皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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ALFAさん |
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| 平均点: 6.63点 | 書評数: 247件 |
| No.247 | 8点 | 三屋清左衛門残日録- 藤沢周平 | 2026/01/06 08:02 |
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| まぎれもないミステリーだがこれまで書評がないのは、作者が人情時代小説の大家と位置づけられているせいか。
15話からなる連作短編だが長編の色合いが濃い。 主人公は、藩の重職「用人」を辞して家督を譲った三屋清左衛門。楽隠居のはずが絶妙な立場を見込んでいろいろと相談事が持ち込まれる。 慎重な扱いを要する事件や因縁話などの陰に不穏な気配が見えかくれし、やがて藩の存続を揺るがす凶々しい企みが明らかに・・・ 相棒は幼なじみで現役の町奉行、佐伯熊太。「静」の清左衛門、「動」の熊太の名コンビ。 藤沢周平は、ミステリーのお約束である読者向けの謎解きが少なく人情話が多いからピュアなミステリーファンには敬遠されそうだが、この作品はバランスがいい。端正な楷書のような文体も心地いい。 何度かドラマ化されているが、初老の仲代達也が懐かしい。濃い芸で佐伯熊太を演じた財津一郎もはまり役。 |
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| No.246 | 7点 | 半七捕物帳 巻の二- 岡本綺堂 | 2025/12/31 10:47 |
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| 江戸末期に活躍した岡っ引、半七の昔語りを明治の新聞記者が書き留めるという趣向。
所々に時代の移り変わりが顔を覗かせるのも面白い。。 第一巻はミステリーから奇譚までバラエティ豊かで玉石混淆でもあったが、この第二巻は本格推理の粒ぞろい。怪異や怪奇に始まって合理的な解決に至る謎解きが楽しい。 なかでもお気に入りは「狐と僧」。住職の正体は狐?の怪異に始まって、きわめて散文的かつ社会派風味の結末となる。 ただ、精緻に入り組んだ謎に対して構成は単調。聞き込みと勘が頼りの捜査だから解決部分はほとんど半七の説明調になってしまうのが残念。 森村誠一の理屈っぽい解説は興ざめ。 |
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| No.245 | 6点 | 半七捕物帳 巻の一- 岡本綺堂 | 2025/12/27 09:59 |
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| 引退した岡っ引、半七老人の昔語りという形式がいい。現在進行形ではないから落ち着いて楽しめるし、前後のつじつまが多少すっ飛ばされても腹も立たない。
ストーリーにドイルやポオへのオマージュが伺えるのも面白い。 ただし現代ミステリー流の精妙な謎解きというわけにはいかない。お話の適度なユルさもホームズ風。 鷲、猿、河獺まで登場するのもご愛嬌。 お気に入りは「朝顔屋敷」。こちらは意外に現代的な主題。 作品の歴史的意義は外しての評価ということで・・・ |
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| No.244 | 6点 | サーチライトと誘蛾灯- 櫻田智也 | 2025/12/22 09:07 |
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| 5編から成るデビュー短編集。
どれも確かに事件は起こるけれどどこか「日常の謎」っぽい浮游感がある。 事件の因果を直接の主題にしていないことに加えて名探偵エリ沢くんのとぼけたキャラのせいだろう。 謎の構図が面白いのは「ナナフシの夜」。 いずれもサラリとした気持ちのいいい読後感だが次作ほど突出したものはない。 |
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| No.243 | 7点 | 日本探偵小説全集(8)久生十蘭集- 久生十蘭 | 2025/12/21 08:38 |
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| 代表短編「湖畔」「ハムレット」他三編に「顎十郎捕物帖」全編「平賀源内捕物帖」三編から成る分厚い文庫。
楽しめるのは「顎十郎捕物帖」。口述筆記らしいなめらかでリズミカルな文体で、それぞれわずか数十ページに多彩な謎が仕掛けられている。 なかでもお気に入りは「両国の大鯨」。スケールが大きいんだかチマチマしているんだかわからないトリックが愉快。 纏綿たる江戸情緒は池波や宮部に譲るが、そこは作者も主眼ではないだろう。 どれもごく短い尺なので謎の提示から急転直下の解決(解説)に至るのはやや残念。 「平賀源内捕物帖」は理系過ぎるオチが肩透かし。 |
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| No.242 | 7点 | 久生十蘭短篇選- 久生十蘭 | 2025/12/14 08:15 |
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| 奇譚、ファンタジー、サスペンス風味等バラエティに富んだ15編。
いずれもエスプリの効いたプロットと洗練された文体で楽しめる。 佛蘭西風味の道具だてで通好みに思われ勝ちだが、現代なら王道の人気作家になっただろう。 お気に入りはサスペンス風味の「白雪姫」と、New Yorker短編風の辛口人情話「復活祭」。男女それぞれの服が小道具として効いている。 高水準の短編集だが、ミステリー風味はほとんどないのでここでは控えめに評価。 |
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| No.241 | 6点 | AX- 伊坂幸太郎 | 2025/11/09 08:39 |
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| 連作短編形式だが実質は長編。
主人公は凄腕の殺し屋だが家族持ちで恐妻家。表の顔は堅気の営業マン。まるで中村主水の現代版みたい。 必殺シリーズとの違いは勧善懲悪ではないこと。依頼される殺しを粛々とこなしていく。 前半3編は時にコミカルなハードボイルドタッチ。 第4編EXITでガラリと空気感が変わる。 そして第5編FINEがこの作品の大トリ。伏線を次々に回収し10年越しのケリをつけて物語はとじる。 構成の見事な、伊坂殺し屋シリーズの代表作。 |
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| No.240 | 6点 | 寿ぐ嫁首 怪民研に於ける記録と推理- 三津田信三 | 2025/10/06 17:09 |
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| 不思議な作品だと思う。内容ではなくてその位置付けが。
前回の「歩く亡者」は刀城シリーズのスピンオフ短編集として軽く楽しめたが、今回は堂々たる構えの長編。会話の中に刀城言耶がたびたび登場するし、「首無」の媛首村の因習まで引用されている。 これではスピンオフではなく、刀城言耶シリーズの正統な後継作ではないか。 さては三津田先生、キャラを入れ換えて人気シリーズのリフレッシュを図ろうという魂胆か。 作中に名前だけ登場する刀城先生はすでにレジェンド。謎解きは助手の天弓馬人だが実際の探偵役はその教え子の瞳星愛で、これがなかなか肝の座った女子学生。キャラ構成としては魅力的。 今回のモチーフは因習+婚姻儀礼で、これは完全に「首無」の変奏作品。 文体はなめらかで読みやすく、適度な多重解決と適度に意外な反転が仕込まれている。 そつなくまとまった本格ミステリーだが、本家ほどのダイナミックなトリックやメタ構成はないし、凍るようなホラー味もない。何より第一の事件が無理筋。 まあ比較の相手が傑作すぎて分が悪いのは確かだが。 |
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| No.239 | 6点 | 不可能犯罪捜査課- ジョン・ディクスン・カー | 2025/10/05 13:00 |
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| 読んだ端から忘れてしまいそうな小ネタのオンパレードだが、不思議と腹は立たない。
トリックはチープでも語り口がうまいからだろう。「昔々あるところに・・・」調で自然に話に引き込まれていく。 なかでは「もう一人の絞刑吏」と因縁話の「めくら頭巾」が面白い。タイトルからしておどろおどろしいではないか。 「妖魔の森の家」や「パリから来た紳士」ほどの名品はない。 |
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| No.238 | 7点 | さむけ- ロス・マクドナルド | 2025/09/30 09:08 |
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| はるか昔の初読では、本格味の複雑なプロットやエンディングが印象深かった。
再読してみると、複雑なプロットはかえって物語の雑味になっているように感じる。 登場人物と展開をもっと整理したらキリッと引き締まったHBミステリーになっただろう。 衝撃のエンディングもいっそう引き立つと思うが・・・ いずれにしても本格風味の名作ハードボイルド。 ハヤカワ版小笠原豊樹の訳はとても読みやすい。 |
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| No.237 | 6点 | パリから来た紳士- ジョン・ディクスン・カー | 2025/09/26 07:14 |
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| 表題作「パリから来た紳士」のエンディングが面白い。取って付けたような趣向ではなく、プロットに巧みに織り込んである。
何より本編の消失トリックが、この本家と同じというかパクリというかオマージュというか・・・ もちろんカーとしてはオマージュのつもりなんだろう。 一方「取りちがえた問題」の痛そうなトリックは近年の国産人気作で再利用されている。同じというかパクリというかオマージュというか・・・いやこちらはオマージュではないだろうな。 |
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| No.236 | 8点 | ビロードの悪魔- ジョン・ディクスン・カー | 2025/09/24 07:22 |
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| 冒険活劇+歴史ミステリー+SFタイムスリップで、もうお腹いっぱい。
歴史学の教授ニコラス・フェントンは300年前の古文書に記された毒殺事件の謎を探るべく、悪魔の手を借りてタイムスリップする。同名の貴族に憑依するという、まことに手際のいいやり方で。 この悪魔、メフィストより俗っぽくて笑える。 長い尺の半ばまでは、猥雑な17世紀ロンドンを舞台にした冒険活劇。街の臭さが漂ってきそうなリアリティ。後半になって俄然ミステリー濃度が高くなる。 特殊設定のロジックがしっかり通ったフーダニットで、伏線も十分。 ジャンルミックス型エンタメ大作にして、カーの代表作である。 |
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| No.235 | 7点 | 硝子の塔の殺人- 知念実希人 | 2025/09/21 17:11 |
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| 作中にも出てくるけど名作「Y」のアイデアをうんとモダンに仕立てたらこうなるかな。
人工美あふれるパズラーとして楽しめる。 引用される数多くの有名作品は、ミステリー愛やオマージュというより読者サービスとして効果的。 違和感があるのはエピローグ。うす甘いエンディングが本編の世界観とアンマッチ。 |
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| No.234 | 7点 | 緑のカプセルの謎- ジョン・ディクスン・カー | 2025/09/17 07:31 |
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| ポンペイの遺跡を観光で訪れた、何やら不穏な家族と友人グループ。
それを目撃する探偵役・・・ クリスティさながらのオープニングである。 起こる事件は、子供の無差別殺害と衆人環視下での実業家の毒殺。 密室はないが、魅力ある不可能犯罪が牽引力になって安心?して読み進められる。 フェル博士の毒殺講義と終盤の真相開示がやや冗長なのが残念。 |
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| No.233 | 6点 | 絡繰り心中- 永井紗耶子 | 2025/09/16 08:56 |
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| 「女は一人で死んでいた。」ミステリーのツカミとしては申し分ない。
切られて死んでいたのは吉原の花魁。辻切りかそれとも心中の片割れか。 謎を追うのは、身分を隠し笛方として町場に暮らす若き日の遠山金四郎。 なかなか魅力的な設定である。 残念なことに、謎解きと遠山家の話とが平行して構成がバラけてしまった。 肝心の犯人像もニヒルであってほしいのに妙に俗っぽくて今ひとつ。 人物造形が一番たしかなのは謎の口利き屋「獏」。 設定の妙に構成が追いつかないもどかしさがある。 |
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| No.232 | 7点 | 励み場- 青山文平 | 2025/09/15 12:31 |
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| 江戸のお仕事小説仕立てで夫婦の心の機微を描いている。
終盤、それぞれに関わる真相が明らかになるくだりはまさにミステリー。 主題にふさわしい文体や構成はさすが。 味わい深い作品だが、他の作品にも時折見られる過度のストイシズムが若干の違和感として残る。 |
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| No.231 | 5点 | 阪急電車- 有川浩 | 2025/09/15 10:18 |
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| 話題作とは知っていたが、ハテ?ミステリー要素はあったかな?
と思って読んだらやはり無かった。 16の連作短編で、登場人物が複雑に絡み合う構成の妙は楽しめる。 それぞれの話はサラリとした人生の機微。 いささか通俗的ではある。 |
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| No.230 | 7点 | 妖魔の森の家- ジョン・ディクスン・カー | 2025/09/13 07:42 |
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| カーはトリック愛に満ちた作家だと思う。いかにして読者を惑わすか、きっと本人も楽しみながら書いたんだろう。
濃い人間ドラマや精緻なロジックではそれぞれクリスティやクイーンに譲るが、トリックはテンコ盛り。ときには突っ込みどころ満載だったりするけどそれも楽しい。 この短編集も密室中心の良作揃い。 中でも、表題作「妖魔の森の家」はトリックだけに終わらない大仕掛けな秀作。 それにしてもHM卿、それ重くなかったか? |
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| No.229 | 7点 | 本売る日々- 青山文平 | 2025/09/07 10:04 |
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| 作者お得意の江戸のお仕事小説、今回は書肆(出版業兼書店)のあるじが主人公。
淡いホラーとシリアスな日常のなぞを含む中編三話。 実は短編集「江戸染まぬ」の「町になかったもの」が事実上の前日譚になる。四話続けて読むのも一興。 主人公の名前は変わっているが。 端正な文体で語られる起伏のある話は読みごたえ十分。作中の和書の蘊蓄は凄いが知識がなくても楽しめる。 全体にミステリー濃度は薄いので評価は控えめだが、本好きにはおすすめ。 |
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| No.228 | 8点 | 三つの棺- ジョン・ディクスン・カー | 2025/09/04 07:36 |
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| 私見だが優れたミステリーには天才型と秀才型があると思う。
瑕があっても突出したワンアンドオンリーを具現化したものが天才型、精緻でバランスよく欠点の少ないのが秀才型。 この「三つの棺」は・・・(以下ネタバレします) 「○○○が犯人」というトンデモ設定を着地させた点で天才型。クリスティの「XXXが犯人」という某有名作と同じ。 天才型にありがちな歪みはある。大がかりな密室+アリバイトリックは突っ込みどころ満載だが、ここはカーのサービス精神。 密室トリックで語られることの多い作品だが、ワンアンドオンリーのこの趣向こそが真髄。 |
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