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[ 本格/新本格 ]
十戒
夕木春央 出版月: 2023年08月 平均: 7.41点 書評数: 17件

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講談社
2023年08月

No.17 5点 いいちこ 2024/08/15 16:01
この作品も真犯人に意外性が感じられないが、これは作品のプロットそのものに起因する問題。
つまり本格ミステリとして堅牢性に乏しい、ユルユルの造りにしているから、誰でも犯人にできるような印象を受ける。
本作をフェアネスという点から問題視する向きもあるようだが、そこは減点しておらず、また一旦読了したうえで、2周目の読書が面白いという評価もあるようだが、そこは評価対象としていない

No.16 9点 zuso 2024/06/18 22:12
殺人犯を見つけてはならない。それが犯人から課された戒律。破られた場合、離島内の起爆装置が作動、全員の命が失われる。
戒律が課せられることにより、これまで無かったようなクローズドサークル化させている。
ラストの衝撃度は前作の「方舟」に譲るが、舞台設定はこちらの方が好み。また「方舟」との繋がりも隠されていて、作者のサービス精神も感じた。

No.15 7点 2024/05/12 08:49
「方舟」に比べて真相にそれほど驚きはなかったのですがラスト2ページの文章にモヤモヤ感がありました。
ネットでネタバレを確認して納得しました。
「方舟」を先に読むことをお勧めします。

No.14 7点 hsiyehmeipo 2024/05/05 03:52
読んでいる時に違和感は感じるものの、その違和感がどう回収されるか回収されるまで全然わからなかったし、驚きがあり面白かった。
その上にさらにもうひとびっくりあり、そちらも最初気づかなかったが、ネットの解説を読んで理解できたくらいだったが、それも面白かった。

No.13 8点 ALFA 2024/04/18 17:24
大ヒット作に続く「旧約聖書」シリーズ第二作。それにしてもクローズドサークル二連発とは大胆な。

今回は登場人物の描き分けも的確で、落ち着いて展開を味わえる。
終盤、緻密なロジックで開示されたあげくの反転は見事。こちらは情が絡まない分、好ましい。
そして「・・・いっつも、自分が助かることしか考えてないかも。」ウーンこの趣向、嫌いではない・・・
考えようによっては今回の方が大技かも。
曖昧な書きようだが、そういえば何かが奥歯に・・・  ウ~ン高評価。

No.12 8点 パメル 2024/04/02 19:41
主人公の里英は、リゾート施設を開業することになった伯父が所有していた枝内島を、父や不動産屋などの関係者たちと総勢9名で視察に訪れる。しかし、島内の視察を終えた翌朝、一人の死体が発見される。そして十の戒律が書かれた紙が置かれていた。この島にいる間、殺人犯が誰かを知ろうとしてはならない。守れなかった場合、島内の爆弾の起爆装置が作動し、全員の命が失われる。こうして十戒に従う三日間が始まる。
まず、殺人犯を見つけてはならないという、ミステリを真っ向から否定するような設定がいい。その他、犯人とある物を使ってコミュニケーションを図ったり、クローズド・サークルにも関わらず電波は良好で、家族とも連絡を取れる状態というのは、今まで読んだことがない新しさがある。この人工的な閉鎖環境(心理的クローズド・サークル)で連続する殺人は実にスリリング。お互いに「絶対に犯人を探すなよ」と思っているし、犯人に対しては「絶対にミスを犯すなよ」と思っている。集団心理として牽制し合う設定が絶妙。そして、殺人が起きる度に、犯人が残した痕跡を消しながら犯人の手掛かりがないことを願うという、全員が共犯者であり連帯責任者というところが、他のミステリでは味わえない面白さがある。
完璧と思えるロジックで謎は解き明かされるが、真相が喝破されたと思われたその先にどんでん返しが待っていた。やはり一筋縄ではいかない。「方舟」に比べると衝撃度は落ちるが、またも絶望感を味わえ満足。
聖書に関するタイトルが続いたが、次のタイトルは何だろうと今から興味津々である。

No.11 7点 take5 2024/01/13 16:53
300ページに全く足らないから
あっという間に読めるタイパ作品。
3時間に全く至らないで読了。

もしも、、、
この作品が「方舟」の前に書かれていたら
「方舟」がシンプル過ぎると言われてしまう
そんな感じがします。
やはり前作の衝撃は
後の作品評価に影響しますね。

この作品では「そして誰もいなくなった」への
オマージュや
プロットの精巧さが感じられて好ましいのですが
爆弾という設定が
精巧さと合っていないかなあとも思います。
すみません私見です。

唯一衝撃的と言えるのが
ある登場人物の台詞
好きになって、期待して、がっかりした人
というくだり、
やはりこの作品は
「方舟」の後に書かれるべき作品という事です。
怖すぎる、、、

No.10 8点 まさむね 2023/12/30 09:24
 衝撃度という点だけで見れば昨年の「方舟」に及ばないものの、この作品も相当に良質な本格作品。犯人とコミュニケーションがとれる「孤島モノ」の設定が秀逸だし、足跡のロジックも好印象。ラストも、最初は〝違和感〟レベルであったけれど、気づけばなるほど、なるほど。これも印象深い。

No.9 6点 レッドキング 2023/12/09 07:36
これも面白かった。 「方舟」「十戒」ときて、次は、「原罪」「預言」あるいは 「黙示」ってあたりか・・・

※2日後追記。なんか「方舟」と同じ匂いが・・思ってたら・・おおサーガ!(ここの諸兄の評読んでナットク(^.^))

No.8 7点 虫暮部 2023/11/10 15:56
 キャラクターが一人一人きちんと別の人になっていて、この立場でこれを知っている人ならそういう風に動くよな~、と言った部分がしっかり押さえてある。読み返すとまた面白かった。
 『方舟』と似てるな~と、つい余計なことを考えてしまう。しかも、タイトルに共通性を持たせたせいで、実際以上に類似性が強調されてない?
 最後の最後に出て来るサプライズ、実は他の方の書評を読むまで全然気付かなかった。でも “あー成程ね~” と言った、オマケ程度の印象しかない。
 現時点では、せっかくの良作につまらない悪戯を加えている、と言う気もする。いずれ壮大なサーガになるんだろうか?

 あと細かいことだが、“犯人が、足跡から特定されるのを防ぐ為に、大股で歩く”。
 厳密に言えば、小股なら誰でも出来るが大股は人によって限界が異なる。“自分はこんなに大股では歩けない” と言う者がいたら(言っちゃまずいけど)容疑者から除外されてしまう。

No.7 9点 人並由真 2023/09/28 04:19
(ネタバレなし)
 面白いとかつまらないとかいう以前に、画期的なヒット作がひとつ出ると、送り手は柳の下の泥鰌を周囲から要求されるんだろうなあ、というのが第一印象。

 それくらい今回の大設定には<クライシスもの+フーダニットパズラー路線>という、そうそう続投できるわけでもなかろうものを、むりやりまた仕立て上げた強引さを感じ、いささかシラけた気分もあった。
 
 とはいえ一方で、そんなヤワな見定めに留まる作品でもないだろうという期待もあったので(この辺、かなり勝手な受け手である)、中盤の展開から少しずつ居住まいを正しながら読み進めたら、クライマックスはさすが! の歯応えだった。

 しかし何といっても、最高なのはラストに浮かび上がる、あの趣向であろう。

 小説そのほかのフィクションは、作者の思い付きの着想をとにもかくにも形にすることから、まずそこにロマンの萌芽が生じると思うが、これはそんな趣向・アイデアがものの見事に華開いた仕上がり。
 しかしほんのわずかも、モノを言いにくい趣向で仕掛けだな。
 この最後の大技で、この評点。 

No.6 7点 sophia 2023/09/04 22:25
ネタバレあり

タイトルを「百戒」に改めてほしいんですけど(笑)それはさておき。「方舟」とは違い、最後のどんでん返しがあまり効いていません。最初の解決で終わっていても、この作品の評価に変化はそう生じないと思うのです。「十戒」というテーマもあまり活かされていません。読み終わって「十戒」の内容を思い出せる人はあまりいないでしょう。なぜそのような条項を入れたのかというような謎があったりするとよかったんですかね。それとアリバイに関する記述がフェアなのかどうかはこの作品の問題点だと思われます。

追記 上記を書いた後しばらく考えていて気付きました。そういうことだったんですね。なぜ主人公以外は苗字しか出さないんだろうという地味な疑問がずっとあったんですが納得しました。しかしそれはあくまでプラスアルファの部分であって、分かったからと言って点数をプラスするには及ばないかなあと判断します。

No.5 8点 mozart 2023/08/30 17:47
特殊な設定というか犯人のルールが秀逸で3日間とは言えなかなか緊張感の持続するストーリー展開で最後まで一気読みできました。謎解き部分でそれまでにさりげなく記載されていた伏線を回収していくロジックも極めて明快で十分納得させられました。少し余韻を残したラストも気になります。

確かに正当防衛にはならず「犯罪」になってしまうのでしょうが、その犯行動機も十分に理解できたし。ていうか他に選択肢はないような……。

No.4 7点 HORNET 2023/08/27 20:44
 浪人中の里英は、父、そしてリゾート施設を開業するため集まった7人の関係者たちと共に、亡くなった伯父が所有していた枝内島を訪れた。ところが、狭い島に設えられた建物の中にはぎっしりと爆弾が。視察も早々に、翌朝島を発とうとしていた一行だったが、翌朝、不動産会社の社員の死体が発見された。さらにそこには、犯人が書いた十の戒律が書かれた紙片が。「殺人犯を見つけてはならない。見つけようとしなければ、お前たちは無事に帰れる」―それが、わたしたちに課された戒律だったーー

 孤島、集められた数人の人間、限られた期間は出られない状況…手あかのついた設定ではあるが、令和の時代にこの手で来るからには発想・仕掛けがあるんでしょ?って気になるよね。そして今回の手は「犯人を捜そうとしなければ、全員無事に帰れる」という設定。なるほど。また目の付け所が面白い。
 とはいえ、(犯人の欲求があるため)おおっぴらに推理はしないものの、主人公を中心とした近しい存在では「犯人捜し」が行われる。まぁそうしなきゃ物語が進まないからね。
 1日、1日と犠牲者が増えていくという展開は、ベタではあるけどある意味「期待通り」。一つ一つの殺人で少しずつ残されていく「違和感」を手掛かりに真相に迫っていく筋道は普通に王道だったし、普通に面白かった。
 ラストのどんでん返しは…まぁミステリ読みには予想の範疇。ただ前年の「方舟」からかなり期待値が上がる本作だろうけど、自分としては結構期待に応えてくれる出来だったと思う。

No.3 8点 メルカトル 2023/08/21 22:03
浪人中の里英は、父と共に、伯父が所有していた枝内島を訪れた。
島内にリゾート施設を開業するため集まった9人の関係者たち。
島の視察を終えた翌朝、不動産会社の社員が殺され、そして、十の戒律が書かれた紙片が落ちていた。
“この島にいる間、殺人犯が誰か知ろうとしてはならない。守られなかった場合、島内の爆弾の起爆装置が作動し、全員の命が失われる”。
犯人が下す神罰を恐れながら、「十戒」に従う3日間が始まったーー。
Amazon内容紹介より。

誘拐物や立て籠もりは別として、孤島ミステリで犯人にある程度自由は約束されているものの、犯人の指示に従って行動しなければならないという発想は面白いし新しいと思います。『方舟』と比べるとどうしてもワンランク落ちる感は否めませんが、個人的に8点より下は色々考え併せて付ける事が出来ませんでした。

重厚さなどはありません。しかし、これくらい軽めの雰囲気の作品の方が受ける時代なのかも知れません。各所で高評価を受けているのも納得の出来でしょう。何だかんだ言っても、結局今年の各ランキングレースを賑わすのは間違いないと思いますね。ロジックも確りしていますし、成程の結末にも納得です。

No.2 7点 文生 2023/08/10 12:20
クローズドサークルと化した孤島を舞台にし、従わざるを得ない犯人の要求を十戒に見立てた発想は非常に面白い。十戒に縛られているなかで起きる連続殺人のサスペンスもなかなかですし、犯人が仕掛けた二重三重の罠も悪くありません。しかし、シンプルかつサスペンスフルな驚愕ミステリー『方舟』と比べるとどうしても物足りなさを感じてしまいます。犯人の正体は最初からなんとなく見当がついていましたし、仕掛けも凝ってはいますが、やはり『方舟』のシンプルさと比べると回りくどさは否めません。トータル的に十分面白い作品ではあるのですが、『方舟』の影響下から逃れられないことが惜しまれます。

No.1 8点 みりん 2023/08/08 22:35
あえてハードルは下げておきます。『方舟』よりはやや劣ると思います(でも新刊補正で+1)。発売からわずか1年で既に28件の書評数と8.39点と高い評点を獲得した『方舟』はもう本サイトではレジェンドに片足を突っ込んでるので、それと比べるのは酷ですが…
『方舟』からわずか1年でこれを書き上げる夕木春央はミステリ界の救世主(出版社的にも)ですね。
ハードルを下げたいのか上げたいのかよくわからない評価になってしまいましたが、『方舟』が好きな方は買って損はないでしょう。


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