皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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ALFAさん |
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| 平均点: 6.63点 | 書評数: 270件 |
| No.270 | 6点 | マン島の黄金- アガサ・クリスティー | 2026/09/18 08:40 |
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| 拾遺集らしくバラエティに富んでいる。言い換えると玉石混淆。
お気に入りはミステリー色の薄い「夢の家」と「孤独な神さま」。 「夢の家」はこの後、「スリーピングマーダー」や「終わりなき夜に生まれつく」など、多くの作品に繰り返し登場するモチーフ。 「孤独な神さま」はクリスティにしては甘いロマンチシズムだが、神さまのたたずまいがいい。レッドキングさんのお地蔵さん説に共感!! 私は円空仏を連想した。 ところで気になるのは「クィン氏のティー・セット」の小倉訳。サタスウェイト氏はクィン氏に「きみ」「わし」のタメ口。いっぽう短編集「謎のクィン氏」の嵯峨訳は「わたし」「あなた」の丁寧語。どう考えても両者の関係はこちらだろう。同級生じゃあるまいし。 クリスティのことだから水準は維持している。誰が読んでもひとつや二つは刺さるだろう。 |
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| No.269 | 8点 | ヘラクレスの冒険- アガサ・クリスティー | 2026/09/17 09:34 |
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| 引退を決意したエルキュール(ヘラクレス)・ポワロが仕事の締めくくりにふさわしい事件を選んで手掛ける、という趣向の12の短編。でも実際には引退しないけど・・・
物理トリックやお得意のアイデンティティー偽装など、バラエティに富んでいて水準は高い。 なつかしのロサコフ伯爵婦人も登場する。 お気に入りは犯罪の起きない謎解きの「アルカディアの鹿」。仄暗いロマンティシズムがいい。 中には短編ではなく、中長編に仕立てたほうが味わい深そうな話もある。 D.スーシェのTVドラマ版では、「エルマントスのイノシシ」を軸に、複数の話をミックスして楽しい冒険劇になっていた。 |
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| No.268 | 6点 | めぐる糸明治浪漫霊異譚- 永井紗耶子 | 2026/09/15 07:54 |
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| 作者最新作。
全然怖くないホラー。 明治後期の東京を舞台に、霊視能力のある帝大生と心霊学を趣味とする華族の次男坊コンビが、さまざまな怪異を解き明かす。 五話の連作短編で読みやすいが、ホラーのロジックがいまひとつ曖昧。登場人物がみんな人柄が良すぎるのも薄味。 構成美の「木挽町のあだ討ち」や端正なお仕事小説「大奥づとめ」ほどの切れ味はない。 |
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| No.267 | 7点 | 凍てつく太陽- 葉真中顕 | 2026/09/07 16:17 |
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| 敗戦直前の軍都室蘭を舞台にした、警察小説 + ハードボイルド + 謎解き本格 + スパイスリラー + 社会派、で読みごたえ十分。
アイヌの出自を持つ主人公の特高警察官や朝鮮出身者など、マイノリティ皇国臣民たちを登場させて社会派の熱量が高くなった一方で、せっかくよく出来ている謎解きが埋没気味なのは残念。 敗戦前後の人間ドラマとしては高評価。 |
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| No.266 | 7点 | 本を読むのが超速い人の頭の中ってどうなってんの殺人事件- 白井智之 | 2026/08/28 12:13 |
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| タイトルに煽られて挑戦してみたが読了に23分かかってしまった。
超早いとはいえないなあ・・・ 中身はちゃんとしたミステリー。ロジックもトリックも気持ちいい。 洒落の効いた企画だから、突っ込みどころはあまり探さずに楽しむのが吉。 |
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| No.265 | 7点 | 神の光- 北山猛邦 | 2026/08/15 08:41 |
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| 建物消失という魅力的なテーマによる5つの短編集。
それぞれに色合いが違っていて楽しい。 「一九四一年のモーゼル」と「神の光」が好み。ベタなロジックながら時代背景を織り込んだ物語性がいい。 「藤色の鶴」と「シンクロニシティ・セレナーデ」は洗練されたファンタジーとして読みごたえがあるが、ファンタジーなら何が消えてもおかしくはないからなあ・・・ 「未完成月光 Unfinished moonshine」はポオで始まって三津田で閉じるunfinishedな印象。 |
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| No.264 | 7点 | 楽園- 夕木春央 | 2026/08/10 06:18 |
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| 最新作。これから読む人も多いだろうから慎重に・・・
またしてもクローズドサークルか!! と驚くが、読み終わってみると「方舟」「十戒」と三部作を成してぃることに納得。作者の企みの深さに脱帽! WHOは絞りやすいが、HOWとWHYを探るサスペンスと割りきれば楽しめる。 禍々しくも深い愛は今度こそ成就するのか? 三作の時系列を考えると答えは明らか。 |
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| No.263 | 4点 | 熱海伊豆山殺人事件- 島田一男 | 2026/08/03 08:42 |
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| 熱海を舞台に記者、熱海署、新宿署のメンバーが入り乱れての軽ハードボイルドミステリー。
島田一流の掛け合いは楽しいし、景気よく連続殺人が起きるが、動機はお座なりでミステリーとしての満足感は薄い。 |
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| No.262 | 5点 | その灯を消すな- 島田一男 | 2026/08/03 06:41 |
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| 因習に満ちた平家村、個性豊かな三姉妹。
ちょいワル系の南郷弁護士と地元の石橋刑事との掛け合いが楽しい。 動機を因習に依ったことで犯人像が拡散してしまったのがミステリーとしての弱さか。 |
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| No.261 | 7点 | 上を見るな- 島田一男 | 2026/07/31 08:34 |
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| 田舎の旧家、莫大な資産、復員してきた相続人たち・・・
いずれも横溝正史の代表作と被るが持ち味はまるで違う。片やホラー風味のエンタメ大作、一方こちらは軽快なハードボイルドタッチ。テンポのいい展開に軽妙な会話。 プロットは複雑なわりにラフだが十分に楽しめる。 以下微妙なネタバレ アリバイトリックに使われる交通手段は某有名作と同じだが、ここではヒト捻り工夫があってとても有効。一方かの有名作では何の工夫もなく作品の瑕疵になっている。 島田一男が某作品を参考に修正を加えたのかと思いきや、こちらの方が発表は2年早かった。 昭和の大物ライバル同士、ここは島田の勝ち。 プロットのラフさを達者な文体が補って楽しいから少しオマケ。 |
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| No.260 | 7点 | 去来氏曰く- 島田一男 | 2026/07/27 07:35 |
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| 昭和の夏のミステリーを令和の猛暑日に読む。
開け放した窓から暑い風が吹き込む法廷、じわじわと汗の吹き出る弁護士事務所。冷房完備はデパートか銀座の喫茶店くらい・・・ 昭和の夏といえば爽やかな朝のラジオ体操やスイカ割りというのは「三丁目の夕日」的ファンタジーだった。 島田らしい絶妙の情景描写と軽ハードボイルド調の会話が楽しい。 密室殺人を含む三つの事件を丁寧に組み合わせた本格ミステリーだが、その複雑な構成が無理筋とも感じられる。なにより黒幕のキャラがベタすぎ。 随所に見られるセクハラ、パワハラワードは令和コードではアウトだろうがまあご愛敬か。 「昭和ミステリー」として楽しめるのがいい。 |
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| No.259 | 6点 | ビブリア古書堂の事件手帖5- 三上延 | 2026/05/25 08:58 |
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| 日常の謎以上、犯罪未満。
古書をキーにした謎解きはマニアにはたまらない。 お気に入りは「彷書月刊」。続く「断章」での捻りが効いている。 いずれもシンネリした物語なので、好みはわかれるだろう。 |
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| No.258 | 7点 | エイレングラフ弁護士の事件簿- ローレンス・ブロック | 2026/04/15 09:50 |
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| まずはキャラクターの勝利だろう。小柄で極めつけのダンディ弁護士。
各編ごとに丁寧にファッションコーディネイトが描かれていてイメージするのが楽しい。 ポワロをさらにファンシーにした凝りようだから、これで法廷に立ったら浮いてしまうだろう。まあ滅多に立たないからいいか・・・ ワンパターンにならないよう12編それぞれに巧みにヴァリエーションがついている。 お気に入りは第一話「エイレングラフの弁護」。究極のブラックな手法・・・のような曖昧な結末がいい。勝負ネクタイの謂われもブラック。 本格の作法であれこれ言わずに、作者の軽妙な語り口を楽しむのが吉。 |
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| No.257 | 7点 | 過ぎ行く風はみどり色- 倉知淳 | 2026/03/28 09:17 |
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| ラノベ風のタイトルに似合わぬ作り込まれた本格ミステリ。
メインとなる叙述の仕掛けにも心地よく騙される。 キャラ造形も楽しい。なかでも怪しげな霊媒師の正体が愉快。 残念なのは・・・(ネタバレします) メインの殺しの動機が弱くトリックも場当たりすぎること。三つ目の殺しのほうが動機もトリックもはるかに本格してるのがアンバランス。 芳醇な物語がミステリ部分の弱さを補って読みごたえは十分。。 |
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| No.256 | 8点 | 世界でいちばん透きとおった物語2- 杉井光 | 2026/03/23 08:44 |
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| ケレン味たっぷりの仕掛けが楽しい前作に比べるとぐっと本格味。作中作の扱いが秀逸。
前作の主人公がミステリ作家デビューを果たし、切れ者女性編集者と組んで探偵役に。さてはこのまま二代目有栖か。 グロ殺人とバイオレンスは作中作が受持って、本編はダークにならない謎解きで後味はいい。 構成の妙を評価して一点オマケ。 |
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| No.255 | 7点 | 変な家2〜11の間取り図〜- 雨穴 | 2026/02/06 08:04 |
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| 社会現象ともいえる一連の作品だが、内容そのものは少しも「変」ではない。
家の平面図が謎解きのキーになる結構重厚なミステリー。一見、連作短編風だが完結しないトピックもあるので本質は長編。 解決編はダミーからの反転ではなく、さらにジャンプしてのエンディングで満足感はある。 19世紀的な小説作法で緋倉家のクロニクルとして仕立てたら、それはそれで読みごたえのあるミステリーになっただろう。 |
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| No.254 | 7点 | 闇の歯車- 藤沢周平 | 2026/02/05 08:17 |
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| 一度も失敗したことのない押し込み強盗の親玉と、集められたワケあり素人の4人。
なにやら近年のトクリュウを思わせる設定だが書かれたのは昭和。時代を先取りした藤沢周平の着想がすごい。 小気味のいいカットバックやセリフ回しで4人それぞれのの物語が展開する。 親玉と4人各々にビターエンドとハッピーエンドが用意されていて読後感はいい。 楽しい時代物ハードボイルド。 |
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| No.253 | 7点 | 用心棒日月抄 凶刃- 藤沢周平 | 2026/01/31 09:12 |
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| シリーズ第4作にして完結編。
1~3作が書かれたのは1980年前後。初期の暗い作風から一転、快活なストーリーで一躍人気作家に。 そして本作は約10年の間をおいての発表。作中では20年近い歳月が流れ、イケメン用心棒青江も今や下腹のせり出しを気にする40代半ばの重職藩士。 今回は休職する同僚の代役で半年の江戸赴任。軽い役目のはずが別の密命を帯びることに・・・ 愛着のある初期のヒットシリーズに、円熟期の作者が決着をつけた格好となる。巧みなカットバックや地の文から続くセリフなど、藤沢周平らしい職人芸が楽しめる。ミステリー度も結構高い。 懐かしい脇役たち、用心棒仲間の細谷、口入れ屋の相模屋、そして因縁浅からぬ佐知それぞれが収まるべきところに収まって、まさにグランドファイナル。 |
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| No.252 | 7点 | 用心棒日月抄- 藤沢周平 | 2026/01/25 08:00 |
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| 藤沢周平は中高年男性にファンが多いという。さもあろう、作中の武士達はナリこそ二本差しだが心情は宮仕えのサラリーマンそのもの。実際、藩に仕える武士は企業戦士と重なるところが多かったんだろう。
ワケあって脱藩し、腕に覚えの剣で用心棒稼業となった主人公青江も例外ではない。 剣を交える場面こそ劇画並みの強烈さだが、本人はアウトローからはほど遠いイケメンで一本気な青年。そこそこ世慣れて、長屋の住人や派遣先を紹介する口入屋との距離感も絶妙。現代ならゴミ出しもちゃんとしただろう。 連作短編形式だがその本質は長編。有名な史実を巧みに織り込んだ快作エンタメ時代小説である。 サスペンス風味だが謎解きは余りないので評点は控えめに。 |
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| No.251 | 6点 | 暗殺の年輪- 藤沢周平 | 2026/01/15 10:17 |
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| デビュー作「溟い海」、直木賞作「暗殺の年輪」を含む初期の5編。
謎解き1編、剣豪もの1編、サスペンス3編。 印象に残るのは、葛飾北斎晩年のうねるような情念を巧みな構成で描いた「溟い海」と、情感豊かなサスペンス「囮」。 後年のしみじみとした雰囲気とはひと味違うノワールな味わいがいい。 いずれも直木賞候補になっている。 |
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