読者に挑戦する。そしてその先を読んで、挑戦状までに数百もの伏線が張られていたことに気づく。 なお本書は単体でも十分に楽しめるが、三部作の読者は最後の数ページを余計に楽しめるだろう。 |
No.67 | 6点 | 闇の喇叭- 有栖川有栖 | 2024/06/17 15:26 |
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物語の舞台となるのは探偵行為が違法となった世界で、少しでも探偵っぽいふるまいをした人間を容赦なく追い立てる探偵狩りなるものが行われている。
ミステリは様々なジャンルを組み合わせることができるが、この作品ではSFの世界では定番となったディストピアと組み合わせることで「こんな世の中でなおも探偵をやることの意義とは何か?」「探偵として求められるものは何か?」ということを描き出している。 |
No.66 | 6点 | 在原業平殺人事件- 山村美紗 西村京太郎 | 2024/06/17 15:23 |
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山村美紗の遺作を西村京太郎が完結させた。在原業平ゆかりの古寺へ散策に出かけた明子は、大学教員の細川と出会い、交際を始める。ところが細川の同僚が殺される事件が起き、明子は図らずも探偵のような立場になる。
学長や教授のポストを巡る競争、学説を覆すような新しい資料の発見、複雑な男女関係など興味をそそられる背景が用意されている。 業平を巡る深い知識で物語を回していくのは、山村の真骨頂。西村が考えた結末もなかなかのもの。 |